レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!
1位
1回
2010/04訪問 2010/05/06
Quartessence, c'est un espace heureux.
私の友人達の間ではネガティブな意見が多かった当店。加えて私の好みである“小箱・カウンター・オーナーシェフ/ソムリエ”という要素が皆無(爆)でも自分で確かめてみたい気持ちはずっと持っていたの。それでも、予約専用電話が常時つながらないとか数ヶ月先まで一杯とかでとっても遠い存在でした。
そうこうするうち初訪問の機会がやってきました。すべてお膳立てされた所に図々しく乗っかって。
ちなみに食前の勝手な予想は“私の理解能力を超える創作モダンフレンチ”
当日のメニュー
◆サルデーニャ産ボッタルガのサブレ
ブルターニュ産海藻入りバター(銘柄未確認)が深みをプラス。
◆桜の香りのスープ
桜の葉をハーブ的に使った春を感じる風味。
◆山羊乳バヴァロワ
Mille et Une Huilesのトスカーナ産オイルとゲランド産fleur de selを生かす為にchèvreは癖のない国産物を組み合わせたのかなと想像
塩使いに特徴のあるプロローグ。確かにどれも美味しい。そしてこんなに軽ければ何皿でもいけそうな気分。その一方で「特選素材盛り合わせ」な印象もあり。
◆つぶ貝のニョッキとベニエ
かなり極端な例えだけどソースがテリヤキ味っぽい感じでビックリ。とってもベタな味わいをベニエの衣の軽やかさやつぶ貝を練り込んだと思われるニョッキの精巧さで洗練したものに。
◆トリップと日向夏のポワレ
食材の説明があるまで何か分からなかった一品。まさかこういうお店でトリップを使うなんて!
「へぇ~珍しいねー」なんて言って口に入れた瞬間に居合わせた4人全員黙り込んでしまった。その位新鮮な驚きのあったお皿。
私にはトリップのお料理って赤のイメージ。それが黄色い柑橘類とピーマンを合わせて春の風を感じる可憐な一皿に。表面に焼き目を付けたトリップの軽い食感。そして爽やかな酸味とわずかな苦み・甘味が重なり合いしあわせの一皿。個人的には当日の白眉。
◆筍をポワレしたもの
生のままでも食べられそうな新鮮な筍。火入れ技の顔見世興行状態が続く。
◆イサキと山菜
イサキの姿を見た瞬間「エロい~」と口走ってしまった、何とも言えないピンク色の身。エロいサーモンなら出会ったことはあるけど。
お口に入れたら更にエロい。ねっとりと舌にまとわりつく蛋白質にコシアブラの濃厚ソースが更なる艶を醸し出し。添えられた山菜の滋味がエロの暴走を抑止。
ソムリエ市村さんから「本日お肉料理は色々とありまして…○△牛の首、イベリコ豚と、×▲鶏のナントカ…」と前フリがあったけど…←琴線に触れてなかったので覚えていない(大汗)…さて、何が出てくるんだろう。
◆鳩の3時間ロースト
火入れ顔見世興行は最高潮。ワインと鳩の色がお揃いです。
下がりまくったテンションをソムリエ氏に読まれたのよね。鳩の登場は本当に嬉しかった。
瑞々しく、ぬめぬめした鳩のお肉を堪能。
◆トム・ド・トンプリエのフォンデュ
熟成したカマンベールの上に瑞々しい自家製レーズンの組み合わせ。
◆コーヒーソルべ
一瞬キャラメル?と思っちゃった、苦さとほのかな甘さとの同居。レモンの酸味がアクセントになり口直し
に最高のソルべ。
◆薔薇の香りの苺ショートケーキ
ゆるいクレーム・シャンティが苺の上に表面張力でのっているよう。そのギリギリ感とは裏腹にお味は直球懐かし系いちごショート。間に極薄パウンド生地が挟み込まれていたのがミソ。パティシエとしての技術もすごそう。
◆アーモンドのスフレ バナナの角切り
ココットではなく深めのお皿で焼いてあるのでしぼみにくい。繊細で香り高いスフレ生地が美味。
◆メレンゲのアイスクリーム
まさにメレンゲ味。焼きメレンゲも添えてあり軽やかさにほんのり香ばしさもプラス。
◆ハーブティ
ここまで4時間という事がとても短く感じました。
欲を言えばデセールは咀嚼力の要らないものが続いたから、がっしりした焼き物が欲しかったわ。
個人的には当日のお料理に理解不能なものはおろか変化球といえるものもなく、この事が一番驚きだったりして。
全体の流れとして季節を感じる要素をふんだんに組み込み、塩使いや火入れに特徴があるシンプルさに軽やかで若々しい洗練さが加わった印象を持ちました。
総じて動物性油脂分が少ないので食後感が軽いのも今の時代支持されるポイントかな。
当店に複数回訪問している同席者さんによると、今回はかなり分かりやすい料理だったとのこと。
どのお皿も美味しくいただけましたし、随所に現れる寸止めというかギリギリ感も色気があって好きです。
どんなお料理が出てくるか分からないから合わせるワインもミステリー。造詣の深い同席者とソムリエ氏との掛け合いが知識とユーモアに彩られチャーミングな会話。脇で聞いていて「ああ、ワインってこういう風に楽しむんだ!」と感銘を受けました。
自分で苦労して予約を取った訳でなく、しかも個室まで使えたことを本当に感謝しています。
そして心から楽しい会食というのは、同席者とシェフを始めとするスタッフの皆さん、つまり“人と人とのつながり”によって彩られるという事を再認識しました。
会食における全てのシチュエーションがうまく回っていく奇跡的な空間に身を委ねられたしあわせ。
