3回
2017/06 訪問
熟成(うら)し喰(く)ふ 奧州(むつ)陸前(りくぜん)の 星鰈(ほしがれひ) たつた一貫(ひとつ)で 虜(とりこ)となりけり
豬股健史親方(ゐのまたきよしおやかた) 【掲載許可濟】
豬股健史親方(ゐのまたきよしおやかた) 【掲載許可濟】
生薑(はじかみ)
般若湯(さけ)
山葵(わさび)
劍先烏賊(しろいか、=けんさきいか)、五日(いつか)
鱸(すゞき)、七日熟成(なぬかうらし)
星鰈(ほしがれひ)、七日熟成(なぬかうらし)
蝦蛄(しやこ)
章魚(たこ)
縞鰺(しまあぢ)、五日熟成(いつかうらし)
紫海膽(むらさきうに)
紫海膽(むらさきうに)※參考
鮪(しび)、五日熟成(いつかうらし)
眞鰺(まあぢ)
棘藻蝦(をにえび、=いばらもえび)
鰹(かつを)
鰒(あはび)
星鳗(はかりめ)
鮪(しび)、五日熟成(いつかうらし)
鮪(しび)肥肉(あぶらみ)、五日熟成(いつかうらし)
星鳗(まあなご)+黄瓜(きうり)
鐵火卷(てつくわまき)の類(たぐひ)
雞卵焼(たまごやき)
2017/06/18 更新
2017/01 訪問
『豬股(ゐのまた)』よ 海膽(うに)こそなけれ 恐(おそ)れいる 箪笥(たんす)の奧(おく)の 鈔(ぜに)ぞ無(な)くなる
「雞卵燒(たまごやき)、進化(かはりぬ)。」
との慥(たしか)なる噂(うはさ)を小耳(こみゝ)に挾(はま)み、
三度目(みたびめ)の訪問(おとづれ)。
此度(こだみ)は、類稀(たぐひまれ)なる食通(たべて)を同伴(ともな)ひ、、。
劈頭(はじめ)から、
豬股親方(ゐのまたをやかた)の誇(ほこ)らしくも愉快(たの)しげなる聲(こゑ)。
「三厩(みんまや)の鮪(しび)、五十二貫五百匁(≒197kg)。」
「今季最後(いやはて)の津輕海峽(つがるかいきやう)もの。」
この日(ひ)の菜譜(こんだて)は↓冩眞(したのゑ)のとほりなれば、
委細省略(こまかなることハはぶく)。
卷物(まきもの)など十七(とあまりなゝつ)に啤酒(びいる)を合(あは)せ、
對價(あたひ)、二萬圓(にまんゑん)斗(ばかり)。
前(まへ)に同(おな)じく、
過半(あらかた)、輕(かろ)く鹽(しほ)して熟成(ね)かしたる素材(たね)。
「たゞし、貝(かい)と蝦(えび)はその限(かぎ)りにあらず。」
とは、師傅(おやかた)の辯(はなし)。
"鰤(ぶり)"、"眞鯛(まだひ)"、"赤鯥(あかむつ)"、など、
背身(せみ)と腹身(はらみ)を薄(うす)き削(そ)ぎてこれを合體(あはす)。
その縁由(ことのよし)、
「僉(みな)、均一(おな)じ味(あぢ)にせばやと、、」となむ。
"眞梶木(まかぢき)"も同樣(おなじ)ながら、背身(せみ)二枚(にまい)。
"小鰭(こはだ)"は、市場(いちば)で厚(あつ)めのものを選擇(えら)み、
半身(はんみ)にして、更(さら)にこれを薄(うす)く開(ひら)き、
裏表(うらおもて)にして二枚(にまい)。
「鹽(しほ)、醋(す)、ともに八十分(はちじつぷん)」
とは、今時(いまどき)ありえぬほどの強烈(つよ)さ。
さりながら、
醋(す)の立(た)ち過(す)ぎを感(かん)じさせぬは驚歎(おどろき)。
「十日間(とほか)熟成(ねかしたるもの)」、
と證言(い)ふ淡路(あはぢ)の"眞鯛(まだひ)"。
