酔狂老人卍さんが投稿した一風庵(富山/西中野)の口コミ詳細

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『此世をハ と里(り)や お暇尓(に) せん古(こ)う能(の) 煙りと供尓(に) 者(は)ひ 左樣なら』 (十返舎一九)

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掲載保留一風庵西中野、広貫堂前、小泉町/日本料理

1

  • 夜の点数:4.5

    • ¥15,000~¥19,999 / 1人
      • 料理・味 4.0
      • |サービス 5.0
      • |雰囲気 5.0
      • |CP -
      • |酒・ドリンク -
1回目

2011/08 訪問

  • 夜の点数:4.5

    • [ 料理・味4.0
    • | サービス5.0
    • | 雰囲気5.0
    • | CP-
    • | 酒・ドリンク-
    ¥15,000~¥19,999
    / 1人

彼此(をちこち) に 越中富山(ゑつちゆうとやま)の 漆塗(うるしぬ)り 器に柱 天井までも

越中(ゑつちゆう)の逆旅(たび)も佳境(かきやう)にさしかゝり、
山(やま)を距(こ)え、川(かは)を渡(わた)りて、
直走(ひたはし)る轎(くるま)は一息(ひといき)に千里(せんり)を驅(か)くる勢(いきほ)ひ。
喰(く)ひ慣(な)れぬ洋菓子(やうぐわし)の想定外(おもひのほか)の旨(うま)さに刮目(くわつもく)。

味神樣(あぢがみさま)の御託宣(おつげ)に從(したが)ひ、
今宵(こよひ)の夕飧(ゆふげ)は當家(こちら)越中富山(ゑつちゆうとやま)の『一風庵』。
一夜(ひとよ)一組(ひとくみ)限定(かぎり)の料理茶屋(れうりぢャや)。
まだ暮(く)れ泥(なづ)む天(そら)に浮(う)かむは『一風庵』の燈火(あかり)。

その形状(かたち)圓(まどか)ならねば月(つき)と見紛(みまが)ふことなし。
門構(もんがま)へは頗(すこぶ)る立派(りつぱ)で、垣(かき)玄關(げんくわん)へと連(つら)なる。
あまりの美(うつく)しさに眼精(まなこ)奪(うば)はれ氣(き)も漫(すゞろ)。
足(あし)まで取(と)られて溝(どぶ)へと輾(まろ)び、瀝青(れきせい)の地(ち)に塗(まみ)る。

瀝青(れきせい)なほ熱(あつ)く火照(ほて)り、背(せ)を焦(こ)がして尻(しり)を炙(あぶ)る。
氣(き)を取(と)り直(なほ)し、いざ、盛鹽(もりじほ)の門(もん)を踰(こ)え玄關(げんくわん)に、、。
『御免下(ごめんくだ)され』と云ふと同時(ひとし)く、
廊下(ほそどの)に平伏(ひれふ)したる女將(おかみ)首(かうべ)を低(たれ)て出迎(でむか)へ。

教導(あなひ)されしは待合(まちあ)ひの間(ま)。
見目(みめ)麗(うるは)しき茶碗(ちやわん)に佳(よ)き茶(ちや)。
膝(ひざ)を揃(そろ)へ坐布團(ざぶとん)に坐(すは)りて姿勢(せ)を直(たゞ)すに、
女將(おかみ)、『どうか、疾(と)く御膝(みひざ)を崩(くづ)したまへ』と庶幾(こひねが)ふ。

ほどなくして、夏向(なつむ)きの(すだれ)のかゝる宴會(うたげ)の間(ま)に、、。
(すだれ)と茣蓙(ござ)はこの時季(じき)ならでは。
脇息(けふそく)附(つ)きの席(むしろ)に坐(すは)れば、
俄(には)かに、殿樣(とのさま)か、やむごとなき方々(かたがた)にでもなりたる心持(こゝち)。

向(む)かひには輪島塗(わじまぬり)の蒔繪膳(まきゑぜん)。
朱漆(しゆうるし)に(こがね)鍍(ほどこ)したる(さかづき)も輪島塗(わじまぬり)。
女將(おかみ)拿(も)ち來(き)たりし桶(おけ)には當地(このち)の玉薤(さけ)。
それを盛(も)る酒盞(ぐらす)には紺青(こんじやう)の(き)り子(こ)。

