2回
2017/11 訪問
『緑壽庵(このいほ)』は 洛(みやこ)の丑寅(うしとら) 金平糖(あめ)ぞ售(う)る 「世(よ)に爰(こゝ)だけ」と 自稱(ひとはいふなり)
※"日本橋三越(にほん者゛し、みつゐゑちごや)"にて贖入(かひいれ)
『緑壽庵清水』が大名(なのおほきなること)、
宛然(あたかも)、如雷貫耳(いかづちがみゝをつらぬくがごとし)。
生憎(あいにく)、小人(それがし)堪能之(これをあぢは)ひたる例(ためし)、
纔(わづ)かに、御裾分(おすそわけ)を舐(な)めた耳(のみ)。
その容姿(すがたかたち)は小振(こぶり)。
駄菓子(だぐわし)"金平糖(こんぺいたう)"の半分(なかば)にも滿(み)たず。
小賢(こざか)しき着色(いろづけ)はなく、
"生成(きなり)"、すなはち、天然自然(てんねんじねん)の顏色(いろ)。
徐(おもぶる)に一粒(ひとつぶ)。
そのあまりの美味(うま)さに陶然(ことばをうしなふ)こと霎時(しばし)。
我(われ)に還(かへ)りて、さらに一粒(ひとつぶ)。
爽(さは)やかなる蘋果(りんご)の馨(かをり)鼻竅(はな)を穿(うが)つ。
さらに、一粒(ひとつぶ)、二粒(ふたつぶ)、三粒(みつぶ)。
もはや、靈魂(たましひ)身體(み)に添(そ)はで、眼晴(め)も虚(うつろ)。
將(まさ)に涕(なみだ)流(なが)れんと欲(ほつ)す。
堪之(これをこら)へて深(ふか)く溜息(ためいき)。
市塲(そこいら)の駄菓子(だぐわし)とは「月(つき)と鼈(すつぽん)」。
大(おほ)きさと着色(いろづけ)を除外(のぞ)くなら、
どちらも沙糖(さたう)が主原料(おもなるそざい)。
何故(なんのゆゑ)に爰(こゝ)までの明々地(あからさま)なる相違(ひらき)?
果實(くだもの)ゝ風韻(かをり)?
小(ちい)さゝ故(ゆゑ)の食(た)べやすさ、噛(か)みやすさ?
あるいは、家内制手工業(いへのなかでのてしごと)ゝ、
機械制大工業(おほじかけ、きかいからくりづくり)の相違(たがひ)歟(か)?
その縁由(ことのよし)不詳(つまびらかなら)ねど、
慥(たしか)に、兩者(このふたつ)には歴然(あきらか)なる差(たがひ)。
なんでふ、外(ほか)の味(あぢ)試(ため)さでおかれやう?
遠(とほ)からず、この糖(あめ)を再(ふたゝ)び!
因(ちな)みに、座右(てもと)の日葡辭書(じびき)には、
"金平糖(こんぺいたう)"、"有平糖(あるへいたう)"、"加須底羅(かすていら)"、
何(いづ)れの説明(はなし)もなし!!
元來(もとより)南蠻葡萄牙語(あちらのことば)なれば諾(うべ)なるかな!
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4
2017/11/03 更新
歳末(としのせ)の日本橋(にほん者゛し):
以前(まへ)に比較(くら)べ、目拔(めぬ)き通(どほ)りは樣相一變(さまがはり)。
夥(あまた)大厦高樓(たかどの)が聳(そび)え、
老舖(しにせ)の大半(おほ)くも所在地(ところ)移轉(うつりぬ)。
『大勝軒』を辭別(いとまごひ)せし後(のち)、『神茂』を覘(のぞ)き、
"三井越後屋(みつゐゑちごや)"なる、『緑壽庵清水』と『ルコント』を訪問(たづ)ね、
『緑壽庵清水』"巨峰金平糖(きよほうこんぺいたう)"を沽(かひもと)む。
對價(あたひ)、大畧(およそ)六百圓(ろつぴやくゑん)。
着色(いろづけ)には疑問(くびかし)ぐるところなれど、
その、排山倒海・莫測高深・天下無雙・空前絶後(このうへもなき)美味(うま)さに、
肝(きも)を消(け)し、魂(たましひ)を失(うしな)ふ。
霎時(しばし)、その塲(ば)に立竦(たちすく)むほか術(すべ)なし。
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-Macro 2/50 @F2.8