酔狂老人卍さんが投稿した鮨 猪股(埼玉/川口)の口コミ詳細

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『此世をハ と里(り)や お暇尓(に) せん古(こ)う能(の) 煙りと供尓(に) 者(は)ひ 左樣なら』 (十返舎一九)

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掲載保留鮨 猪股川口元郷、川口/寿司

3

  • 夜の点数:4.5

    • ¥20,000~¥29,999 / 1人
      • 料理・味 4.5
      • |サービス 4.0
      • |雰囲気 3.8
      • |CP -
      • |酒・ドリンク -
3回目

2017/06 訪問

  • 夜の点数:4.5

    • [ 料理・味4.5
    • | サービス4.0
    • | 雰囲気3.8
    • | CP-
    • | 酒・ドリンク-
    ¥20,000~¥29,999
    / 1人

熟成(うら)し喰(く)ふ 奧州(むつ)陸前(りくぜん)の 星鰈(ほしがれひ) たつた一貫(ひとつ)で 虜(とりこ)となりけり

四度目(よたびめ)の『豬股』。
當日(そのひ)電話(テレフヲン)するに、「空席(あき)あり」との應答(いらへ)。
今猶(いまなほ)かくのごとき景状(ありさま)なる縁由(ことのよし)、
偏(ひとへ)に、"川口(かはぐち)"と云ふ地(ところ)の牆壁(かべ)にあらん。

とは云へ、かの蒲田(かまた)『初音鮨』の前例(ためし)もあり、
努々(ゆめゆめ)油斷大敵(きをぬくべからず)!
半年後(はんとせのち)、
「『初音鮨』のごとき爲體(てゐたらく)にならぬ」とは、難斷言(いひきりがたし)。

"熟成(ねかし・うらし)"を窮(きは)めんとするは、以前同樣(まへにおなじ)。
魚(うを)に依存(よ)り、大(おほ)きさに從(したが)ひ
鹽(しほ)を振(ふ)り、時(とき)にその儘(まゝ)
冰温(こほりのつめたさ)に寢(ね)かすこと數日間(いくにちか)。

"劍先烏賊(けんさきいか)"で五日(いつか)、
"(すゞき)"、"星鰈(ほしがれひ)"なら七日(なぬか)、
この日(ひ)の"(しび)"は五日(いつか)と云ふ工合(ぐあひ)。
鱸(すゞき)は、「昆布〆(こぶじめ)歟(か)?」と訝(いぶか)るほど。

舎利(すめし)の美味(うま)さも不變(あひかはらず)。
陸奧(むつ)の眞妻山葵(まづまわさび)の優秀(すば)らしさは、
豆州(いづ)のそれにも匹敵(ま)けぬほど。
季(とき)に恵(めぐ)まれずと云へど、"(しび)"もまた佳味(よきあぢ)。

創業(あきなひをはじめ)て以來(よりこのかた)
築地(うをいちば)では、最上(いとよ)きものばかりを贖(か)ひ續(つゞ)け
今(いま)や、仲卸(なかおろし)が、
當家(こちら)のために極上(このうへなき)ものを確保(とりおき)するまでに、、。

"(しび)"、"海膽(うに)"は勿論(いふまでもなく)、
その他(ほか)の鮨種(すしだね)も至高(とびきり)のものばかり。
この日(ひ)の"紫海膽(うに)"にも「築地一(つきぢいち)」の極印(きはめいん)。
一貫(ひとつ)原價(もとね)で四千五百圓(よんせんごひやくゑん)にもなると云ふ。

それを、
「四千圓(よんせんゑん)と云ふ破格値(あかじね)」
にて提供(いだす)とのよし。
小人(それがし)のみ、このありがたき提案(まうしいで)を辭退(ことわる)。

"星鳗(はかりめ)"は烹(に)て炮(あぶ)ると云ふ烹調法(やりかた)。
外見(みため)も食感(あぢはひ)も、
瀬戸内(せとうち)界隈(あたり)の燒穴子(やきあなご)に彷彿(さもにたり)。
僕(やつかれ)、やはり、古典的(むかしなが)らの"煮穴子(にあなご)"が吉(よい)。

