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カジキマグロの小さいハンバーガー。
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クロケッタ13番、バカラオ。鱈の小さいコロッケ。
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豆とブティファラネグラ。
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チーズとほうれん草のブニョールス。
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オマール海老、春のロワイヤル。ウイキョウ=フェンネルの風味。
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スミイカとスナップエンドウ、イカ墨とワタのソース
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野菜のラヴィオリ&イベリコハム。
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桜鯛、カレーソース。エンダイブとカシューナッツ。
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イベリコ豚のプルーマ。
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5種類のチーズとそのコントラスト。
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フランボワーズ、クリームチーズ&モデナアイス。
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ココナッツ、チョコレート、金箔
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小さい菓子のアソート。
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ワイン:Quinta Apolonia のエチケット
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エントランスの隣に広々とした厨房。外からよく見える。
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扉をあけるとこのレセプションが。
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モダンスパニッシュ。
奇をてらった実験料理。一時期の流行では?
と捉える方も多いでしょう。
でも個人的な経験としては、ここ数年で一度だけ、「人生観が変わった」とまでの感動を与えてくれたこのジャンルのお店がスペインの片田舎のサンセバスチャンというところにありました。
それ以来、スペインに行きたいな、あの感動をもっと味わいたいな、との気持ちがつのる。
サンセバスチャンだけでも他に行きたい店が2つもある。
その後バルセロナ市内のとあるお店でやはりデギュスタシオンコースを味わって、そこそこに楽しんだけど、やっぱり少々遠出をしてもここ、「サンパウ」の本店に行くべきだったのかもしれません。
さて。
このお店に来る機会は突然にやってきて、
予約してくれた海外のご夫婦・・・は相当の食通さん達。
「日本橋のとある店を予約したから。」と聞いたとき、真っ先に頭に浮かんだのがこちらのお店。案の定ばっちりその想像はあっていました。え、そうなんだ、嬉しいな、それはとても楽しみ!
で当日。
重厚なエントランスの並びにブルーを基調とした広々としたキッチンを大胆にも外に向かって見えるがままにしているそのファサードに近づいた時から今日の食事への胸の高まりが始まります。
特別なレストラン。そんな演出。
いったいどんなお料理に出会えるのでしょうか。
夜のメニューは18,000円のMenu Gastornomic と22,000円のMenu Degustacio の2種。
内容は変わらず、デギュスタシオンの方が単純に皿数が多いそうです。
この晩はデギュスタシオンを選択しました。以下料理の内容です。
4種のミクロメニュー
それぞれ趣向を凝らした4種類のアミューズ・・・がひとつのお皿に載って供されます。
「バカラオのクロケッタ」。こちらはバスクあたりでよく食べられる塩鱈を小さなコロッケにしたもの。塩鱈のちょっと繊維を感じさせる食感とクリーミーな味わい。
「豆とブティファラネグラ」。スペインの血のソーセージと豆のペーストをサンドイッチ状態にした小さな前菜。ソーセージの旨み、塩っ気がふわっとしたやさしい味わいに豆のベーストとマッチしていました。
「カジキマグロのハンバーガー」。マイクロミニ、なハンバーガー。見た目は可愛いけど味はしっかり本格的。
「チーズとほうれん草のブニョールス」。チーズの香りが口中に広がる、軽いシューのような味わい。
オマール海老 春のロワイヤル
エスプーマ仕立てのソースをふんわりまとった優しい味わいのオマール海老。
その下にはウイキョウで作ったプディング・・・というより、ちょっと茶碗蒸しに似た食感。モリーユ茸の香りもさりげなく効いていて、まさに春を感じさせる美しいお料理。
スミイカ スナップエンドウ、イカ墨とワタのソース
とても柔らかいスミイカ、そして実だけ丁寧に取り出して軽く熱を加えたつるつるっとフレッシュなエンドウ豆。若干塩が強めではあるけれど、エンドウ豆の丸みのある味わいと香りよいオリーブオイルがうまく中和している。イカ墨とワタのソースもアクセントとして秀逸。スミイカとエンドウ豆というまったく違う素材の食感を近づけたのが成功の鍵?
