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夜の点数:4.4
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¥10,000~¥14,999 / 1人
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料理・味 4.5
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|サービス 3.5
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|雰囲気 3.8
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|CP 4.0
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|酒・ドリンク -
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[ 料理・味4.5
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| サービス3.5
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| 雰囲気3.8
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小賢(こざか)しき 今様鮓(いまどきすし)より 廉(やす)ければ 足踏(あしぶ)みもせず たまの『はしぐち』
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2015/04/08 更新
大約(およそ)十年(とゝせ)ぶりの『はしぐち』。
此度(こだみ)は若(わか)き友人(とも)と兩個(ふたり)。
吾儕(わがともがら)を除(のぞ)き、僉(みな)香港(あちら)の方々(かたがた)。
近會(ちかごろ)、鮓店(すしや)には異朝(あちら)の人民(たみ)が顯著(めだつ)。
東道(あるじ)、彼們(かれら)を欵待(もてなす)に、
怯(ひる)むでもなく、媚(こ)ぶることもなく、垂準(さげし)むでもなく、
纔(わづ)かなる英單語(あんげりあことば)を巧妙(たくみ)に操(あやつ)る。
寔(まこと)、あはれなり!
それとなく、顏色(かほばせ)・聲音(こはいろ)を窺(うかゞ)ふに、
吾儕(わなみ)に對(むか)ふと寸毫(つゆ)異(こと)なるところなし。
近來(ちかごろ)、漫(みだり)に媚(こ)ぶるを悦(よろこ)ぶ徒(ともがら)多(おほ)きは、
歎(なげ)かはしき限(かぎ)り。
漬場(つけば)に立(た)つは橋口親方(はしぐちおやかた)。
身長(うはぞへ)高(たか)き男前(をとこまへ)。
その凛々(りゝ)しき姿(すがた)は『喜壽司』油井親方(ゆゐおやかた)に雙璧(ならぶ)。
亭主(あるじ)を扶助(たす)け、管待(もてなし)に擔當(あた)るは御内儀(おかみ)。
眞子鰈昆布〆(まこがれひこぶじめ)、眞鯵(まあぢ)、春子(かすご)、小鰭(こはだ)、
蛤(はまぐり)、赤貝(あかゞひ)、鮪(しび)、鮪(しび)醤油漬(しやうゆづけ)、
肥的(あぶらみ)に近(ちか)き鮪(しび)、穴子(あなご)、鶏卵燒(たまごやき)。
鮓(すし)十一貫(じふいちくわん)に、玉薤(さけ)兩個(ふたり)で二合(にがふ)。
大約(およそ)、一個(ひとりあたり)一萬四千圓(いちまんよんせんゑん)。
鮓(すし)の對價(あたひ)、一箇(ひとつ)一千圓強(いちせんゑんとすこし)。
價格(ね)に限(かぎ)るなら銀座(ぎんざ)にほゞ同(おな)じ。
辭別(いとまごひ)まで、西洋時辰儀(せいやうどけい)にして一時間半(いちじかんはん)。
倩(つらつら)賈内(なか)の光景(ありさま)を窺(うかゞ)ふに、
漬臺(つけだい)・櫃臺(かうんた)ともに眞新(まあらた)しき檜(ひのき)。
照火(ともしび)の明(あか)るきこと、白晝(まひる)かと懐疑(うたが)はれ、
柔(やは)らさは、障子(しやうじ)に差込(さしこ)む陽光(ひのひかり)と錯誤(あやま)つ。
漬臺(つけだい)に長細(ながほそ)き磁器(じき)の皿(さら)あり。
その上(うえ)には口直(くちなほ)しの生薑(はじかみ)。
薄(うす)く、尤(いと)美(うつ)しく重(かさ)ね切(き)らる。
嫌(いや)な甜(あまみ)なく、醋(す)の角(かど)もなき佳味(よきあぢはひ)。
扨(さて)、狙(ねら)ひ定(さだ)めし鮓(すし):
叮嚀(ねんごろ)なれど、手數(てかず)少(すく)なに握(にぎ)られ、
恭(うやうや)しげに差出(さしいだ)さる。
『なか田』一門(いちもん)より小(ちい)さく、『久兵衞』、『おけい』竝(なみ)。
豫(かね)てより名(な)にし負(お)ふ、沈下(しづ)みゆく鮓(すし)。
沈(しづ)みも切(き)らで、疾(と)く疾(と)く摘(つま)みて口中(くちのなか)に、、。
須臾(たちまち)彈(はぢ)け散(ち)ること鳳仙花(ほうせんくわ)に似(に)たり。
あるいは、夏(なつ)の夜空(よぞら)に咲(さ)く花火(はなび)を髣髴(おもはす)。
温度(あたゝかさ)も適度(ほどよ)く、
粒(つぶ)屹然(きりゝ)と立(た)ちて、しかも、舌(した)に滑(なめ)らか。
奧齒(おくば)に二粒(ふたつぶ)ほどが殘(のこ)り、
これを噛締(かみし)むるや、忽地(たちまち)滅(きえ)て咽喉(のみど)の奧(おく)に、、。
酢(す)も鹽(しほ)も穩(おだ)やか。
赤醋(あかず)を嗜(この)む若手(わかて)とは對照的(ことな)り、
温和(おだやか)に過(す)ぐるほど。
さはあれど、これほどまでに味覺(した)を驚(おどろ)かす舎利(しやり)は稀有(まれ)。
昆布〆(こぶじめ)でありながら、旨味(うまみ)"のみ"加(くは)ゝる眞子鰈(まこがれひ)、
春子(かすご)、小鰭(こはだ)に瞻(み)る〆技術(しめわざ)の巧妙(たくみ)さ、
最小限(ひかへめ)なる庖丁(はうちやう)なれど魂(たましひ)を搖(ゆ)する眞鯵(あぢ)。
薄燒卵(うすやきたまご)の至高(このうへな)き味(あぢはひ)なるは勿論(いふもさらなり) 。
その都(すべ)てが美(うつ)しく、舌(した)悦(よろこ)ぶこと限(かぎり)なし。
實(げ)に、銀座並(ぎんざなみ)の價格(ね)を「廉(やす)し」と錯覺(おも)はすほど。
相知(なじみ)の鮓店(すしや)に據(よ)らば、修業先(わざをならひおぼ)へしは『勘八』。
これほどまでに味(あぢ)秀(ひい)で、端正(をりめたゞし)きに感歎(こゝろうご)かさる。
最初(いやさき)より最後(いやはて)まで、媚(こ)び侫媚(へつら)ふことなく、
驕(おご)らず、疎(おろそ)かにも、饒舌(みだりにしたうごか)すこともあらで、
千尋(ちひろ)の巖(いはを)のごとく泰然自若(おちつきはらふ)。
あはれ!、寔(まこと)に天晴(あつぱれ)!、「あはれ」と云ふほか術(てだて)なし。
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【照相機】:旭光學賓得士K-三數碼單鏡反光照相機
【鏡頭】:...蔡司(Carl Zeiss) Distagon T* 2.0/35 ZK @F2.0