"蝦蛄(しやこ)"も卵巣(たまご)を持(も)たぬものを、
眼前(めのまへ)にて茹(う)で上(あ)ぐるを嗜(この)む。
當家(こちら)の流儀(やりかた)、
風習(ならひ)の"漬込(つけこみ)"とも半點(いさゝか)異質(ことなる)。

明々地(あからさま)に改良(よく)なりしが"雞卵燒(たまごやき)"。
顏色(いろ)の變化(たがひ)は甘蔗(さたう)を變更(かへ)たことに起因(よる)。
滑(なめ)らかなること絹(きぬ)のごとく
嫩(やはらか)なること焦糖布甸(かすたあどぷでいんぐ)を髣髴(おもはす)

劈頭(いやさき)から掉尾(いやはて)に至(いた)るまで、
一(ひと)つとして麁味(あぢあ)しきもの皆無(なし)
只顧(ひたすら)旨(うま)く、唯々(たゞたゞ)味覺(した)を怡(よろこ)ばしむ
とは云へ、美味(うま)く濃厚(こ)きに過(す)ぐるとの恨(うら)みを殘(のこ)す。

因(ちな)みに、この宵(よひ)の菜譜(こんだて)は、如下(つぎのとほり):
=======================================
劍先烏賊(しろいか、=けんさきいか)、筑紫(ちくし)、五日熟成(いつかうらし)
・鱸(すゞき)、伊勢(いせ)、七日熟成(なぬかうらし)
星鰈(ほしがれひ)、陸前(りくぜん)、七日熟成(なぬかうらし)
・蝦蛄(しやこ)、陸前(りくぜん)、卵持(こもち)
・章魚(たこ)、下總鴨居(しもふさかもゐ)
・縞鰺(しまあぢ)、五日熟成(いつかうらし)
・紫海膽(むらさきうに)、陸奧(むつ)
・鮪(しび)、壹岐(いき)、三十七貫(≒137kg)、五日熟成(いつかうらし)
・眞鰺(まあぢ)、薩州出水(いづみ)
棘藻蝦(をにえび、=いばらもえび)、蝦夷積丹(えぞしやこたん)
・鰹(かつを)、安房勝浦(かつふら)、一貫三百九十匁(≒5.2kg)
・鰒(あはび)、三陸(さんりく)
・星鳗(はかりめ)、江戸前(えどまへ)
・鮪(しび)、壹岐(いき)、三十七貫(≒137kg)、五日熟成(いつかうらし)
・鮪(しび)肥肉(あぶらみ)、壹岐(いき)、三十七貫(≒137kg)、五日熟成
・星鳗(まあなご)+黄瓜(きうり)
・鐵火卷(てつくわまき)の類(たぐひ)
・雞卵燒(たまごやき)
=======================================

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-Macro 2/50 @F2~F2.8

  • 豬股健史親方(ゐのまたきよしおやかた) 【掲載許可濟】

  • 豬股健史親方(ゐのまたきよしおやかた) 【掲載許可濟】

  • 生薑(はじかみ)

  • 般若湯(さけ)

  • 山葵(わさび)

  • 劍先烏賊(しろいか、=けんさきいか)、五日(いつか)

  • 鱸(すゞき)、七日熟成(なぬかうらし)

  • 星鰈(ほしがれひ)、七日熟成(なぬかうらし)

  • 蝦蛄(しやこ)

  • 章魚(たこ)

  • 縞鰺(しまあぢ)、五日熟成(いつかうらし)

  • 紫海膽(むらさきうに)

  • 紫海膽(むらさきうに)※參考

  • 鮪(しび)、五日熟成(いつかうらし)

  • 眞鰺(まあぢ)

  • 棘藻蝦(をにえび、=いばらもえび)

  • 鰹(かつを)

  • 鰒(あはび)

  • 星鳗(はかりめ)

  • 鮪(しび)、五日熟成(いつかうらし)

  • 鮪(しび)肥肉(あぶらみ)、五日熟成(いつかうらし)

