ホテル内にある香港ミドルクラスの殿堂にて旧正月ランチ : Celestial Court Chinese Restaurant

天寶閣。以前にも訪れたことのあるお店です。うまかったけど、サービスがどうも、というのが残った印象でした。

今回は旧正月なのでホテルレストランくらいしか開いていないかもしれない、ということで宿泊した洲際酒店のコンシエに依頼して予約とってもらいました。

10時半すぎに入店。ライオンダンスの若い衆が飛び回るロビー、ド派手なる旧正月モードの装飾の入口を通っていくと、落ち着いた内装でなんだかちょっとほっとします。2人掛けテーブル、その上には「貴富開花」の赤いリボンをあしらった鉢植えが。

さすがにまだ客はまばら。しかし香港の人たちの多くは、一か所からどっとやってくるのではなく、三々五々集まって気が付くと大テーブルが埋まるという事が多い。おそらく今日はその典型でありましょう。普段の週末だと香港中から集まるところ、このシーズンは「中国本土」あるいは「東南アジア」からも集まってくるわけです。もちろん、香港の方々が本土などに行くことも多く、だからこそ人は少な目だしお店の多くも閉まっております。

ふと見ると我々のすぐ近くの席は2人掛けで香港人のご夫婦が静かに座られていました。家族のありようもいろいろです。

さて、いろいろ検討しましたが、珍しく2人用のランチコースをお願いすることに。私はコース＜アラカルト派なのですが、今日はきっと面白い光景が店内あちこちに展開するだろうし、ちょっと楽をいたしました。

コースの冒頭まずは點心。これは3種固定でした。蟹粉焼賣、天寶鮮蝦餃、そして鹹水角。どれも出来立てで非常に美味。こういうのを食べたかったわけです。焼賣は豚ミンチのきめがとっても粗くていい弾力を生みます。少しカロリー高めなので普段は注文しない鹹水角も、たまにいただくとおいしいです。豚肉、もち米などを使った揚げ物料理、シナモンスティックがあしらわれているのが珍しい。點心一人1個、3種と言うのも早めのランチとしてはちょうどいい感じです。

続いては足料靚湯。本日のスープ、男性店員の説明ではたしかコーンスープだったのですが、出てきたのは牛腩（牛バラ）のスープでこっちのほうがずっと好きでしたから大いに良しとします。色はいわゆる清湯と白湯の中間くらいで、牛バラの滋味があふれ出る感じです。

メインはたしか8品くらいから選択出来て、猪醸豆腐と焼味双拼の２つをお願いしました。

豆腐は豚肉炒めとネギが乗ってあるだけの家庭料理風の見かけですが、どうしてしっかりとした調理技術を垣間見ることができます。生姜の使いかたがうまい。

そしてローストは蜜汁叉焼と焼鵝。どちらも適温、いい焼き加減。表面の弾力と中味のしっとりやわらかな食感。深い味わい。正にこういうのを食べに来たわけです。

最後にデザートは楊枝甘露。ポメロの味わいが爽やかな、定番なれどほっとする逸品。


さて、サービスは、正直むらがあります。デザート来るのかなり遅かったし。
というか、我々は基本ほっとかれました。ベテランの店員さんたちは、常連の家族たちからお年玉（利是）をもらったり、コスプレの関羽様と客を引きあわせ、写真を撮ったりで大忙し。

ま、こういうのをどう評価するのかは人によって違うでしょう。でも、私たちにはこれでいいのです。だって我々所詮よそ者だもん。ある意味こういう景色を見学に来たようなもんですし。

一流ホテルレストランのスタンダードは、ここにはなくて、そういうのを求める方は違うとこに行くべきなんでしょう。誤解を恐れずにいえば、ここはホテルレストランではなくて、ホテルに間借りしている街場の食肆だと思うべきなのかもしれません。（このホテルの宿泊客が、このレストランでのサービスに不満を持って、それをフロントにぶつけても、肩をすくめられるだけかもしれない）客層はそれほど大金持ちという感じではなくて、香港の中の上くらいの方々が愛してやまないところ。ホテルダイニングにありがちな白人客に媚びを売るようなこともありません。

考えてみれば、もし今回が普通の日だったら、うまいけど相変わらずサービスとろい店だなあ、で終わっていたかもしれません。春節という特別な時期だったからこそ、この店の良さ、持ち味がクローズアップされたのではないか、そう思う訳です。いくつか今回慶祝モードのレストランにて食事しましたけど、ここほどお客さんたちの笑顔があふれている場所はありませんでした。


地元のガイドブックでは、この店のサービスについて、
「跟大部分中餐廳一樣，氣氛有時候會有點紛亂，但侍應總是臉帶笑容的。」
ま、（香港の）中華料理屋ってのはどこもそうだけど、時には混乱した雰囲気になるよね。でもまあウェイターたちは皆笑顔を絶やさないし、いいんじゃない？
わかってらっしゃる。

厨房の実力、気魄は一流。そして旧正月だからって妙に高いものばかり並べたコース構成にしない誠実さ。これをもって、我々は大いに多とします。


Hong Kong Tatler 　Best Restaurants Hong Kong and Macau Edition 2017 p.133
Time Out Hong Kong Jan.18-Feb.7, 2017 p.23