ロースを衣で巻いただけで美味さ倍増

　池袋で大変CPの良いカツを食べた。駅東口を出て、雑司が谷霊園に向かう東通りを数分歩き、左折したところにある「君に揚げる」という専門店だ。群馬産の豚肉のアンテナショップで、熟成豚らしい。
　能書きはどうでもよくて、とにかくカツを中心にした定食が終日850円である。注文したのはロースカツ200gだったが、これには久々の感動を覚えた。まず、肉が厚切りで食べ応えがある。一番厚い真ん中の切り身は、中がレアである。熟成しているためか、ジューシーで味も濃い。もちろん、筋など無い。揚げ方も、有名店によくある低温で揚げたパン粉が白く柔らかなものと異なりカラッと仕上がっている。
　これをサポートする副菜も手抜きがなく、豚汁は具だくさんの野菜入り、ピクルスも自家製だろう、湯通しした豚肉にゴマだれがかかった胡麻豆腐、大根おろしは、どれも美味しい。野菜は、アンテナショップなので群馬県産なのかな。また、キャベツかライスが大盛りになるそうで、隣客のキャベツはバカ盛りだった。最後に、口直しとしてコーヒーが飲めるとのことで、食べている途中で紙コップが配られた。
　とにかく、カウンター席のみということしかケチのつけようが無く、これは誰にでもおススメできる店だ。店名もヘンか…

　大塚にある「三節」でロースかつ定食1,050円を食べた。JRの駅を出て、巣鴨方向に数分歩いたところにある小さな店だ。ランチタイムにお得な値段で食べることができるが、メニューを見ると上ロースが2,300円と値の張るモノもあるようである。
　注文して待っていると、お新香と大根おろしが先に出てくる。お新香はカブとキュウリで塩味が絶妙である。そうこうしているうちにカツが出てきたが、これが何とも旨いカツである。最近のロースは歯応えが柔らかいものが増えているが、ここのは歯応えがしっかりとしたものである。しっかりと噛む必要があり、そうすることで肉の味がじゅわっとにじみ出てくる。私はこういう肉が好きなのだが、柔らかいものしか食べずに顎が退化した歴代の徳川将軍のような我が子供達は苦手かもしれない。厚みが1㎝位にすることで価格を抑えているようだが、脂身まで美味な肉は通常時間帯に出すロースかつ1,700円だと厚みもあってさぞ美味い事だろう。
　変わっていたのは、赤出汁のワカメと豆腐の味噌汁の出し方である。食べているとお替りを頼んでいないのに別椀で味噌汁が出てきた。好物の赤出汁に加え、肉厚のワカメがこれまたよかった。隣の客が、最初にロースカツの表面に辛子を塗りたくり、その上からソースをかけて食べるのもなんだか変わっていたな。

　武蔵関の南口商店街を西に歩くと「味よし」という豚カツ屋がある。商店街の外れにある昭和のたたずまいの店舗である。店内に入ると一人客はカウンターに誘導され、土曜日の昼の時間に先客が4人いた。
　注文したのはロースかつ850円だったが、日替わりランチは650円。今日はバラかつというものだったが、何かわからなかったのでやめておいた。メニューを見ると、ニンニクを挟んだ挟みかつという魅力的なものもあった。
　カツは柔らかすぎず硬過ぎず丁度良い歯応えである。特に衣が絶品で、サクサクというよりパン粉と肉の間のつなぎがカリッとしていて美味しい。ソースも自家製のようで、ドロッとした豚カツに合うものである。
　また、付け合わせに、大根なますと擦り大根が付いているので口直しに良い。この擦り大根はピンク色に着色され、ラー油のような味が微かにしたが何なのだろう。味噌汁は、特徴のない豆腐入りであったが、味付けは悪くない。
　商店街の外れにあったので見つけ難かったが、まさに隠れた名店といえるものであった。

