酔狂老人卍さんが投稿した天ぷら 元吉(東京/外苑前)の口コミ詳細

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『此世をハ と里(り)や お暇尓(に) せん古(こ)う能(の) 煙りと供尓(に) 者(は)ひ 左樣なら』 (十返舎一九)

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移転天ぷら 元吉外苑前、表参道、乃木坂/天ぷら

1

  • 夜の点数:4.0

    • ¥10,000~¥14,999 / 1人
      • 料理・味 4.0
      • |サービス 4.0
      • |雰囲気 -
      • |CP -
      • |酒・ドリンク -
1回目

2008/12 訪問

  • 夜の点数:4.0

    • [ 料理・味4.0
    • | サービス4.0
    • | 雰囲気-
    • | CP-
    • | 酒・ドリンク-
    ¥10,000~¥14,999
    / 1人

皆さんと 件(くだん)のところで 青山と 覗(のぞ)く店には ひとりもをらず

天麩羅なれば右に出る者なしと云ふ宗匠よりの誘(さそ)ひに目が眩(くら)む。
そのさま、またゝびに狂(くる)ふ猫、あるひは、女の太腿に通を失ふ粂(くめ)仙人に異ならず。
待ち合はせるでもなく、しからば今月今夜、件(くだん)のところで青山大膳。
雨に打たれつゝ外苑西通りをうろつくも海味日月譚邊(あた)りを右往左往。

漸(やうや)う辿(たど)り着きてみれば、待ち人(まちびと)來(き)たらず。
目の前には天種を容(い)れる凾(はこ)があり、數多(あまた)蔬菜の類(たぐひ)に目を奪(うば)はる。
金時紅蘿蔔(きんときにんじん)、嶋紅蘿蔔(しまにんじん)、阿蘭陀獨活(アスパラガス)、 紅芋、
菰(まこも)、蓮根、銀杏、鞘隱元、と、頗(すこぶ)る彩(いろど)り鮮やか。

世に蔬菜の品揃(しなぞろ)へを誇る店少なからずと云へど聊(いさゝ)かも引けを取らず。
麥酒(ビール)の小瓶を頼み、めじの刺身を辛味蘿蔔(からみだいこん)とともに摘(つま)む。
口に入れるや、めじとは思へぬ脂乘りに魂消(たまげ)、暫(しば)しの間(あひだ)言葉を失ふ。
蘿蔔(だいこん)の桂剥(かつらむ)きも見事。

惜しむらくは、聊(いさゝ)か口に冷たきこと。
近頃の鮨職人は氷室(ひむろ)より取り出(いだ)したる鮪(しび)を切り附け暫(しばら)く打ち遣(や)る。
程(ほど)なくして顏(かほ)うち揃(そろ)ひ待ちかねたる天麩羅に。
先づは常(つね)の倣(なら)ひで鞘卷きの脚から。

鞘卷き*二、鱚、椎茸、なんとか羊齒(しだ)、蕃茄(トマト)、鯊(はぜ)、蓮根、
紫芋、蜜芋、金時紅蘿蔔(きんときにんじん)、嶋紅蘿蔔(しまにんじん)、
阿蘭陀獨活(アスパラガス)、菰(まこも)、穴子、
掻き揚げ、御飯、香の物、縮緬山椒、赤出汁、水菓子として林檎天麩羅アイスクリム。

黄金(こがね)色の香ばしき脚に鹽(しほ)して一口、また一口と貪(むさぼ)る。
揚げ工合はほどよく、齒に暫(しば)し抗(あらが)ひて、やがて胃の腑へと収まる。
鞘卷き、鱚(きす)、鯊(はぜ)、穴子、と、海の幸(さち)の出來は他所(よそ)の名のあるところに同じ。
寧(むし)ろ驚くべきは、蔬菜の品揃(そろ)へとその味はひ。

なんとか羊齒(しだ)を口にするのは初めて。見るのはおろか名を聞くのすら初めて。
翠(みどり)鮮やかにして、青椒(ピーマン)ともアロエとも異なる味はひ。
蕃茄(トマト)を口に含むや、忽(たちま)ち崩(くづ)れ、汁氣ばかりが口に漂(たゞ)よふ。
常州産と云ふ蓮根は驚くばかりに肉厚。

