【南紀】美食と美湯・朝食自慢のかけ流し温泉旅館【和歌山】

出典:kurodaさん

【南紀】美食と美湯・朝食自慢のかけ流し温泉旅館【和歌山】

日本に数多ある温泉旅館。そんな中、泉質とともにお料理も上質な温泉旅館は限られます。その双方を兼ね備えた旅館は、その宿泊料金の多寡にかかわらず、実に贅沢な旅館といえます。路線バスでの温泉巡りを実践する「バスde温泉」主宰・kurodaが訪れた、朝食が美味しい和歌山・南紀の温泉旅館をまとめてみました。

記事作成日:2023/04/21

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このまとめ記事は食べログレビュアーによる148の口コミを参考にまとめました。

山海の食材と温泉に恵まれた南紀

 日本最大の半島である紀伊半島の南西側に位置する和歌山県は、古くから「木の国」と謳われたほど山林が多く、紀伊水道や熊野灘を挟んで変化に富んだ海岸線が続いている自然に恵まれた地域です。そのため、ミカン、ウメ、モモなどの果樹栽培が盛んであるいっぽう、温暖な黒潮が豊かな海の恵みも与えてくれます。
 この和歌山・南紀には古より湯治客を集めてきた古湯が多数存在し、その中には日本書紀や風土記などの歴史書にも記されるなど、優れた泉質を持つ由緒深い温泉が多くあります。
 西日本を中心に路線バスでの温泉巡りを実践する「バスde温泉」主宰・kurodaが訪れた、朝食が美味しい和歌山・南紀の温泉旅館をまとめてみました。美食と美湯を堪能してみませんか。

【南紀勝浦温泉】万清楼

万清楼

 南紀勝浦温泉の開湯は1800年代半ば。源泉の数は優に100を超え、各々の旅館が専用の源泉を持っています。
 大正時代に紀州徳川家15代当主である徳川頼倫が洞窟の中にある温泉を「帰るのを忘れるほどである」と賞賛したのが、ホテル浦島にある「忘帰洞」で、勝浦温泉のシンボルのひとつとなっています。

 「万清楼」は、JRきのくに線・紀伊勝浦駅から歩いて5分ほど。紀の松島めぐりの観光船や、ホテル浦島・ホテル中の島に宿泊客を送り届ける送迎船が発着する勝浦観光桟橋の目の前にある温泉旅館です。

万清楼

 大浴場「千代の湯」は1階にあり、男湯と女湯ともに内湯と露天風呂を備えています。お湯は湯の花が舞う少し白濁したお湯で、源泉は「勝美湯」。もちろん源泉掛け流しです。
 泉質は湧出温度が42.5℃の含硫黄ナトリウムカルシウム塩化物温泉で、浸かってみると実に柔らかい肌触り。匂いは希薄だがほんの少し塩味があります。

万清楼

 勝浦温泉には様々な泉質の源泉があり、それぞれ特徴的なんだが、ここのお湯は白く細かい湯の花の加減で、外の光を浴びて薄くブルーに輝く、特に美しいお湯ですね。

万清楼

 朝食はお食事処「老松」に用意されます。席に着くと仲居さんが温かい料理を持ってくるとともに、コンロに火を点けました。
 温かい料理は出汁巻き玉子と、鶏肉団子と豆腐の煮たものです。テーブルにはあらかじめ小鉢料理や陶板焼コンロ、小さい羽釜がセットされています。

万清楼

 陶板焼ではみりん干を焼いていきます。味はやや濃いめだが、香ばしくていいですね。水物のパイナップルは甘くてジューシーです。

万清楼

 何よりうれしいのは食事時間に合わせて炊かれた熱々の羽釜ご飯です。ふっくら炊かれたご飯は甘いですね。自家製のお漬物やアオサの佃煮とともに美味しくいただけます。

【南紀白浜温泉】南紀白浜 湯処 むろべ

南紀白浜 湯処 むろべ

 道後温泉、有馬温泉とともに日本三大古湯の一つに数えられている南紀白浜温泉は、万葉の時代から天智天皇や斉明天皇など宮人も訪れ愛されてきました。
 戦後まもなくは、和歌山県南部が新婚旅行スポットとなったことで注目を浴び、また京阪神の奥座敷として団体観光客向けの歓楽温泉として発展。その後、南紀白浜アドベンチャーワールドの開園に伴い、家族向けのレジャー温泉地へと変化を遂げています。

 「南紀白浜湯処むろべ」は、JRきのくに線・白浜駅から明光バスで10分ほど、湯崎BSを降り、海岸とは反対側の細い道からひたすら坂道を上ったところところにある温泉旅館です。

南紀白浜 湯処 むろべ

 大浴場は2階にあり、男湯と女湯ともに内湯と露天風呂、サウナを備えるとともに、共用の休憩コーナーが設けられています。
 温泉はこの近くに源泉がある「甘露の湯」で、内湯は掛け流し、露天は循環併用とのこと。