2位
1回
2012/08訪問 2012/12/28
(2012.8) お腕は鱧のにゅうめん仕立て。骨切りの加減が絶妙。茄子の煮浸しは出汁を極限まで抱き込んでふっくらしていながら茄子本来の食感も味わえる。地味な部分が素晴らしい。
(2010.9)とっても暑かった今年の夏。京都で桜田さんにおじゃまして以来、和食の世界を探検したくなりました。
日本だから何を食べても美味しいと思っていたけど、たった数軒の訪問で同じ価格帯でも実に方向性の違うものなのだと今さらながら驚きました。ま、和菓子もそうなのだけど。
広い日本おそらく上には上があるし、人それぞれ好みもある。和食道入門者の私だけど、当店のお料理にすっかり魅了されました。
お店は西麻布交差点近く。飲食銀座的エリアです。辛うじて行燈がちょこんとあるだけで通りからはわかりにくい立地。やや不安になるアンティークエレベーターに乗り3階へ。
カウンターがメインでこじんまり。真面目でおとなしそうなご主人と割烹着の女将さん。おだやか~な空気が漂います。
店内は失礼ながらやや質素な印象。ところどころ傷なぞ見えたりして。でも空気は澄んでいたの。きりっとしてるけど穏やかな空気。
お昼は5000円か10000円の2種で、予約の際にどちらにするか決めます。5000円の方をお願いしました。
撮影禁止なのでお料理の映像は全くありません。始めからわかっているので許可を撮ったりタイミングを計らなくて済むのは気が楽。
本音では美しいお料理をいろいろな方に見ていただきたい気持ちなのだけど。
私の拙い文章で、どこまでこの嬉々とした気持ちがお伝えできるかしら。
お料理はやわらかさと透明感だけでなくエキス感もあるお出汁はもちろん、食感のバリエーション・香りや苦みをうまく使って五感に訴える点が印象に残りました。
味付けだけでなく皿数・量も満足だし、配膳のテンポも心地良かったわ。
当日のお料理は以下
◆先付け
鯛の上に蟹・菊・いくら。ジュレ状の出汁があしらわれ。
まず菊の香りがふわ~。いやらしさのないいくらもいいし、バランスのとれたお皿。出汁ジュレをいただいた瞬間「あっ こちらとは相性いいかも」と感じました。細胞に染みていくようです。
◆もち米とみょうが
ひとくちサイズに丸められて、ころん。
香りものの使い加減が、寸止め愛好家としてはグッときました。意図的なのかどうかわからないけど、この後も随所に感じられました。
◆八寸
甘鯛は竜田揚げ風の衣をまとい表面カリッと、身はふわっと。お箸を入れると「ほわっ」と湯気がたちます。
単に柔らかいだけでなく、むにゅっとした感じもあって愉しい。
銀杏・石川芋。そしてイチジク。上にかけられた味噌風のものにはかすかに柚子の香り。素敵。
◆沢煮
存在感十分な大き目の鱧が2切れ。お椀の底が見えませんでした(笑)
ごぼう・にんじん・ねぎを極細、白髪ねぎっぽく切ったもの。
鱧の食感はもちろん、やはり出汁がしっくりきました。
「薄味」というと弱々しく聞こえるけれど、こちらのは足元のしっかりした柔らかさ。理屈抜きにおいしい。
◆お刺身 雲丹と鯛
唐津の雲丹。やや黒みを帯びて細胞が生きているよう。
◆炊き合わせ
紫色と金色のコントラストがセクシーなお椀の中には茄子とニシン。出汁をふっくらと抱き込んだ茄子を口に運ぶと至福の時が訪れます。
う~ん、色気あるなあ。
◆金目鯛
お弟子さんがカウンターの端にある炭火で焼いてました。美しい焼き色が器に映えます。
◆鯛めし
土鍋ごはん。ここでも控えめな山椒使いが光ります。いただいた瞬間はわからないけど、時間差でおだやかに追いかけてくるの。
ごはんも鯛もしっとり。あまりに美味しくて同行者の分まで完食(呆)
◆お味噌汁・香の物
◆はす餅・桃
黒蜜に酢橘が使われて酸味と苦みをプラスするところにヤラれました。
人によってはヤリ過ぎだと感じるかもしれないけど、私はとても好きなバランス。
私は食事中ず~っとマヌケな顔をしていたはず。
穏やかで真面目なお料理にちょっとした仕掛けが見える愉しさに大満足の5000円ランチ。
季節毎に通いたいお店です。
3位
1回
2010/07訪問 2010/08/23
呑み重視な人にはもちろん食べ重視な人にも楽しいお店。お財布にも優しく文句なし。ただし万人向きではありません。
結論はタイトルの通りです。あっ、字数が足りないわね。では詳細をつらつら書くとしますか。
飲み食い好きな友人達との飲み会で訪問。かねてから行きたいお店の筆頭だったのに飲み専的ムードがあり先送りに。
偶然にも当店が会場だと幹事から聞いた瞬間ガッツポーズ←バカ
赤坂見附駅至近。猛烈に怪しい雑居ビルの3階。エレベーターのドアが開くといきなりお店登場。
照明は暗く、なるほど店名に「夜」と付けるだけあるわね~と思いつつ、小上がり席に通されました。カウンターやテーブル席もあります。
正直言ってもっと小汚いと想像していたけど、その点は問題ナシ。暗くてわかんなかった?かも(爆)
店内が暗い上にメニューの文字が象形ちっくでやや読みにくいものの、すべてそそられるお料理。
要は、どこの中華料理店でも出しそうなものが少なくて、「何それ?(怪)」「えっ、こんなモノがっ(驚)」という好奇心をかきたてる品ばかり。しかもお安い!どんなにお高いものでも2千円未満だったような。
