1回
2011/08 訪問
川柳は 越中富山(ゑつちうとやま)の 藥膳(くすりめし) うるか丸めて 値千金
欝金(うこん)螢烏賊(ほたるいか)南蠻漬(なんばんづけ)
海蠃(ばいがひ)煮物(にもの)
海蠃(ばいがひ)煮物(にもの)
茯苓(ぶくりやう)揚(あ)げ、銀杏(ぎんなん)、藥膳(やくぜん)おかき、
茯苓(ぶくりやう)揚(あ)げ、銀杏(ぎんなん)、藥膳(やくぜん)おかき、
炊合(たきあ)はせ
炊合(たきあ)はせ、翡翠(ひすい)を髣髴(おもはす)き冬瓜(たうがん)
鮎(あゆ)肝(きも)うるか丸藥風(ぐわんやくふう)川貝母(せんばいも)添へ
紅燒海參(きんこふくめに)
鐵刺(てつさ)
鐵刺(てつさ)
能登(のと)岩牡蠣(いはがき)
紅燒鮑魚(にあはび)
"かくぶつ"=鰍(かじか)
神通川(じんづふがは)鰍(かくぶつ)鹽燒(しほやき)
神通川(じんづふがは)鰍(かくぶつ)鹽燒(しほやき)
庄川(しやうがは)香魚(あゆ)鹽燒(しほやき)
庄川(しやうがは)香魚(あゆ)鹽燒(しほやき)
"匙(さぢ)おもだか"浸(ひた)しなど
薬膳(やくぜん)柚餅子(ゆべし)
河豚(ふぐ)煮凝(にこゞ)り
螢烏賊(ほたるいか)干物(ひもの)
"いなだ(←鰤干物(ぶりひもの))"
立山(たてやま)、紅焼熊掌(くまのたなぞこに)
立山(たてやま)、紅焼熊掌(くまのたなぞこに)
立山(たてやま)、紅焼熊掌(くまのたなぞこに)付け合はせの豆芽(もやし)
立山(たてやま)、紅焼熊掌(くまのたなぞこに)付け合はせの爪(つめ)
松茸(まつたけ)に鯛(たひ)の汁椀(しるわん)
松茸(まつたけ)に鯛(たひ)の汁椀(しるわん)
炸蠍(さそりからあげ)
炸蠍(さそりからあげ)
炸蠍(さそりからあげ)
炸蠍(さそりからあげ)
炸人參(あげてうせんにんじん)
朝鮮人參(てうせんにんじん)
索麪(むぎなは)
甜瓜(めろん)
抜絲地瓜(さつまいもあめだき)
雪茶(ゆきちや)
2014/07/16 更新
僕(やつかれ)、先祖(とほつおや)が狂句(きやうく)で名(な)をなし、
谷中(やなか)の菩提寺(てら)には、鴨居(かもゐ)に今猶(いまなほ)句會(くゝわい)の額(がく)、
庭(には)に辭世(じせい)の句碑(くひ)を遺(のこ)す。
されば俗(よ)に『川柳(せんりう)』と號(よびな)す狂句(きやうく)には淺(あさ)からぬ縁(ゆかり)あり。
當家(こちら)、その屋號(やがう)『川柳(せんりう)』となし、三代續(さんだいつゞ)く料理茶屋(れうりぢャや)。
先代(せんだい)までは月竝(つきな)みなる割烹(かつぱう)なりしが、
三代目(さんだいめ)大島政文(おほしま万さふみ)親方(おやかた)となりて以來(よりこのかた)、
只顧(ひたすら)『藥膳(やくぜん)』の道(みち)を窮(きは)めんとす。
勿論(いふまでもなく)、本朝(ほんてう)で云ふ『藥膳(やくぜん)』とは、
震旦(もろこし)に古(ふる)くより傳承(つた)はる祕技(ひめわざ)にて、
正(たゞ)しくは『食療(しよくれう)』と稱(とな)ふ。
和食(わしよく)にこれを應用(おうやう)せし魁(さきがけ)こそ大島政文(おほしままさふみ)親方(おやかた)。
その長(なが)きに亙(わた)る惡戰苦鬪(あくせんくとう)・苦心慘憺(くしんさんたん)ぶりは、
彼(かれ)が著作(ちよさく)に審(つまびらか)。