南紀白浜 湯処 むろべ

 お湯は湯の花が舞う澄明なお湯で、ほんの少し匂いがあります。泉質は湧出温度が85.1℃のナトリウム・炭酸水素塩・塩化物泉で、浸かってみると実に柔らかい肌触り。
 夜中でも入浴可能なのもいいですね。

南紀白浜 湯処 むろべ

 朝食はお食事処「和心味(なごみ)」に用意されます。
 あらかじめ大多数の料理がセットされていて、中央の箱の中には「田辺産釜揚げしらす」「金山寺味噌」「鮪の時雨煮」「梅干」といった和歌山の名産のほか、温泉たまごや昆布などが並んでいます。

南紀白浜 湯処 むろべ

 平皿には5種の野菜の彩りサラダ。左右には固形燃料の焜炉があり、一方には和歌山産干物三種、もう一方は自家製おぼろ豆腐がセットされいます。

南紀白浜 湯処 むろべ

 田辺市伏菟野産木耳のお刺身はプルプルで、山葵醤油と抜群の相性を示しています。干物は魚種不明のみりん干と、キビナゴかな。香ばしくていいですね。おぼろ豆腐はポン酢とともにいただくが、熱々なので真冬にはうれしい。
 何よりうれしいのはサービスコーナーに用意されている紀州茶粥。熱々のお粥と梅干は鉄板の組み合わせです。

【椿温泉】若竹

若竹 - 民宿外観

 椿温泉は小規模の温泉旅館が数軒あるだけで、歓楽街らしきものが一切存在しないひっそりとした温泉ながら、紀州藩の地誌『紀伊続風土記』(天保10年)に名湯として紹介されているぐらいの歴史を持つ名泉です。
 バブル期には巨大なリゾートマンションが次々と建設されるなど、投機の対象とされて一時的に賑わいもしたが、今はその片鱗も見せていません。

 白浜駅前から明光バス・日置行きに乗車し、海沿いを走ること20分足らず。椿温泉BSのすぐ近くにある料理民宿です。
 建物は2011年に全面リニューアルされた2階建てで、客室は2階。窓からは巨大リゾートマンションに邪魔されながらも多少は海が望めます。

若竹

 温泉は1階で、浴場の扉を開けるとプーンと硫黄臭が漂ってくる。この匂いだけでも興奮してきます。
 この規模の宿にしては浴槽も大きめで、椿温泉特有のぬるぬるっとしたアルカリ性・単純硫黄泉が満たされていています。湧出温度が低いため加温はされているが、この特徴的な肌触りがなんとも心地よい。

若竹

 湯口から常に温泉が出て いるのではなく、必要に応じで蛇口をひねって追い湯する形なので、厳密には掛け流しとは言えないが、加水も塩素投入もなく、オーバーフローは捨てられるので、掛け流しに準じています。泉質上にも衛生上にも影響ないでしょう。
 なんといってもこのぬるぬるの浴感が他では味わえない独特なもので、これは大変貴重です。pH9.9という強アルカリの成せる業なんでしょうね。

若竹

 食事は1階の海鮮居酒屋でいただくことになります。
 秋刀魚の干物、シラスおろし、サラダ、納豆、香の物、お味噌汁、そして炊きたてのご飯です。

若竹

 干物は焼き立てで、骨までカリッといただけます。香の物にはもちろん梅干しも…和歌山では必須ですね。
 これだけでも充分満足なのに、後からほかほかふわふわの出汁巻きがやってきました。この優しい味は朝には嬉しい。

【夏山温泉】もみじや旅館

もみじや旅館

 和歌山県東牟婁郡太地町。ここは昔から捕鯨で全国的に知られた町であり、日本の古式捕鯨発祥の地といわれています。この町の大部分が熊野灘に突き出た二股の崎に位置しており、主要な街や公共施設が海沿いに、紀勢線の駅が根元部分に位置しています。
 この太地町の北方にして、那智勝浦町南部の湯川湾の砂浜に当たる場所に、ここだけ太地町となる飛び地の夏山地区があり、ここに豊富な湯量を誇る夏山温泉の一軒宿が佇んでいます。

 「もみじや旅館」は、飛び地となっている夏山地区の紀勢本線の線路沿いにある、木造2階建ての実にひなびた旅館です。

もみじや旅館

 浴室は実に狭小。しかし細かいタイル張りになっていて上質なレトロ感があります。そして芳しい硫黄臭が充満しています。お湯に浸かる前からうっとりしてしまう…
 3~4人が入ればいっぱいいっぱいの浴槽のこと。一人が入るといきなり大量のお湯が溢れ出て、津波となってプラスチックの洗面器を弄びます。

