バスクの伝統と革新を感じる料理 : MartinBerasategui

ヌエバ・コッシーナ・バスカ（新バスク料理）を牽引する５人のシェフのうちの一人が、こちらのマルティン・ベラサテギ氏。

サンセバスチャンからは車で２０分ほど。　住宅街の中にあります。　

広々とした駐車場にはコック帽の横顔をデザインしたロゴの看板が。

なだらかな階段をあがると、そこがエントランス。

この日は、あまりに天気がよいので、お客様全員が外のテラスでの食事となりました。　豪華な室内もあるのに、だれも室内を希望しなかった様子。

庭を見下ろす特等席を用意してもらいました。　

うららかな陽光、そよそよ吹き渡る涼風。　丘に点在する家々を眺めながらの食事。　究極に癒される環境です。

私たちの席には、金髪の美しい女性がサービスとしてついてくれました。　英語がとても上手なので、出身を伺ったところ、リトアニアとのこと。

この方、語学が堪能であるだけでなく、実に細かい配慮もできる素晴らしいサービスでした。　

それにしても、さすが三つ星。　サービス陣の数がスゴイです。　　

頭上を見上げると、大きなテントの間に、緑の実がなっている木が見えます。　あまりに大きな実なので、「あれ、なんですか？」と質問すると、

「bellota」　との返事。　なるほど、イベリコ豚が食すどんぐりです。　なんとスペインらしい。　茶色になる前の緑色だったので、下からはわかり

ませんでした。　さて、ここで終わらないのが、こちらのサービスの秀逸なところ。　なんと、そのどんぐりを一粒、わざわざテーブルに置いてくれた

のです。　こんなさりげない気遣いがいい思い出になります。

さて、食事です。　グレイト　テイスティングメニューというコースと、アラカルトがあります。　

初めてなので、コースにしました。　コースは２０５ユーロです。

まずは、チャコリをお願いしました。　KATXINA TXAKORINA を勧められました。

THE GREAT TASTING MENU

2014 Sea crunch tempura with Txakoli wine mayonnaise and citrus gel

最初の数字　２０１４は、その料理が開発された年号です。　チャコリマヨネーズと柑橘のジュレの海鮮天ぷら

Kumquat, potato firewater, olive and anchovy

キンカンにウォッカとアンチョビ

1995 Mile-feuille of smoked eel, foie-gras, spring onions and green apple

燻製鰻、フォアグラ、クリーム状にしたスプリングオニオン、青りんごのミルフィーユ仕立て

2014 Red Shrimp Royale and dill with <Venta del Baron> oil

ディルと、ヴェンタ・デル・バロンオイルを使った赤海老のロワイヤル

　　　　　　　　　　　　　　真っ白な雲丹の殻を模した容器で登場。

2015 LIghtly marinated warm oyster with iced cucumber slush and K5, and spicy apple

冷やしたきゅうりにチャコリＫ５、スパイスで味付けしたリンゴと、軽くマリネした温かいガリシア産の牡蠣.

　　　　　　　　　　　　　　Ｋ５は、カルロス・アルギニャーノ氏のワイナリーのチャコリ.

2015 Monfish liver marinated in sea chlorophyll and served with seaweed salad

鮟肝です。　海の葉緑素と、ソルベ状にした海藻サラダで。　

　　　　　　　　　　　　　　日本の料理からインスパイアされたものが、バスクのほかのレストランでも多々見られました。

2015 "The Truffle" with fermented wild mushroom and collard greens with <Alma de jerez> oil

　　　　　　　　　　　　　　発酵させた野生きのこと、アルマ　デ　ヘレスオイルで調理したカラードグリーン（葉野菜）をトリュフとともに。

　　　　　　　　　　　　　　どちらもピュレ状になっていて、素晴らしい風味です。

2001 Vegetable hearts salad with seafood , cream of lettuce and iodized juice

ロブスターとクリーム状にしたレタス、ヨード化したジュース（トマトジュースでした）を野菜サラダで。

　　　　　　　　　　　　　　「野菜の心のサラダ」というネーミングがいいですね。　盛り付けの美しさに見とれました。

2011 <Gorrotxategi>egg resting on an liquid herb salad and dewlap carpaccio

ゴロチャテギの卵農家の卵を液体状にしたハーブと、イベリコ豚の喉肉のカルパッチョとともに

2015 Crispy golden Swiss chard stems with scallops in their own aniseed-flavoured sea juice

帆立貝を、ゴールデンスイスチャードの茎と、アニスの香りの海藻の泡で。

2015 Roast hake fillet with truffled spinach and sparkling K5

トリュフ風味のほうれん草とスパークリングチャコリＫ５添えメルルーサのロースト

　　　　　　　　　　　　　　　hake という魚は、バスクではしばしば登場しました。　メルルーサに近い魚です。

2015 Suckling lamb chop with Parmesan whey, fritter and asparagus with citrus dressing

乳のみ子羊のチョップ。　パルメザンチーズのホエイとアスパラガスを添えて。

　　　　　　　　　　　　　　　茶色のソースがラムのジュ、　赤のソースはデーツです。

2015 Saffron veil with melt-in-your-mouth macaroons and tea flower ice cream

あなたの口で溶けるマカロンと、アールグレイのアイスクリームにサフランのヴェールを纏わせて

　　　　　　　　　　　　　　　tea flower はアールグレイでした。

2014 Smoked sponge with cocoa crunch, frozen whisky cream, crushed ice, green beans and mint

ココアクランチいりスポンジに、ウイスキークリーム、クラッシュアイス、緑豆とミントを添えて

　　　　　　　　　　　　　　　もうお腹いっぱいで、大きなスポンジがきたので、どうしようと思いましたが、とっても軽い食感でした。

ミニャルディーズ　　　　　　　鋼鉄の思いガウディ風の器に６種類の小菓子

　　　　　　　　　　　　　　　レモンとアーモンドのフィナンシェ、ヘーゼルナッツケーキ、ピスタチオチョコ、キャラメルのボンボンショコラ、

　　　　　　　　　　　　　　　シナモン風味のアルマニャックミルク、パッションフルーツとレッドグレープのジュース

お茶には、トゥルシー（ホーリーバジル）のハーブティーを。　南部鉄瓶で供されました。

ちなみに、日本茶から中国茶まで幅広いラインアップ。

パンは、オリーブとベーコン入りフォカッチャと、全粒粉のブラウンパン。

この日も満席でした。

サンセバスチャンは、雨が多く、テラス席も年間で使用する日が限られるそうなので、この日は、本当にラッキーでした。

料理は、ひとつひとつが計算されつくした素材のマリアージュで、ハズレなし。　さすが大御所です。

痒いところに手が届き、終始笑顔を忘れないサービス。　　実に心地よい時間をいただきました。

＜閑話休題＞

　代々木上原「セララバアド」の橋本シェフがこちらで修行をしていた、とご本人から聞き、橋本シェフの顔写真をサービスの女性に見せて、
　「知ってますか？」と聞くと、「私は新しいから知らないけれど、ホセなら前からいるのできっと知っています」と言って、ホセを呼んでくれました。
　そのホセ君、なにを勘違いしたのか、橋本シェフの写真を見るなり、「あ～～、彼、覚えています。　あ～～～、彼がわざわざぼくによろしくって？」
　と、いたく感動しています。私はなにもそんなことを言っていないのですが、あまりのポジティブシンキングにあとで大笑いしてしまいました。　
　なんか、こういう、ラテンのノリが微笑ましかったです。
　

またぜひ訪問したいです。