  • 星鳗(まあなご)+黄瓜(きうり)

  • 鐵火卷(てつくわまき)の類(たぐひ)

  • 雞卵焼(たまごやき)

2017/06/18 更新

2回目

2017/01 訪問

  • 夜の点数:4.5

    • [ 料理・味4.5
    • | サービス4.0
    • | 雰囲気3.8
    • | CP-
    • | 酒・ドリンク-
    ¥20,000~¥29,999
    / 1人

『豬股(ゐのまた)』よ 海膽(うに)こそなけれ 恐(おそ)れいる 箪笥(たんす)の奧(おく)の 鈔(ぜに)ぞ無(な)くなる

雞卵燒(たまごやき)、進化(かはりぬ)。」
との慥(たしか)なる噂(うはさ)を小耳(こみゝ)に挾(はま)み、
三度目(みたびめ)の訪問(おとづれ)。
此度(こだみ)は、類稀(たぐひまれ)なる食通(たべて)を同伴(ともな)ひ、、。

劈頭(はじめ)から、
豬股親方(ゐのまたをやかた)の誇(ほこ)らしくも愉快(たの)しげなる聲(こゑ)。
三厩(みんまや)の(しび)、五十二貫五百匁(≒197kg)。」
今季最後(いやはて)の津輕海峽(つがるかいきやう)もの。」

この日(ひ)の菜譜(こんだて)は↓冩眞(したのゑ)のとほりなれば、
委細省略(こまかなることハはぶく)。
卷物(まきもの)など十七(とあまりなゝつ)に啤酒(びいる)を合(あは)せ、
對價(あたひ)、二萬圓(にまんゑん)斗(ばかり)。

前(まへ)に同(おな)じく、
過半(あらかた)、輕(かろ)く鹽(しほ)して熟成(ね)かしたる素材(たね)
「たゞし、貝(かい)と蝦(えび)はその限(かぎ)りにあらず。」
とは、師傅(おやかた)の辯(はなし)。

"(ぶり)"、"眞鯛(まだひ)"、"赤鯥(あかむつ)"、など、
背身(せみ)と腹身(はらみ)を薄(うす)き削(そ)ぎてこれを合體(あはす)。
その縁由(ことのよし)、
僉(みな)、均一(おな)じ味(あぢ)にせばやと、、」となむ。

"眞梶木(まかぢき)"も同樣(おなじ)ながら、背身(せみ)二枚(にまい)。
"小鰭(こはだ)"は、市場(いちば)で厚(あつ)めのものを選擇(えら)み
半身(はんみ)にして、更(さら)にこれを薄(うす)く開(ひら)き
裏表(うらおもて)にして二枚(にまい)

(しほ)、(す)、ともに八十分(はちじつぷん)」
とは、今時(いまどき)ありえぬほどの強烈(つよ)さ
さりながら、
醋(す)の立(た)ち過(す)ぎを感(かん)じさせぬは驚歎(おどろき)。

十日間(とほか)熟成(ねかしたるもの)」、
と證言(い)ふ淡路(あはぢ)の"眞鯛(まだひ)"。
その重量(めかた)は八百匁(はつぴやくもんめ、=3kg)に及(およ)び、
その風味(あぢとかをり)は昨日(きのふ)〆たばかりかと錯覺(みまがふ)。

"紅瞳(べにひとみ)"と號(よびな)す"赤鯥(あかむつ)"には仰天(そらをあふぐ)。
元來(もとより)、
北陸(ほくりく)近邊(あたり)ではこれを"喉黑(のどぐろ)"と稱(とな)ふ。
その美味(よきあぢ)たるや、もはや、唸(うな)るほか術(てだて)なし

どれもこれもが東道(あるじ)の誇(ほこ)り
時季(とき)に適(かな)ふ至高(このうへなき)ものばかりを仕入(しい)れ
これに、鹽(しほ)を振(ふ)りて適宜(ほどよく)寢(ね)かし置(お)き
時(とき)に、速(すみ)やかにこれを鮨種(すしだね)となす。

