酔狂老人卍さんが投稿した大和田(東京/渋谷)の口コミ詳細

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『此世をハ と里(り)や お暇尓(に) せん古(こ)う能(の) 煙りと供尓(に) 者(は)ひ 左樣なら』 (十返舎一九)

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酔狂老人卍 (70代以上・男性) 認証済

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掲載保留大和田神泉、渋谷、駒場東大前/うなぎ

1

  • 昼の点数:4.5

    • ¥4,000~¥4,999 / 1人
      • 料理・味 3.0
      • |サービス 3.5
      • |雰囲気 4.5
      • |CP 4.5
      • |酒・ドリンク -
1回目

2009/10 訪問

  • 昼の点数:4.5

    • [ 料理・味3.0
    • | サービス3.5
    • | 雰囲気4.5
    • | CP4.5
    • | 酒・ドリンク-
    ¥4,000~¥4,999
    / 1人

この鰻(むなぎ) 澁谷の裏(うら)の 大和田に 燒くや備長(びんちやう) 身も焦がしつゝ

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※撮影許可濟み
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【2009-10-22追記、評價修正】:
澁谷の兩替商(りやうがへしやう)に用があり、終(をは)りてみれば晝(ひる)には聊(いさゝ)か間。
さらばと、VIRONに向かひ、麪麭(ぱん)の類(たぐひ)を澤山(しこたま)買込(かひこ)む。
五年前(いつとせまへ)は、VIRONで洋菓子(やうぐわし)買(か)ひて廓遊(くるわあそ)び。
待つ間(あひだ)、こちら大和田で腹拵(はらごしら)へせしも今(いま)は昔(むかし)。

あれから伯父二人、伯母一人、そして姉までもが身罷(みまか)り、僕(やつがれ)が天窓(あたま)も白。
此度(こたび)は廓(くるわ)に忍(しの)ぶつもりなく、狙(ねら)ふ得物(えもの)はたゞ一つ。
午の刻は四半時(しはんとき)前なるに、生憎(あやにく)暖簾(のれん)かゝらず。
已(や)むことを得ずして徘徊(うろつ)くその先(さき)、道玄坂から圓山町界隈(あたり)。

勿驚(おどろくなかれ)、かの「道頓堀劇場」なる見世物小屋(みせものごや)に官憲(おかみ)の手。*)
嘗(かつ)て軒(のき)を連(つら)ね甍(いらか)を爭(あらそ)ひし廓(くるわ)にも翳(かげ)り。
否(いな)、見る影(かげ)もなく衰(おとろ)へ、往時(いにしへ)と比(くら)ぶるまでもなし。
午(むま)の刻、漸(やうや)う辿(たど)り着く先、こちら鰻(むなぎ)の大和田

暖簾(のれん)潛(くゞ)りて「御免(ごめん)くだされ」と叫ぶも女將(おかみ)は目の前。
誘(いざな)はるゝ儘(まゝ)に二樓(うへ)に上がりて、小さな坐敷(ざしき)に。
疉・襖(ふすま)を換へ、あちらこちらの綻(ほころ)びを繕(つくろ)ふぞめでたし。
前は品書(しなが)きすらもあらざるに、此度(こだみ)手渡(てわた)されしそれなりの品書。

煮凝(にこゞ)り、鰻(う)ざく、鰻卷(うま)きすら置かぬ潔(いさぎよ)さは前の儘。
値(ね)の違(たが)ひを訊(たづ)ぬるに、大(おほ)きなる差(さ)は見當(あ)たらず。
さらば、「鰻重(二みなほん)」、「肝吸ひ(零點一みなほん)」、「酒(零點八みなほん)」に。
後の支拂(しは)ひは、合はせて値(あたひ)三點二みなほんと、前に比べ割安(わりやす)。

「酒菜(さかな)は如何(いかゞ)いたします」との問(とひ)に、それも貰(もら)ふ。
「甘蝦(あまえび)の鹽辛(しほから)」とのことにて、これを肴に晝酒(ひるざけ)。
酒菜(さかな)は麹(かうじ)が效(き)ゝ旨味(うまみ)に富むも、聊(いさゝ)か鹹(から)め。
酒(さけ)は不味(まづ)きことこの上もなく、開きたる口に閉(し)まる暇(いとま)なし。