親(おや)の諫(いさ)めも用(もち)ゐずに割烹(かつぱう)の殼(から)を打破(うちやぶ)り、
巷(ちまた)の謗(そし)りに耳(みゝ)塞(ふさ)ぎて調理(てうり)の常石(じやうせき)を覆(くつがへ)す。
まさしく、『和尚打傘、無髮(法)無天(やりたいはうだい)』。
唐山(もろこし)・朝鮮(てうせん)は勿論(いふにおよばず)、遠(とほ)く天竺(てんじく)まで、、。
柚餠子(ゆべし)は漆(うるし)の力(ちから)に閃(ひらめ)き、
揚(あ)げ物(もの)は中華(もろこし)の割烹調理法(やりかた)に倣(なら)ふ。
あれやこれやと試行錯誤(まよひつ)ゝ、研鑽(けんさん)積(つ)むこと幾星霜(いくせいさう)。
竟(つひ)に、その奧義(あうぎ)を窮(きは)め、
今(いま)や押(お)しも押(お)されもせぬ斯界(このみち)の第一人者(だいゝちにんしや)。
『藥膳革命(やくぜんかくめい)』かく成就(なり)ぬ。
閑話休題(それはさておき)、この日(ひ)の獻立(こんだて)。
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・杜仲藥茶(とちうやくちや)
・八年物(やとせもの)鮎(あゆ)肝(きも)うるか丸藥風(ぐわんやくふう)川貝母(せんばいも)*)添(ぞ)へ
・白蝦(しろえび)茯苓(ぶくりやう)揚(あ)げ、銀杏(ぎんなん)、
藥膳(やくぜん)おかき ←--海松子(まつのみ)、枸杞子(くこ)、南瓜子(かぼちやのたね)
・欝金(うこん)螢烏賊(ほたるいか)南蠻漬(なんばんづけ)
・炊合(たきあ)はせ ←翡翠(ひすい)を髣髴(おもはす)冬瓜(たうがん)
・海蠃(ばいがひ)煮物(にもの)
・紅燒海參(きんこふくめに)
・鐵刺(てつさ)
・能登(のと)の岩牡蠣(いはがき)
・紅燒鮑魚(にあはび)
・神通川(じんづふがは)"かくぶつ"**)鹽燒(しほやき)
・庄川(しやうがは)香魚(あゆ)鹽燒(しほやき) +黄蓮酢(わうれんず)?
・菜蔬(あをもの)煮凝(にこゞ)り
・藥膳(やくぜん)柚餠子(ゆべし)、河豚(ふぐ)煮凝(にこゞ)り、螢烏賊(ほたるいか)干物(ひもの)、
"いなだ"***)、"匙(さぢ)おもだか"滲(ひた)し、輪胡瓜(わきうり)
・立山(たてやま)、紅燒熊掌(くまのたなぞこに)
・松茸(まつたけ)に鯛(たひ)の汁椀(しるわん)
・炸蠍(さそりからあげ)、炸人參(あげてうせんにんじん)
・索麪(むぎなは)
・甜瓜(めろん)
・拔絲地瓜(さつまいもあめだき)
・雪茶(ゆきちや)
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押(お)し竝(な)めて、漢方藥(かんぱうやく)の目立(めだ)つは諾(うべ)なるかな。
目(め)に附(つ)くところでも、
杜仲茶(とちうちや)、川貝母(せんばいも)、茯苓(ぶくりやう)、海松子(まつのみ)、枸杞子(くこ)、
欝金(うこん)、黄蓮(わうれん)?、雪茶(ゆきちや)、、。
一(ひと)つとして藥臭(くすりくさ)き品(しな)はなく、瞬(またゝ)く中(うち)にこれを平(たひ)らぐ。
蓋(けだ)し、調理(てうり)の力量(うで)、組(く)み合(あ)はせの妙(めう)と云ふべし。
鮎(あゆ)の酢(す)の色鮮(いろあざ)やかならざるを訝(いぶか)しく思(おも)ひしかど、
風習(ならひ)の蓼(たで)ならで、あるいは黄蓮(わうれん)か?