柵漬(さくづ)けたる(しび)は、
切附(きりつ)け、再度(ふたゝび)漬醤油(つけじやうゆ)に滲(ひた)し、
小柱(こばしら)などには、醋洗(すあら)ひを施(ほどこ)す。
眞牡蠣(かき)は岩手(いはて)赤嵜産(あかざきのもの)。

(さけ)、味醂(みりん)、昆布(こんぶ)による"漬込(つけこみ)"のごときもの。
亭主(あるじ)言(い)ふやう:
「世(よ)に"昆布森(こんぶもり)"に優(まさ)る牡蠣(かき)なしと云へど
今頃(いまごろ)のものは火(ひ)に遭(あ)ひて縮退(ちゞむ)が通例(つね)。」

これに因(よ)り、
「"昆布森(こんぶもり)"の牡蠣(かき)は十二月(じふにがつ)まで、
海膽(うに)は、利尻(りしり)馬糞海膽(ばふんうに)の最上品(いとよきしな)を、
春(はる)から夏(なつ)までに限定(かぎり)て用(つか)ふ。」と、、。

"穴子(あなご)"なき縁由(ことのよし)、また同樣(しかり)。
眞梶木(まかぢき)の旨(うま)さも時季(いまごろ)固有(ならでは)。
(はる)には三州(みかは)の"淺蜊(あさり)"、、」、
と、心待(こゝろま)ちの樣子(そぶり)。

駭(おどろ)くほどに大(おほ)きな野附(のつけ)の"大星(おほゞし)"。
すなはち、莫迦貝(ばかゞひ)貝柱(かひばしら)番(つがひ)の一(ひとつ)。
僕(やつかれ)、
酢洗(すあら)ひせで、その儘(まゝ)に用(つか)ふが嗜(この)み。

纔(わづ)かに味(あぢ)の濃(こ)さを感(かん)じたは、
"子持(こも)ち槍烏賊(やりいか)"に"手卷(てまき)の鐵火(てつくわ)"。
槍烏賊(やりいか)は半點(いさゝか)甜鹹(あまから)く
手卷(てまき)は煮切(にきり)過多(おほめ)

味覺(した)の鋭(するど)き同行者(つれ)より、
さらに、より詳細(こま)かき指摘(してき)あり。
とは云へ、押(お)しなめて、どれもこれも美味(よきあぢ)
就中(わきても)、素材(すしだね)の上質(よ)さは折紙附(をりがみつき)

"鶏卵燒(たまごやき)"は緑色(みどりいろ)が薄(うす)れ、
甜(あまみ)を増(ま)し、滑(なめ)らかさも向上(うはむき)たる兆(きざし)
黍糖(きびたう)を上白糖(じやうはくたう)に換(か)へ、
沙糖(さたう)を減(へ)らして味醂(みりん)に、、」との説明(よし)。

"海苔(のり)"は肥前(ひぜん)有明(ありあけ)。
"小鰭(こはだ)"も有明(ありあけ)。
有明(ありあけ)の小鰭(こはだ)は海苔(のり)の味(あぢ)がする」、
とは東道(あるじ)が説(はなし)。

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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-Macro 2/50 @F2

  • 豬股健史親方(ゐのまたきよしおやかた) 【掲載許可濟】

  • 豬股健史親方(ゐのまたきよしおやかた) 【掲載許可濟】

  • 豬股健史親方(ゐのまたきよしおやかた) 【掲載許可濟】

  • 鮪(しび)

  • 鮪(しび)

  • 生薑(はじかみ)

  • 墨烏賊(すみいか)

  • 眞鯛(まだひ)

  • 鰤(ぶり)

  • "閂(かんぬき)"、=大細魚(おほさより)

  • 赤鯥(あかむつ)

  • 鮪(しび)

  • 甘蝦(あまえび)

  • 甘蝦(あまえび)

  • 眞牡蠣(まがき)

  • 雲子(くもこ)

  • 眞梶木(まかぢき)

  • 眞梶木(まかぢき)

  • 眞鯖(さば)

  • 眞鯖(さば)

