マカオのロビュション : Robuchon au Dome

マカオの「ホテル・グランドリスボア」の最上階にあるロビュションの店。
昨年、ミシュランの３つ星を取り戻したという。

私がこのレストランを訪れるのは３度目。
初めて訪れたのは、まだ隣の「ホテルリスボア」にあった「ロビュション・ア・ガレラ」の時代で、その時は正直とても美味しいと思った。

だが、ここに移転して４年ほど前に来た時も、３つ星に復帰したという今回も、料理の見た目はともかく、私には味の濃淡が強すぎて美味しいとは思えなかった。
また、サービスも大人しすぎて居心地は悪くないものの、華やいだ雰囲気は感じられなかった。

邪推かもしれないが、大陸の人々の嗜好に合わせた味と、クレームを恐れるあまり無難なサービスに終始しているのかなと思えた。

「グランドリスボア」の最上階の突端に位置するドーム状のレストランは、雰囲気は抜群に良いが、これはこれでまた「落ち着いて食事を楽しむ」という雰囲気ではないような気もするが、この個性的な雰囲気は世界広しといえどもまず見当たらない素晴らしい環境のような気もする。


今回は、マカオの仮事務所に勤務する「香港事務所」の全スタッフとの食事会。

身内の食事会なのになぜこんな贅沢をするのか？
当然の疑問だとは思うものの、昨年彼らが味わった香港での壮絶な体験と不安な気持ちと、
その後の様々な制約の中での業務の遂行を労うにはこれぐらいの慰労会は当然だと思う。
もちろん今回の費用のほとんどが私のポケットマネー・・・（涙???）

メニューはあらかじめ打ち合わせ済み。

実は私は今やこの店（恵比寿でも）の前菜のスペシャリティのひとつにもなっている「キャビア・インペリアル」が大嫌い。
嫌いというより見た目が耐えられない。

キャビアの粒々は全く問題ないのだが、その周りを取り囲む「目玉」のような粒々を見ると、悪い意味で鳥肌が立ってくる。
よくもまあこんなセンスの悪いものを出し続けているなあと呆れている。
昨年ラスベガスで訪れた時も手違いでこの料理が出てきてすべて撤去してもらったほどだ。
私が最近恵比寿に行かないのはこの料理を見たくないからといっても過言ではない（苦笑）

ということで、この日の前菜は「チーズラビオリの入ったキノコのスープ仕立て」。
フレンチらしさというよりも、いかにもアジア系の人が好みそうな一品。
でも味はしっかり洋風で親しみやすい。

付け合わせというわけでもないが、「マッシュポテト」も出してもらった。
あまり知られていないが、ロビュションが若い頃、彼の代名詞的食材だったのが「じゃがいも」。
35年余りの昔、まだ３つ星をとったばかりのパリのロビュションのレストラン「ジャマン」で食べたじゃがいも料理を、彼が亡くなった今、個人的に食べたかったのがその理由。

メインは、やはり話題になっている「AMADAI」と「牛肉のロッシーニ風」のチョイス。

「AMADAI」は、鱗の立ったそのビジュアルはややブツブツ感があって違和感はあるものの、その食感の面白さと美味しさはぜひ皆に食べてもらいたい一品だった。

「牛肉のロッシーニ風」は牛フィレ肉の上にフォアグラが乗っているパターンではなく、一つの円形状にこの二つの食材が組み合わされており、従来のものと比べると、焼き面積が少ない分、肉とフォアグラの味が繊細な形で伝わってくる。
これからの「ロッシーニ風」はこの形が主流になるような気がする。

でも、この夜主役になったのはデザートワゴン。
カラフルなデザートがこれでもかと盛られたワゴンが３台やってきた。
通常は３つをチョイスするように言われるのだが、私は前にその縛りを外してもらって「好きなだけ選んで良い」ことにしてもらったのだ。
二人の女性スタッフを中心に大いに盛り上がったのは言うまでもない。

その後ミニャルディーズと「カヌレ」の持ち帰りを用意して盛況のうちにこの日の晩餐を終えた。

料理は、やはり前回感じたようにとにかく全体的に味が濃い。
でも、今宵は皆に楽しんでもらえたことが何よりだった。

この日の食事会がどれだけ彼らの不安を和らげることができたかはわからないが、
私にとってはそんなこともあって純粋に食事を楽しむ環境になかったことが辛い評価に繋がったかもしれない事（食いしんぼうの私に限ってそんなことはないと思うが）はご承知おきいただければ幸いです。

帰り際、あるテーブルで大声でクレームをつけている中国系の人たちがいた。
メートルらしき人がその状況を収めるではなく反論しているように見えたのが印象的だった。


余談ですが、リアルな現在・・・、

マカオには相変わらず中国本土から多数の観光客が来ている。
今回のコロナウイルスの件も看過できない状況になり、
先週、マカオと上海の日本人・タイ人・米国人スタッフをそれぞれ帰国させる措置をとった。
（現地採用なので本来その必要はないのかもしれないのだが・・・）

マカオは香港や珠海（中国本土）と橋によって陸続きになったこともあって、
現在でも何の規制のないマカオは中国本土からの人が集中している場所になっている。

マカオにおける今回のウイルス騒動は、日々我々の想像以上に深刻になっているという。