酔狂老人卍さんが投稿したせきざわ（長野/都住）の口コミ詳細

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『此世をハ　と里（り）や　お暇尓（に）　せん古（こ）う能（の）　煙りと供尓（に）　者（は）ひ　左樣なら』 （十返舎一九）

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せきざわ都住/そば

1回

  • 昼の点数：4.5

    • ￥3,000～￥3,999 / 1人
      • 料理・味 4.5
      • |サービス -
      • |雰囲気 -
      • |CP -
      • |酒・ドリンク -
1回目

2011/02 訪問

  • 昼の点数：4.5

    • ［ 料理・味4.5
    • | サービス-
    • | 雰囲気-
    • | CP-
    • | 酒・ドリンク- ］
    ￥3,000～￥3,999
    / 1人

席（せき）はまだ　ざわつく周圍（あたり）に　屯（たむろ）して　めぐりあひたる　この蕎麥（そば）の味

有一日(あるひ)、前（まへ）の日（ひ）の大雪（おほゆき）こそ落（お）ち着（つ）けど、
雲（くも）は陽（ひ）を覆（おほ）ひ、雪（ゆき）の山道（やまみち）は行（ゆ）く手（て）を遮（さへぎ）る。
狙（ねら）ひ定（さだ）めし廛（みせ）が今（いま）の時季（じき）商賣（あきなひ）の氣配（けはひ）あらずとて、
不圖（はからずも）、當店（こちら）『せきざわ』へと向（む）かふ。

『古守宿一作』での朝飧（あさめし）が辰（たつ）の刻（こく）過（す）ぎ。
『暫（しばら）く待（ま）たさるゝくらゐがほどよき腹（はら）ごなし』とて、廛（みせ）の前（まへ）に。
木札（きふだ）を貰（もら）ふと齊（ひと）しく、轎（くるま）を近傍（ちかく）に停（と）め、
教導（あなひ）の蕎麥通（そばつふ）の話（はなし）に耳（みゝ）欹（そばだ）つ。

曰（のたまは）く、『蕎麥衣（楚者゛ごろも）と云ふは、類稀（たぐひまれ）なる出來（でき）』、
『〆の菓子（くわし）は、そこらの和菓子（わぐわし）職人（しよくにん）を顏色（がんしよく）なからしむるほど』、
『江戸蕎麥（えど楚者゛）は小結（こむすび）ですら危（あや）うく、東横綱（ひがしのよこづな）は"ふじおか"』、
『當店（こちら）は"ふじおか"には劣（おと）れど名（な）だゝる江戸（えど）の名店（めいてん）を凌駕（しの）ぐ』。

待（ま）つこと大約（およそ）半晌（はんとき）。
窗際（まどぎは）の明（あか）るい席（むしろ）に導（みちび）かれ品書（しながき）に眼（め）を通（とほ）す。
雪（ゆき）は陽（ひ）の光（ひかり）を照（て）り返（かへ）し、眩（まばゆ）きばかりの明（あか）るさ。
擇（えら）みしは『蕎麥掻（そばがき）』より『水菓子（みづぐわし）』までの一揃（ひとそろ）ひ。

その内譯（うちわけ）は、
先附（さきづけ）もどき、八寸（はつすん）もどき、鴨南蠻蕎麥（かもなんばんそば）、
生粉打（きこう）ち蕎麥（そば）、變（か）はり蕎麥（そば）、水菓子（みづぐわし）。
その價格（ね）、合（あ）はせて三千二百圓也。

最初（いやさき）に來（き）たりしは『先附（さきづけ）もどき』。
粉引（こなひ）きの擂鉢（すりばち）に一人（ひとり）當（あ）たり兩個（ふたつ）の蕎麥掻（そばがき）。
蕎麥掻（そばがき）、澁柿（しぶがき）、新垣結衣（あらがきゆい）。
藥味（やくみ）は未醤（みそ）と青葱（あをねぎ）小口切（こぐちぎ）り、溜（たま）り醤油（じやうゆ）も、、。

次（つ）いで、『八寸（はつすん）もどき』。
眞中（まなか）に淡味（うすあぢ）で煮（に）たる鞍掛（くらか）け豆（まめ）、
周圍（まはり）に、鯡（にしん）、鮟鱇肝（あんかうきも）、出汁卷（だしま）き鶏卵（たまご）、山菜（さんさい）、
花豆（はなまめ）、菜（な）の花（はな）。

勿論（いふまでもなく）、『鞍掛（くらか）け豆（まめ）』は信州特産（しんしうとくさん）。
當地（このち）では『ひたし豆（まめ）』と號（よびな）し、僕（やつかれ）なら鹽茹（しほゆ）でがなにより。
『花豆（はなまめ）』も、『御多福豆（おたふくまめ）』と見紛（みまが）ふ姿（すがた）で、
婦女童蒙（をんなこども）に阿（おもね）る商賣（やりかた）ながら『韻松亭』が勝（まさ）る。

『鮟肝（あんきも）』また然（しか）り。
卸（おろ）しぽん酢（ず）の是非（ぜひ）はともあれ、蘿蔔卸（だいこんおろ）しでは口味（あぢ）が暈（ぼ）ける。
肝（きも）の色味（いろみ）にも首傾（くびかし）ぐるばかり。
味（あぢ）濃（こ）く油脂（あぶら）の載（の）る肝（きも）は橙色（だいだいゝろ）を帶（お）ぶるが通常（つね）。