  • 子持(こもち)槍魷魚(やりいか)

  • 莫迦貝(ばかゞひ)貝柱(かひばしら)

  • 鮪(しび)、やゝ肥肉(あぶらみ)

  • 鮪(しび)、肥肉(あぶらみ)

  • 小鰭(こはだ)

  • 鐵火卷(てつくわまき)

  • 雞卵焼(たまごやき)

  • 雞卵焼(かひごやき)

2017/01/27 更新

1回目

2016/12 訪問

  • 夜の点数:4.5

    • [ 料理・味4.5
    • | サービス3.8
    • | 雰囲気3.8
    • | CP-
    • | 酒・ドリンク-
    ¥20,000~¥29,999
    / 1人

『豬股(ゐのまた)』は 鮪(しび)も鰈(かれひ)も 熟成(ながくお)く 割烹仕込(かつぱうじこ)みの 殽(つまみ)は無(な)しも

【2016-12-15追記】:
丸六年(まるむとせ)、
頻繁(あしゝげ)く通(かよ)ひ詰(つ)めたる『寺島町(てらしまちやう)』。
「ふらり、晝飧(ひる)にでも覗(のぞ)かばや」と意(おも)ひしかど、
「年末(としのすゑ)まで一席(ひと)つとして空(あき)なし」の景状(ありさま)。

寔(まこと)、近會(ちかごろ)の鮓店(すしや)は尋常(よのつね)ならざるものあり
かつて、"御好(おこの)み"、すなはち、
賓(まらうど)の隨意(おもひのまゝ)に摘(つま)めた『すきやばし』は、
"御任(おまか)せ"のみと變貌(なりは)て、その名聲(たかきな)に胡坐(あぐら)。

先般(さきごろ)閉店(みせじまひ)せしばかりの『水谷』また同樣(しかり)。
往古(そのかみ)なれば、ふらり立寄(たちよ)るも尤(いと)容易(やす)かりし、
さいとう』、『すし匠』、『喜邑』、『初音鮨』、『都壽司』(※現『すぎた』)は、
今(いま)や、席(せき)すら確保(と)れぬ慘状(ありさま)

人(ひと)が客(ひと)を呼(よ)び、評判(うはさ)が評價(うはさ)を呼(よ)ぶ
宛然(あたかも)、
雫(しづく)集(つど)ひて清水(しみづ)となり、川(かは)と變貌(な)り、
やがて瀑布(おほだき)と化(な)りて瀧壺(たきつぼ)に荒狂(あれくる)ふがごとし。

これ、偏(ひとへ)に、
"紅本(あかほん)"の惡戲(いたづら)"食(た)べ六゛(●ぐ)"の大罪(つみ)
さすれば、當家(こちら)『豬股』の遠(とほ)からず上(うへ)のごとく變化(な)るも、
最早(もはや)不可避(さけがた)き宿命(さだめ)。

氣(き)も漫(すゞ)ろ。
「有象無象(うざうむざう)の衆人(たみ)蝟集(むらが)る前(まへ)に、、」と、
この日(このひ)、矢(や)も楯(たて)もたまらず、
武州足立郡川口(むさしのくにあだちのこほりかはぐち)の地(ち)に、、。

大約(およそ)半年(はんとし)ぶり。
前囘(まへ)は六字(ろくじ)開始(はじまり)で客(かく)一人(ひとり)、
此度(こだみ)は五字(ごじ)開始(はじまり)で賓(まらうど)六人(むたり)。
「前日(まへのひ)は纔(わづ)か一人(ひとり)のみ」とのよし。

親方(おやかた)大(おほ)いに自慢(むねをは)る"(しび)":
津輕大間(つがるおほま)の五十六貫目(ごじふろつくわんめ、=210kg)、
熟成(ねか)すこと七日(なのか)。
"墨烏賊(すみいか)"九日(こゝのか)、"眞鯛(まだひ)"は十日(とほか)。

"皮剥(かはゝぎ)"、"喉黑(のどぐろ)"なども熟成(うら)す。
とりわけ、"眞梶木(まかじき)"は廿日(はつか)と云ふ長期間(ながさ)。
但(たゞ)し、
"(かに)"、"(かひ)"、"(えび)"は速(すみ)やかに用之(これをつか)ふ

