酔狂老人卍さんが投稿した八幡屋(東京/大井町)の口コミ詳細

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『此世をハ と里(り)や お暇尓(に) せん古(こ)う能(の) 煙りと供尓(に) 者(は)ひ 左樣なら』 (十返舎一九)

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酔狂老人卍 (70代以上・男性) 認証済

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掲載保留八幡屋立会川、大井町、西大井/ラーメン

1

  • 昼の点数:4.5

    • ~¥999 / 1人
      • 料理・味 3.0
      • |サービス -
      • |雰囲気 4.5
      • |CP 4.0
      • |酒・ドリンク -
1回目

2009/10 訪問

  • 昼の点数:4.5

    • [ 料理・味3.0
    • | サービス-
    • | 雰囲気4.5
    • | CP4.0
    • | 酒・ドリンク-
    ~¥999
    / 1人

耳遠き 姥(うば)の作れる 拉麪は 八幡(やはた)八幡(はちまん) 大分得(だいぶとく)なり

※肖像を含め撮影了承濟み(←告(つ)げ口(ぐち)する鼠輩(そはい・ねずみのともがら)あり)

【2009-10-30追記】:
郵便局に出向(でむ)くつひでありて、久々(ひさびさ)こちらに。
時(とき)は午(むま)の刻(こく)より四半時前(しはんときまへ)。
暖簾(のれん)秋風(あきかぜ)にはためくも、姥(うば)は奧の坐敷(ざしき)。
頻(しき)りに新聞(しんぶん)ちらしを指(ゆび)で弄(まさぐ)り、つゆぞ氣附(きづ)く氣配(けはひ)なし。

幾度(いくたび)か大音聲(だいおんじやう)にて呼(よ)ばゝれど、なかば諦(あきら)めの心地(こゝち)。
裏(うら)に廻(まは)りて聲(こゑ)を限(かぎ)りと喚(をめ)き叫(さけ)べど、同(おな)じこと。
かくなる上はと覺悟を決め席(せき)に戻(もど)るや、驚(おどろ)く勿(なか)れ姥(うば)は厠(かはや)。
その儘(まゝ)待(ま)つ事(こと)暫(しば)し、漸(やうや)うこちらに氣附(きづ)く。

時(とき)に午(むま)の刻(こく)より僅(わづ)か十分前(まへ)。
「雲呑麪」六百圓を頼(たの)み、常(つね)に倣(なら)ひて四方山話(よもやまばなし)。
八百屋(やをや)までもが店仕舞(みせじま)ひし、田舎(ゐなか)と變わらぬと歎(なげ)くこと頻(しき)り。
げに、肉屋(にくや)、風呂屋(ふろや)、蕎麥屋(そばや)、雜貨屋(ざつかや)と跡形(あとかた)もなし。

【2009-02-28記】:
去年(こぞ)も暮(くれ)、猫又(ねこまた)の招きにあひて撈麪(らうめん)喰(く)らひに二葉町詣(まう)で。
その歸(かへ)り、生(む)まれ育ちたる武州荏原郡大井村をそゞろ歩く。
壽湯(風呂)、戸越庵(蕎麥)などの目印(めじるし)は粗方(あらかた)失(う)せ浦島太郎が心地(こゝち)。
作守稻荷も御本尊こそ變(か)はらねど、祠(ほこら)の扉(とびら)ばかりか鳥居(とりゐ)まで新(あらた)。

稻荷より松林(大工・鳶)に向かふも邊(あた)りの長屋(ながや)を含(ふく)め跡形(あとかた)だになし。
あの頃(ころ)は三輪車の運轉桿は棹(さを)のごときものなるに松田は四輪車のごとき圓(まろ)き形。
車の色(いろ)瑠璃紺(るりこん) にて能(よ)く五百貫(くわん)餘(あまり)の荷(に)を運ぶ。
この車も、四疉半の長屋に住まふ友も、隣(となり)の金持ちも今となりては全(すべ)てが幻(まぼろし)。