既に何回も当店で堪能済みの幹事氏が推奨する料理を注文後も延々とメニューに見入ってしまった。
残念だったのは名物「臭豆腐」が「夏休み中」だったこと。暑いから仕方ないわね。また涼しくなったら食べに行かなきゃ。
お料理は基本的にお酒の友的な存在とはいえ、味よしセンスよしボリュームよし。4人だとバランスよく色々なものがいただけると思うわ。
食べチームは凍頂烏龍茶をオーダー。飲みチームはとりあえずビール。
この凍頂烏龍茶。通常はポットに入っているかと思ったらば本格的なセットにて登場しビックリ。手抜きしないのね。
◆付きだし3種 揚げ豆・うなぎ・セロリマリネ
これを食べた瞬間、狂喜乱舞。食感・スパイスのメリハリをつけたすばらしいオツマミ。
特に揚げ豆は桃の木を彷彿させながらも、もっともっともっとワイルド。スパイス使いが素敵で止まらない。
以下食べたもの。宴半ばから酔っぱらったのと、速攻お皿に群がる友たちのせいで映像はほんの一部(爆)
そしてメモを取ってないので忘れた恐れも…。
◆前菜盛り合わせ7種(中)
大つぶ貝茅台酒漬・とうもろこし天ぷら・うなぎ肝五香煮・自家製紅腐乳ネギ油漬・苦瓜中国ピクルス…他は名称不明
これで中サイズなの?という豪快さ。シャープなスパイス使いとちょっとクセのある風味が好みにはまる。
◆百家風鴨舌の炒め
初めて食べたわ。食べる部位は少しなのだけど、やや甘辛スパイシーな味付けが全員ツボにはまり数皿追加。
◆空心菜炒め
何の変哲もない炒め物ながら、茎シャッキリ葉はシンナリの火の通し具合が絶妙。
◆うなぎ蒸し飯
映像はないけど大きい蒸籠でドカンと出されます。これは誰でも安心して美味しく楽しめる一品。
凡庸なようで印象に残る味付けは調味料にヒミツがあるのかしら。
◆カエルの揚げ物
山盛りチョモランマ状態のスパイシー揚げ衣(パン粉みたいなの)からカエルを掘り出す感じ。カエルの身はふっくら淡白でこの揚げ衣と合わせるとちょうどいい。同席者はこれをご飯にぶっかけて食べたいと絶賛。
◆大根もち
鉄板に乗りジュウジュウの状態で。ちょい辛のソースが焦げかける香りがたまらん。
◆酢豚
桃の木同様にナイフ&フォークで切り分け。素揚げしたのかな、サクサクの食感と黒酢の穏やかな甘味・酸味が合体して至福。
お肉の質は桃の木の方が相当上質なんだけど、味付けは遜色なく、そもそもお値段が段違いだし壮絶な肉の塊を眼前にすると狂喜するしかないわ。
どのお料理もスパイス使いが独特でお酒の肴的やや濃いめの味。それでもジャンク感はなく、すべてのお料理を満喫。
偏食の多い方は論外として(爆)変わった食材に積極的になれない方は当店を楽しめないわね。
初めて見る素材・調理法にワクワクできる方にはボルテージMAX。全部制覇したくてまた来たくなっちゃう。
飲みチームがあまり大食いでないのでお料理をもっと頼みたかったのが唯一の心残り。そそられる珍品がたくさんあったのにぃ。。。
その飲みチームは紹興酒の「三種利き酒」セット(\900~)を大喜びでグビグビ。その後は気に入った銘柄をリピートし、そして高濃度白酒に移行。
ドサクサに紛れて私も飲みやすいと勧められた黄中皇(ファンジョンファン)十年なるお酒をいただきました。滑らかで艶気を帯びた上質な味に素人ながら感動。
種類は多い上にレアなものもたくさんあってお値段手頃と飲みチームは大満足。
サービスに関しては混み合ってくるとやや大変そうだけど、居酒屋ちっくなこのお店ではのんびり構えるのがよろしい。
猛烈に飲み、ガッツリ食べて一人6千円少々という脅威のお会計。
噂とおり凄いお店だったなあ…。気楽にレアなお料理が楽しめ、友たちとも積る話ができて最高の暑気払いができた赤坂の夜。
4位
1回
2011/08訪問 2010/12/10
(2010.7)春の終わりに練り羊羹を求めたこの店に夏の訪れを告げる水ようかんの季節がやってきました。厚めの文庫本を2冊重ねたくらいの大きさで約3千円。
一枚流しなので少しずつ切って器に盛ろうとすると つるん と流れ落ちそうになります。自立できない水ようかんなんて、今まで食べたことがある“切り分け後”ものとは似て非なるもの。この時点で“寸止め愛好家”の私を瞬殺。
ごくわずかな「ざらっ」の後「すぅー」っと身体の細胞に染み込んでいく、この感覚。まるでスイカや梨を食べた時のよう。全身に瑞々しさが行き渡ります。
こちらの水ようかんにはしっとりした色気がある。オコチャマの立ち入りは禁止したい世界。猛暑は辛いけれど、こんな妖艶で美味しい涼菓を味わうには悪くないわ。
日持ちは当日限り。通常なら「早くいただかないと劣化するわ」と捉える事項だけど、この水ようかんの場合そんな事はすっかり忘却し、ひたすら「ああっ あとこれだけしかないっ」という名残惜しさばかり。
練り羊羹同様に材料は小豆・水・砂糖・寒天だけ。ただ単にゆるく固めても色気あふれる食感とお味にはならないはず。
清涼感の向こう側には職人さんの地味な手仕事が隠れているのね。
早くも秋の練り羊羹が楽しみです。
(2010.4)業歴200年を超えるらしい完全予約制の和菓子店…というか、元々茶事用の御菓子司。御主人と息子さんの二人だけで作っているので生産量に限りがあり事前予約が必要なのです。
一般用には季節の上生菓子が月変わりで2種(350円)、そして小倉羊羹(2646円)その他季節毎の羊羹が用意されています。
