2回
2017/01 訪問
吹(ふ)く風(かぜ)に 靡(なび)き流(なが)され 徘徊(さまよ)へば こゝ『寛八』に あらまたフラリ
亭主(あるじ)【撮影許可濟】
亭主(あるじ)【撮影許可濟】
亭主(あるじ)【撮影許可濟】
職人(しよくにん)近藤(こんどう)さん【撮影許可濟】
冰(こほり)
鮓種(すしだね)
鮓種(すしだね)
若布(わかめ)醋物(すのもの)
生薑(はじかみ)
出汁巻雞卵焼(だしまきかひごやき)
鮃(ひらめ)
鮪(しび)肥肉(あぶらみ)
車蝦(くるまえび)、巻(まき)
赤貝(あかゞひ)
穴子(あなご)
鮪(しび)醤油漬(しやうゆづけ)
鮭腹子(さけはらこ)
鐵火卷(てつくわまき)
雞卵焼(かひごやき)
花豆(はなまめ)甘露煮(かんろに)
章魚(たこ)柔(やは)らか煮(に)
眞鰺(まあぢ)
醤油差(しやうゆさし)
黑文字(くろもじ)
招牌(かんばん)
外觀(かまへ)
2017/02/09 更新
2014/08 訪問
寛(くつろ)ぎつ 間髮(かんはつ)入れず 喰らふ鮨 ネタは今一 値段はぴか一
【2015-10-06追記】:
大約(およそ)一年(ひとゝせ)ぶりの『寛八』。
十一時半(じふいちじはん)少(すこ)し前(まへ)、
已(すで)に暖簾(のれん)がかゝり、賈内(なか)に入(い)らんとするに、
東道(あるじ)、現(あら)はれ出(いで)、小人(それがし)を招(まね)く。
此度(こだみ)も"特松(とくまつ)"。
鮪(しび)、間八(かんぱち)、卷(まき)、赤貝(あかゞひ)、穴子(あなご)、
鰹(かつを)、鮭腹子(さけはらこ)、鶏卵燒(たまごやき)、鐵火卷(てつくわまき)。
追加(つひか)で、眞鯖(さば)に小鰭(こはだ)。
舎利(しやり)は纔(わづ)かながらも冷(つめ)たく、
醋(す)・鹽(しほ)ともに穩(おだ)やか。
粒(つぶ)が立(た)ち、しかも、舌(した)に滑(なめ)らか。
鮓種(すしだね)との馴染(なじ)みも好(よ)く、なかなかの味(あぢはひ)。
典型的(よくある)老舖鮓店(しにせすしや)。
人形町(にんぎやうちやう)『喜壽司』、銀座(ぎんざ)『ほかけ』、『新富壽し』、
『鶴八』各店(かくてん)、神田(かんだ)『笹鮨』、そして當家(こちら)。
尖鋭(きはだち)たるところなしと云へど、實(げ)に、心和(こゝろなご)むものあり。
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【照相機】:旭光學賓得士K-三數碼單鏡反光照相機
【鏡頭】 :smc 賓得(Pentax)A 微距(Macro)2.8/50 @F2.8
【2009-09-06記】:
この頃鮨屋に流行(はや)るもの、幼稚(えうち)デジカメ不知恥(はぢしらず)、
俄(には)か鮨好(すしず)き戲(たは)け者、首を傾ぐる半可通(はんかつう)*)。
生魚(なまうを)寢かしに赤ワイン、入道天窗(にふだうあたま)に海葡萄(うみぶだう)、
お仕着せお任せ吟釀酒(ぎんじやうしゆ)、星に血眼(ちまなこ)へぼ職人(しよくにん)。
近會(ちかごろ)妄(みだ)りに値の張る「お任(まか)せ」ばかり出(だ)す者多し。
とは云へ、御繩(おなわ)戴くほどの贅澤鮓(ぜいたくずし)は江戸(えど)の昔から。**)
その雙璧(さうへき)は兩國與兵衞鮓に安宅砂子鮓(いさごずし、=松の鮓)。
