酔狂老人卍さんが投稿した徳山鮓(滋賀/余呉)の口コミ詳細

レビュアーのカバー画像

『此世をハ と里(り)や お暇尓(に) せん古(こ)う能(の) 煙りと供尓(に) 者(は)ひ 左樣なら』 (十返舎一九)

メッセージを送る

酔狂老人卍 (70代以上・男性) 認証済

この口コミは、酔狂老人卍さんが訪問した当時の主観的なご意見・ご感想です。

最新の情報とは異なる可能性がありますので、お店の方にご確認ください。 詳しくはこちら

利用規約に違反している口コミは、右のリンクから報告することができます。 問題のある口コミを報告する

徳山鮓余呉/郷土料理、オーベルジュ

1

  • 夜の点数:4.5

    • ¥10,000~¥14,999 / 1人
      • 料理・味 4.5
      • |サービス 3.0
      • |雰囲気 3.5
      • |CP 4.0
      • |酒・ドリンク -
  • 昼の点数:4.5

    • ¥10,000~¥14,999 / 1人
      • 料理・味 4.5
      • |サービス 3.0
      • |雰囲気 3.5
      • |CP 4.0
      • |酒・ドリンク -
1回目

2012/03 訪問

  • 夜の点数:4.5

    • [ 料理・味4.5
    • | サービス3.0
    • | 雰囲気3.5
    • | CP4.0
    • | 酒・ドリンク-
    ¥10,000~¥14,999
    / 1人
  • 昼の点数:4.5

    • [ 料理・味4.5
    • | サービス3.0
    • | 雰囲気3.5
    • | CP4.0
    • | 酒・ドリンク-
    ¥10,000~¥14,999
    / 1人

湖(うみ)の幸 山の幸すら擅(ほしいまゝ) 〆て一萬 まさに『徳山』

【2012-03-24追記】:
此度(こだみ)は"鴨(かも)盡(づ)くし"の宴(うたげ)。
"小鴨(こがも)"に"青首(あをくび)"、すなはち、雄(をす)の"眞鴨(まがも)"。
炙(あぶ)り、燻(いぶ)し、鍋(なべ)となし、肝(きも)は有間煮(ありまに)として餘(あま)すところなし。
山椒(さんせう)の色(いろ)の翡翠(ひすい)なるは勿論(いふもさら)なり。

これ、主人(あるじ)自(みづか)ら裏山(うらやま)に分(わ)け入(い)り、
新暦(しんれき)六月(ろくがつ)の纔(わづ)か五日(いつか)に限(かぎ)りて摘(つ)みしもの。
眼(め)に麗(うるは)しく香(かをり)も高(たか)き實山椒(みざんせう)。
鮒鮓(ふなずし)の(いひ)と竝(なら)び、これぞ當家(こちら)ならではの香(かをり)。

山葵(わさび)もまた、亭主(あるじ)自(みづか)ら艸木(くさき)を踏分(ふみわ)け、澤(さは)、
否(いな)、水(みづ)すらなきに、地下(つちのした)なる伏流水(ふくりうすい)を探知(さぐ)り當(あ)て、
地下(つちのした)深(ふか)くより堀出(ほりいだ)したるものと云ふ。
最長(おほきなるもので)一尺七寸(いつしやくなゝすん)と、弓削道鏡(ゆげのだうきやう)竝(なみ)。

伊豆(いづ)の山葵(わさび)の甘(あま)さこそあらねど、
山葵(わさび)の特徴(もちあぢ)たる芳香(かぐはしきかをり)僕(やつかれ)が鼻竅(はな)を穿(うが)つ。
辛味(からみ)も『比良山莊』のそれに比(くら)ぶれば遙(はる)かに穩(おだ)やか。
"けん"は蘿蔔(すゞしろ)の纖切(せんぎ)りにて、庖丁遣(はうちやうづか)ひは神技(かみわざ)