その重量(めかた)は八百匁(はつぴやくもんめ、=3kg)に及(およ)び、
その風味(あぢとかをり)は昨日(きのふ)〆たばかりかと錯覺(みまがふ)。
"紅瞳(べにひとみ)"と號(よびな)す"赤鯥(あかむつ)"には仰天(そらをあふぐ)。
元來(もとより)、
北陸(ほくりく)近邊(あたり)ではこれを"喉黑(のどぐろ)"と稱(とな)ふ。
その美味(よきあぢ)たるや、もはや、唸(うな)るほか術(てだて)なし。
どれもこれもが東道(あるじ)の誇(ほこ)り。
時季(とき)に適(かな)ふ至高(このうへなき)ものばかりを仕入(しい)れ、
これに、鹽(しほ)を振(ふ)りて適宜(ほどよく)寢(ね)かし置(お)き、
時(とき)に、速(すみ)やかにこれを鮨種(すしだね)となす。
柵漬(さくづ)けたる鮪(しび)は、
切附(きりつ)け、再度(ふたゝび)漬醤油(つけじやうゆ)に滲(ひた)し、
小柱(こばしら)などには、醋洗(すあら)ひを施(ほどこ)す。
眞牡蠣(かき)は岩手(いはて)赤嵜産(あかざきのもの)。
酒(さけ)、味醂(みりん)、昆布(こんぶ)による"漬込(つけこみ)"のごときもの。
亭主(あるじ)言(い)ふやう:
「世(よ)に"昆布森(こんぶもり)"に優(まさ)る牡蠣(かき)なしと云へど、
今頃(いまごろ)のものは火(ひ)に遭(あ)ひて縮退(ちゞむ)が通例(つね)。」
これに因(よ)り、
「"昆布森(こんぶもり)"の牡蠣(かき)は十二月(じふにがつ)まで、
海膽(うに)は、利尻(りしり)馬糞海膽(ばふんうに)の最上品(いとよきしな)を、
春(はる)から夏(なつ)までに限定(かぎり)て用(つか)ふ。」と、、。
"穴子(あなご)"なき縁由(ことのよし)、また同樣(しかり)。
眞梶木(まかぢき)の旨(うま)さも時季(いまごろ)固有(ならでは)。
「春(はる)には三州(みかは)の"淺蜊(あさり)"、、」、
と、心待(こゝろま)ちの樣子(そぶり)。
駭(おどろ)くほどに大(おほ)きな野附(のつけ)の"大星(おほゞし)"。
すなはち、莫迦貝(ばかゞひ)貝柱(かひばしら)番(つがひ)の一(ひとつ)。
僕(やつかれ)、
酢洗(すあら)ひせで、その儘(まゝ)に用(つか)ふが嗜(この)み。
纔(わづ)かに味(あぢ)の濃(こ)さを感(かん)じたは、
"子持(こも)ち槍烏賊(やりいか)"に"手卷(てまき)の鐵火(てつくわ)"。
槍烏賊(やりいか)は半點(いさゝか)甜鹹(あまから)く、
手卷(てまき)は煮切(にきり)過多(おほめ)。
味覺(した)の鋭(するど)き同行者(つれ)より、
さらに、より詳細(こま)かき指摘(してき)あり。
とは云へ、押(お)しなめて、どれもこれも美味(よきあぢ)。
就中(わきても)、素材(すしだね)の上質(よ)さは折紙附(をりがみつき)。
"鶏卵燒(たまごやき)"は緑色(みどりいろ)が薄(うす)れ、
甜(あまみ)を増(ま)し、滑(なめ)らかさも向上(うはむき)たる兆(きざし)。
黍糖(きびたう)を上白糖(じやうはくたう)に換(か)へ、
沙糖(さたう)を減(へ)らして味醂(みりん)に、、」との説明(よし)。
"海苔(のり)"は肥前(ひぜん)有明(ありあけ)。
"小鰭(こはだ)"も有明(ありあけ)。
「有明(ありあけ)の小鰭(こはだ)は海苔(のり)の味(あぢ)がする」、
とは東道(あるじ)が説(はなし)。