向附(むかふづけ)』と思(おぼ)しき玻璃鉢(びいどろばち)には、
(かへで)挾(はさ)みたる兩(ふた)つ折(を)りの(ぬ)れ和紙(がみ)が被覆(おほひかぶさ)る。
これ、乾燥(かは)くを防(ふせ)ぎ、見(み)た目(め)に涼(すゞ)やかなるを慮(おもんばか)る、
亭主(あるじ)の心遣(こゝろづか)ひなるは猜疑(うたが)ひもなし。

汁物椀(しるものわん)も朱漆(しゆうるし)に(こがね)の輪島塗(わじまぬり)。
(あかゞね)に錫引(すゞび)きしたる高脚皿(たかあしざら)、高麗青磁(こませいじ)の鉢(はち)、
織部(おりべ)や呉須赤繪(ごすあかゑ)の小皿(こざら)。
何(いづ)れをとりても僕(やつかれ)ごときが用(つか)ふを憚(はゞ)る逸品(よきしな)。

床(とこ)の間(ま)を飾(かざ)る生花(いけばな)、
後方(しりへ)にましますは薪能(たきゞなう)に因(ちな)むと云ふ人形(にんぎやう)、
(はしら)と云はず、天井板(てんじやういた)と云はず、(かゞみ)と紛(まが)ふ漆塗(うるしぬり)。
床(とこ)の間(ま)には遙(はる)か南蠻渡來(なんばんわたり)の黒檀(こくたん)まで、、。

一(ひと)つとして疵附(きづゝ)き、毀(こぼ)れ、缺(か)けたるものなし
女將(おかみ)、器(うつは)下(さ)ぐるに、唯(たゞ)の一度(ひとたび)たりと重(かさ)ぬることなく
盆(ぼん)に載(の)る限(かぎ)りの數(かず)を運(はこ)ぶ。
その理由(ことわり)を訊(たづ)ぬれば、應答(いら)へて、『主人(あるじ)に叱(しか)られまするゆゑ』と。

器(うつは)に見(み)とれ、女將(おかみ)の所作(ふるまひ)に心奪(こゝろうば)ゝれ
口味(あぢ)にさしたる驚歎(おどろき)なし
しかはあれど、蓼(たで)の色鮮(いろあざ)やかなること、翠玉(えめらるど)かと疑(うたが)はれ
鉈豆(なたまめ)の色(いろ)、翡翠(ひすい)に寸毫(つゆ)異(こと)なるところなし

女將(おかみ)に據(よ)らば、およそ(たで)なるもの、これを擂(す)るや、
忽地(たちまち)に色褪(いろあ)せ、くすみ、元來(もと)の色(いろ)を失(うしな)ふとか。
慥(たしか)に、僕(やつかれ)行(い)きつけの鮨屋(すしや)もかく證言(かた)りぬ。
これもまた亭主(あるじ)と女將(おかみ)の心配(こゝろくば)りに相違(たが)ひなし。

宴會(うたげ)も酣(たけなは)。
地(ぢ)の時季(じき)に適(かな)ふもの斗(ばかり)を次々(つぎつぎ)に平(たひ)らげ、一安堵(ひとおちゐ)。
暑(あつ)き盛(さかり)の懐石(くわいせき)に缺(か)ゝせぬ(はむ)なきを不審(いぶかし)く思(おも)へど、
宿(やど)で放送局數(はうさうきよくすう)の少(すく)なさを知(し)り撲地(はた)と膝(ひざ)を打(う)つ。

東都(とうと)なれば蝦夷(えぞ)から琉球(りうきう)までなきものはなく、思(おも)ふが儘(まゝ)。
しかはあれど、その東都(とうと)ですら、今(いま)では何處(いづく)にても目(め)にする海鰻(はむ)、
寂(さび)れたる超級市場(すうぱ)にもある酢橘(すだち)、はたまた素麪(そうめん)ですら、
五十年前(いそとせまへ)は上方(かみがた)の傳手(つて)なくば入手(てにい)れがたきものと憶(おぼ)ゆ。