そもそも、遠（とほ）き海（うみ）の鮟鱇（あんかう）、更（さら）に遠（とほ）き海（うみ）の鯡（にしん）とは、
旦（あさ）の岩魚（いはな）を想（おも）い出（だ）し、矜持（こゝろがまへ）のなさに愕然（がくぜん）。
とは云へ、味附（あぢつ）けは當店（こちら）が上（うへ）。
『あの岩魚（いはな）をこの烹方（にかた）となさば、、』とは、所詮（せんずるところ）叶（かな）はぬ夢（ゆめ）。

・・・・・・・と、まあ、こゝまでは『こんなもんかなッ？』と云ふほどの感慨（おもひ）。
ところが『鴨南蠻蕎麥（かもなんばんそば）』を一目（ひとめ）覽 （み）、一口（ひとくち）啜（すゝ）るや、
忽（にはか）にその力量（うで）たゞならぬを知（し）る。
色淡（いろあは）き出汁（だし）に寸毫（つゆ）くどさあらねど、鴨肉（かもにく）に調和（てうわ）。

江戸（えど）の『鴨南蠻（かもなんば）』は、
強（つよ）き鰹出汁（かつをだし）に甜鹹（あまから）き『返（かへ）し』を加（くは）へ、
葱（ねぎ）の幇助（たすけ）を得（え）て鴨（かも）に眞向（まッかう）太刀打（たちう）ちせんとするに、
當店（こちら）は、鴨（かも）の旨味（うまみ）も油脂（あぶら）も『柳（やなぎ）に風（かぜ）』。

冷（つめ）たき蕎麥(楚者゛)は『生粉打（きこう）ち』に『新海苔（しんのり）の變（か）はり蕎麥（そば）』。
『一瞬（いッしゆん）を爭（あらそ）ふほどの茹（ゆ）で加減（かげん）にてどちらも同（おな）じ』とのことなれど、
『新海苔（しんのり）』により強（つよ）き腰（こし）を感（かん）じたるは何（なに）かの誤（あやま）りか。
色（いろ）は翡翠（ひすい）と見紛（みまが）ひ、腰（こし）は冷麪（れいめん）を髣髴（おもはす）。

元來（もとより）『變（か）はり蕎麥（そば）』は嗜（この）むところにあらねど、このうつくしさは格別（かくべつ）。
粗方（あらかた）その儘（まゝ）平（たひ）らげ、剩餘（のこり）を蕎麥汁（そばつゆ）で頂（いたゞ）く。
本枯（ほんが）れ節（ぶし）を主體（おも）にしたると思（おぼ）しき清（きよ）らかなる風味（ふうみ）、
鼻竅（はな）を穿（うが）ちて味覺（した）にたゆたふ。

一度（ひとたび）これを蕎麥湯（そばゆ）で割（わ）るに、
暖（あたゝ）かさに誘（いざな）はれ、硬（かた）き芽（め）の一齊（いつせい）に花開（はなひら）くがごとく、
馥郁（かぐはしき）香（かをり）四方（よも）に漂（たゞよ）ひ、
豐饒（ゆたかなる）味（あぢ）は味覺（した）を捕（とら）へて魂（たましひ）を搖（ゆ）さぶる。

最後（いやはて）の『水菓子（みづぐわし）』の旨（うま）さには、たゞたゞ詞（ことば）を失（うしな）ふ。
燒酎（せうちう）風味（ふうみ）の氷菓（そるべ）にて、もはや笑（わら）ふほかに方策（すべ）なし。
傍（かたは）らの蕎麥通（そばつふ）も斷乎（きッぱり）、
『當店（こちら）の主人（あるじ）は生強（なまじ）ひなる菓子職人（くわししよくにん）よりはるかに上（うへ）』と。

  • せきざわ - 一味唐辛子（いちみたうがらし）

    一味唐辛子（いちみたうがらし）

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    蕎麥茶（そばちや）

  • せきざわ - 蕎麥掻（そばが）きの藥味（やくみ）

    蕎麥掻（そばが）きの藥味（やくみ）

  • せきざわ - 蕎麥掻（そばが）き

    蕎麥掻（そばが）き

  • せきざわ - 蕎麥掻（そばが）き

    蕎麥掻（そばが）き

  • せきざわ -
  • せきざわ - 菜（な）の花（はな）

    菜（な）の花（はな）

  • せきざわ -
  • せきざわ - 鯡（にしん）

    鯡（にしん）

  • せきざわ - 鮟鱇（あんかう）の肝（きも）

    鮟鱇（あんかう）の肝（きも）

  • せきざわ - 鞍掛（くらか）け豆（まめ）

    鞍掛（くらか）け豆（まめ）

  • せきざわ - 花豆（はなまめ）

    花豆（はなまめ）

  • せきざわ - 鶏卵焼（たまごやき）

    鶏卵焼（たまごやき）

  • せきざわ -
  • せきざわ - 鴨南蠻（かもなんばん）

    鴨南蠻（かもなんばん）

  • せきざわ - 鴨南蠻（かもなんばん）

    鴨南蠻（かもなんばん）

  • せきざわ - 生粉打（きこう）ち

    生粉打（きこう）ち

  • せきざわ - 生粉打（きこう）ち

    生粉打（きこう）ち

  • せきざわ - 葱（ねぎ）小口切（こぐちぎ）り

    葱（ねぎ）小口切（こぐちぎ）り

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    蕎麥汁（そばつゆ）

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    新海苔（しんのり）蕎麥（そば）

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    新海苔（しんのり）蕎麥（そば）

  • せきざわ - 焼酎（しやうちゆう）の氷菓子（こほりぐわし）

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    焼酎（しやうちゆう）の氷菓子（こほりぐわし）

2011/02/19 更新

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