電話でお願いしたところ羊羹は3~4日、上生菓子は約1週間後の受取との事で日にちを合わせていただきました。このやり取りが実に丁寧で好感触。
JR両国駅から歩いて10分とかからない場所にひっそり佇んでいます。住居兼店舗のようなので知らないと絶対に見過ごします。
引き戸を開けると正面に当日のお菓子見本が飾られたガラスケース。左右に腰掛けられるスペースがあります。奥様と思われる女性が出てきまして、名前を告げると再び中に入ってお菓子を取り出してきます。
進物用の場合は追加料金で包装して下さいます。
奥様の応対はおっとりして丁寧なので、ついつい自分が“長年の常連客”と勘違いしそうになります。
◆上生菓子(4月)
<若紫>練りきりの上に藤を型押し。練りきり・こし餡とも粒子がとても細かく密度が高いので口溶けすっきりながら、どっしり感があります。
薄い藤色のこし餡の美しいこと。そしてさりげなく、でもしっかりと主張してくる小豆の風味。
<春の山>小倉餡をよもぎ入り求肥で包み蕨の焼き印。求肥がタプタプなので怖くて指でつまめません。
よもぎ香はおだやか。これもスッと溶けそうで溶けない。こんなに瑞々しく繊細な求肥が存在するんだ…。
◆小倉羊羹(18×6×3.5㎝) 4月いっぱいで終了
一般的な羊羹の倍…大きさを勘案すればそれ以上の価格差があります。
そのような羊羹ではどうしても寒天の存在とお口に入れた瞬間に砂糖由来の強烈な甘味を感じてしまいます。しかし、こちらのは甘さが穏やかにじわじわ来るんですね。決して控えめな甘さではないのに。
すっきりと透明感のある味といえばよいのかしら。
◆よもぎ羊羹(18×6×3.5㎝) 5月中旬までの予定
かつて自分から、しかも電話予約してまで羊羹を買った経験はありません。
でも、こちらのは違う。しかももうすぐ練り羊羹のシーズンが終わると聞くといてもたってもいられない。
小倉羊羹で感動した後、間髪入れず予約しました。
棹のままだとそれほど香りはないのに、口にいれると新緑の如き風味が鼻腔を抜けていきます。
小倉とは違い固形物はなく更に滑らか。濃い草色に気品すら感じます。
正直いってこちらのお菓子の美味しさを表現する適切な言葉が見つかりません。
地味な姿ながら小豆の舌触りや甘味の加減は本当に上質です。
同じような材料でこれほどまでに差が出るというのが和菓子の奥深さなのでしょう。
普段羊羹なんてそんなにガツガツ食べませんけど、コチラのは薄く切っては食べ切っては食べ切っては食べ……。たっぷり食べても全く罪悪感がない、ただただ満足に浸れるお菓子です。
今月は茶席用の予約が多いそうなので一般向けは少なくなると思われます。
“一般人の私なんぞに分けてくださりありがとうございます”という気持ちでいっぱいです。
5位
1回
2016/06訪問 2016/07/16
(2010.10)究極のトゥルルン系わらび餅で恋に落ちた春。しかし、8月はじめに食べた葛まんじゅうと水ようかんがいまひとつ…京都の名店数軒で素晴らしいお菓子に出会ったので、やはり和菓子は京都なのかしらと思いつつ…まあ得手不得手があるのだろうと季節が変わるのを待ちました。
さて、待望の栗の季節。栗のお菓子2種と干菓子を購入。
見た目は東京的などっしり系。果たしてどのような味わいなのかしら。
やはり間違いなかった。わらび餅に比べればインパクトが弱いものの、完成度の高いお菓子でした。
◆栗きんとん 400円
大振りでずっしり。表面に軽く焼き色。滑らかな栗の裏ごしに米粒ほど、いやもっと小さいかな、の栗が混ぜられています。この大きさが絶妙。
どうやってこんなに細かくしたんだろう。。。滑らかさとホクホク感が両立していて裏ごしだけでも十分美味しいけど、若干もったりするのをこの細かい粒がアクセントを付けているような。
◆栗蒸しようかん 400円
大きい栗がゴロゴロ練り込まれています。蒸しようかんなので食感はむっちりですが、口溶けは当店らしくエレガント。
栗の食感がようかんのむっちりとほぼ同じ、均一な食感に仕上がっていたのが素晴らしい。
ねっとりカステラ的な松風との組み合わせも良いです。
◆雪つぶて 10粒入り840円
大徳寺納豆入りの干菓子。口溶けは京都の塩芳さんの方が繊細です。しかし当店のは大振りで大徳寺納豆の量が気前良く、味わいが明快。やや固めなので一瞬噛む感覚が味わえるのもいいですね。塩芳さんのは一瞬で消えてしまいますから。
(2010.8)
◆水ようかん(330円)こしあんの美味しさは抜群ながら食感が凡庸。越後屋若狭と比較するのは気の毒なんだけど。。。
◆浜ゆう(380円)練りきり。
◆蝉時雨(380円)葛まんじゅう。葛部分がごわごわ。中のこしあんの繊細さと全く調和していない。
(2010.3)私は和洋問わず骨太な食感の食べ物が好きです。なので「やわらか○○」の類はどうも…。
しかし!素晴らし過ぎるわらび餅があるという。それは茗荷谷。
はっきり言って自宅から行きにくい場所なのよね。。。で、どんどん後回しになっていました。
“売り切れるのが早いので予約した方がよい”とのアドバイスもいただきまして、事前に電話して午後伺いました。
お店の外には「生菓子、本日売り切れました」の掲示。
えっ??@@まだ3時なんですけどーっ(驚)
◆わらび餅
このトゥルルンさ加減は半端ないです。自重で崩れそう…だけどコシが強いのかな?