この頃、屋臺店(やたいみせ)では握り一つ八文、玉子燒(たまごや)きに限り十六文。
江戸の前海(まへうみ)より魚や貝が姿(すがた)を消して久し。
かつては「場違(ばちが)ひ」と調弄(からか)はれた地のものすら、値あがるばかり。
拙(つたな)き者、佳き種(たね)を競ひ用(もち)ゐて百姓(たみ)を欺(あざむ)く。
されば、値は愈々(いよいよ)騰(あが)り、暖簾(のれん)下ろす者後(あと)を絶たず。
技(わざ)ありて値も廉(やす)く口に佳き鮓(すし)は、今や稀(まれ)。
晝(ひる)の溜池寿々、夜(よる)なればくま寿司など指を折りて數(かぞ)ふるほど。
親の因果(いんぐわ)が子に報ひ、音に聞く代澤小笹寿しは伺(うかゞ)ひたる例(ためし)なし。
新橋烏森稻荷新橋しみづにかつての俤(おもかげ)なく、青空もすこぶる難入(いりがたし)。
さるほどに、御徒町に寛八本店なる鮨屋あるを知れりしは暫(しばら)く前。
思へば、かつて不忍通りに寛八なる鮨屋(すしや)ありて氣にかゝりし儘(まゝ)。
已にこの店の姿なく、寛八本店との繋(つな)がりも不詳(つまびらかならず)。
ある日、停車場(ていしやば)で降り「多慶屋」を過(す)ぎて、迷ふことなくこちらに。
暖簾潛りて中を見遣(みや)れば仲睦(なかむつま)じき夫婦(めをと)三組(みくみ)。
漬け場は親方(おやかた)と二番手(にばんて)が守り、握るは專(もつぱ)ら親方。
親方、齢(よはひ)七十路(なゝそぢ)を越えながらも今猶矍鑠(かくしやく)。
品書き持ち來たりしは、同じく古稀(こき)過ぎと思(おぼ)しき翁(おきな)。
熟々(つらつら)品書き眺(なが)むれば、目の前には蔬菜(あをもの)の膾(なます)。
氣色ばみ、「お好みのつもりなればかくのごときものは波斯(ハルシヤ)***)」。
俄(には)かに青筋(あをすじ)立つるも、「蛙(かはづ)の面(つら)に尿(いばり)」。
慮(おもんばか)るとこありて、「特松握り」二點八みなほんに、足らざるを加ふることに。
「特松握り」は、鮪(しび)脂身、縞鯵、小柱(こばしら)、赤貝(あかゞひ)、
鰹(かつを)、卷き、穴子(あなご)、玉子燒(たまごや)き、卷物(まきもの)。
加ふるに、鮃、小鰭、鮑(あはび)、鮪(しび)醤油漬(しやうゆづ)け、鱚(きす)、
鯵、章魚、墨烏賊(すみいか)、握り十六(とあまりむつ)、酒一合、七點七五みなほん。
一通りの後、澤庵漬(たくあんづ)け胡麻塗しに花豆(はなまめ)など。
手づからと云ふ花豆は、小人(それがし)の嫌(きら)ふ韻松亭が勝る。
むしろ舌を卷きしは、寒天(かんてん)にて固めたる崩(くづ)れ豆(まめ)。
魚(うを)の切れ端すら妄(みだ)りに捨てず、酒菜(さかな)に遣(つか)ふとか。
舎利(しやり)は酢・鹽とも控へめながらも、粒が立ちて舌(した)に滑(なめ)らか。
ポイ舎利(しやり)****)を嫌ひ、その手捌きたるや、一つとして無駄(むだ)なし。
鮨の姿容(すがたかたち)を檢むれば、見事なる扇(あふぎ)の地紙(ぢがみ)。
惜(を)しむらくは、生姜(しやうが)の聊(いさゝ)か甘(あま)きこと。
廣く煮切りの引かれたる鮪(しび)の脂身(あぶらみ)はなかなかの味(あぢ)はひ。
このやり方、鮪(しび)はともかく、縞鯵(しまあぢ)には多(おほ)きに過(す)ぐ。