水菓子(みづぐわし)で〆たる後(のち)、誘(いざな)はるゝ儘(まゝ)奧(おく)の間(ま)に、、。
豆球(まめきう)のほか、部屋(へや)を照(て)らすは纔(わづ)かに蠟燭(らふそく)二燈(にとう)。
かゝる暗(くら)さ、久(ひさ)しく經驗(あぢは)ひたる記憶(おぼえ)なし。
惜(を)しむらくは和蠟燭(わらふそく)ならで、西洋蠟燭(せいやうらふそく)なること。

最後(いやはて)に、茶菓子(ちやぐわし)とゝもに抹茶(まつちや)を堪能(あぢは)ふ。
女將(おかみ)心盡(こゝろづ)くしの薄茶(うすちや)。
茶菓子(ちやぐわし)は甜(あま)きに過(す)ぎざれば、
小赤豆(あづき)の滋味(あぢ)味覺(した)に殘(のこ)りて、茶(ちや)で流(なが)すを躊躇(ためら)ふ。

辭別(いとまごひ)に當(あ)たり主人(あるじ)に挨拶(あいさつ)。
辻留』先代(せんだい)辻嘉一(つじかいち)直々(じきじき)の薫陶(てほどき)受(う)けし高弟(かうてい)。
由緒(すぢめ)正(たゞ)しきを鼻(はな)にかくるでもなく、居住(ゐず)まひを正(たゞ)し、
にこやかに僕等(やつかれら)見送(みおく)るぞありがたき。

  • 亭主(あるじ) 【撮影許可濟】

  • 亭主(あるじ) 【撮影許可濟】

  • 亭主(あるじ) 【撮影許可濟】

  • 亭主(あるじ) 【撮影許可濟】

  • 待合(まちあひ)の間(ま)、管待(もてなし)の茶(ちや)

  • 待合(まちあひ)の間(ま)、想思草(たばこ)盆(ぼん)

  • 待合(まちあひ)の間(ま)、掛(か)け軸(じく)

  • 夏向(なつむ)きの廊下(ほそどの)

  • 夏向(なつむ)きの衝立(ついたて)

  • 宴會(うたげ)の間(ま)、簾(すだれ)

  • 宴會(うたげ)の間(ま)、能(なう)の人形(にんぎやう)

  • 宴會(うたげ)の間(ま)、床(とこ)の間(ま)の生花(いけばな)

  • 輪島塗(わじまぬ)の觴(さかづき)

  • 濕(しめ)らせたる和紙(かみ)の載(の)る御造(おつく)り

  • 切(き)り子(こ)に造(つく)り

  • 切(き)り子(こ)に造(つく)り

  • 輪島塗(わじまぬり)の汁椀(しるわん)

  • 汁(しる)

  • 銅(あかゞね)の高脚皿(たかあしざら)に八寸(はつすん)のごときもの

  • 銅(あかゞね)の高脚皿(たかあしざら)に八寸(はつすん)のごときもの

  • 蓼酢(たでず)

  • 香魚(あゆ)

  • 香魚(あゆ)

  • 芋莖(ずいき)

  • 岩牡蠣(いはがき)

  • 飛騨牛(ひだうし)の八幡卷(やはたまき)

  • 炊合(たきあ)はせ、章魚(たこ)に鉈豆(なたまめ)

  • 胡麻豆腐(ごまどうふ)

  • 米(こめ)の飯(いひ)、東埔塞瓜(かぼちや)+薩摩芋(さつまいも)

  • 香(かう)の物(もの)、素麪唐茄(そうめんたうなす)に蛇腹胡瓜(きうり)

  • 水菓子(みづぐわし)、檸檬(れもん)煮凝(にこゞ)り

  • 辭別(いとまごひ)の間(ま)、蠟燭(らふそく)

  • 辭別(いとまごひ)の間(ま)での茶菓子(ちやぐわし)

  • 辭別(いとまごひ)の間(ま)での薄茶(うすちや)

  • 玄關(げんくわん)

2011/08/20 更新

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