　東村山にある「ひの食堂」でカツを食べた。西武線の駅を東側に出て東村山高校に行く途中にある。建物や看板が朽ち果てた感じで、営業しているのかと心配してしまう店である。以前に市内に住んでいたので、店の向かいの歯医者などに行ったことはあるが、この店は初めてである。今日もどうしようかと思ってしまったが、たまたま先に入店する人がいたので安心して後に続いた。中に入ると意外と広くて、カウンター席と座敷がある。
　注文したカツには2種類あり、安いものだとんなものが出てくるか分からなかったので、上ロース定食950円にした。出てきたカツは大きくてまともな体裁である。やや薄目にカットされているが、歯ごたえしっかり傾向の私の好きなタイプである。脂身の少なく、結構なボリュームである。メニューに一品付きとあったが、豚肉の野菜炒めの小鉢が付いており、これも美味しかったので炒め物系の定食もイケるのだろう。更に、吸い物としてシジミ汁がついており、オルニチンを摂取することもできた。
　店の見た目以外に残念なところと言えば、定食屋だったのでソースが中農ソースであったこと。意外に感じたことは、店舗の中でトイレに行ったのだが、工事現場にあるような仮設トイレがうまい具合に設置されていたことであろうか。この辺は、店の古さを実感でき、穴場的な店に来たなと思ってしまった。入るのに勇気がいる店だが、味は確かである。

　高田馬場駅から富士大学に行く商店街の一角にある。店構えが立派というか普通のとんかつ屋に見えるが、ロースが690円との格安看板が出ていたので目を引いた。店に入るとカウンター席を勧められたが、広々していて寛げる。メニューはカツ（ヒレ、ロース）とアジフライ、イカフライと少ないが、無駄を省くための工夫だろうか。ロースは上ロースもあったが、690円で決まりだろう。アジフライが200円、イカフライが150円であったので、どちらか追加したかったが、量が分からないのでやめておいた。
　カツは、脂身がやや多いものの嫌な脂ではない。肉も過度に柔らかくなくふんわりしていて筋も無い。パン粉は粗いものを使っていてサクサクしている。肉の大きさも普通の店で千円ちょっと出して食べるようなボリュームがあり、御飯も大盛りだったので食べきれずに3口くらい残してしまった。汁ものは味噌汁で具材が見えなかったので大したことないのかと思ったが、飲んでみるとシジミ汁で底の結構沈んでいた。豚汁などが多く出される中で、肝臓まで心配してくれているのかと思うと感心する。辛子は予め皿に乗せられていたが、カツにたっぷり付ける私で丁度良い量だった。高田馬場は学生街ということで昔から安い店が多いが、ここは「こんな値段でやっていけると？」という雰囲気なので満足度も高いのでCPは良いものだった。

　大塚にある「とんかつ逸業」でロースカツランチ1100円を食べた。JRの北口を出て線路沿いに左に1分くらい。怪しい店の前で呼び込みのおじさんが立っているなど、周囲は立ち寄りがたい雰囲気があり店構えも一杯飲み屋のようだ。中に入ると普通に食事をする人がいてホッとするのが妙である。
　昼の時間帯に行ったのでランチメニューが用意されていた。通常の時間帯よりも安く食べることができるのは有り難い。定食が出てくると、立派なカツであることに驚く。厚みがあり、衣もカラッと揚がっていてカリカリっとしていて好みのタイプだ。そして肉質も適度な硬さがあるため、噛むと肉を食べているとの実感が沸いてくる。最近のロースは、端の方に脂身が無いものが多いが、しっかりと脂身が付いており、この脂身が大変美味しい。
　汁物は、アサリの味噌汁でネギが入るのみのシンプルなものだが、これも味付けが良かった。繁盛店だと千五百円くらいのランチになってしまうが、引けを取らない味を安くいただける穴場の店ではないか。

　三鷹の「福家」でカツカレー８００円を食べた。三鷹駅南口を降りて商店街の入り口にある店で、決して新しくはないが引っ切り無しに客が入る繁盛店だ。基本的にはとんかつ屋なのだが、カツカレーが美味そうだったので注文。
　カウンター席に座ると、目の前が厨房で丁寧にとんかつを調理しているのが見える。ほどなくしてカツカレーが出てきたが、一口食べるとカレーの辛さがあまりしなくてデミグラスソースのような味がした。その後食べ進むうちにカレーの辛さも追いついてきてカツカレーを堪能できた。私は、カツもカレーも好きなのだが、普通はカツカレーを頼まない。カツにカレーがかかると衣がフニャッとしてしまうし、カレーの辛さで肉の味がしなくなるためだ。しかし、この店のカツカレーは辛さと味が絶妙で、両方を楽しめた。豚カツ定食を食べていたら評価はどうだったのだろうか？カツは厚みがある方ではなかったが、肉も筋が無く食べやすかったのでソースで食べても美味しかったのだろうと思う。