赤貝(あかゞひ)、鰹(かつを、卷(ま)きと、何れも名のある店(みせ)に劣(おと)る。
盛(さか)り過ぎたる穴子に眞鯵(まあぢ)・鮑(あはび)は今一つ。
鮑(あはび)は細やかなる庖丁(はうちやう)を波型(なみがた)に入れ、肝を上に。
口惜(くちを)しきかな、煮詰めの甘きは、持ち味を粗方(あらかた)損(そこ)なはん。
先に青空にて味はひし芳醇馥郁たる鮑(あはび)とは月(つき)と鼈(すつぽん)。
白鱚は、寿々の昆布〆を前に顏(かほ)の色を失(うしな)ふ。
玉子燒(たまごや)きは、青空などすきやばし次郎一門や寿司幸に遲れを取る。
穴子もまたすきやばし次郎一門(いちもん)・鶴八一門に遠く不及(およばず)。
鮪(しび)醤油漬けは喜久好に輪をかけて鹹(しほから)く顏顰むるばかり。
魂消(たまげ)しは、なかば無理強ひされたる蛸(たこ)の思ひもかけぬ旨(うま)さ。
小鰭(こはだ)は二枚漬(にまいづ)けの新子(しんこ)。
わざわざ背鰭(せびれ)を去り、二尾(にび)を四枚に重ぬるぞいと珍(めづら)し。
鹽・酢ともにほどよく、思はず鳴らすは雷(いかづち)のごとき舌鼓(したつゞみ)。
主(あるじ)、この背鰭(せびれ)もまた捨てずに煮附け、酒菜(さかな)にと鼻高々。
「生」と稱(とな)ふる鱚(きす)・鯵(あぢ)のさりげなき鹽(しほ)に瞠目。
時季(じき)に早き鮃(ひらめ)がなかなかで、前の日〆たと云ふもその身なほ活き活き。
無暗(むやみ)な酢橘(すだち)、鮑殺しの煮詰めなど、首傾(くびかし)ぐるものも。
とは云へ、この値でこれだけの鮨となれば、普段遣(づか)ひに十分(じゆうぶん)。
親方、近頃(ちかごろ)の若手の阿漕(あこぎ)さを憂(うれ)ひ歎(なげ)く。
花一輪を慈(いつく)しむと、青空高橋青空ばかりは襃(ほ)めそやすこと頻り。
歸(かへ)り際、親方、顏(かんばせ)綻(ほころ)ばせ、外まで見送(みおく)りに。
今をときめく鮨にはあらねど、鮨(すし)の良し惡しは味(あぢ)のみにあらず。
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*)小人(それがし)がこと。
***)要(い)らん、要(い)り申(まう)さぬ。
****)俗(ぞく)に言ふ「捨(す)て舎利(しやり)」をかく號(よびな)す。
かく號(なづ)けしは言靈(ことだま)の巫女(みこ)みなほさま。
出汁巻(だしまき)鶏卵焼(かひごやき)
生薑(はじかみ)
招(まね)き猫(ねこ)
醤油差(しやうゆさ)し
黑文字(くろもじ)
花(はな)
山葵(わさび)を卸(おろ)す
鮪(しび)
間八(かんぱち)
巻(まき)
赤貝(あかゞひ)
穴子(あなご)
鰹(かつを)
鮭腹子(さけはらこ)
鶏卵焼(かひごやき)
鐵火卷(てつくわまき)
眞鯖(さば)
小鰭(こはだ)
花豆(はなまめ)
2015/10/06 更新
"ふらり"と寄(よ)れる鮨店(すしや):
今(いま)や、
風(かぜ)に搖(ゆ)らぐ蝋燭(らふそく)の火(ひ)、
晨(あけがた)、陽光(ひのひかり)に照(て)らさるゝ霧(きり)に異(こと)ならず。
創業(あきなひをはじ)めて一年餘(ひとゝせあまり)の『鶴八 分店』すら、
已(すで)に晝(ひる)の商賣(あきなひ)を中止(や)め、
夜(よる)とて、ふらり立寄(たちよ)るは叶(かな)はぬ現況(ありさま)。
南無三寶(なむさん)!