今一(いまひと)つ顯著(きはだ)ちたる特徴(しるし)は、唐山(もろこし)の技藝(わざ)。
鶏卵(たまご)の白身(しろみ)を用(つか)ひて物(もの)を揚(あ)げ、
海參(きんこ、ほしなまこ)を戻(もど)して『紅燒海參(きんこしようゆふくめに)』となす。
『紅燒熊掌(くまのたなぞこに)』、『拔絲地瓜(さつまいもあめだき)』は勿論(いふもさら)なり。
色淡(いろあは)きにより、『熊掌(くまのたなぞこ)』を『紅燒(ほんしャお)』とするは誤(あやまり)か?
『拔絲地瓜(さつまいもあめだき)』は本朝(ほんてう)『大學芋(だいがくいも)』とは別物(べつもの)。
鍋(なべ)で糖蜜(みつ)からめたる地瓜(いも)を客前(かくまへ)で水(みづ)に取(と)るが風習(ならひ)。
人參(てうせんにんじん)に蜂蜜(はちみつ)加(くは)ふるは、朝鮮(てうせん)の智慧(ちゑ)。
『熊掌(くまのたなぞこ)』は人生初(うまれてはじめて)。
無論(いふまでもなく)、滿漢全席(まんかんぜんせき)でも高名(なだか)き龍肝豹胎(ちんみ)。
仔熊(こぐま)なれば臭(くさ)みもなく、濃厚(こ)き旨味(うまみ)口中(くちのなか)に奔(ほとばし)る。
つけあはせの豆芽(もやし)は、名(な)のある厨師(いたまへ)の『紅燒扒翅(ふかひれ)』にあしらふがごとし。
更(さら)には、乾燥(かんさう)と長期熟成(ちやうきじゆくせい)。
百年(もゝとせ)の保存(ほぞん)を目指(めざ)す『柚餠子(ゆべし)』、八年物(やとせもの)ゝ『うるか』、
螢烏賊(ほたるいか)の干物(ひもの)。
その齒應(はごた)へと深(ふか)き味(あぢ)はひには、眼精(め)から鱗(うろこ)の落(お)つる感慨(おもひ)。
鰍(かじか)の膓(わた) 、雲南産(うんなんさん)と云ふ松茸(まつたけ)の芳香(よきかをり)、
ほどよき甜瓜(めろん)の熟(う)れ工合(ぐあひ)、能登(のと)の岩牡蠣(いはがき)の大(おほ)きさ、、、。
これら、『藥膳(やくぜん)』ならねど、主人(あるじ)の誠心(まごゝろ)の傳(つた)はる逸品(よきしな)。
時季(じき)に適(かな)ふ地(ぢ)の物(もの)はそれだけでありがたきもの。
三代目主人(さんだいめ)大島政文(おほしま滿さふみ)、
學(まな)びながらも眞似(まね)に陷(おちい)らず、己(おの)が道(みち)を開拓(きりひら)く。
思(おも)ひ込(こ)みに囚(とら)はれず、敢(あ)へて不味(まづ)きもの口(くち)にするを厭(いと)はず。
俗(ぞく)なる言舌(ごんぜつ)を覆(くつがへ)し、新(あらた)なる口味(あぢ)を創造(つくりだ)さんとす。
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*)http://www.yakuzenjoho.net/chuyaku/baimo.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%9F%E3%82%AC%E3%82%B5%E3%83%A6%E3%83%AA
**)鰍(かじか)のことなり
http://daiwa.globeride.co.jp/fish/rever/kajika.html
***)鰤干物(ぶりひもの)ゝことなり