この山葵(わさび)と"けん"の載(の)る"作(つく)り"は"てり鮒(ぶな)"の皿(さら)。
"てり鮒(ぶな)"なるを口(くち)にし、目(め)にし、耳(みゝ)にするのはこれが初(はじめて)。
遠目(とほめ)には、烏賊(いか)ゝ(ひらめ)かと見紛(みまが)ふ細作(ほそづく)り。
橙色(だいだいゝろ)の魚卵(たまご)は、寔(まこと)、上質(よ)き唐墨(からすみ)を髣髴(おもはす)。

稚鮎(ちあゆ)の天麩羅(てんぷら)にも吃驚(びつくり)栗栗栗栗(くりくりくりくり)。
小麥粉(めりけんこ)ばかりと云ふに、外皮(そと)はからりと揚(あ)がり、
加旃(しかのみならず)、中(なか)の稚鮎(ちあゆ)はなほ瑞々(みづみづ)しさを保(たも)つ
その力量(うで)月竝(つきなみ)ならざるは明白(あきらか)。

鶏卵(たまご)の有無(ありやなしや)を言問(ことゝ)はゞ、
主人(あるじ)應答(いら)へて曰(いは)く、「鶏卵(たまご)は用(つか)ひてござりませぬ」と。
そもそも揚物(あげもの)に鶏卵(たまご)用(つか)ふは世(よ)の倣(なら)ひ
知(し)る限(かぎ)り、高名(なだゝる)天麩羅店(てんぷらや)にして、鶏卵(たまご)を用(つか)はざるはなし。

僕(やつかれ)知(し)る限(かぎ)りでは、揚物(あげもの)に鶏卵(たまご)を用(つか)はぬ店(みせ)は、
一)當家(こちら)『徳山鮓
ニ)越中富山(ゑつちゆうとやま)『川柳
三)僕(やつかれ)足繁(あしゝげ)く通(かよ)ふ玉の井(たまのゐ)『うを徳

川柳』の主人(あるじ)も、『うを徳』の主人(あるじ)も、異口同音(ことばこそたがへどくちをそろへて)、
紆餘曲折(あれやこれやと)自(みづか)ら編(あ)み出(いだ)したる祕技(ひめわざ)」と證言(かた)る。
そして、おそらくは當家(こちら)の主人(あるじ)も、、、。
豈(あに)、これぞ"引算(ひきざん)の美(び)"と言(い)はざるべけんや?

姥(おみな)の手(て)になると云ふ"澤庵漬(たくあんづけ)"も珠玉(たふたきたま)の一品(ひとしな)。
鮒鮓(ふなずし)の飯(いひ)にも似(に)たる乳酸醗酵(にゆうさんはつかう)の滋味(ふかきあぢはひ)。
主人(あるじ)渾身(こんしん)の作(さく)、"飯漬(いひづけ)鶏卵(たまご)"も面白(おもしろ)き品(しな)。
莞爾(につか)とうち笑(ゑ)み、「當初(はじめ)、生鶏卵(なまたまご)にて試(こゝろ)みたりしかど、、、」と。

案下某生再説(それはさておき)、この日(ひ)の鴨(かも)。
小鴨(こがも)の脚(あし)より湧(わ)き立(た)つは、野鳥(のゝとり)ならではのほどよき匂(にほ)ひ
それに釣(つ)られ、思(おも)はずこれを貪(むさぼ)り骨(ほね)まで舐(ねぶ)り盡(つ)くす。
因(ちな)みに、震旦(もろこし)では鴨(かも)の"水掻(みづか)き"を珍重(おほいにおもんず)。

想定外(おもひのほか)に癖(くせ)少(すく)なきは青首(あをくび)の鴨(かも)。
脂(あぶら)の家鴨(あひる)・合鴨(あひがも)より少(すく)なきは、當然(あたりまへ)のことながら、
その身(み)甚(いと)柔(やは)らかく、頗(すこぶ)る瑞々(みづみづ)しく、寸毫(つゆ)臭氣(くさみ)なし
あまりのことに拍子拔(ひやうしぬ)けするほど。

