美食と美湯・料理自慢のかけ流し温泉旅館(東海・北陸編)

出典:kurodaさん

美食と美湯・料理自慢のかけ流し温泉旅館(東海・北陸編)

日本に数多ある温泉旅館。そんな中、泉質とともにお料理も上質な温泉旅館は限られます。その双方を兼ね備えた旅館は、その宿泊料金の多寡にかかわらず、実に贅沢な旅館といえます。 西日本を中心に路線バスでの温泉巡りを実践する「バスde温泉」主宰・kurodaが訪れた、東海・北陸の温泉旅館をまとめてみました。

更新日:2018/11/05 (2014/11/30作成)

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このまとめ記事は食べログレビュアーによる182の口コミを参考にまとめました。

麗しいお湯と豊かな食材に恵まれた東海・北陸

黒部峡谷のような思わずため息が出てしまう美しい風景に出会える東海・北陸には、日本海・伊勢湾の海の幸、日本アルプスの山の幸に恵まれているとともに、多くの温泉から麗しいお湯が溢れています。これらの上質な温泉とともに、美食も楽しめる贅沢な旅が楽しめます。

界 加賀

界 加賀 - 外観

 山代温泉は、石川県加賀市にある温泉。山中、片山津と並ぶ加賀温泉郷のひとつです。
 1300年の歴史を誇る山代温泉では、総湯と呼ばれる共同浴場を中心に、旅館や商店が立ち並ぶ「湯の曲輪」という街並み形成され、そこに多くの文人墨客が訪れるにしたがって独自の文化を育んできた様を目の当たりにすることができます。

山代温泉(石川県加賀市)

界 加賀

 この総湯の目の前にある「界 加賀」は、経営不振に陥ったリゾート施設や旅館の再生で知られる星野リゾートが運営する宿で、以前は「白銀屋」という屋号で商っていた創業1624年というかなりの老舗で、加賀藩主・前田利常公や北大路魯山人といった歴史を彩った人物にも所縁があり、本館建物は有形文化財にも登録されている格式高いお宿です。

界 加賀

 お風呂は、二種類。本館にあるのは「吉祥の湯」。歴史ある建物の昔ながらのお風呂だけあって、脱衣所も浴室も、宿の規模からすれば狭い。湯槽には澄明で無味無臭のお湯が掛け流されています。少しトロンとした浴感で、古代檜の一枚板による質感とともに、しっとりとした感覚を味わうことができます。

界 加賀

 新館にある「大浴場 尚武の湯」にはやや広めの内湯とともに、苔むした壷庭付きの露天湯があります。こちらは新しい施設だけに吉祥の湯より広くて開放的だが、しっとり感は薄いような気がします。

•泉質:低張性・弱アルカリ性高温泉 64.3度

界 加賀 - 腕物

食事は部屋食でなく、新館2階食事処「銀庵」に食べに行きます。広いダイニングの中央に「おくどさん」を模したような配膳スペースがあり、その周囲に障子で仕切られた半個室のテーブル席が並んでいて、全部で50席足らず、完全禁煙です。

界 加賀

 山代温泉の湯宿の特徴として、かなり昔からに松ノ木をくりぬいた配湯管で総湯から湯をひいた「内湯」があったことです。総湯をぐるりと囲むように老舗旅館が建ち並んでいるのは、当時、遠くにまで配湯できかった名残なんですね。
 界加賀は、その貴重な源泉を引く「湯の曲輪」と呼ばれる数少ない湯宿です。宿の規模が大きくないので湯槽も小さく、そのため貴重な源泉を掛け流すことができるようです。

元湯 孫九郎

元湯 孫九郎

 福地温泉は、岐阜県高山市の奥飛騨温泉郷にある温泉です。標高が1000メートルに達する山間の秘湯で、平安時代には村上天皇が湯治に訪れていたという入湯伝説が残るものの、温泉街自体は昭和に入ってから形成された、比較的新しい、13軒の宿からなる温泉街です。
 福地口のバス停で降車。辺りには何もなく、山の中置き去りにされた気分で不安のなか、ツルツル滑りながらようやくたどり着きました。今夜の宿は福地温泉を代表する老舗旅館「孫九郎」です。

福地温泉(岐阜県高山市)

元湯 孫九郎

 露天湯は青緑の濁り湯で、少し硫黄臭。柔らかいお湯が広い露天に掛け流されています。この露天、東屋や水車小屋が配されるなど雰囲気作りも実にいいし、夜は夜で、明かりが雪に反射して幻想的な情景を創りだします。
 蹲には飲用の温泉が流れていて、マイルドで飲みやすい源泉を味わうこともできます。

