海が遠くなってしまったラササヤンのロビー・ラウンジ : Rasa Wing Lounge

そもそも今回のマレーシアは１５年間勤めてくれた私のメイド、テレサ
と彼女の母親、夫、子供達に会いたくて〜♡ が主たる目的で、きっかけ
はクアラルンプール在住の友人バーバラが夫マイケルと昨年４月に初来
日→ 東京で再会したことにありました。どこに泊まったらよいかしら
と聞かれて六本木の ANAインターコンチネンタルをお薦めして３６Fの
ピエール・ガニェールでディナーをしたり、鮨ででから六本木 金魚へ
お連れして六本木ナイトを満喫したり〜♬ で、KL にはいつ来るの？と
いう流れ・・ペナンでテレサに会えたら KL にも行きたいけどテレサ抜
きのマレーシアは私には考えられないのよ・・で年が明け、今年の６月
思い切ってラササヤンの人事部に電話→一部始終を説明・相談したこと
が功を奏し２週間後テレサの息子デニスからメールが来て１０年振りの
ペナン再訪となりました。優先順位はテレサが一位でもペナンには友人
が大勢いて全員とゆっくり会うとなると一週間は必要〜如何に限られた
時間を有効に使えるかが私の最大の課題でしたが空港に迎えに来てくれ
たタン会計士が一日専属ドライバーを名乗り出てくれて先ず向かったの
が思い出深い海辺のホテル、マレー語でフィーリング・オブ・ラブ〜♬
ラサ・サヤンでした。

ラサ・サヤンのロビー・ラウンジを再会の場所に選んだのはペナンの家
の改装工事期間中〜現場監督、家具の購入、インテリア再構築、使用人
候補との面接、採用、雇用契約、管理会社との諸々の仕事をこなす為、
日本とマレーシアを頻繁に往復していた１９８９年から９０年にかけて
此処が私のペナンの定宿でウエルカム・ホーム・クイーン・オブ・ラサ
と書かれたケーキがフルーツと一緒に必ずお部屋に入るようになり私の
人生の大切な何ページかが綴られた思い出深いラサのラウンジ・・♡
２００４年１２月に大津波がペナンまで到達しプールとお庭が全壊する
３ヶ月前に売買契約にサインしたのも此のロビーでした。当時は家があ
ったタンジュン・ブンガからバトゥ・フェリンギまで信号はひとつもな
く山から猿が下りて来たりビーチにはニワトリが出て来て牛の行列が通
ればクルマは徐行するという時代〜家のお庭にもゴルフ場にもイグアナ
が出没しましたし、或る晩など余りにも庭で鳴くカエルが煩くて２F の
部屋から様子を窺うとライトアップされたプールを大きなカエルがスイ
ス〜イ、明日は気持ワルいからプールのメンテが来るまでプールに入る
のはやめようと決めた翌朝〜幸い、お泊まりのゲストはいらっしゃいま
せんでしたが夜中にカエルが大量の卵を産んでいてメンテの日まで待っ
ていたら１００万匹のオタマジャクシが出てくるのではないかと恐ろし
くなった私はテレサの夫（３人の息子は８歳・７歳・３歳で何もできず）
ジョンソンにどうにかしてと懇願→ところがプロパーな道具がないとム
リと尻込みするばかり〜困り果ててラサのプール・メンテ担当者に相談、
テレサに５寝室の各ベッド・メーキングを指導して戴いたのもラサの客
室係で宿泊以外でも事あるごとにお世話になりましたが・・