【2011-08-15記】:
衆知(あまねしらる)ゝごとく、東都(とうと)は四海(しかい)に冠(かん)たる美食(びしよく)の都(みやこ)。
およそ美味(うまきあぢ)にして、この地(ち)にあらざるはなし。
就中(わきても)、魚介(うをのたぐひ)は江都(えど)で名(な)のある鮨屋(すしや)に限(かぎ)り、
築地(つきぢ)には津々浦々(つゝうらうら)より秀逸(とびきり)の品(しな)が集(つど)ふ。

倩(つらつら)その理由(ことわり)を探究(たづ)ぬれば、
電氣氷室(えれきひむろ)、流通(りうつふ)・輸送(ゆさう)の劇的進歩(いちじるしきあゆみ)に伴(ともな)ひ、
味覺(した)の肥(こ)え、裕福(ふところゆた)かなる大城市(おほきなるみやこ)に物(もの)集中(あつ)まるが、
商賣(あきなひ)の常道(つね)なればなり。

京師(みやこ)もまた往古(そのかみ)より傳承(つた)はる技藝(わざ)に加(くは)へ、
明石鯛(あかしだひ)、大間鮪(おほましび)など、活(い)きた儘(まゝ)にこれを錦市場(にしき)に運(はこ)ぶ。
古(いにしへ)より活(い)けで運(はこ)ばれたと云ふ海鰻(はむ)ですら、
近會(ちかごろ)では、淡路(あはぢ)より、遠(とほ)き朝鮮(てうせん)のものを嗜(この)むとか。

力量(うで)の立(た)つ料理人(れうりにん)手煆煉(てだれ)職人(しよくにん)もまた、
東都(とうと)や京都(きやう)に偏(かたよ)り聚(あつま)る。
(ゐなか)にはその地(ち)ならではの食材(しよくざい)ありと云ふとも、
可惜(あたら)寶(たから)の持(も)ち腐(ぐさ)れとなるが通例(つね)。

嗚呼(あゝ)、都(みやこ)に山(やま)なく海(うみ)なく、鄙(ゐなか)には人材(ひと)なし
時季(じき)に適(かな)ふ地(ぢ)の食材(もの)斗(ばかり)を用(つか)ひ、
割烹(かつぱう)の手煆煉(てだれ)、凄腕(すごうで)の板前(いたまへ)の技藝(わざ)以(も)て
調理(てうり)するは、僕(やつかれ)望(のぞ)みてなほ叶(かな)はぬ儚(はかな)き願(ねが)ひ。

ある時(とき)、一天(そら)俄(には)かにかき曇(くも)り、電光(いなびかり)彼此(をちこち) を走(はし)りぬ。
雷鳴(いかづち)耳(みゝ)を劈(つんざ)き、激(はげ)しき雨(あめ)肩(かた)を濡(ぬ)らす。
驟雨(にはかあめ)が止(や)み、雲間(くもま)より覘(のぞ)くは蒼穹(あをぞら)。
霽(はれ)たる空(そら)には七色(なゝいろ)の虹(にじ)も、、。

不圖(ふと)耳(みゝ)を澄(す)ませば、虹(にじ)の彼方(かなた)より玉(たま)の御聲(みこゑ)。
『汝(なんぢ)卍老(まんじらう)、朕(わ)が託宣(ことのは)、努々(ゆめゆめ)疑(うたが)ふこと勿(なか)れ!』。
越中(えつちゆう)、近江(あふみ)に類稀(たぐひまれ)なる廛(みせ)あるに因(よ)り、
 疾(と)く疾(と)く朕(われ)の下(もと)に馳(は)せ參(さん)じて供(とも)すべし』と、、。

かくて、味神樣(あぢがみさま)の託宣(おつげ)に從(したが)ひ、
越中(えつちゆう)『一風庵』より『川柳』を經(へ)て、最後(いやはて)は近江(あふみ)の『徳山鮓』。
直走(ひたはし)る轎(くるま)は賤ヶ嶽(しづがたけ)近傍(ちかく)を過(す)ぎ、
北國街道(ほつこくかいだう)木之本宿(きのもとじゆく)に到(いた)れり。