二樓(うへ)には僕(やつがれ)のほかは仔狗(いぬころ)一匹をらず、いとも長閑(のどか)。
かくて恣(ほしいまゝ)に、あちらを冩眞撮影(ぱちり)こちらを冩眞撮影(ぱちり)。
隣の部屋、階(きざはし)、厠(かはや)と、その狼藉(らうぜき)とゞまるところを知らず。
そのさま林家某(なにがし)、際物(きはもの)瓦版屋(かはらばんや)に同じ。

待つことおよそ小半時(こはんとき、三十分)、運ばれ來(きた)りし鰻の一品(しな)。
器(うつは)もベエクライトながらやゝ綺麗になり、箸も杉(すぎ)の天削(てんそ)げに。
蓋(ふた)を去るや、俄(には)かに立ち昇(のぼ)る湯氣(ゆげ)の幾筋(いくすぢ)。
馥郁たる香(かをり)、四方(よも)に漂(たゞよ)ひ、邊(あた)りを覆(おほ)ふ。

焦げ目均(ひと)しく附きて、その姿(すがた)、名にし負ふ店の鰻(むなぎ)と異なる。
箸(はし)を入るゝに、ほどよく蒸(む)しが效(き)ゝて脆(もろ)くも崩(くづ)る。
タレの甘(あま)さは目くぢら立つるほどのこともなし。
飯(いひ)も佳く、小骨も口に觸(さは)らねば、瞬(またゝ)く間にこれを平(たひ)らぐ。

大戰後(おほいくさのゝち)と云ふ建物は、頗(すこぶ)る懐かしき佇(たゝづ)まひ。
神田川てん茂二葉鮨など、今に殘(のこ)るは指(ゆび)を折(を)りて數(かぞ)ふるほど。
名高(なだか)き、小塚原尾花、飯倉野田岩石ばし、調布鈴木は逢引(あひゞ)きに向かず。
それに向く明神下神田川は鄙(ひな)びたる割(わり)に値も高く、重箱は鰻屋と認(みと)めがたし。

【2005-10-16登録】:
昨夏道玄坂界隈を彷徨(さまよ)つた折、見るからに風雪を重ね鄙(ひな)びた一軒屋が目に入った。圓山町の舊花街(きうくわぐわい)にひつそり佇(たゝづ)む小體な店。看板には大和田とある。あの、あちこちにある店なのか?。と云ふことで躊躇(ためら)ひ、一旦は通り過ぎたものゝどうにもかうにも氣になつて仕方がない。

で、日を置かず再訪。四時半頃着(つ)くや玄關を修繕の最中(さなか)で營業してゐるか否かも不明。一旦前を過ぎかけるも仄(ほの)かな鰻の香りが鼻腔を擽(くすぐ)る。踵(きびす)を返し中に入ると、どうやら商(あきな)つてゐる氣配。主(あるじ)に「時間掛かりますよ」と念を押され階(きざはし)を昇る。

二階には何部屋かあるものゝ一番小さな六疊間に案内される。中央には塗りの卓、壁には五言律詩の掛け軸。透かし彫りの欄干はそこそこ手間暇掛かつてゐるものゝ疊は大分黄ばんでゐる。柱材などは高級品にあらず、一流料亭や一流鮨屋・天麩羅屋の凜(りん)とした雰圍氣に缺(か)ける。

紙に書かれた品書きの類(たぐひ)は一切無く、出來るのは「鰻重」のみとの由。鰻ざくも鰻卷きも無い。主(あるじ)言ひけるに、あるのは辛うじて肝吸ひだけだとのこと。酒は麒麟麥酒ラガアと日本酒(銘柄失念)のみ。あるいは潔いと云ふべきか..。最早詮方なし。此處(こゝ)に至りては已むことを得ずして、