尋常(つね)のごとく、
"特松(とくまつ)"、二千九百五十圓(にせんきふひやくごじふゑん)に、
"眞鰺(あぢ)"と"章魚(たこ)"を追加(くは)へ、
對價(あたひ)、四千五十圓也(よんせんごじふゑんなり)。
内容(うちわけ)は↓冩眞(ゑ)のごとし。
米酢(よねず)と想像(おぼ)しき白(しろ)き舎利(しやり)は、
纔(わづ)かに水氣(みづけ)が殘存(のこ)り、鹽(しほ)も醋(す)も控(ひか)へめ。
すなはち、現代(いま)を流行(ときめ)くそれとは半點(いさゝか)相違(ことなる)。
往古(いにしへ)の流儀(やりかた)とは云へ、
街場鮓(まちばずし)とも、鄙鮓(ゐなかずし)とも異質(ことなる)。
鮓種(すしだね)・舎利(しやり)ともども、
そこそこに洗煉(あかぬ)けし、啖(くら)ふに堪(た)へる水準(たかみ)。
『初音鮨』・『豬股』のごとき傾奇者(かぶきもの)とは、對極(おほいにことなる)。
陽(ひ)と陰(つき)、水(みづ)と油(あぶら)、海(うみ)と陸(くが)、
龍(りよう)と虎(とら)、太閤(たいかふ)と利休(りきう)、
一橋派(ひとつばしは)と南紀派(なんきは)、入齒(いれば)と砂場(すなば)。
鮓(すし)を漬(つ)くる職人(かた)は、近藤(こんどう)さん。
親方(おやかた)の右腕(みぎのかひな)として、幾十年(いくとゝせ)。
"鮃(ひらめ)"を"シラメ"と發音(い)ふを耳(みゝ)にし、
無意識(しら)ず、口許(くちもと)が綻(ほころ)ぶ。
"鮪醤油漬(しびしやうゆづけ)"は、親方(おやかた)による噺附(はなしつき)。
曰(いは)く、
「冰箱(ひむろ)なき頃(ころ)よりの技法(やりかた)にて、、云々(うんぬん)」
その名調子(たくみなるかたりぐち)、寔(まこと)、心持(こゝち)よき限(かぎ)り。
「山薯蕷(いも)を不使用(つかは)で、芝蝦(しばえび)のみ」
と説明(い)ふ"雞卵燒(かひごやき)":
芝蝦(しばえび)を寸々(ずたずた)に微塵(こまか)く切刻(きりきざ)み、
叮嚀(ねんごろ)に擂鉢(すりばち)以(も)て當(あ)たる。
"烤(やき)"は、「片面(かためん)十分(じつぷん)」。
「薯蕷(いも)用(つか)ふや、フアフアとして齒應(はごた)へを喪失(うしなふ)」
とは、近藤(こんどう)さんの辯(はなし)。
實(げ)にも!
"眞鰺(まあぢ)"には醋洗(すあらひ)を施(ほどこ)し、
"章魚(たこ)"は鍋(なべ)に密封(かたくとぢこ)め、
長時間(ながら)く燉之(これをにこむ)。
「これ、臼齒(おくば)に頼哩(あらが)ふことのなき縁由(ことのよし)」とぞ。
疑義(うたがひ)もなく、
當家(こちら)、今(いま)や稀有(まれ)なる「"ふらり"と寄(よ)るゝ鮨店(すしや)」。
老翁(おきな)兩個(ふたり)、赫奕(かくやく)として漬場(つけば)に立(た)つは、
一見(ひとめみる)に値(あたひ)する光景(けしき)。
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-Macro 2/50 @F2~F2.8
高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto 2/21 @F8