もみじや旅館

 温めのお湯は澄明で、少しだけぬめりが感じられます。湯口のお湯を舐めてみると少し甘い。何より特徴的なのは湯口から大量のお湯が注がれ、大量のオーバーフローが流れ去っていきます。
 その湯量と鮮度が魅力で、温泉マニアにも人気の旅館、人のいい年配のご主人や女将さんも癒されます。

もみじや旅館

 朝食は1階の食堂でいただきます。テーブルの上に最初からすべて並んでいます。朝は原価の安い素材を使っているが、それぞれが丁寧に拵えられていて好感が持てる。

もみじや旅館

 南紀ならでは、並んでいるのはほとんどが魚料理です。
 それにしてもご飯がふっくら炊けていて実においしいですね。旅館の朝食はご飯で決まると断言します。これは極上。

【川湯温泉】冨士屋

川湯温泉 冨士屋 - 旅館外観

 川湯温泉は和歌山県田辺市本宮町。熊野川の支流 、大塔川の川べりに中規模・小規模の旅館や共同浴場が軒を連ねています。
 世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に位置付けられた熊野古道一帯に位置し、熊野本宮大社や、最古の温泉のひとつの湯峰温泉にもほど近いため、熊野観光の拠点にもなっています。

 「冨士屋」は熊野本宮温泉郷・川湯温泉にある老舗の温泉旅館。ここは川湯温泉随一の伝統と格式を持つ旅館で、それが証拠に、玄関の前にバス停があり、その名称も「ふじや前」。この隣の「かめや前」とともに、老舗旅館たる証左です。

川湯温泉 冨士屋

 この旅館の特別室、「熊野モダンルーム」は3室、宿泊したのは熊野の竹をふんだんに使用したという「せきれい」のお部屋です。
 ワンルーム・50㎡ちょっとの空間に、ベッド、洗面、シャワー、トイレが配置され、広いベランダにこの部屋の白眉、部屋付きの露天風呂が備えられています。

川湯温泉 冨士屋

 ナトリウム・炭酸水素塩・塩化物泉の自家源泉を持つこの旅館では、男女の大浴場、露天浴場、貸切露天とともに、部屋の露店にも今まさに湧出したばかりの温泉が惜しげもなくかけ流されています。

川湯温泉 冨士屋

「熊野モダンルーム」の食事は専用の個室に用意されます。朝食はアジの一夜干しや温泉卵、豆腐の冷奴、野菜と揚げさんの煮物など。お味噌汁にはたっぷりの麩が浮かんでいます。さすが和歌山、梅干しは高品質です。

川湯温泉 冨士屋

地元の食材を活かした手作り感のある料理の数々、老舗旅館の矜持が感じられます。この旅館の極上の温泉と、洗練されたお料理、そしてさりげないサービス。ここでは日本が世界に誇るべき温泉文化を味わうことができると思います。

【湯の峰温泉】湯の峯荘

湯の峯荘

 湯の峰温泉は、和歌山県田辺市本宮町にあり、四村川の流れる狭い谷の両岸に十数軒の旅館が軒をならべる、静かな温泉街です。中心部にある「つぼ湯」は日本最古の共同浴場。1800年の歴史があるとされ、1日に7回湯の色が変わると言われています。
 熊野詣の湯垢離(ゆごり)場として、また、小栗判官と照手姫の伝説の舞台として知られる湯の峰温泉。ここはおそらく日本最古の温泉であるとともに、唯一の世界遺産の温泉です。

 湯の峰温泉の温泉街から少し離れた丘の上、ここに鉄筋コンクリートの建物で、湯の峰では最大の旅館、湯の峰荘があります。

湯の峯荘

 ここは小さな温泉街にしては旅館の規模が大きい部類なので、内湯も露天湯も広く設えられていて解放感がある。関西で最上級の泉質を誇る湯の峰温泉のこと、加水はあるものの掛け流しなのは当たり前です。

湯の峯荘

 大浴場とは別に貸し切り湯があり、ここでは加水なし、源泉そのままのお湯が満たされています。ここは湯の花もない、濃厚で新鮮なお湯で、湯垢離を実体験できます。
 しかし、この濃厚さ、長湯すれば湯あたりする危険があるので、注意して入浴しなければなりません。

湯の峯荘

 ここのお料理にも相当のこだわりがあるようで、豪勢な素材というわけではないが、湯の峰の濃厚な温泉水を使った手が込んだ温泉料理の数々を味わえます。
 朝食はもアジの干物に地鶏天恵卵の温泉たまご、温泉湯豆腐など。温泉蒸し野菜も美味しいですね。

湯の峯荘

 そしてなんといっても湯の峰の温泉水で炊き上げた温泉粥です。この独特の風味がクセになる。ついついおかわりを繰り返してしまいます。

※本記事は、2023/04/21に作成されています。内容、金額、メニュー等が現在と異なる場合がありますので、訪問の際は必ず事前に電話等でご確認ください。

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