特に気に入っていたお部屋はガーデン・ウイングにあったテラス付きの
セミ・スイートでお部屋から直接ビーチに出られて２F からはマラッカ
海峡に続く海を一望〜♬ サンセットの美しさは筆舌に尽くし難く、ビ
ーチから観光客が引き上げると波打ち際を馬で走ったり海沿いのカフェ
に馬で乗付けたり（乗馬は家が完成してからも何年か続けました）バト
ゥ・フェリンギのビーチ沿いに並ぶホテルの中でも歴史と格式を誇る老
舗としての質の高いサービスとホスピタリティーには内外の定評があり
宿泊客の８０％ が白人でした。変わっていないわけはないと思っては
おりましたが面影が残っていたのはアネックス棟裏のパーキングとマレ
ー様式をデザインに取り入れた屋根だけで、ここまで変わってしまうと
全く別のホテルでゆったりと風が流れたエアリーなロビー・ラウンジは
直線に囲われたライブラリー風で窓越しにテラスが見えますがその向こ
うに広がるのは施設の屋根ばかりで海までのアプローチは完全に断たれ
プールサイドにあった樹齢１００年の大木も、その木陰にあった茅葺き
のテピラウもビーチに沿って自然に延びていた遊歩道もなくなって砂浜
まで人工的に整備された空間が支配していました。ラウンジにはクラシ
ックなマレー紋様のピューターなどが置かれていますが温かみを感じる
ことはなく接客・サービスにも全くホスピタリティーは感じられず・・
私が知るラサ・サヤンではありませんでした。

グラスのスパークリングはシャンドン・ブリュ１種類で！！６８リンギ
（３pm から４pm までの一時間という理解に苦しむハイ・ティーが６
４リンギ、マレーシアの通貨１リンギは日本円で約３０円）シンガポー
ルのタイガー２８リンギ、テレサ一家がオーダーしたアイス・ティーや
コーヒーは１４リンギというプライシング〜シャンドン・ブリュの６８
リンギは唐突！いかがなものかと思いますがハイ・ティー１時間！！と
いうところに新生ラササヤンの全てが凝縮されているような気がしてな
りませんでした。電話での問い合わせのフォローしてくださった人事部
のマネージャーのお陰でテレサと会えて〜もしかしたら？と思っていた
テレサの母レジーナも元気で私達は涙の再会を果たし、学校の宿題を一
緒にしたり英語を教えたデニスも立派に成人し、幸い今回のラウンジの
サービスや CP が致命的なダメージとはなりませんでしたが私の心の中
でラササヤン・アズ・ナンバー・ワンが崩れてしまったことが悲しくて
なりませんでした。

テレサとジョンソンとリゾート・ホテルが並ぶ美しい砂浜を歩きながら
毎週日曜日の朝は私の朝食をテーブルに置いて一家揃って晴れ着で教会
（英語ができることが採用の第一条件でしたがテレサは日常会話の初歩
がやっとで昔は携帯電話などありませんから私の外出中に電話があった
ら誰々さんから何時にお電話ありと書くようにメモ用紙を電話の横に置
いておいたのですが何日たってもメモは白紙〜或る日、本雇いになるま
で読み書きができないことは隠しておきたかったと告白→ 私達は ’同じ
神様’ だから〜♡ で採用を決定）私もクリスマスとイースターは彼らと
一緒にプラウ・ティクスのカトリック教会に行きました。それまでは川
で洗濯をしていたテレサが洗濯機を見た時の喜びようと言ったらありま
せんでしたネ！ 嬉々として一日に何回も洗濯機を回して掃除機も！も
ちろん初めてで或る日両方とも壊れたと言うのでヤオハンのベスト電気
に持って行ったらマダム、これは直りませんよ〜モーターが焼けちゃっ
てますから！ オーヴン・トースターもすぐに壊れてフツーにパンを焼
くだけなら３ヶ月で壊れるわけなどなく問いただすとバカアヤム、鶏を
一羽焼いたと言うのでした。電気釜もねだられましたが ”テレサが大鍋
で炊くご飯でいただくカレーがイチバン” と言って逃げ切りました。最
終的に洗濯機は３台買いましたが掃除機は原点に戻ってサプサプ（箒で
掃く）で通しました。信仰心の篤いテレサは初孫の洗礼式の話を涙なが
らにしてくれて〜白黒TVが普及する前にカラーTV、公衆電話ができる
前にノキアとサムスンの携帯電話、今回は島民の９０％ が What's App
を享受しているかに見える、かつて ’東洋の真珠’ と呼ばれたペナン島が
これからも争いのない平和な島であり続けてほしいと心から願いながら
ラサのロビー・ラウンジへと続く石の階段を一段ずつ上がりました。