能(よ)く往古(いにしへ)の街竝(まちなみ)の姿形(すがた)を留(とゞ)めながらも、
徒(いたづら)に流行(はやり)の『街興(まちおこ)し騒(さは)ぎ』に與(くみ)することもなく、
頑(かたく)なに己(おの)が生業(なりはひ)を墨守(まも)る。
周邊(まはり)の民家(いへ)も古(ふる)きと新(あたら)しきを問(と)はず、昔(むかし)ながらの普請(ふしん)。

軈(やが)て轎(くるま)は余呉湖(よごのうみ)に。
琵琶湖(びはこ)に連(つら)なると云ふとも、より高(たか)きところに在(あ)り、
山(やま)に圍(かこ)まれ、水(みづ)は澄(す)み、夥(あまた)の魚(うを)が棲(すみか)となす。
泥龜(すつぽん)、(むなぎ)など枚舉(かぞふ)るに遑(いとま)なし。

當家(こちら)『徳山鮓』の所在地(あるところ)、
余呉湖(よごのうみ)の畔(ほとり)、湖(うみ)を一望(いちばう)の下(もと)にする高臺(たかだい)。
亭主(あるじ)自(みづか)ら湖(うみ)に出(いで)ゝ魚(うを)ゝ漁撈(すなど)り、
山(やま)を登攀(よぢのぼ)りて季節(きせつ)の幸(さち)を採取(つ)む。

この日(ひ)轎(くるま)を下(お)りるや、桶(おけ)を手(て)にせし主人(あるじ)の姿(すがた)。
その中身(なかみ)はと檢(あらた)むれば、勢(いきほ)ひよく跳(は)ぬる香魚(あゆ)。
絶(た)へ間(ま)なく水(みづ)の流(なが)れ溢(あふ)るゝ籠(かご)には、
優(いう)に一貫目(いつくわんめ)を超(こ)す(すつぽん)に、さまざまなる大(おほ)きさの(むなぎ)。

湖畔(みづうみのほとり)の部屋(へや)へと誘(いざな)はれ、一安堵(ひとおちゐ)。
棚(たな)に所狹(ところせま)しと竝(なら)ぶは小泉武夫(こいづみたけを)の書籍(しよじやく)。
醗酵(はつかう)を説(と)きては右(めて)に出(いづ)る者(もの)なき賢者(かしこびと)。
不圖(ふと)窗玻璃(まどがらす)を覽 (み)るに、守宮(やもり)を髣髴(おもは)す小(ちひ)さな蛙(かはづ)。

最初(いやさき)は玉薤(さけ)擇(えら)み。
迷(まよ)ふことなく、『賤ヶ嶽(しづがたけ)の七本槍(しちほんやり)』など二種(ふたくさ)に。
吭(のんど)潤(うるほ)さんと(みづ)を口(くち)にするや、忽地(たちまち)絶句(ことばをうしな)ふ。
甘(あま)く清(きよ)らかなること、かの八功徳水(はちくどくすい)と錯覺(あやま)つばかり。

此度(こだみ)口(くち)にせし美味(うまきもの)數(かず)ある中(なか)に、
就中(わきても)感慨(おもひで)深(ふか)きはこの清水(しみづ)。
この水(みづ)の前(まへ)には、吟釀酒(たくみにかもされたるさけ)すら重(おも)く、甜(あま)きに過(す)ぎ、
舌(した)に纏(まと)はるほど。

この夜(よ)の宴(うたげ)は余呉湖(よごのうみ)の前面(むかひ)より昇(のぼ)る月(つき)を愛(め)でつゝ、、。
雲(くも)に霞(かす)む十三夜(じふさんや)の圓(まどか)なる朧月(をぼろづき)も、
軈(やが)て煌々(くわうくわう)たる光(ひかり)を放(はな)ち、その姿(すがた)を湖(うみ)に映(うつ)す。
宴(うたげ)の菜(な)の仔細(しさい)は冩眞(しやしん)に審(つばら)なればこれを省(はぶ)く。