どれもこれも、魂(たましひ)を消(け)すほどの旨(うま)さ
就中(わきても)、"喉黑(のどぐろ)"、"皮剥(かはゝぎ)"、"(しび)"は、
呆(あき)れ果(は)て、笑(わら)ふ餘(ほか)術(てだて)なし。
唯一(たゞひとつ)、"鶏卵燒(たまごやき)"の味(あぢはひ)は今一(いまひと)つ。

舎利(すめし)は、
小人(それがし)が嗜(この)みに秋毫(つゆ)異(こと)なるところなし
粒(つぶ)が立(た)ち、しかも舌(した)に滑(なめ)らか
飯切(はんぎり)に混合(あ)はせて大約(およそ)三十分(さんじつぷん)。

以爲(おも)ふに、輙(たやす)く席(せき)の取(と)れぬ
さいとう』、『喜邑』、『初音鮨』、『すぎたに拘泥(こだは)るより
當日(そのひ)に空席(あき)のある當家(こちら)が理想(よい)
鮨職人(すしゝよくにん)としての才能・力量(ちから)も稀有(まれにみるほど)

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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-Macro 2/50 @F2
      高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto 2/100 @F2

【2016-07-21記】:
當家(こちら)『豬股』が東道(あるじ)豬股健史(ゐのまたきよし)の、
初音鮨』を尊敬(うやま)ふこと、
宛然(あたかも)、虎兒(ことら)が母虎(はゝとら)を慕(した)ふがごとし。
小人(それがし)もまた、『初音』には一目(いちもく)二目(にもく)。

初音』を敬(うやま)ひつゝ
己(おのれ)固有(ならでは)の流儀(やりかた)を探求(さがしもと)めんとするは、
傍目(はため)にも明白(あきらか)。
實(げ)に、求道僧(みちをさがしもとむるもの)に異(こと)ならず。

實家(うまれたるいへ)が農業(こめづくりをなりはひとなす)にもかゝはらず
實家(うち)や近所(ちかく)の米(こめ)に飽(あ)き足(た)らず
彼此(をちこち)に好(よ)き鮓米(すしまひ)を求(もと)め、 
飯山(いひやま)の(こめ)へと到達(たどりつく)。

飯山産(いひやまさん)"こしひかり"。
信州(しなのゝくに)飯山(いひやま)は、
越後(ゑちごのくに)魚沼郡(うをぬまのこほり)と隣接(となりあふ)。
舎利(すめし)には"魚沼産(うをぬまさん)"より好適(よい)」と斷言(いふ)。

鶏卵(かひご)は、
陸州(むつのくに)津輕郡(つがるのこほり)鰺ヶ澤(あぢがさは)の地(ち)、
長谷川自然牧場(はせがはしぜんぼくじやう)のもの。
"鶏卵燒(たまごやき)"の顏色(いろ)は獨特(ほかになきもの)

(しび)のみならず、
白身(しろみ)の類(たぐひ)も熟成(うら)して用(つか)ふ。
白烏賊(しろいか)、すなはち劍先烏賊(けんさきいか)、
(すゞき)、星鰈(ほしがれひ)など、何(いづ)れも七日(なのか)ほど。

(ひらめ)、(かれひ)の類(たぐひ)は、
平均的(なみ)の鮓店(すしや)なら、寢(ね)かしてもせいぜい三日(みッか)
纖細(こまやか)なる烏賊(いか)への丁(はうちやう)は、
すし通』を髣髴(おもはす)。

とは云へ、『すし通』とも『初音』とも異質(こと)なる味(あぢはひ)。
今(いま)や熟成(うらし)の盛名(な)を擅(ほしいまゝ)にする『喜邑』:
小人(それがし)、
十年前(とゝせまへ)の陳腐(ありきたり)の烹調法(やりかた)を知(し)るのみ。