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-Macro 2/50 @F2
豬股健史親方(ゐのまたきよしおやかた) 【掲載許可濟】
豬股健史親方(ゐのまたきよしおやかた) 【掲載許可濟】
豬股健史親方(ゐのまたきよしおやかた) 【掲載許可濟】
鮪(しび)
鮪(しび)
生薑(はじかみ)
墨烏賊(すみいか)
眞鯛(まだひ)
鰤(ぶり)
"閂(かんぬき)"、=大細魚(おほさより)
赤鯥(あかむつ)
鮪(しび)
甘蝦(あまえび)
甘蝦(あまえび)
眞牡蠣(まがき)
雲子(くもこ)
眞梶木(まかぢき)
眞梶木(まかぢき)
眞鯖(さば)
眞鯖(さば)
子持(こもち)槍魷魚(やりいか)
莫迦貝(ばかゞひ)貝柱(かひばしら)
鮪(しび)、やゝ肥肉(あぶらみ)
鮪(しび)、肥肉(あぶらみ)
小鰭(こはだ)
鐵火卷(てつくわまき)
雞卵焼(たまごやき)
雞卵焼(かひごやき)
2017/01/27 更新
2016/12 訪問
『豬股(ゐのまた)』は 鮪(しび)も鰈(かれひ)も 熟成(ながくお)く 割烹仕込(かつぱうじこ)みの 殽(つまみ)は無(な)しも
【2016-12-15追記】:
丸六年(まるむとせ)、
頻繁(あしゝげ)く通(かよ)ひ詰(つ)めたる『寺島町(てらしまちやう)』。
「ふらり、晝飧(ひる)にでも覗(のぞ)かばや」と意(おも)ひしかど、
「年末(としのすゑ)まで一席(ひと)つとして空(あき)なし」の景状(ありさま)。
寔(まこと)、近會(ちかごろ)の鮓店(すしや)は尋常(よのつね)ならざるものあり。
かつて、"御好(おこの)み"、すなはち、
賓(まらうど)の隨意(おもひのまゝ)に摘(つま)めた『すきやばし』は、
"御任(おまか)せ"のみと變貌(なりは)て、その名聲(たかきな)に胡坐(あぐら)。
先般(さきごろ)閉店(みせじまひ)せしばかりの『水谷』また同樣(しかり)。
往古(そのかみ)なれば、ふらり立寄(たちよ)るも尤(いと)容易(やす)かりし、
『さいとう』、『すし匠』、『喜邑』、『初音鮨』、『都壽司』(※現『すぎた』)は、
今(いま)や、席(せき)すら確保(と)れぬ慘状(ありさま)。
人(ひと)が客(ひと)を呼(よ)び、評判(うはさ)が評價(うはさ)を呼(よ)ぶ。
宛然(あたかも)、
雫(しづく)集(つど)ひて清水(しみづ)となり、川(かは)と變貌(な)り、
やがて瀑布(おほだき)と化(な)りて瀧壺(たきつぼ)に荒狂(あれくる)ふがごとし。
これ、偏(ひとへ)に、
"紅本(あかほん)"の惡戲(いたづら)、"食(た)べ六゛(●ぐ)"の大罪(つみ)。
さすれば、當家(こちら)『豬股』の遠(とほ)からず上(うへ)のごとく變化(な)るも、
最早(もはや)不可避(さけがた)き宿命(さだめ)。
氣(き)も漫(すゞ)ろ。
「有象無象(うざうむざう)の衆人(たみ)蝟集(むらが)る前(まへ)に、、」と、
この日(このひ)、矢(や)も楯(たて)もたまらず、
武州足立郡川口(むさしのくにあだちのこほりかはぐち)の地(ち)に、、。
大約(およそ)半年(はんとし)ぶり。
前囘(まへ)は六字(ろくじ)開始(はじまり)で客(かく)一人(ひとり)、
此度(こだみ)は五字(ごじ)開始(はじまり)で賓(まらうど)六人(むたり)。