過半(おほかた)余呉湖(よごのうみ)と丹生川(にぶがは)にて漁獵(すなど)れたる魚(うを)。
すなはち、香魚(あゆ)に泥龜(すつぽん)、煮頃鮒(にごろぶな)に琵琶鱒(びはます)これなり。
大(おほ)きさに合(あ)はせて調理法(やりかた)を選(えら)み、
吾儕(わなみ)が味覺(した)を寸毫(つゆ)飽(あ)きさせぬは、偏(ひとへ)に主人(あるじ)の力量(うで)。

疱丁捌(はうちやうさば)きより比類(たぐひまれ)なる技藝(わざ)の巧(たく)みさを窺(うかゞ)ふは、
宛然(あたかも)闇夜(やみよ)に火(ひ)を見(み)靜夜(せいや)に雷鳴(いかづち)を聞(き)くがごとし。
それを證明(しめ)すは甚(いと)輒(たやす)きことなれど、
一(ひと)つ例(ためし)を舉(あ)ぐれば『胡瓜(きうり)の"けん"=纖切(せんぎ)り』。

(むなぎ)は、『落(お)とし』、『白燒(志らや)き』、『蒲燒(かばや)き』、『鰻雜炊(うざうすい)』と、
手(て)を變(か)へて口(くち)を欺(あざむ)き、品(しな)を變(か)へて目(め)を愉(たの)します。
大鰻(おほむなぎ)は炙(あぶ)りて齒應(はごた)へを殘(のこ)し、
小(ちひ)さめの口細鰻(くちぼそむなぎ)は雜炊(ざうすい)として絹(きぬ)の滑(なめ)らかさを留(とゞ)む。

山椒(さんせう)の最(いと)も麗(うるは)しき(みどり)には思(おも)はず瞠目(めをみは)り、
暫(しば)し絶句(ことばをうしな)ふ他(ほか)に方策(すべ)はなし。
實(げ)に、『一風庵』の(たで)に優(まさ)るとも劣(おと)らぬ鮮(あざ)やかさ。
この青(あを)さを保(たも)つは纔(わづ)かに五日(いつか)とも十日(とほか)とも云ふ。

揚(あ)げ物(もの)ゝ冴(さ)へは天麩羅職人(てんぷらしよくにん)に遜色(そんしよく)なし。
傍(かたは)らなる味神樣(あぢがみさま)さしおきて、
敢(あ)へて出汁(だし)と鹽梅(あんばい)を語(かた)るは、烏滸(をこ)がましきかぎり。
主人(あるじ)が技藝(わざ)の由緒(すぢめ)正(たゞ)しきは勿論(いふもさら)なり。

白眉(はくび)は當店(こちら)の招牌(かんばん)たる鮒鮓(ふなずし)。
米(こめ)の飯(いひ)は元(もと)の容(かたち)をとゞめ、
癖(くせ)少(すく)なくして能(よ)く蜂蜜(はちみつ)とも調和(てうわ)。
粥(かゆ)のごとき飯(いひ)をかくも薄(うす)く切(き)るとは驚歎(おどろ)くほかになし。

亭主(あるじ)に據(よ)らば、よき頃合(ころあ)ひを見計(みはか)らひて冷凍(こほら)せ、
これを纔(わづ)かに解凍(とか)したる後(のち)薄(うす)く削(そ)ぎたるものとか。
(いひ)の凍結凝乳(あいすくりん)は飯粒(めしつぶ)柔(やは)らか。
匂(にほ)ひを伴(とも)ひ癖(くせ)も強(つよ)め。

元來(もとより)鮒鮓(ふなずし)なるもの、
土地(とち)に因(よ)り家(いへ)に從(したが)ひ、千差萬別(さまざま)。
當店(こちら)、幾種(いくゝさ)もの仕込(しこ)みを施(ほどこ)し、
菜(しな)ごとに最適(もつともよくあ)ふ漬(つ)かり工合(ぐあひ)の飯(いひ)を選(えら)むとなむ。