道なりになだらかなる坂を下(くだ)るや八幡屋なる看板某(それがし)が眼(まなこ)を射拔(いぬ)く。
四十年(よそとせ)・五十年(いつとせ)前の憶(おぼ)えを手繰(たぐ)れど朧(おぼろ)に霞(かす)むばかり。
既(すで)に腹も充(み)ち足(た)り、訝(いぶか)りつゝ踵(きびす)を返す。
その儘(まゝ)に打ち遣(や)りしに、八幡屋の評ありて、この日堪(たま)らず青物横丁より足を延(の)ばす。

作守稻荷(さくもりいなり)に參(まゐ)りて海内(かいだい)安(やす)らかなるを祈(いの)る。
猫又(ねこまた)には仇(かたき)と狙(ねら)ふ叉燒麪が素(そ)ッ首(くび)討(う)ち取らんことを誓(ちか)ふ。
「己(おのれ)その首よこせ」とばかりに勇(いさ)み立ち八幡屋の前にて武者震(ぶる)ひし扉(とびら)を開く。
「御免下され」と大音聲(だいおんじやう)にて呼ばゝりければ姥(うば)一人罷(まか)り出(い)づ。

商(あきな)ひの氣配(けはひ)はあれど片附けものに手を取られ暫(しば)しその場に立ち竦(すく)む。
姥(うば)とはこちらの主(あるじ)にて、健氣(けなげ)にも女手(をんなで)一つでこの店を守る。
姥(うば)、噂(うはさ)に違(たが)はず耳遠く、雷(いかづち)のごとき聲(こゑ)にて話すほかはなし。
叉燒麪頼むに先立ち、店の由緒來歴(ゆひしよらいれき)など四方山話(よもやまばなし)に花が咲く。

姥(うば)、大正十二癸亥(みづのとゐ)年常州に生(む)まれ、武州荏原郡大井村濱川の地に嫁(とつ)ぐ。
寡(やもめ)となり先の戰(いくさ)で燒け出され、後(のち)、中華(もろこし)そばを生業(なりはひ)とす。
その後(のち)貰(もら)ひ火にてこの地に移り、重ねたる月日既(すで)に五十年(いそとせ)餘(あまり)。
子は巣立ち後(あと)を繼(つ)がんとする者なし。

長らく手習(てなら)ひに勵(はげ)み壁の斷(ことは)り書きの類(たぐひ)は全(すべ)てその手になる。
「この道より我を生かす道なしこの道を歩く」  (武者小路實篤)
「耳が遠いので失禮の事があるかもしれません。ご容赦願ひま須(す)。店主」 
「現金仕入れですので掛け賣りご容謝ふしてお願ひ致しま須(す)。」

店の看板すら自(みづか)ら梯子(はしご)を掛(か)け油漆(ペンキ)塗(ぬ)りたるものと云ふ。
某(それがし)も稚(いとけな)き頃(ころ)裏の西光寺(眞宗本願寺派)にて手習(てなら)ひに勤(いそ)しむ。
その旨(むね)を傳(つた)ふるに、姥(うば)もまたこの寺を能(よ)く知りたまふと覺(さと)る。
頃合(ころあ)ひ見計(みはか)らひて「叉燒麪」頼まんとするに、「叉燒雲呑麪」も同じ値(ね)なるを知る。

こゝにおいて初めの志(こゝろざし)はもろくも碎(くだ)け散り「叉燒雲呑麪」値(あたひ)零點八みなほんに。
姥(うば)、なにやら麪條(めん)を茹(ゆ)で叉燒(やきぶた)幾枚(いくまい)かを切り揃(そろ)へる。
その間(あひだ)も話にうち興(きやう)ぜんとすれど耳遠きに阻(はゞ)まれ思(おも)ひの儘(まゝ)にならず。
目の前の「王灌入れ」とある器(うつは)の中を檢(あらた)むれば「王冠入れ」のことなりと覺(さと)る。