「前日(まへのひ)は纔(わづ)か一人(ひとり)のみ」とのよし。
親方(おやかた)大(おほ)いに自慢(むねをは)る"鮪(しび)":
津輕大間(つがるおほま)の五十六貫目(ごじふろつくわんめ、=210kg)、
熟成(ねか)すこと七日(なのか)。
"墨烏賊(すみいか)"九日(こゝのか)、"眞鯛(まだひ)"は十日(とほか)。
"皮剥(かはゝぎ)"、"喉黑(のどぐろ)"なども熟成(うら)す。
とりわけ、"眞梶木(まかじき)"は廿日(はつか)と云ふ長期間(ながさ)。
但(たゞ)し、
"蟹(かに)"、"貝(かひ)"、"蝦(えび)"は速(すみ)やかに用之(これをつか)ふ。
どれもこれも、魂(たましひ)を消(け)すほどの旨(うま)さ。
就中(わきても)、"喉黑(のどぐろ)"、"皮剥(かはゝぎ)"、"鮪(しび)"は、
呆(あき)れ果(は)て、笑(わら)ふ餘(ほか)術(てだて)なし。
唯一(たゞひとつ)、"鶏卵燒(たまごやき)"の味(あぢはひ)は今一(いまひと)つ。
舎利(すめし)は、
小人(それがし)が嗜(この)みに秋毫(つゆ)異(こと)なるところなし。
粒(つぶ)が立(た)ち、しかも舌(した)に滑(なめ)らか。
飯切(はんぎり)に混合(あ)はせて大約(およそ)三十分(さんじつぷん)。
以爲(おも)ふに、輙(たやす)く席(せき)の取(と)れぬ
『さいとう』、『喜邑』、『初音鮨』、『すぎた』に拘泥(こだは)るより、
當日(そのひ)に空席(あき)のある當家(こちら)が理想(よい)。
鮨職人(すしゝよくにん)としての才能・力量(ちから)も稀有(まれにみるほど)。
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-Macro 2/50 @F2
高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto 2/100 @F2
【2016-07-21記】:
當家(こちら)『豬股』が東道(あるじ)豬股健史(ゐのまたきよし)の、
『初音鮨』を尊敬(うやま)ふこと、
宛然(あたかも)、虎兒(ことら)が母虎(はゝとら)を慕(した)ふがごとし。
小人(それがし)もまた、『初音』には一目(いちもく)二目(にもく)。
『初音』を敬(うやま)ひつゝ、
己(おのれ)固有(ならでは)の流儀(やりかた)を探求(さがしもと)めんとするは、
傍目(はため)にも明白(あきらか)。
實(げ)に、求道僧(みちをさがしもとむるもの)に異(こと)ならず。
實家(うまれたるいへ)が農業(こめづくりをなりはひとなす)にもかゝはらず、
實家(うち)や近所(ちかく)の米(こめ)に飽(あ)き足(た)らず、
彼此(をちこち)に好(よ)き鮓米(すしまひ)を求(もと)め、
飯山(いひやま)の米(こめ)へと到達(たどりつく)。
飯山産(いひやまさん)"こしひかり"。
信州(しなのゝくに)飯山(いひやま)は、
越後(ゑちごのくに)魚沼郡(うをぬまのこほり)と隣接(となりあふ)。
「舎利(すめし)には"魚沼産(うをぬまさん)"より好適(よい)」と斷言(いふ)。
鶏卵(かひご)は、
陸州(むつのくに)津輕郡(つがるのこほり)鰺ヶ澤(あぢがさは)の地(ち)、
長谷川自然牧場(はせがはしぜんぼくじやう)のもの。
"鶏卵燒(たまごやき)"の顏色(いろ)は獨特(ほかになきもの)。