外側のお餅部分の食感&口溶けの軽やかさというか繊細さは勿論、私は内包されたこしあんに感動しました。滑らかでスッと溶けていくのに小豆としての主張もある。
どうしたらわらび餅をこういう食感にできるのかしら…でも、もうそんなことどうでもいい。感動。
◆青葉の影
季節の生菓子で唯一残っていました。うれしい。
ずっしりしているけど、これもスッとはかなく溶けます。
甘さもしっかり感じますね。わらび餅同様に、アンの素晴らしさが感動的。
◆栗ふくませ
まるごと栗が入ったというより、栗に白あんをまとわせてお饅頭の皮をそっとかぶせた感じ。
これは溶けます系ではなく、栗にはしっかり食感が残っています。この栗の仕込み方が素晴らしい。
この類のお菓子は色々なお店が出していますが(虎ノ門の某店とか)どれもしょぼ~んなものばかり(爆)
う~ん。溶けない系も本当に素晴らしい。
がっしり骨太菓子好きの私も完全にヤラれました。
生菓子は1つ380円。ケーキを買うよりはるかに意義があります。
四季折々に楽しみたいですね。
6位
1回
2015/08訪問 2016/01/06
【2015年 更新】
初訪から5年、新宿高島屋店は閉店、飯田橋にお弟子さんが独立し同様に“エンドレス中華”を提供している模様 笑。
その間何度も訪問しているが変わらず安うまで他に代わる店がない。特に里麺は年に1度は必ず食べたくなる逸品。
野菜炒めが突出して秀逸なのかと思い込んでいたが海鮮や肉もあっさり仕上がりかつ美味しかった!
いまのところマイナス点がみつからない。
【2010年初訪】
新宿高島屋にある激狭支店にて麺やスープにグッときて本店突撃を目指そうと決意して数ヶ月。
やっときました幡ヶ谷。遠いと思い込んでいたけど新宿から2駅120円、一瞬で到着。何事も思い込みはいけないわ。
さて駅から直結の昭和炸裂のビルに侵入。ありました。見たところ昔の喫茶店ふう。
店内ではサンダル履きで麺セットを食べる男性お一人様や家族連れでほぼ満員。
2人からオーダーできる昼のミニコース(1800円/人)をオーダーすると。。。
「それでは始めさせていただきます」
およっ“儀式”っぽいわ~。なにが始まるのかしら。メニューは完全におまかせなのでプチどきどき&わくわく。
お茶はカラフェ冷茶でスタート。他のセットものをオーダーしたお客さんのグラスはテーブルに直置き。
コースオーダーした私達には毛糸で編んだらしき可愛いコースターが敷かれていました。ささやかな優越感?(笑)
お料理は以下のような流れで。
◆黄ニラと自家製ベーコン炒め
一口目は塩分濃いと感じたのにズンズン進む。黄ニラってのがポイントね。柔らかな食感と味わい。山盛りがうれしい。
◆ささげと貝柱の炒め
沖縄産ささげ。いわゆる「小豆」のさやみたいな野菜。コリコリしてちょっと苦みがあり美味しーい。こういうお野菜大好き。
この2種炒め物で狂喜乱舞&テンション↑↑とってもシンプルだけに、素材の良し悪しや炒め技術がモロに露呈するのよね。
ああ。。。好きだわ、こういう料理!酷暑もなんのそのでバクバク。
◆焼売2個
新宿高島屋で食べたのより、はるかに美味!滑らかな肉にはハーブ的風味?タレを付けると味に深みが。
◆えびすりみ揚げ
山椒塩でいただく。えびすり身はぶりぶり。味付けもなにかしら工夫あり。
◆八宝湯
うーやっぱりしみじみ美味しい。薬膳スープ。暑さで疲れた細胞にじわじわ染みます。浴槽に張って浸かりたい←バカ
◆里麺
どっかーんボリュームで一瞬ビビる量。しかもごま油を大量に使ってあるし最初の一口はしょっぱかったのに、魔法にかけられたかの如く胃に収まっちゃう。くらげとザーサイ入り。
◆いちじくシロップ煮
シロップはごくんといける穏やかな甘味。
味よし量よし価格よし。サービスはなんとオーナーの大橋シェフ自ら親切丁寧に料理や素材の説明をして下さいました。
今回いただいたお料理にハズレなし。何と言っても高島屋店では提供できない野菜炒め等のお料理がとってもいい感じ。
夜のノンストップおまかせコースにもそそられるし、カルトメニューがあるので次回は野菜炒め攻めもいいかな…なんて野望が湧いてくる程感動の昼餉でございました。
7位
1回
2010/08訪問 2010/09/20
所用で関西に行くことになり、せっかくなので和食を食べようと立地・評価のよいこちらを予約。
予約段階でコースを決めるという事で、初訪問でもあり一番お手軽な5千円のものをお願いしました。
烏丸通りから路地を入ってしばらくすると暖簾が風になびき、「ああ、京都なのね」としみじみ。
店内はピーンと緊張する空気ではなくやや庶民的。カウンター席に案内されました。
正面には既レビューで見覚えのある舞妓さんの絵。初めておじゃました気がしなくて、ひとり笑い(怪)
既に常連さんらしき方が楽しそうにお食事中。女将さんはサバサバして気さくな印象です。
厨房の中は全く見えないつくりですが、ドアではなく暖簾で仕切られているだけなので話声は聞こえます。
しかし細かい事は聞こえず、ただただ「○○さん、八寸お願いします」「はいっ」というやりとりだけ。この○○さんというのは当日のお客さんの名字なのです。
事ある毎に自分の名前が聞こえてくるのでちょっとくすぐったい気分になるのと同時に、私のような一見客でも一人格として扱ってくださることにじ~ん。
お料理は一番廉価版なので高級素材はちょこっとだけな反面、ベースになるお出汁を味わえるお皿が多かったと思います。
ただ、どうしても他の方のお料理が視界に入るため、なるほどねーという場面もありました。