天離(あまさか)る鄙(ひな)の地(ち)で、
七百七十匁(なゝひやくなゝじふもんめ、=2.9kg)もの星鰈(ほしがれひ)、
最上質(いとよ)き利尻(りしり)の蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)を用(つか)ふは、
寔(まこと)、豬股親方(ゐのまたをやかた)が心意氣(こゝろいき)。

とは云へ、
鮨種(すしだね)の良(よ)し惡(あ)し、貴賤(たふとき・いやしき)は
成形技術(かたちづくるわざ)と舎利(すめし)に比較(くら)ぶれば、
些末(とるにたら)ぬこと。

上記(うへにしるせ)るごとく、
(こめ)は飯山産(いひやまさん)こしひかり。
三種(みくさ)の紅醋(あかず)を混合(あは)せ、
沙糖(さたう)に頼(たよ)らで、旨味(うまみ)を抽出(ひきいだす)

口(くち)に抛(はう)り込(こ)むや、
須臾(たちまち)解(ほぐ)れて、臼齒(おくば)に幾粒(いくつぶ)か留(とゞ)まる
瞬時(すぐさ)ま崩壊(ほど)けながらも、
口中(くちのなか)に殘(のこ)る米粒(こめつぶ)は舌(した)に滑(なめ)らか

一度(ひとたび)これを噛締(かみし)むるや、
瞬(またゝ)く中(うち)に咽喉(のみど)を通過(す)ぎて胃袋(いのふ)に、、。
鹽梅(しほとす)、温度(あたゝかさ)もも適切(ほどよ)く
これぞ、小人(それがし)庶幾(こひねが)ひてやまぬ舎利(すめし)そのもの。

とかみ』、『しみづの舎利(すめし)に肉薄(せま)る水準(たかみ)。
否(いな)、漫(みだり)に主張(いひはる)こともせで
能(よ)く、あらゆる鮨種(すしだね)にも調和(あ)はすことのかなふ
"最適解(よきおとしどころ)"やも知(し)れぬ。

村瀬』には半點(いさゝか)及(およ)ばぬにせよ、
手附(てつ)きに無駄(むだ)はなく、迅速(すばやく)・精確(あやまちなきかたち)
(よはひ)・春秋(つきひ)を重(かさ)ねれば、
即(すなはち)、いづれ神業(かみわざ)の域(いき)に到達(いた)らん。

扨(さて)、この日(ひ)の流(なが)れ:
白烏賊(しろいか)に始(まじ)まり、鶏卵燒(たまごやき)に終(を)はる、
握(にぎ)り十七(とあまりなゝつ)、手卷(てまき)一(ひとつ)、
卷物(まきもの)一(ひとつ)からなる構成(くみたて)。

(しび)が赤身(あかみ)と肥肉(あぶらみ)合計(あは)せて五(いつゝ)。
更(さら)に手卷(てまき)も、、。
蝦夷噴火灣(えぞふんかわん)二十六貫七百匁(=100kg)。
老舖(しにせ)"桶長(ひちやう)"よりの仕入(しいれ)。

これを過半(あらかた)醤油漬(しやうづ)けとなす。
夏場(なつば)としては、稀(まれ)に見(み)る美味(びみ)
敢(あ)へて"房州産(あは)"を避(さ)け、
"三陸産(さんりく)"を重用(おもん)ずと云ふ(あはび)も佳味(よきあぢ)。

"胡麻鯖(ごまさば)"は薄(うす)く三枚(さんまい)に引(ひ)き
これをずらし重(かさ)ねて用(つか)ふ
この技法(やりかた)の嚆矢濫觴(さきがけ)は、
六本木(ろつぽんぎ)『奈可久鈴木隆久親方(すゞきたかひさおやかた)。

眞鰺(まあぢ):
豫(あらかじ)め輕(かろ)く振(ふ)り鹽(じほ)を打(う)ち、
供(いだ)す直前(すぐまへ)に醋(す)に潛(くゞ)らす流儀(やりかた)。
この時季(じき)、しかも、薩州(さつまのくに)出水(いづみ)の産(もの)。

