歴史の短い米国で邂逅した、親子三世代の歴史。 : Pernicano's Family Restaurant

友人がかつてホームステイしていたご家族が運営しているレストランがあるということはかねてより聞いており、今回いよいよ実際に訪店してみました。

Lyftに乗って、木曜19時着店。なんとなく想像していたより年季の入ったお店です。開けられたドアから大きな声が流れ出てきていますが、数少ない知人同士が喋ってる感じで、繁盛している感はあまりありません。
強い地元感にちょっと入店を躊躇いますが（笑、わざわざここまで来たんですから突入。

入り口真正面に、1957年当時の店内写真とメニュー。
あとからＳ（後述）に聞いた話によると、第二次世界大戦から無事帰国した現オーナーの祖父が兄弟と共にダウンタウンの方に最初の店を開店させたのは1947年。1954年にDEL MARに移転し、さらに独立移転し現在の店舗を開業させたのが1957年なのだそうです。
つまり店頭に飾ってあるのは現店舗開店当時の写真とメニューというわけですね。

写真では明るく見えまずが実際には相当に暗い店内を、オーナー家族の一人のおばあちゃん（ごめん、名前忘れちゃったよ ^^; 。仮にＳと呼ばせてもらいます）に連れられてソファ席の一つへ。

彼女に訪店のきっかけなどを伝えていると、なんと、あと30日で閉店するとのこと！ もう完全リタイアしたいので決めたそうです。
このタイミングで訪店出来たのはまさに僥倖。

先客は三組でしたが、Ｓは客のテーブルを訪れては（概ね）一人で喋り一人でガッハッハと笑いながら次のテーブルへと回っていきます。
我々二人以外は間違いなく何世代かに跨る常連の皆さん。
実際に我々の隣では、お爺ちゃんの誕生日を、お爺ちゃんの子ども家族、子ども家族のさらに子ども（つまり孫）たちが祝っていました。

アルコールは３種類のみ。
バドワイザー、バトライト、あと一種類は失念 ^^; ーー普通にそこらへんにある大衆ビール。何だっけなぁ。
ということで、何年振りにBudを頂きました。

当店のウリは、ピザとパスタ。ピザサイズは13インチオンリーで、パスタにはハーフサイズ設定があります。

とにかくボリュームが分からないので、サーバーのオバさんに色々聞いた結果、ペパロ二ピザ（14.75ドル）と、ミートボールとマリナラソースのハーフサイズ・スパゲティ（8.25ドル）をオーダー。

しばらくしてＳが戻ってきて、ドギーバッグ用意しておくね、と。はあ？なんでよと問うと、だって残り物持って帰るでしょ？
あのね、量の相談をして決めたんだけど多過ぎた？と聞くと、見りゃ分かるからと言ってまたガハハハ！と笑いながら去っていきます。

最初に運ばれてきたビールは、持ち上げたときのあまりの軽さにひっくり返しそうになりました（笑。軽いプラジョッキの中でも最軽量なんじゃないでしょうか。

ビールを啜っていると、スパゲティ到着。
頼んだはずのミートボールが乗ってないと言うと、あらいけないと皿を持ち帰り、ドデカいミートボール二つとさらにその上にこれでもかとソースも追加投入された皿が戻ってきました。
たっぷりなボリュームで、全然ハーフポーションじゃない。

間髪を容れずピザも到着。クラストの薄い、極めてオーソドックスな外観。美味しそうです。

そして実際にどちらのメニューも懐かし気に美味しい。まさに何十年も変わらぬ、地元で何世代にもわたって愛され続けて来た家族経営レストランの味、なのだと思います。

ただ、ピザのクラストーーソースなどではなくクラストそのものーーだけはかなり塩っぱかった。アメリカ料理は日本の料理よりかなり塩味が薄いので、おそらくは塩の分量を間違えたのでは？

それにしても、13インチピザとハーフサイズのスパゲティの割には腹にずしっと来ます。
全部平らげたところでまたやって来たＳが、あらま、全部食べられたの？ シンジラレナーイと。
あのね、この量なら大丈夫って言われたから頼んだんだってば。

そしておもむろに、70年代のSTYXってバンド知ってる？とＳ。知ってるよと答えると、彼女が突然ドモアリガト……と歌い始めるので、Mr. robotのくだりは思わず一緒にハモってしまいました（笑。
さっきから彼女が我々の前で何度も口にしていたドモアリガトは、あの曲で覚えたんですね。

１時間15分滞店、二人で31.79ドル。やっすいなぁ。

日本の言葉だけのファミリーレストランと違って、客が家族単位で訪れる家族経営レストラン、本当の意味でのファミリーレストランがそこにはありました。
最初で最後の訪店となりましたが、美味しかったです。ご馳走様、そしてお疲れ様でした。


********************
補填。
1957年のメニューは興味深いです。

食べログの超低解像度写真では内容は全く読めないので、簡単に内容を紹介しておきます。

先ず、料理内容は現在のものとほとんと変わらず、値段だけが異なっています。
この晩我々が頂いたものを例にとると；
ペパロニピザ：$1.5（'57）＞$14.75（'19）
ハーフミートボールスパゲティ：$1.6（'57）＞$8.25（'19）
となっています。
※ピザサイズ一択は一緒ですが、12 inch（'57）＞13 inch（'19）と今の方が大きくなっています。

さらに興味深いのが、What is Pizza? という説明。1950年代というとまさにイタリア系移民以外にもピザが広がりを見せ始めた頃で、このメニューにも、おそらく顧客の啓蒙のためであろうこんなテキストを載せたのでしょう。

「当店のピザはナポリタンスタイル。薄く丸いドウで、直径ほぽ１フット。トマトソースの上に、モツァレラチーズ、オリーブオイル、ガーリック、マッシュルーム、アンチョビ、イタリアンソーセージなど様々なものが乗っています」

また、メニューでは家族経営レストランであることを全面に押し出しています。イタリア系家族だからこそ成し遂げられた！みたいな。

そう言えば、リタイヤしたらどうするの？と聞いたとき、Ｓは、のんびりするけど、あ、イタリア行くよ。だって私はイタリア人なんだからね！ なんて言ってたっけ。