お料理に関して細かい事が伺えないというか、初訪問でそんな事を聞くのは如何なものかという遠慮もあって当店の神髄を感じるには奮発するのはもちろん、何度も通ってお店との距離を縮める事が必要なのではと感じたのです。
とはいえ初訪問でも気後れなく過ごせる雰囲気でお料理を楽しめました。
当日のお料理は以下
○梅酒 ゆるめのソルべ状。外の暑さをクールダウン。口当たりが良くて一気しそうな気持ちを押さえつつ。
○岐阜百春
○鱧 梅肉添え
○お椀
一番楽しみだったお料理。椀種は卵しんじょう。これがもう本当に卵?と思うくらい滑らかな口当たり。お出汁が単なる薄味ではなく旨みが層を成していた感じ。美味しく感じられるギリギリの一瞬をくみ取ったというか。
○八寸
お刺身(鰹・鯛・有明ばらのし海苔)、新潟産枝豆、鯵胡瓜巻き、うざく
○稚鮎
○温泉卵
ここでも出汁の威力。しっかり味が感じられつつ透明感が。
○煮物
冬瓜と蓮根団子、吉野葛あんかけ。オーソドックスなお料理にこそ丁寧さが表れるのね。
○ごはんもの
鰻佃煮入り焼きおにぎり、出汁かけ。出汁かけごはんってあまり得意じゃないけど、これは素敵でした。添えてあるお漬物が秀逸。
○ぶどうといちじく ゴマソースかけ
このゴマソースに悶絶!なんという食感なんでしょう。ただ滑らかなだけでなく空気を含んだかのようなふわっとした食感もあるのです。
ゴマのえぐみが出る寸前まで旨みを引き出したソース。寸止め愛好家としては身悶えします。ゴマ豆腐なんて最高に美味しいんだろうなあ。。。
すべてのお皿がおだやかな余裕と秘めたる迫力を醸し出していた印象を持ちました。
お店を出たらご主人と女将さんが角を曲がるところまでお見送り。
猛暑の京都だったけれどやわらかな気持ちになれた素敵な思い出です。
8位
1回
2010/10訪問 2010/11/29
ずーっとブックマークされたままでした。なかなか訪問できなかったのは「飲み専」のイメージが強かったから。夜の部だけだし。
念願の初訪問は友人たちとの集まりで当店を所望して叶いました。
中目の駅からそこそこ歩く上に、ビルの4階という、まさに「知る人ぞ知る」ロケーション。実は1階のパン屋さんには何回か来ていたのに全く気付かなかったんだもの。
内装は“いかにもイタリア”でも“女子向けモダン”でもなく、実にこざっぱり。半年前のイタリアサッカー紙が無造作に置かれてたりして(爆)
なので気合入魂の出で立ちで突撃する必要は皆無、「ちょっとそこまで」というノリが似合うのでは。
さて、「食べ専」としてはお料理をカルトでオーダーでき価格が良心的(@1~2000円台が主流)しかも名前通りで何の説明も要らない潔いシンプルさに心躍ってしまう。盛り付けや見た目はやや朴訥、最初の一口では繊細さを感じ、食べ進むうちに再び力強さが顔をのぞかせる。
どこかロマンティコを彷彿する直球骨太系。
既れびうを拝読すると“塩気がきつい”というニュアンスの意見もありますが、個人的にはそれほどでもない印象。
なんというか直球でも決して超剛球ではないの。キレイ系東京イタリアンが好きな方にもフィットすると思うわ。
当店同様に北イタリア系のラ・チャウはリクエスト抜きでは当たり障りない味付けのモノしか出てこないのに比べて(但しリクエスト次第で激化け)、デフォルトで私のノスタルジーゾーンを突いてこられては。。。
そんなお料理をこじんまりした店内でしっぽり愉しむのが似合うのね。飲める人はもちろん、食べる気満々の人でも問題なし。
カウンターがあるのでお一人様がワインバー的に使うのもよし、既に大騒ぎする年代ではない(爆)オトナのクループで慎ましく盛り上がるのもよし、もちろんデートにも。
今回は特に常連さんが同席していた為、ワインに関してはかなり気配りをしていただけた模様。私のようなド素人でもラストのデザートワインでは舞い上がってしまったもの。
同伴者と追加のお料理やワインを協議し始め、ふっと目線を上げると宮本さんがニコニコしながらボトルを数本抱えている…という控えめながら細やかな目配り。
通う程にさらにしっくりと馴染んでいくお店なのかもしれない。素敵な夜をありがとうございました。
いただいたお料理は以下 メモを取ってないので名称は適当(汗)
◆うなぎマリネ
意外に淡泊なうなぎの身に酸味がキリリと決まり食感はふわり。これはもう、ぐるぐる巻きにして出すという時点でヤラれちゃた感じね。
お皿にべろ~んと横たわっていたら印象が変わっていたかも(爆)
◆トリッパ煮込み
煮汁の少ない濃厚タイプはとっても好み。
◆Porcini impanati ポルチーニ茸パン粉焼き
◆Tortellini in brodo ブイヨンに浮かべたトルテッリーニ(肉詰めパスタ)映像は一人前
何の説明も要らない、これぞトルテッリーニの王道。エミリア・ロマーニャ州の名物料理に再会できた喜びに身体が固まってしまった。
黄金に輝くブロードは一点の曇りのないクリアで滋味深い味わい。
確かに一口目こそボローニャで食べたものよりずいぶんとお上品だと感じたものの、茹で加減といい肉の詰まり加減といい、恐ろしい位に美味しいブロード…とっても潔くそしてノスタルジコ。
◆Pappardelle al ragù di cervo パッパルデッレ蝦夷鹿ラグソース
濃厚ラグには鹿肉がごろんごろんでワイルド。これも好きだな~。
◆山鳩ロースト
◆豚グリッリア
肉料理はプリモ2品に比べれば少々おとなしく見えてしまうけど、焼きもお見事で豪快さを満喫。
◆デザートワイン数種