穴子(あなご)は吾(あ)が嗜好(このみ)に合(あ)はず。
東都(えど)の"煮穴子(にあなご)"と云ふより、
京坂(あちら)の"燒穴子(やきあなご)"のごとき食感(はごたへ・したざはり)。
皮(かは)近(ちか)くより漂(たゞよ)ふ臭氣(くさみ)は皆無(なし)。

(さけ)・味醂(みりん)の類(たぐひ)を用(つか)ふことなく、
芝蝦(しば)と薯蕷(いも)・甘蔗(たう)にて制作(こしら)へたる、鶏卵燒(たまご):
件(くだん)の鶏蛋(たまご)の濃厚(こ)き口味(あぢ)こそ顯著(あらは)なれど、
やはり、『うを徳』の鶏卵燒(たまご)が吉(よい)。

親方(おやかた)と、
やがて御内儀(おかみ)となる許嫁(いひなづけ)の呼吸(いき)も合(あ)ひ
寔(まこと)、心持(こゝち)よき限(かぎ)り
繁盛(さかえ)て欲(ほ)しくもあり、混雜(こみあ)ふは辛(つら)きところでもあり

東道(あるじ)曰(いへら)く、
一流店(なのあるみせ)で修業歴(わざをならひおぼえ)たる例(ためし)なし」と、、。
獨學(ひとりまな)びて祕技(ひめわざ)を會得(ゑとく)せしは、
木挽町(こびきちやう)『とゝや』など極纔(きわめてわづ)か。

押竝(おしな)めて、
この界隈(あたり)では、浦和(うらわ)『よし佳』を凌駕(しの)ぎ、
東都(えど)でも、『とかみ』、『あらゐ』と比肩(かたをなら)ぶるほど。
今(いま)や、『初音』にも肉薄(せま)る威勢(いきほひ)。

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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :徠卡(Leica)Apo Summicron M 2/50 Asph. @F2

  • 豬股健史親方(ゐのまたきよしおやかた) 【掲載許可濟】

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  • 切付(きりつけ)

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  • 鳴門(なると)眞鯛(まだひ)

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  • 大間(おほま)鮪(しび)

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  • 豬股健史親方(ゐのまたきよしおやかた) 【撮影許可濟】

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  • 鮪(しび)の切付(きりつけ)

  • 鮪(しび)の切付(きりつけ)

  • 玉薤(さけ)

  • 白烏賊(しろいか)(=劍先烏賊(けんさきいか))

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  • 利尻(りしり)馬糞海膽(ばふんうに)

  • 利尻(りしり)馬糞海膽(ばふんうに)

  • 噴火灣(ふんくわゝん)鮪(しび)醤油漬(しやうゆづけ)

  • 噴火灣(ふんくわゝん)鮪(しび)醤油漬(しやうゆづけ)

  • 出水(いづみ)眞鰺(まあぢ)

  • 噴火灣(ふんくわゝん)毛蟹(けがに)

  • 鰒(あはび)

  • 鰒(あはび)、ーー上(うへ)からーー

  • 胡麻鯖(ごまさば)

  • 江戸灣(えどわん)穴子(あなご)

  • 鮪(しび)醤油漬(しやうゆづけ)

  • 鮪(しび)醤油漬(しやうゆづけ)、ーー上(うへ)からーー

  • 鮪(しび)肥肉(あぶらみ)醤油漬(しやうゆづけ)

  • 鮪(しび)肥肉(あぶらみ)醤油漬(しやうゆづけ)、ーー上(うへ)からーー

  • 鮪(しび)肥肉(あぶらみ)醤油漬(しやうゆづけ)

  • 鮪(しび)肥肉(あぶらみ)醤油漬(しやうゆづけ)、ーー上(うへ)からーー

  • 鮪(しび)手巻(てまき)

  • 江戸灣(えどわん)穴子(あなご)

  • 海苔巻(のりまき)

  • 鶏卵焼(たまごやき)

  • 鶏卵焼(たまごやき)、ーー上(うへ)からーー

  • 生薑(はじかみ)

  • 醤油皿(しやうゆざら)

2016/12/17 更新

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