　古いビルの地階に、センスの良いとんかつ屋があるとは思いもよらなかった。高田馬場駅から戸山公園方向に伸びる道路の沿道に「成蔵」はあり、地階の階段から歩道まで行列が続いている光景を何度か見かけたことがある。これまでは、旨い店なのだろうが、狭くて暗い店だろうと思って見過ごしていたが、気になったので行ってみた。18時頃に雨が降るなか行ってみると、階段の椅子に先客が座っていた。並んでほどなく店員さんがやってきて、メニューを見せながら何品か売り切れになっていると言う。私が狙っていたロース定食1420円はあるというので注文。更に数分待ってから店内に案内されると、手際よくすぐに定食が運ばれてきた。
　店は白い壁で明るくイタリア料理の店でもできそうな雰囲気。店員さんの数が店の規模を考えると多いようだったが、バイトではなく若手料理人が修行しているようにも見えた。肝心の定食も、ポテトサラダの盛り付け方さえお洒落に見えた。カツは、低温でじっくり揚げてあるようできつね色よりも白く、パン粉が粗びきでサクサクしているのが良い。そして何よりもカツの歯応えが自分好みで、しっかり噛む必要がある弾力のある肉質であること。最近は箸で切れるなどのシロモノが幅を利かせているが、ハンバーグやメンチカツじゃないのだから奥歯で食感を楽しみたい。その一方で、生肉は得意でないというヘタレなところもあるため、なかがレアというのは好きではなく、その点でもしっかりと火が通っていた。
　カツは千切りキャベツの横に鎮座していたが、箸休めの漬物がたくあんと塩モミキャベツというキャベツオンパレードのくどさに苦笑してしまった。インゲンのマヨネーズ胡麻和えも良かったし、豚汁も野菜たっぷり豚肉も臭くなく白みそが少し入ったような合わせみそ味に手抜き感が無かった。
　高田馬場はさすが学生街ということで安くて美味しい店が多く、「おはな」の牛カツも良かったが、ここの豚カツを食べてみるとカツの王様は豚だなとしみじみ思った。

　御徒町にある「とんかつ山家」に行った。金曜日の開店時間11時に合わせて行ってみると、店の前に7名並んでいた。店内はカウンター15席との情報を得ていたので、待たずに食事ができることが分かり一安心。開店時間になると先頭から順番に店内に入り、奥に細長い席に間隔を開けずに座る。席に着いてからの注文になるが、ロースかつ定食750円にアジフライ190円を付ける客がいたので、マネをしてみた。順番に従って調理が進み、頃合いを見てお新香、ライス、シジミ汁が出てくる。仲居さんが、ビールの売り子のようにお茶のお替りを聞いて回る。
　ロースかつは、中がほんのりレアで歯応えの有る肉質である。厚みもあるので力強く噛みしめるが、それに応えるかのように肉汁がじゅわっと出てくる。このカツは最近流行の柔らかカツよりも数倍美味い。
　アジフライは、ロースト傾向が異なり、フワッとした身で軽い歯応え。ほぐし身を衣で挟んだものではないのに、普段食べるものと弾力が違うなー。これは注文しておいてよかった。
　シジミ汁も付いて750円というのは大分安いと思う。食べている間に席の後ろの壁に設置してある席にも待ち客がびっしり。先客が食べ終え席を立つと、背後の客が入れ代わりで席に着く。なんだが、ディズニーの体験アトラクションに何十分も並んで待ち、順番が来ると3分位楽しんで出口に向かうといった行動のようでもあり可笑しかった。安くても味は確かというカツ屋さんでは高田馬場にも「いちよし」があるが、チェーン店並みの値段で満足感が高い店には頑張ってもらいたい。

　蒲田にある「丸一」でロースかつ1,200円を食べた。環八からJR蒲田駅に向かう道、オリンピックの近くにある。開店時間11時の10分くらい前に行くと10人くらい並んでいた。サイクリングしながら来たのでバイクを止めるところが無く、オリンピックの前に駐輪して戻ってみると、55分には客を入れていて店前には4人並んでいた。店内はカウンター席のみのL字型で、一番客が食べ終わるとお新香とお茶が置かれて招き入れられる。
　ロースは厚みが2㎝位あり、噛みごたえのある肉質である。このような迫力のあるカツは久しぶりであり、流行の軟弱な柔らかカツよりも数倍美味い。ソースは専用ソースなのだが、豚カツソースの味はするがウスターのようなサラサラ感。
　豚汁が付くが、肉はクズではなく、結構厚く切られたしっかりとしたもので、ここでも手抜きはない。
　強いて惜しい点を見つけるとすれば、L字カウンターの角に座ってしまったため、周りの客以上に狭かったことか。平日金曜日の11時から混んでいるのも分かるような美味しい店であった。