甘くフルーティな香りの大洪水に瞬殺。アルコール度数が高いから、と注意されたにもかかわらずあまりの美味しさにごくごく。
◆Strudel アップルストルーデルとバニラアイス
オーストリアに接するAlto-Adige地方の銘菓。ドルチェにはあまりこだわりがなくて、と言う割にはマニアックなのね。甘さ・油脂分ともエレガント。
驚愕したのは地味過ぎるバニラアイス。イタリアから機械を取り寄せて作っているとのこと。
滑らかな食感の後ちょっとだけザラッとした感触がなんとも垢抜けなくて泣けてくる。甘味もベタな砂糖味だし(爆)ああ、ノスタルジー再び。
評価はトルテッリーニ感動指数がかなり加味されたかな。。。
9位
1回
2011/03訪問 2011/05/03
(2011.3)京都で美味しい和菓子を食べた~い!でも行けな~い(泣)そんな時の救世主、新宿高島屋さんの月例航空便(またか)。そう言えば昨夏伺った時に高島屋さんに年1~2回お出しするんですよ、と仰っていたような気が。
毎月チラシを穴を開ける勢いで凝視するも、一向になし。。。ところが3月ついに来るという♪早速予約。6個入りで2520円。
もともと見た目は思い切り地味で型崩れの心配のなさそうなお菓子とはいえ、一応慎重に持ち帰り。
前回は真夏だったので、季節が変わるとどういうお菓子を作るのかなとわくわく。
箱を開けますと、やはり地味(爆)練りきり・蓬入り求肥・薯蕷饅頭ですね。各お菓子の名前は不明。電話で確認しようかと思ったけど航空便の引き渡しが土曜夕方だから帰宅した頃にはお店は閉店してるから機会を逸してしまう。。。ま、いいか。
お花の焼き印や桜色の練りきりに春を感じます。
その地味でどっしりしたビジュアルとは裏腹に、口の中でさらさらと溶けていく。でも一瞬で消える訳じゃなくて、餡やおまんじゅう生地の質感を実感するゆとりはあるの。
甘さも同様。お菓子にはある程度の甘味がないと愉しくないと思うの(勿論クドイのは嫌)。こちらのはすっきりと可憐な甘さなのです。
はぁ~半年ぶりの再会はあっと言う間に過ぎてしまったわ。次は秋かな。
(2010.8)京都で一番食べてみたいお菓子だったのが、こちら塩芳さん。一見お断りと言われても納得しそうになる風格ある佇まい、まさに京都の菓子店です。それでも創業は明治15年。業歴数百年クラスがゴロゴロある京都では新しい方に思えてくるからすごい。
干菓子の一部は京都伊勢丹でも取り扱いがあるのと、上生菓子の事前予約は不要なこと(=訪問時間に合わせて作るのではない)には若干テンション↓↓。それならば可能な限り早く訪問して可能な限り早く食べよう!と発想転換。
お店は住宅地にひっそりありますが、その佇まいは迫力満点。
中に入ると若手歌舞伎役者のような男性が奥から出てきて、ちょっぴり動揺←意味不明
生菓子の他、干菓子や焼き菓子など種類が豊富。生菓子は5種ほどで見本が陳列してあります。
ざっと説明していただき、ゆっくりと選ぶことに。こちらも応対はやわらかく丁寧。
お盆明けでしたが上生菓子はすべて夏全開のもの。姿は地味です。
水ようかんもありましたが、切り分けられかつ、自立していたので見送りました。
そして選んだのは、敢えてあまり得意でない「ういろう系」と珍しい「米粉使い」の上生菓子と普段あまり食べる機会のない「干菓子」
上生菓子を箱から出そうと手で持ちあげた瞬間…その質感は今まで未体験。粒子が細かいだけでなく、空気を含んでいるのではないかと感じました。
あまりのはかなげさに動揺してしまいました。姿形からは決してそのように見えないのです。今まで食べた中では芳光さんや一幸庵さんから受けた印象と似ています。
実際にいただいてみると、繊細さは半端なく、全く淀み曇りのない口溶け。しっかり甘味はあるもののダイレクトではなく、穏やかに後追いでくる感じ。
全ての味わいが完璧に好みで再び動揺。
和菓子を知れば知るほど秀逸かつ強烈なものに出会ってしまう、ときめきと怖さ。さすが、京都。やはり、京都。
以下今回買ったものです。
◆涼風(ういろう)
今まで食べたういろうはまがいモノなのかと思っちゃう。ただ単に口溶けがいいのではなく、一瞬とどまるういろう。
そしてすっきりと消えていく。中の粒あんもしなやかで舌に障る感触など皆無。
◆緑陰(米粉の水菓子)
米粉ならではのツブツブ感を楽しむお菓子、との説明。道明寺の食感とは全く異なり、ツブツブというより若干ざらりという感覚。
これも初めての味わい。美味しいなあーという陳腐な言葉しか出てこない。
◆水ぼたん
葛でこしあんを包んだもの。滑らかで瑞々しい。
◆小口(こごう)798円
和三盆糖を堪能する為の干菓子。大徳寺納豆を中に込めたものと何もないものの2種入り。
◆ふくべ
黒砂糖羊羹+和三盆の瓢箪形干菓子。何と言う上品さ!かなり甘いんだけど、全然嫌味なし。最高のお茶請け。
◆梅鶴(ばいかく)
梅肉入り餡を粒状にした干菓子。これはプチジャンク(笑)で止まらなーい。
◆雪まろげ
ほのかな抹茶風味の干菓子。原材料欄には「和三盆糖 抹茶」とだけ記載。
ちょっとだけ抹茶味に雑味を感じたかな。
干菓子も地味な姿なのですが、よーく見るとその成形は惚れぼれする美しさです。
上生菓子同様、しっかり甘いのに嫌味のない味わいです。お砂糖の世界も深いですね。
10位
1回
2010/10訪問 2010/10/18
住居表示では西麻布だけど、元々は高樹町という名称だったこちらのエリア。実は六本木通りから一本入ると信じられない位静かなのです。
以前「CITABRIA(サイタブリア)」というイタリア料理店だった場所がそのまま素敵なフランス料理店へと変貌(経営母体はサイタブリア)