金時紅蘿蔔(きんときにんじん)、嶋紅蘿蔔(しまにんじん)は縱眞一文字に斷(た)つ。
金時紅蘿蔔(きんときにんじん)の色、燃え盛る焔(ほむら)のごとし。
嶋紅蘿蔔(しまにんじん)は紅蘿蔔(にんじん)よりもなほ土の香(かをり)と味はひに富む。
世に三寸紅蘿蔔(さんずんにんじん)ばかり罷(まか)り通るは訝(いぶか)しき限り。

思ふに、煮崩れし難(にく)く、形が寸胴で、規格大量生産に向くためならん。
近頃、巷(ちまた)に青首蘿蔔(あおくびだいこん)ばかりがのさばるに同じ。
金時紅蘿蔔(きんときにんじん)は聊(いさゝ)か火が通り過ぎ、その持ち味を損(そこ)なふ。
さりながら、確かに根菜の類(たぐひ)は他所(よそ)になき味はひ。

阿蘭陀獨活(アスパラガス)は更に火の通り過ぎ。
主(あるじ)、食べる順に頓着(とんちやく)なく、たゞ「お好きな順に」と云ふばかり。
阿蘭陀獨活(アスパラガス)に限れば、いわ井すず航の後塵を拜す。
いわ井なれば餘熱を考へ、天紙に、穗先を上に交叉させて置く。

菰(まこも)も聊(いさゝ)か火の通り過ぎか。
およそ菰(まこも)扱ふに唐土(もろこし)の厨師(れうりにん)に如(し)くはなし。
掻き揚げは言はれるが儘(まゝ)、御飯と丼汁(どんつゆ)に滲(つ)けた掻き揚げを別に。
土鍋御飯は云ふに及ばず、香の物(蘿蔔、白菜、柴漬け)、縮緬山椒、赤出汁、何れも文句なし。

食後には林檎の天麩羅アイスクリム載せ。
肉桂風味爽(さは)やかなれど、天麩羅には生の果物もしくはソルベに勝(まさ)るものなし。
酒は持ち込みの白葡萄酒(ワイン)。
天麩羅と葡萄酒(ワイン)に精通した宗匠の眼鏡(めがね)に適(かな)ひたる代物(しろもの)。

なるほど、天麩羅は白葡萄酒(ワイン)に限る。
梅(むめ)には鶯(うぐひす)、唐獅子(からじゝ)には牡丹(ぼたん)。
天麩羅を麥酒で喰らふは恰(あたか)も梅(むめ)が枝(え)に烏(からす)止まらすに似たり。
この日の墺太利(オーストリ)産白葡萄酒(ワイン)、ふくよかなる香(かをり)能(よ)く揚げ物を引き立つる。

店の設(しつら)へは今一つ。カウンタは何とも怪しげで板場を木の枝が覆(おほ)ひ盡(つ)くす。
其處彼處(そこかしこ)に、昭和の場末キャバレのごとき如何(いかゞ)はしさが漂(たゞよ)ふ。
主(あるじ)は三十(みそぢ)過ぎの若者。
蔬菜への拘(こだは)りは生半可でなく、その眼精(まなこ)、豹のごとくに光り輝く。

油は頻繁(×はんざつ、○ひんぱん)に漉(こ)し、足りぬ分は油差しより新(あらた)しきを補(おぎな)ふ。
鍋はアルミニウムの大鍋で、鍋覆(おほ)ひ(フッド)はステインレス製の大きなもの。 (特注か?)
名のある店は銅(あかゞね)を好む。蓋(けだ)し、熱傳導率に優(すぐ)れ、見た目に華やかなればなり。
衣(ころも)を溶く器は分厚き燒き物。

衣は薄く、輕(かろ)やかで、舌觸(ざは)り・齒應(ごた)へに優(すぐ)る。
阿蘭陀獨活(アスパラガス)などへの火の通し方を工夫すれば、鬼に金棒。
鮨と同じく天麩羅も日進月歩。嘗(かつ)ての麒麟(きりん)も老いては駑馬(どば)に劣る。南無阿彌陀佛。
主(あるじ)、今一層の精進あらば東都随一の天麩羅職人とならん。

2008/12/20 更新

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