鮪(しび)のみならず、
白身(しろみ)の類(たぐひ)も熟成(うら)して用(つか)ふ。
白烏賊(しろいか)、すなはち劍先烏賊(けんさきいか)、
鱸(すゞき)、星鰈(ほしがれひ)など、何(いづ)れも七日(なのか)ほど。
鮃(ひらめ)、鰈(かれひ)の類(たぐひ)は、
平均的(なみ)の鮓店(すしや)なら、寢(ね)かしてもせいぜい三日(みッか)。
纖細(こまやか)なる烏賊(いか)への疱丁(はうちやう)は、
『すし通』を髣髴(おもはす)。
とは云へ、『すし通』とも『初音』とも異質(こと)なる味(あぢはひ)。
今(いま)や熟成(うらし)の盛名(な)を擅(ほしいまゝ)にする『喜邑』:
小人(それがし)、
十年前(とゝせまへ)の陳腐(ありきたり)の烹調法(やりかた)を知(し)るのみ。
天離(あまさか)る鄙(ひな)の地(ち)で、
七百七十匁(なゝひやくなゝじふもんめ、=2.9kg)もの星鰈(ほしがれひ)、
最上質(いとよ)き利尻(りしり)の蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)を用(つか)ふは、
寔(まこと)、豬股親方(ゐのまたをやかた)が心意氣(こゝろいき)。
とは云へ、
鮨種(すしだね)の良(よ)し惡(あ)し、貴賤(たふとき・いやしき)は、
成形技術(かたちづくるわざ)と舎利(すめし)に比較(くら)ぶれば、
些末(とるにたら)ぬこと。
上記(うへにしるせ)るごとく、
米(こめ)は飯山産(いひやまさん)こしひかり。
三種(みくさ)の紅醋(あかず)を混合(あは)せ、
沙糖(さたう)に頼(たよ)らで、旨味(うまみ)を抽出(ひきいだす)。
口(くち)に抛(はう)り込(こ)むや、
須臾(たちまち)解(ほぐ)れて、臼齒(おくば)に幾粒(いくつぶ)か留(とゞ)まる。
瞬時(すぐさ)ま崩壊(ほど)けながらも、
口中(くちのなか)に殘(のこ)る米粒(こめつぶ)は舌(した)に滑(なめ)らか。
一度(ひとたび)これを噛締(かみし)むるや、
瞬(またゝ)く中(うち)に咽喉(のみど)を通過(す)ぎて胃袋(いのふ)に、、。
鹽梅(しほとす)、温度(あたゝかさ)もも適切(ほどよ)く、
これぞ、小人(それがし)庶幾(こひねが)ひてやまぬ舎利(すめし)そのもの。
『とかみ』、『しみづ』の舎利(すめし)に肉薄(せま)る水準(たかみ)。
否(いな)、漫(みだり)に主張(いひはる)こともせで、
能(よ)く、あらゆる鮨種(すしだね)にも調和(あ)はすことのかなふ、
"最適解(よきおとしどころ)"やも知(し)れぬ。
『村瀬』には半點(いさゝか)及(およ)ばぬにせよ、
手附(てつ)きに無駄(むだ)はなく、迅速(すばやく)・精確(あやまちなきかたち)。
齢(よはひ)・春秋(つきひ)を重(かさ)ねれば、
即(すなはち)、いづれ神業(かみわざ)の域(いき)に到達(いた)らん。
扨(さて)、この日(ひ)の流(なが)れ:
白烏賊(しろいか)に始(まじ)まり、鶏卵燒(たまごやき)に終(を)はる、
握(にぎ)り十七(とあまりなゝつ)、手卷(てまき)一(ひとつ)、
卷物(まきもの)一(ひとつ)からなる構成(くみたて)。
鮪(しび)が赤身(あかみ)と肥肉(あぶらみ)合計(あは)せて五(いつゝ)。
更(さら)に手卷(てまき)も、、。