オープンから約1ヶ月。店名は直訳すると、興奮とか発泡という意味ですけど、HPを読むと“生き生きと活気あふれる”というニュアンスのようです。
店舗の周りには樹木が植えられ、店内の天井は無垢材を使用して寛げる空間。
ゆったりしたウエイティングスペースとメインダイニング、そして地下の厨房横には多目的個室まで備えています。
メインダイニングにも半個室のようなボックス席があり、デートからビジネスまで色々な用途に対応できますね。
くつろぎの空間に身を委ねつつも、シェフの華麗過ぎる経歴に料理への期待が否応なく高まります。
お料理はコースのみ。お昼は3種同一価格(4800円税サ別)お料理の内容は固定です。
各々に「海」「牧場」「より道」という何ともロマンティックな名前が付けてありました。お料理の特色をイメージしているようです。
どれも魅力的で迷いましたが、パイ包み焼きをメニューに見つけるとオーダーせずにはいられないので「より道」を選択。
恐らく「海」の素材あり「牧場」の素材もあり、なので「より道」なのかなぁ、と。
コースは前菜+主菜+デセールに加えてアミューズとシェフ渾身の「野菜の一皿」、そしてミニャルディーズと食後のお茶という構成。
全体の流れとしては、
アミューズからいきなり素材の力を最大限に生かしたクリアな味わいのもの、そして前菜も同じ流れでやや薫りも添えて。
そしてお野菜使いの凄さをダイレクトに味わえるシェフ自慢の一皿へ続きます。
このまま駆け抜けるのかと思ったらば、主菜でややクラシカルな一面を見せて絶妙なバランス感覚を披露。
デセールでは再び繊細さを満喫させる…こんな感じ。
総じて素材、特にお野菜の持つ底力をそのままピュアに生かした透明感と瑞々しさが印象的でした。
確かに店名に“生き生きと活気あふれる”という意味を込めただけあります。
油脂分が低く食後感が軽いけれど、しっかりと記憶に残るお料理はとても素晴らしく大満足。
サービス陣の細やかな配慮と親しみやすい雰囲気も好印象。初訪なのに何回かおじゃましたかのような錯覚に。。。
今のところはメディア露出が少なく、ゆとりを持って訪問できますが今後はそうはいかない予感。
以下、お料理の内容と感想です。
◆アミューズ
~トマトの冷製スープ~濁りのない透明感。爽やかな酸味が五感を刺激。
~カリフラワームース ニジマスの卵のせ~
◆パン
自家製で同じ生地のものを成形を変えて提供。クラストは香ばしくちょっとくすんだ色のクラムはややソフト。
バターにはお店のロゴを。
◆天然ヒラメの輝き ハチミツ&マスタードのヴィネグレット
透き通るようなヒラメの身にやわらかな酸と甘味を合わせます。ヒラメが本当に輝いています。
添えられたウド・胡瓜・マスカットで食感と苦みのアクセント。
◆お野菜の一皿
青森野辺地産のカブを4時間煮て火入れし、仕上げにグリルしたもの。
畑で生のままのカブをかじっているかのようなミネラル感あふれる味わいに衝撃。4時間加熱したなんて!
ミシェル・ブラス・トーヤ・ジャポンでの経験を生かしたものだとか。
個人的にはラールのお野菜料理より断然好みです。当日の白眉。
◆熊野地鶏ラグー アップルパイ仕立て 赤栗南瓜ソース 時季のサラダ
確かに見た目はリアルにショソン・オ・ポム(笑)
表面パリパリで香ばしく、中はややふんわり感のある繊細なフィユタージュにナイフを入れると…ぽふっ。
湯気と共にラグーの濃厚で甘酸っぱい香りが鼻をくすぐります。
海老とフォアグラが旨みを増幅し深みのある味わいに。
全体的に甘味が支配しかねないお皿にアクセントを付けたのが添え物であるサラダ。
苦みがある葉野菜に切れのあるヴィネグレットが冴えて。
◆軽快なモンブラン
やはり独特なものでした。みなさんの楽しみがなくなるから詳細はひみつ。
一番上のマロンペーストはエスプーマであわあわ化しています。
直球系モンブランがお好きな方には軽すぎかもしれませんね(笑)
◆ミニャルディーズ
これにはシェフの子供時代の思い出を折り込んであるそうです。
同じく詳細を書くと面白くないので省略。
◆ハーブティ
オープンしてまだ1ヶ月なのにスタッフは人数豊富で至れり尽くせり。
お話上手で食事中も和やかかつ楽しく過ごせました。
いきなりフルスロットル状態の当店から今後も目が離せません。
初訪問先に限定して記憶に残ったお店を選びました。
夏の京都で「桜田」さんにおじゃまして和食に目覚め、「越後屋若狭」さんの水ようかんで和菓子の世界にひきこまれました。
その意味では、2010年は「和」の年だったのかもしれません。この流れは今後も続くような予感がします。
とはいっても今年最大の衝撃は「カンテサンス」を置いて他にありません。
今でも当日いただいたお料理の記憶が鮮明です。周囲の評判がいまひとつだっただけに、当店訪問がその後の食行動を変えたといっても過言ではありません。
予約至難ゆえに年内再訪はかないませんでしたが、必ずまた伺うつもりです。
こうして今年のレビューを見直すと、お気に入りのお店に何度も通い更新していないのでレビュー数が意外に少ないことに気付きました。
友人たちと他愛ない話をしながらの食事は味がどうだとかCP・内装・サービスetc細かいことは吹き飛んで、ただただ楽しい。
結局は「誰と、どこで食べるか」これに尽きると思います。
今年も食べログを通じてたくさんのお店とレビュアーの皆さまと出会うことができ、感謝の気持ちでいっぱいです。
来年はどんなものにときめくのかな。いまから楽しみです☆