地産地消とは制限ではなく想像力の翼を羽ばたかせるのである : ウシマル

飲み友達が大学院を修了し、お祝いと称して美味いモノ食べに行こうとセレクトしたのがウシマル。敬愛するグルメブロガーの方も絶賛していて、これは楽しみ過ぎ。

東京駅から成東駅まで特急しおさいで。そこからタクシーで3,000円。4人で向かったので1,000円以内っす。最寄駅は松尾駅ですが、電車の本数が少ないので、往路はこの形が最適です。

田園風景の中にポツンと登場する洋風な建屋。
タクシーで到着すると外まで迎えていただけます。

クロークに荷物を預けながら、前室では焙じ茶をサーブいただく。この寒い中で心身が温まるひと時。

その後席に案内されると、開けた空間と採光性の高さで明るいダイニング。前室もそうですが、地方ならではの贅沢な空間取りで期待が高まります。

アルコールはペアリングをお願いしましたが、おそらくオーナーであるサービス担当の方を始め、他のサービスの方もフランクで丁寧でノリが良く、一切不快になることのない素晴らしいサービス。
「どれだけ呑めるか分からないので、もっと欲しければ言ってくださいね〜」なんて、我々にはご褒美のようなお言葉でございます！

コースに入る前や間に本日の食材を紹介してくれます。
真鴨やヤマシギ、シャルキュトリーの盛合せやカサゴなど。この後の料理にどう変身するのか、気持ちはあげぽよ。

◯真鴨のスープ　孟宗竹の炭火焼き
アツアツのスープ。眼前に置かれただけで鴨の野生的な芳香が鼻腔を直撃して食欲を呼び起こす。
具は炭火で外皮を真っ黒に焼き上げた孟宗竹。香ばしさと竹の子の甘み。素材をそのまま飲み干す様な力強さ。素材の味覚は最強である。

◎春子鯛のパイ包み
春子鯛をバターの効いたパイで包み、その上にパリパリに焼き上げた鱗を。春子鯛と共に海苔も添えられている。様々な食感や香りが全ての仕事が淡白な春子鯛を盛り立てている。特に海苔が付け加える海由来の香りと塩気がミラクルに調和。美味過ぎて思わず皆んなで顔を見合わせる。

◎フォカッチャ
ここでホカホカに焼き上がった大きなフォカッチャのご披露。各テーブルを回る都度歓声が上がります。
ザクザクと切り分けてサーブいただけるのですが、あまりにも美味そうなので大盛にしてもらいました。
外皮はザクザクで香ばしい。内部は全粒粉やじゃがいもが素朴で力強く甘くて旨い。
連れは枕にしたいとかアホな事を言ってましたが、完全にアグリー。
こんな旨いフォカッチャを焼いているのは21歳のお兄さん！爽やかで気持ちが良いね。頑張って欲しい。
なんと、余った分は最後にお土産として持たせてくれるというホスピタリティでした…

◎シャルキュトリー盛合せ
なんじゃこの盛合せは！全ての料理がヘビー級の美味さ。この一皿で都内でお店を開いたらメチャクチャに流行ること間違い無し。全てがいちいち旨い。
・猪のもも肉ポルケッタ
・ブレザオラと菊芋のフリット
→フリットの熱でブレザオラが溶けてその塩気と菊芋の甘さがマリアージュして旨みが単刀直入。
・ゴールデンポークのクラテッロ
・ラルド
→フォカッチャと一緒に口に含めば、そこは天国。脳髄を刺激します。
・キョンのモルタデッラ
→噂のキョン。千葉県で爆発的に増えている特定外来生物。臭みなど何もなく、黒胡椒の代わりである実山椒により寧ろ爽やかさが勝る。

◯縞鯵　金柑や黄色ピーマンのソース
縞鯵の火入れも白眉。炭火の香りを纏った皮とレアな身のコントラストが完璧。金柑の仄かな苦味や甘み。辛味もあるね。縞鯵のジューシーな味わいと相まって多彩な味覚である。

◯とこぶし　天然なめこ　オレンジ白菜
それぞれから出汁が出ていてスープを含めてしみじみ。山の豊かな恵みに包まれているよう。

◯伊勢海老のリゾット
伊勢海老の身と味噌で海老そのものを食べているような濃縮感のある一皿。何気に海老の足が凝縮感もある濃い甘みが最も海老らしい。

◎カサゴは冷製とボリートの2種類で
・冷静はセンマイと山わさび
→カサゴにセンマイを合わせるなんて全く思い付かない組み合わせ。さっきまで生簀で生きていた健康的なカサゴとコリコリとしたセンマイの食感のグラデーションは秀逸。酸味や山わさびの風味も興味深い取り組み。
・カサゴと株の炭焼と魚のソース
カサゴには細かく包丁を入れてマッチョな切り込みを入れてエアリーな部分も感じる。魚のソースはジュの様に煮詰まったもの。濃密でいて雑味は無く、王道な味わい。

◯ヤマシギ　もち麦やムカゴ、田セリのオルゾット
ヤマシギは初めていただきます。フランスでは最高級食材だが、乱獲によって禁猟されているとか。
上品な味わいでヘルシーさを感じます。
もち麦やムカゴ、田セリといった土の香りを感じるあたり、ヤマシギと合わせて大地のパワーを感じる。

◯真鴨の胸肉とササミ
地元山武産の網取りの真鴨。銃じゃないから身が焼けて無いと言われますね。
胸肉はしっとりと血の味も含めて野生を感じてパワフル。ササミはスパイシー。
ガルニは人参やビーツ、聖護院大根。兎に角野菜の甘みが強く滋味深い。
山葡萄のジャム、自家製の塩でも味変。塩まで自分で作るなんてなんてマニアックな拘り！

夏みかんのシャーベット

◎自家製ボッタルガと千葉県産小麦の全粒粉パスタ
本日最高の一皿。というか、人生でもトップレベルのパスタに出会う。
太めの全粒粉パスタはオイルベースのシンプルな味付けのため、小麦のダイレクトで骨太な旨みが良く感じられる。この麺の旨さで度肝を抜かれる。
ボッタルガは塩気控えめだが旨みのパンチは効いており、パスタに少しの複雑性を加えている。
間違いなく傑作であり、パスタの殿堂かあれば殿堂入りさせたい。

◯ジャージー牛乳のヨーグルトと、アイス
◯冬苺のシュークリーム
イタリアンなのでシンプル目のドルチェや茶菓子ですが、甘さ控えめで口内をサッパリさせるという役割を確り全う。

ワインまで語り出すと村上春樹の長編小説バリの文字量になってしまうので詳細は割愛しますが、最初からシャンパーニュだし、量も気前が良く、町中華のおやっさんが勝手に餃子の量を増してくれるかのような勢いでお代わり注いでくれます。
料理のエッセンスとお酒の特徴がリンクしていて、料理のことを良く理解されたまさにマリアージュ。
カラスミのパスタに芋焼酎というペアリングはシダマツペアのごとき相性の良さ。
ちなみにワインは酔っ払って写真撮り漏れもありますので…

さて、コースは18,000円、ペアリングは14,800円。計32,800円ともちろん安くはありません。
が、この千葉県の食材の恵みを想像の域を超えて提供してもらえ、全体として神がかった旨さのコース。
更にペアリングはフリーフローと言っても良いレベルの量。
あまりにも好き過ぎてお土産のラザニアも購入w
更に地に足のついたサービスやホスピタリティ。文句の付けようがありません。人生トップレベルのイタリアンでした。
季節を変えて再訪したいですね。