蝦夷噴火灣(えぞふんかわん)二十六貫七百匁(=100kg)。
老舖(しにせ)"桶長(ひちやう)"よりの仕入(しいれ)。
これを過半(あらかた)醤油漬(しやうづ)けとなす。
夏場(なつば)としては、稀(まれ)に見(み)る美味(びみ)。
敢(あ)へて"房州産(あは)"を避(さ)け、
"三陸産(さんりく)"を重用(おもん)ずと云ふ鮑(あはび)も佳味(よきあぢ)。
"胡麻鯖(ごまさば)"は薄(うす)く三枚(さんまい)に引(ひ)き、
これをずらし重(かさ)ねて用(つか)ふ。
この技法(やりかた)の嚆矢濫觴(さきがけ)は、
六本木(ろつぽんぎ)『奈可久』鈴木隆久親方(すゞきたかひさおやかた)。
眞鰺(まあぢ):
豫(あらかじ)め輕(かろ)く振(ふ)り鹽(じほ)を打(う)ち、
供(いだ)す直前(すぐまへ)に醋(す)に潛(くゞ)らす流儀(やりかた)。
この時季(じき)、しかも、薩州(さつまのくに)出水(いづみ)の産(もの)。
穴子(あなご)は吾(あ)が嗜好(このみ)に合(あ)はず。
東都(えど)の"煮穴子(にあなご)"と云ふより、
京坂(あちら)の"燒穴子(やきあなご)"のごとき食感(はごたへ・したざはり)。
皮(かは)近(ちか)くより漂(たゞよ)ふ臭氣(くさみ)は皆無(なし)。
酒(さけ)・味醂(みりん)の類(たぐひ)を用(つか)ふことなく、
芝蝦(しば)と薯蕷(いも)・甘蔗(たう)にて制作(こしら)へたる、鶏卵燒(たまご):
件(くだん)の鶏蛋(たまご)の濃厚(こ)き口味(あぢ)こそ顯著(あらは)なれど、
やはり、『うを徳』の鶏卵燒(たまご)が吉(よい)。
親方(おやかた)と、
やがて御内儀(おかみ)となる許嫁(いひなづけ)の呼吸(いき)も合(あ)ひ、
寔(まこと)、心持(こゝち)よき限(かぎ)り。
繁盛(さかえ)て欲(ほ)しくもあり、混雜(こみあ)ふは辛(つら)きところでもあり。
東道(あるじ)曰(いへら)く、
「一流店(なのあるみせ)で修業歴(わざをならひおぼえ)たる例(ためし)なし」と、、。
獨學(ひとりまな)びて祕技(ひめわざ)を會得(ゑとく)せしは、
木挽町(こびきちやう)『とゝや』など極纔(きわめてわづ)か。
押竝(おしな)めて、
この界隈(あたり)では、浦和(うらわ)『よし佳』を凌駕(しの)ぎ、
東都(えど)でも、『とかみ』、『あらゐ』と比肩(かたをなら)ぶるほど。
今(いま)や、『初音』にも肉薄(せま)る威勢(いきほひ)。
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :徠卡(Leica)Apo Summicron M 2/50 Asph. @F2
豬股健史親方(ゐのまたきよしおやかた) 【掲載許可濟】
豬股健史親方(ゐのまたきよしおやかた) 【掲載許可濟】
豬股健史親方(ゐのまたきよしおやかた) 【掲載許可濟】
切付(きりつけ)
墨烏賊(すみいか)
鳴門(なると)眞鯛(まだひ)
皮剥(かはゝぎ)
細魚(さより)
喉黑(のどぐろ)
但馬柴山(たじましばやま)背子蟹(せこがに)
鮭腹子(さけはらこ)
大間(おほま)鮪(しび)
甘蝦(あまえび)
大間(おほま)鮪(しび)
蝦夷利尻(えぞりしり)雲子(くもこ)
眞梶木(まかじき)
蝦夷野付(えぞのつけ)小柱(こばしら)
大間(おほま)鮪(しび)
大間(おほま)鮪(しび)