元湯 孫九郎

 露天とは逆に、内湯はパワフルな感があります。色は透明だが、褐色の湯の花のせいでか、茶色く見える。感触はサラッとしているが、浸かっているうちにガンガン沁みこんでくるような気がします。
 静かにじっくり浸かりたければこちらかな。ここのお湯も飲むことができるが、露天と異なって少し塩気と金気を感じさせる濃厚な風味です。

•泉質:単純温泉 67度36度混合(露天)、ナトリウム炭酸水素塩泉 81度(内湯)


元湯 孫九郎

この旅館では、食事は本館の広間でいただきます。この本館、築130年の養蚕農家を移築した古い立派なお屋敷で、遠赤ガス使用した囲炉裏風のグリルが設えてある。田舎の風情を演出していますね。

元湯 孫九郎

ここの温泉は湧出温度が高いので、この旅館では内湯も露天も加水せず熱交換で適温にしています。そして、熱交換された廃熱は給湯や暖房に生かされるとのこと。エコですね。

榊原舘

榊原舘

 榊原温泉は、三重県津市榊原町ののどかな田園地帯にある古湯で、清少納言が「湯は七栗の湯、有馬の湯、玉造の湯」と、当時の日本三名湯として枕草子に記した七栗(ななくり)の湯こそ、現在の榊原温泉のことです。
 この榊原温泉の中心部、にポッカリ建っている大旅館が ここの湯元の「湯元榊原館」です。

榊原温泉(三重県津市)

榊原舘

 1階の大浴場では、浴室に温泉の匂いが漂う真っ当な温泉で、大きな浴槽の真ん中からお湯がコンコンと湧いています。ただし、この大浴槽は加温。普段は透明なお湯なのだが、この日は地震の影響で少し白濁しています。

榊原舘

 この浴場の隅っこに小さな浴槽があって、これがこの旅館の白眉、源泉浴槽です。僅かに硫黄臭のある湯はぬるぬるしている、いわゆる美人の湯系な感じです。源泉のお湯はかなり温く、冬場は辛いが、加温の浴槽と交互に入ってたら風邪を引くこともないでしょう。

榊原舘

 この旅館では料理はレストランでいただきます。先付は、てこね寿司や春野菜の揚げ物など。桜が散らしてあって季節感を演出しています。

榊原舘

 この旅館には屋上にも宿泊者専用の露天風呂があります。たいがい屋上にある温泉は、ポンプで汲み上げる必要があるので循環泉なのだが、ここも例外ではない。屋外なので塩素臭は気にならないが、お湯はややキシキシした感じ。温泉好きには源泉浴槽がお薦めです。

•泉質:弱アルカリ性単純泉

湯の花ふわり 湯元館

湯の花ふわり 湯元館

 乗鞍の山懐に抱かれた平湯温泉は海抜1,250m。平湯・新平湯・福地・栃尾・新穂高などから形成される奥飛騨温泉郷のなかでいちばんの歴史を持ち大きな旅館街です。以前は山間の鄙びた温泉地だったのだが、安房トンネルの開通で松本方面からのアクセスが大きく改善、東京方面からの観光客が一気に増加しました。
 大きな旅館が建ち並ぶ平湯の温泉街から少し離れたところ、平湯神社のすぐ近くにある旅館です。

平湯温泉(岐阜県高山市)

湯の花ふわり 湯元館

 大浴場には旅館の規模にしては立派な内湯と露天があって、それぞれ強い硫化水素臭の漂うお湯が贅沢に掛け流されています。湧出は毎分393リットルとのこと。豊富ですね。
 舐めてみると、匂いは強いものの味はない。澄明なお湯の中には少なからず湯の花が漂っています。

湯の花ふわり 湯元館

 この旅館、貸切露天風呂が空いていれば無料では入れるのがいいですね。各露天の中央部の底から、ボコボコ空気を送り出していて、少しジャグジーっぽい。理由を聞けば、お湯を攪拌して温度を均等にするためらしいのだが、これだとせっかくの源泉を劣化させてしまうんではないかと少し心配だが…
 ともあれ、森の中の露天は自然と一体となったような感覚を味わえていいですね。

湯の花ふわり 湯元館

 この旅館では食事は1階のお食事処でいただくようになっています。ここは各客室ごとに区切られた半個室になっています。
 朴葉味噌はこの地域の名物です。

湯の花ふわり 湯元館

 平湯温泉地内には約40もの井戸・源泉があり、全部あわせて毎分13,000リットルという膨大な湯量を誇るとともに、源泉ごとに微妙に異なる泉質を楽しむことができます。温泉好きにはたまらない温泉地ですね。

※本記事は、2018/11/05に更新されています。内容、金額、メニュー等が現在と異なる場合がありますので、訪問の際は必ず事前に電話等でご確認ください。

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