 ・一番安い鰻重、値二千圓也+肝吸ひ、値百円圓也。

を賴み、鰻が燒き上る迄麥酒と枝豆で凌(しの)ぐ。この枝豆、色止め適切にして鹽(しほ)加減良好。但し、やゝ柔らかくなり過ぎ。そこらの飮み屋とは異なり茹で置きではなく注文を請けてから茹でるらしく枝豆・麥酒が出る迄五分を要した。「スロオフウド」流行(はらり)の昨今とは云へ、此處迄徹底すると感銘すら覺える。

因みにこの日客は自分一人。草書體で書かれた掛け軸の五言律詩を眺(なが)めつゝ、佳き鹽梅の枝豆を肴に麥酒で喉を潤す。すると心地良い醉ひが、ゆるりゆるりと全身を包み始める。待つことおよそ三十分。枝豆が無くなり麥酒を九割方片付けたところで階段を昇る足音が..。直後、障子の向かうに人影。

おゝ、絶妙なる頃合ではないか。やはり鰻屋はかうでなくちや。某百貨店内特別食堂野田岩なんか注文して十分で出て來る。鰻ざく・鰻卷きを突(つゝ)きながら呑み出したと途端に蒲燒ぢや、落ち着いて呑み喰ひも出來やしない。囘轉を良くしたいのは判るが、鰻屋つて待つのも味の内。この點大和田は素晴らしい。

ベエクライト樹脂製重箱に、蓋付きベエクライト樹脂製吸ひ物椀。街場中華の如き赤い淵付箸袋に木製箸。どう見ても高級鰻店にては御座らぬ。山椒は町醫者の藥包の如き紙包にて供される。うむうむ、なかなか面白いではないか。蓋を開(あ)けるや思ひの他香りは薄い。身はそこそこ柔らかながら小ぶりで厚みに缺(か)ける。

脂の乘りは養殖物として少な目。タレはやや甘口ながらもスツキリした印象。しかも不思議な酸味と香り。山椒の風味とも相俟(あひま)り馴染んだ平均的な鰻のタレとは聊(いさゝ)か異なる印象を受ける。良く云へば、注ぎ足し注ぎ足しで熟成された祕傳のタレ、惡く云へば、寂(さび)れた鰻店のタレ。

御飯は硬過ぎず柔らか過ぎず丁度良い具合。そもそも、鮨と云ひ、鰻丼と云ひ、柔らか過ぎる御飯は全てを臺無しにしてひしまふ。「肝吸ひ」には白髮葱と春雨が入り、その鹽加減頗(すこぶ)る適切。香の物は、胡瓜糠漬け、野澤菜、人參糠漬け、それに、澤庵が付く。味は極普通ながらも糠漬けとはあり難い。

雰圍氣は既に述べた通り。半世紀を經過したと云ふ建物の一部屋を獨り占め出來る氣分はなかなか。高級料亭の凜とした雰圍氣には及ばないものゝ大變落ち着く。店全體、階段、部屋、どれをとつても半世紀の星霜を感じさせる。待ち時間を含めて「スロオフウドの鑑(かがみ)」とでも呼びたくなる。

客あしらひは並(なみ)。主(あるじ)は素つ氣なく客に媚びることをしない。お女將は高級店の女將とは聊(いさゝ)か異なる雰圍氣ながら丁寧。二千圓の鰻重と肝吸ひにビール一本で請求額、値四千圓也。枝豆がお通しとして有料になつてゐるにしても少々高目。恐らく「席料」として一千圓程取られてゐるやうな氣がする。

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*)http://u.tabelog.com/00001364/diarydtl/20912/

  • 見送る女将(おかみ)

  • 屋號(やがう)入りの蓋(ふた)

  • 酒菜(さかな)、甘蝦の鹽辛(しほから)

  • 手洗ひに

  • 玉石洗ひ出しの玄關(げんくわん)

  • 品(しな)は僅(わづ)かこれだけ

  • 但(たゞ)し書き

  • 鰻(むにゃぎん)

  • 香(かう)の物(もの)

2015/07/21 更新

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