乾酪(ちいず)・蕃茄(とまと)に橄欖油(おりぶあぶら)まで用(つか)ひこなすは意太利(いたり)の、
蒸(む)し物(もの)に油(あぶら)注(そゝ)ぐは唐山(もろこし)傳來(わたり)の技法(わざ)。
山椒(さんせう)や鮓(すし)の旬(しゆん)を逃(のが)すまじと、冷凍(れいとう)すら厭(いと)はぬは、
主人(あるじ)が研究(けんきう)の賜物(たまもの)にして、類稀(たぐひまれ)なる力量(うで)の證明(あかし)

そもそも『熟(な)れ鮓(ずし)』なるは最(もつと)も古(ふる)き鮓(すし)。
その源流(みなもと)を温(たづ)ぬれば遠(とほ)く震旦(もろこし)の南方(みなみ)にあり。
鹽(しほ)を施(ほどこ)し飯(いひ)で釀(かも)し、その身(み)、時(とき)には飯(いひ)も啖(くら)ふ
これに較(くら)ぶれば、握鮓(にぎりずし)はおろか、押鮓(おしずし)ですら即製物(まがひもの)。

(すし)』とは元來(もとより)鹽辛(しほから)のごときものなれば、
すし』に『』の字(じ)當(あ)つるは誤(あやま)りにて、『徳山鮓』の『』こそ正(たゞ)しきもの。
握鮓(にぎりずし)の嚆矢濫觴(さきがけ)『與兵衞鮓(よへゑずし)』が末裔(すゑ)、
小泉迂外(こいづみうがい)こと小泉清三郎(こいづみせいざぶらう)もまたこの字(じ)を用(つか)ふ。

冷藏(れいざう)・流通(りうつふ)の整(とゝの)ひたる現今(いま)、
紛(まぎ)れもなく、握鮓(にぎりずし)こそ最(もつと)も"(せい)"なる鮓(すし)。
その威光(ひかり)、京坂(けいはん)、關八州(くわんはつしう)、蝦夷地(えぞち)はもとより、
普(あまね)く四海(しかい)の隅々(すみずみ)を照(て)らす勢(いきほ)ひ。

甚(いと)"(そ)"なる熟(な)れ鮓(ずし)はもはや風前(かぜのまへ)の燈火(ともしび)に異(こと)ならず。
その熟(な)れ鮓(ずし)にかくも"精(せい)にして"新(あら)たなる技藝(わざ)を凝(こ)らすは
宛然(あたかも)、古代魚(しいらかんす)を池(いけ)に放(はな)ちて錦鯉(にしきごひ)となし
あるいは、鄙娘(ゐなかむすめ)に化粧(けはひ)施(ほどこ)して太夫(たいふ)となすに似(に)たり

口味(あぢ)と技藝(わざ)の凄(すご)さに一點(いつてん)の曇(くも)りもあらねど、
客(かく)些(いさゝ)か多(おほ)かりしかば、主人(あるじ)の遽(いそがは)しきが玉(たま)に瑕(きず)
廛(みせ)の設(しつら)へ、居心地(ゐごゝち)、心盡(こゝろづ)くしの管待(もてなし)ぶりでは、
一風庵』と、『月(つき)と鼈(すつぽん)』、『挑燈(ちやうちん)に鐘(つりがね)』ほどの相違(たが)ひ。

悉(ことごと)く平(たひ)らげ、啖(くら)ひ盡(つ)くし、玻璃盞(こつぷ)の水(みづ)まで飮干(のみほ)し、
亭主(あるじ)と談笑(よもやまばなし)にうち興(きやう)ずること霎時(しばし)。
已(すで)に相知(なじみ)の味神樣(あぢがみさま)とは宛然(あたかも)舊友(ふるきはらから)のごとし。
相互(たがひ)に記念冩眞(きねんしやしん)を撮(と)りあひ、再訪(さいはう)を誓(ちか)ひて辭別(いとまごひ)。

  • 亭主(あるじ) 【撮影許可濟】

  • "てり鮒(ぶな)"細作(ほそづく)り

  • 鴨(かも)

  • 飯(いひ)漬(づ)け鶏蛋(たまご)

  • 稚鮎(ちあゆ)などの天麩羅(てんぷら)

  • 小鴨(こがも)炙焼(あぶりやき)

