ひつまぶしも美味い : 誠

マレーシアは今、２度目のLOCKDOWN。最初のそれと違い、政府の許可証等をもっていれば隣の州にも行けるし、産業で完全に稼働を止められているのは前回と異なり一部である。無論、所謂、飲み屋は昨年３月中旬以降全部CLOSEで、飲食店でも店内での飲食は禁止。持ち帰りしか出来ない。延長されて２月４日迄の予定だが、再び延長されるだろう。１日の罹患者は3,500人～4,000人と目下増加中であるが故。

この店は、とても美味い鰻を供する店で、LOCKDOWNに入る前に、暫く食べることが出来なくなるので発令前に訪れた。
此れ迄に３度訪れているが、いずれも普通のうな重（関東風）を求めたが、今回は初めてひつまぶしを選んだ。東京の銀座の商業ビルの高層階の店で食べて以来になる。となると、もう５年は経過しているか・・・

そのまま食べて、次に薬味を乗せて、最後に出汁で食べるという３つの食べ方を楽しめるが、個人的には最後の出汁を掛けて食べるのが一番美味しい気がする。無論、最初に蒸さない香ばしい鰻そのものを食べるも良しだが、ボリュームのある鰻を出汁に浸して余計な油を落とし、さらさらと食べることが出来るのも良い。甘辛いタレの言い様によってはくどい部分がなくなり、ヘルシーな感じもする。出汁はあっさりとしたもので鰻の味わいを損ねない良い加減。

5,000円もするので、日本でうな重を食べるよりも幾分高いが、日本より鰻を空輸して供するので仕方があるまい。仕事仕事で、ましてやLOCKDOWN。そうでなくとも行動範囲は極めて狭く、食品やほんの少しの日常生活必需品を求める以外に金を使うことはない。嗜好品としての酒類も週に２度程で、ウィスキーも高いのひと月に一本求めるかどうかである。従って金を遣うことが殆どないので、偶には良いのである。

次はいつになるかは未定だが、今の調子だと結構先になる可能性が高いだろう。

日本に昨年の年末から帰ることが出来ない。無論、COVID-19のせいで。一時は早々にLOCKDOWNによりほぼ封じ込めに成功したと思えたマレーシアは、今、最悪で昨日の新たな罹患者は1,200名を超え、過去で一番多い、マハティール元首相が国王に非常事態宣言を出す様話をしているが、LOCKDOWNは勘弁願いたい。忽ち食料に窮することになる。
それ以外では、そんなに苦痛ではないが・・・

そういう状態なので、先ず、年内の帰国は叶わずになるだろう。年に最低限一度くらいは年老いた両親の顔を見ることも大切なのだが’・・・
故に、日本に戻ればあれこれ食べたいと思うものもままならず。でも、今回、二度目の訪問となったこの店で鰻は足りる。かなり久し振りで１年近くは経過している。本当に久しぶりの鰻である。

最初に、刺身の３種に加え、烏賊を焼いたもの、茄子の炊いたもの等を食べてビールを二本。此処では瓶ビールをグラスに注ぐ。缶よりも瓶の方が美味いと常に思っているが、思い込みだろう。雰囲気に左右されているのだろう。
その後、玉乃光の純米大吟醸の４合を頼み、うな重と一緒に食べた。伏見の銘酒　玉乃光はあれこれ飲んできた日本酒の中でも大好きで、好きな日本酒の銘柄を幾つか挙げよと言われれば迷うことなくそうする、京都の至宝である。一般に伏見の女酒というが、確かに角の無い口中で転がる様に喉元を過ぎ胃の腑に落ちる滑らかな酒である。

鰻は、此処では蒸して食べる関東風か、名古屋のひつまぶしかが選べるが、今回は関東風。約日本円で5,000円程。日本でもうな重としては高い方である。日本より鰻を空輸しているのでそうなるのだろう。致し方ない。
タレの加減が良い。あまり甘すぎるのも困りものだが、醤油なりの味が勝って辛いと感じる様では駄目で、この加減が合うものが存外少ない気もするが、ここは好みに合っている。
もう、少し、肉厚なものを望みたいがここはマレーシア。贅沢に過ぎるだろう。ふうわりと蒸されて焼き具合も良い。

久し振りに、食べたこともあり至極満足した。ほんの少し余った玉乃光は家に持ち帰り、家で寛いだ後寝る前に飲んだ。
日本酒も久し振りである。日本酒の適量は３合程。４合瓶を一人で飲むことは問題無いが時間を掛けてゆっくり飲まないと大概かなり眠くなる。３合が頃合いだ。

マレーシアに赴任して、種々内部のあれこれで顧客の接待も未だ一度きり。別に商社だから毎夜毎夜そういうことに身をやつすこともないのだが、現時点で相当妙なことで異常だと思っている。個人の力量を逸脱した其れで、それは他もそうだし、当方の処理能力が他に比して劣悪だと言うことならば詮無いことなのだが・・・

この日はこれ迄のその唯一。この際は顧客が鰻が好物であるとの由とのことで訪問。その後の訪問は現時点で無し。鰻は好物でこの店は日本から活鰻を輸入と聞いた。それを裁いて供する店。カタカナで書くと妙だが「デサスリハタマス」という場所だったかにある店。間違っているかも知れない。勿論、初めての客人との会食故、全ての料理の写真を撮ること能わずだが、最後に二枚収めた。

うむ、品のある料理を供す店で、その分、費用も嵩む様だ。ただ、此処も蒸さずに焼くのみ。既にあれこれ食べたので、小さめの其れを頼んだので価格は半分程度だったが、全部合わせるとそれなりで日本で食べるよりは高かったかも知れぬ。
でも、何だかな。「鰻」を食べる時は、「鰻」のみ充分に味わうのが一番というのが個人的な思いである。

でも、考えれば異国の其れ、バングラデシュの時代には「鰻」だけではないが、多くを端から諦めて放棄して生活していたことに考えればありがたいとも言える訳だ。人間は凡そどんな環境にでもある程度馴染むのだ。そうでなければ直ぐに気狂いになるだろう。食えるだけありがたいのである。