小鰭(こはだ)
手巻(てまき)
雞卵焼(たまごやき)
銅(あかゞね)の卸金(おろしがね)に青森(あをもり)の山葵(わさび)
豬股健史親方(ゐのまたきよしおやかた) 【撮影許可濟】
豬股健史親方(ゐのまたきよしおやかた) 【撮影許可濟】
鮪(しび)の切付(きりつけ)
鮪(しび)の切付(きりつけ)
玉薤(さけ)
白烏賊(しろいか)(=劍先烏賊(けんさきいか))
鱸(すゞき)
三州(みかは)淺蜊(あさり)
星鰈(ほしがれひ)
利尻(りしり)馬糞海膽(ばふんうに)
利尻(りしり)馬糞海膽(ばふんうに)
噴火灣(ふんくわゝん)鮪(しび)醤油漬(しやうゆづけ)
噴火灣(ふんくわゝん)鮪(しび)醤油漬(しやうゆづけ)
出水(いづみ)眞鰺(まあぢ)
噴火灣(ふんくわゝん)毛蟹(けがに)
鰒(あはび)
鰒(あはび)、ーー上(うへ)からーー
胡麻鯖(ごまさば)
江戸灣(えどわん)穴子(あなご)
鮪(しび)醤油漬(しやうゆづけ)
鮪(しび)醤油漬(しやうゆづけ)、ーー上(うへ)からーー
鮪(しび)肥肉(あぶらみ)醤油漬(しやうゆづけ)
鮪(しび)肥肉(あぶらみ)醤油漬(しやうゆづけ)、ーー上(うへ)からーー
鮪(しび)肥肉(あぶらみ)醤油漬(しやうゆづけ)
鮪(しび)肥肉(あぶらみ)醤油漬(しやうゆづけ)、ーー上(うへ)からーー
鮪(しび)手巻(てまき)
江戸灣(えどわん)穴子(あなご)
海苔巻(のりまき)
鶏卵焼(たまごやき)
鶏卵焼(たまごやき)、ーー上(うへ)からーー
生薑(はじかみ)
醤油皿(しやうゆざら)
2016/12/17 更新
四度目(よたびめ)の『豬股』。
當日(そのひ)電話(テレフヲン)するに、「空席(あき)あり」との應答(いらへ)。
今猶(いまなほ)かくのごとき景状(ありさま)なる縁由(ことのよし)、
偏(ひとへ)に、"川口(かはぐち)"と云ふ地(ところ)の牆壁(かべ)にあらん。
とは云へ、かの蒲田(かまた)『初音鮨』の前例(ためし)もあり、
努々(ゆめゆめ)油斷大敵(きをぬくべからず)!
半年後(はんとせのち)、
「『初音鮨』のごとき爲體(てゐたらく)にならぬ」とは、難斷言(いひきりがたし)。
"熟成(ねかし・うらし)"を窮(きは)めんとするは、以前同樣(まへにおなじ)。
魚(うを)に依存(よ)り、大(おほ)きさに從(したが)ひ、
鹽(しほ)を振(ふ)り、時(とき)にその儘(まゝ)、
冰温(こほりのつめたさ)に寢(ね)かすこと數日間(いくにちか)。
"劍先烏賊(けんさきいか)"で五日(いつか)、
"鱸(すゞき)"、"星鰈(ほしがれひ)"なら七日(なぬか)、
この日(ひ)の"鮪(しび)"は五日(いつか)と云ふ工合(ぐあひ)。
鱸(すゞき)は、「昆布〆(こぶじめ)歟(か)?」と訝(いぶか)るほど。
舎利(すめし)の美味(うま)さも不變(あひかはらず)。
陸奧(むつ)の眞妻山葵(まづまわさび)の優秀(すば)らしさは、
豆州(いづ)のそれにも匹敵(ま)けぬほど。
季(とき)に恵(めぐ)まれずと云へど、"鮪(しび)"もまた佳味(よきあぢ)。
創業(あきなひをはじめ)て以來(よりこのかた)、
築地(うをいちば)では、最上(いとよ)きものばかりを贖(か)ひ續(つゞ)け、
今(いま)や、仲卸(なかおろし)が、
當家(こちら)のために極上(このうへなき)ものを確保(とりおき)するまでに、、。