ほどなくして來(き)たりし「叉燒雲呑麪」、匙(さじ)はなく擦(す)り切れかけた雷紋の器(うつは)一つ。
これ古(いにしへ)の拉麪丼(どんぶり)とつゆ異(こと)なるところなく、思はず袖(そで)を濡(ぬ)らす。
叉燒は猫又(ねこまた)の御告(おつ)げどほり瑞々(みづみづ)しく銜(くは)ふるや脂滴(あぶらしたゝ)る。
雲呑(わんたん)は本朝拉麪屋のものとすれば具の味ありて、なかなかの出來榮(ば)え。

叉燒(やきぶた)に脂(あぶら)目立ち、醤油だれや汁(しる)にまで少なからざる脂(あぶら)漂(たゞよ)ふ。
脂(あぶら)か、はたまた白き粉の所爲(せゐ)か詳(つまび)らかならざれど思ひのほかに強き味(あぢ)。
やがて、叉燒(やきぶた)、雲呑(わんたん)、麪條(めん)、汁(しる)、悉(ことごと)く胃袋(いぶくろ)に。
喰(く)ひ初めに土方(どかた)四人(よたり)、喰(く)ひ終はりにはやむごとなき姥(うば)暖簾を潛(くゞ)る。

やむごとなき姥(うば)、某(それがし)に聲(こゑ)を掛(か)け、某(それがし)もまたこれに應(こた)ふ。
姥(うば)、この店の常連と思(おぼ)しく、主(あるじ)にこれより目黒不動に詣(まう)でむことを語(かた)る。
姥(うば)と姥(うば)、主(あるじ)の耳遠しと云へど、互(たが)ひに心(こゝろ)を以(も)て心に傳(つた)ふ。
春の陽(ひ)のごときその遣(や)り取りに滲(ひた)り、名殘(なごり)を惜(を)しみつゝ暇(いとま)乞(ご)ひ。

店を出て一度(ひとたび)二度(ふたゝび)と首(くび)うち振(ふ)り返(かへ)りつゝ西光寺に參(まゐ)る。
この寺こそ何を隱(かく)さう、某(それがし)が學(まな)びし手習(てなら)ひ塾。
花祭りの山車(だし)、甘茶の香(かを)り、その悉(ことごと)くが西方淨土(さいはうじやうど)に連なる。
某(それがし)が西方淨土(さいはうじやうど)とは畢竟(つまるところ)古(いにしへ)の西光寺にほかならず。

庭なる句碑に「暮(くれ)まつて ちにさく花の にほひかな」とありその句の主(ぬし)に思ひを馳(は)す。
口惜(くちを)しきかな、本堂は混凝土(コンクリト)造りとなり、嘗(かつ)ての俤(おもかげ)を留(とゞ)めず。
たゞ寺の裏に立つ大きな木ばかりは昔と變(か)はらぬ姿(すがた)をこの地に殘(のこ)す。
後ろ髮(がみ)引かるゝ思ひで寺を後(あと)にし立會川(たちあひがは)に向かふ。

  • 微笑(ほゝえ)む

  • 女主(をんなあるじ)(二)

  • はにかむ

  • 雲呑麪(わんたんめん)

  • 休みを告ぐる貼(は)り紙

  • 王冠(わうくわん)容れ

  • 客に氣附かず新聞ちらしを弄(まさぐ)る

  • 呆(あきれ)る

  • 恥(はじ)らふ

  • 叉焼(やきぶた)を切る

  • 雲呑(わんたん)を茹(ゆ)でる

  • 振り返(かへ)る

  • 想(おも)ひ出話(ばなし)に耽(ふけ)る

  • 顔(かんばせ)綻(ほころ)ばす

  • 暇乞(いとまご)ひに

  • 店の構(かま)へ

  • 看板

  • 店の中(一)

  • 女主(をんなあるじ)(一)

  • 作業中の女主(をんなあるじ)(三)

  • 王灌(冠)入れ

  • 雲呑叉焼麪

  • 貼り紙(一)

  • 貼り紙(二)

  • 自筆の詩

  • 作守稲荷

  • 西光寺山門

  • 西光寺山門(乳)

  • 句碑

2009/10/31 更新

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