  • 鴨(かも)

  • 鹿(しか)煮込(にこみ)

  • 小鴨(こがも)

  • 小鴨(こがも)

  • 青首(あをくび)の眞鴨(まがも)

  • 煮(に)へ滾(たぎ)る鴨鍋(かもなべ)

  • 香(かう)の物(もの)

  • 鴨(かも)の肝(きも)

  • 飯(いひ)のアイス凝乳(くりん)

  • 亭主(あるじ) 【撮影許可濟】

  • 亭主(あるじ) 【撮影許可濟】

  • 亭主(あるじ) 【撮影許可濟】

  • 丹生川(にぶがは)の香魚(あゆ)

  • 余呉湖(よごのうみ)の鰻(むなぎ)

  • 玻璃盞(こつぷ)

  • 琵琶鱒(びはます)

  • 鰻(むなぎ)の落(お)とし

  • 胡瓜(きうり)の"けん"、すなはち"繊切(せんぎ)り"

  • 鰻(むなぎ)の肝(きも)

  • 鯖(さば)熟鮓(なれずし)

  • 鰻(むなぎ)白炙(しらや)き

  • 鰻(むなぎ)蒲炙(かばや)き

  • 香魚(あゆ)の造(つく)り

  • 香魚(あゆ)肝(きも)の天麩羅(てんぷら)

  • 香魚(あゆ)の唐揚(からあ)げ

  • 香魚(あゆ)の唐揚(からあ)げ

  • 手長蝦(てながえび)

  • 鮎(あゆ)鹽燒(しほや)き 【ピンぼけ御免】

  • 手長蝦(てながえび)天麩羅(てんぷら)

  • 手長蝦(てながえび)天麩羅(てんぷら) 【擴大圖(かくだいづ)】

  • 稚鮎(ちあゆ)酢物(すのもの)

  • 稚鮎(ちあゆ)酢物(すのもの) 【擴大圖(かくだいづ)】

  • 稚鮎(ちあゆ)酢物(すのもの) 【擴大圖(かくだいづ)】

  • 煮頃鮒(にごろぶな)熟(な)れ鮓(ずし)

  • 煮頃鮒(にごろぶな)熟(な)れ鮓(ずし)、蜂蜜(はちみつ)がけ

  • 琵琶鱒(びはます)蒸物(むしもの)、橄欖油(おりぶゆ)がけ

  • 鰻雜炊(うざふすい)

  • 鰻雜炊(うざふすい)

  • 香(かう)の物(もの)

  • 鮒鮓(ふなずし)飯(いひ)入(い)りの凍結凝乳(あいすくりん)

  • 余呉湖(よごのうみ)畔(ほとり)なる母屋(おもや)

  • 餘呉湖(よごのうみ)

  • 余呉湖(よごのうみ)

  • 轍道(てつだう)

  • 窗(まど)からの眺望(ながめ)

2012/03/24 更新

エリアから探す

すべて

開く

北海道・東北
北海道 青森 秋田 岩手 山形 宮城 福島
関東
東京 神奈川 千葉 埼玉 群馬 栃木 茨城
中部
愛知 三重 岐阜 静岡 山梨 長野 新潟 石川 福井 富山
関西
大阪 京都 兵庫 滋賀 奈良 和歌山
中国・四国
広島 岡山 山口 島根 鳥取 徳島 香川 愛媛 高知
九州・沖縄
福岡 佐賀 長崎 熊本 大分 宮崎 鹿児島 沖縄
アジア
中国 香港 マカオ 韓国 台湾 シンガポール タイ インドネシア ベトナム マレーシア フィリピン スリランカ
北米
アメリカ
ハワイ
ハワイ
グアム
グアム
オセアニア
オーストラリア
ヨーロッパ
イギリス アイルランド フランス ドイツ イタリア スペイン ポルトガル スイス オーストリア オランダ ベルギー ルクセンブルグ デンマーク スウェーデン
中南米
メキシコ ブラジル ペルー
アフリカ
南アフリカ

閉じる

予算

営業時間

ページの先頭へ