"鮪(しび)"、"海膽(うに)"は勿論(いふまでもなく)、
その他(ほか)の鮨種(すしだね)も至高(とびきり)のものばかり。
この日(ひ)の"紫海膽(うに)"にも「築地一(つきぢいち)」の極印(きはめいん)。
一貫(ひとつ)原價(もとね)で四千五百圓(よんせんごひやくゑん)にもなると云ふ。
それを、
「四千圓(よんせんゑん)と云ふ破格値(あかじね)」
にて提供(いだす)とのよし。
小人(それがし)のみ、このありがたき提案(まうしいで)を辭退(ことわる)。
"星鳗(はかりめ)"は烹(に)て炮(あぶ)ると云ふ烹調法(やりかた)。
外見(みため)も食感(あぢはひ)も、
瀬戸内(せとうち)界隈(あたり)の燒穴子(やきあなご)に彷彿(さもにたり)。
僕(やつかれ)、やはり、古典的(むかしなが)らの"煮穴子(にあなご)"が吉(よい)。
"蝦蛄(しやこ)"も卵巣(たまご)を持(も)たぬものを、
眼前(めのまへ)にて茹(う)で上(あ)ぐるを嗜(この)む。
當家(こちら)の流儀(やりかた)、
風習(ならひ)の"漬込(つけこみ)"とも半點(いさゝか)異質(ことなる)。
明々地(あからさま)に改良(よく)なりしが"雞卵燒(たまごやき)"。
顏色(いろ)の變化(たがひ)は甘蔗(さたう)を變更(かへ)たことに起因(よる)。
滑(なめ)らかなること絹(きぬ)のごとく、
嫩(やはらか)なること焦糖布甸(かすたあどぷでいんぐ)を髣髴(おもはす)。
劈頭(いやさき)から掉尾(いやはて)に至(いた)るまで、
一(ひと)つとして麁味(あぢあ)しきもの皆無(なし)。
只顧(ひたすら)旨(うま)く、唯々(たゞたゞ)味覺(した)を怡(よろこ)ばしむ。
とは云へ、美味(うま)く濃厚(こ)きに過(す)ぐるとの恨(うら)みを殘(のこ)す。
因(ちな)みに、この宵(よひ)の菜譜(こんだて)は、如下(つぎのとほり):
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・劍先烏賊(しろいか、=けんさきいか)、筑紫(ちくし)、五日熟成(いつかうらし)
・鱸(すゞき)、伊勢(いせ)、七日熟成(なぬかうらし)
・星鰈(ほしがれひ)、陸前(りくぜん)、七日熟成(なぬかうらし)
・蝦蛄(しやこ)、陸前(りくぜん)、卵持(こもち)
・章魚(たこ)、下總鴨居(しもふさかもゐ)
・縞鰺(しまあぢ)、五日熟成(いつかうらし)
・紫海膽(むらさきうに)、陸奧(むつ)
・鮪(しび)、壹岐(いき)、三十七貫(≒137kg)、五日熟成(いつかうらし)
・眞鰺(まあぢ)、薩州出水(いづみ)
・棘藻蝦(をにえび、=いばらもえび)、蝦夷積丹(えぞしやこたん)
・鰹(かつを)、安房勝浦(かつふら)、一貫三百九十匁(≒5.2kg)
・鰒(あはび)、三陸(さんりく)
・星鳗(はかりめ)、江戸前(えどまへ)
・鮪(しび)、壹岐(いき)、三十七貫(≒137kg)、五日熟成(いつかうらし)
・鮪(しび)肥肉(あぶらみ)、壹岐(いき)、三十七貫(≒137kg)、五日熟成
・星鳗(まあなご)+黄瓜(きうり)
・鐵火卷(てつくわまき)の類(たぐひ)
・雞卵燒(たまごやき)
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