野菜のラビオリ イベリコ生ハム
人参、ズッキーニ、大根、茄子で作ったラビオリの上に上質なイベリコ生ハムを載せて。
野菜と一体化したラビオリという試みがとても面白い。イベリコハムは当然絶品の味わい。
桜鯛 カレーソース
モダンスパニッシュでは全般的に魚料理に感心させられることが多い。こちらのお料理も鯛の火の通し方が絶妙で、魚の持つ弾力や素材感を壊さず、タンパク質が一番おいしく凝固するその絶妙なタイミングで仕上がっているのが素晴らしい。ソースはカレー、とのことだがインド風というより少々タイカレーに近いか。とはいえ違う次元のヨーロッパ的解釈に発展しているのが魅力。
メインはイベリコ豚か子羊からの選択。イベリコ豚を選んだ。
イベリコ豚のプルーマ "ミガス モンタネラス”
このお皿がでてきたとき、その肉の赤さに「え?これが豚肉なの?」と誰もが感じたけれど、これが正真正銘のイベリコ豚の一番美味しいところ。ほんのりロゼに色づいた切り口、完璧な火入れを感じさせる。口にすると想像以上の柔らかさ、ベルベットの味わい、そして洪水のようにやってくる旨みの凝縮された世界。すごい。世の中に美味しい肉はいろいろあるけれどその頂点のひとつがこの熟成したイベリコ豚ではないだろうか。
・・・ところであまり語られることのないスペインワイン。には時々驚くような素晴らしいものがあり、この日も最初の白、ルエダのQuinta Apoloniaはコクのある複雑みを感じさせながらあくまでも爽やかな印象を残す秀逸なワイン。コストパフォーマンスはかなり高いと思う。
赤の方は迷わずプリオラートから1本をソムリエに選んでもらった。こちらは若干軽い印象があったものの、プリオラートらしい完成度が期待を裏切らなかった。
スペインワイン、奥が深い。もっといろいろ飲んでみたいのだけど。
食事も終焉に向かって、でもまだまだ驚かせてくれます。
5種類のチーズとそのコントラスト
スペインだけでなくイタリア、フランスから選んだ異なる性格を持つチーズにそれぞれ小さなつまみを合わせたメニュー。特に素晴らしいとおもったのが、ゲヴァルツトラミネールのゼリーを添えたイタリアのチーズ、トゥーマドゥラバーヤ。そしてフランスのラギオールにはえ?と思うほど絶妙に合う、赤ワインに浸したパン。いずれも他では味わえないフロマージュ天国。
フランボワーズ、クリームチーズ&モデナアイス
ひとつめのデザート。まあとにかく美しいこと。冷たい部分と常温のフランボワーズクラッシュの食感の対比もさすがといったところ。
ココナッツ、チョコレート、金箔
濃厚なチョコレートムースにココナッツのソルベ。お腹いっぱいだけど、美味しすぎる。
そして最後にパステレリーアからのお楽しみトレイ
いわゆる小菓子のプレートなのだけど、これがまたすごい。
チョコトリュフ、甘草とシドラルのスティック、茄子のコンフィ、ベイリーズのケーキなど10種。残して帰れない。
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お腹いっぱいで幸せな気分でレストランを後にする。
創意工夫溢れる料理を少しづつ、沢山の数のお皿で。
というのがモダンスパニッシュのお家芸というところだろう。
レストランによりそれぞれ微妙に方向性が違うのだけど、
今まで食べて感じた共通項は料理自体はあまり素材に手を加えすぎないストレートな調理方法が多い。(たまに実験料理もあるけど)。
驚くような形で素材が提供されたとしても、素材の味わい自体はもとの味わいをそのまま生かしたものが殆どと感じた。
ただし、ここサンパウを始めとしてその料理をクリエイティブとさせているのは、この素材とこの素材を組み合わせるの?という素材のマッチングの意外性や、
え、この素材をこの古典的料理の技法で仕上げるの?あるいはこの文化と結びつけるの?
といった自由な発想と閃きではないかと思う。
それを可能とさせるのはもちろん高いレベルの技術力とたゆまぬ探求心だけである。
(すべての芸術もそうだけれど、)料理は総合力。だと思う。
断片だけ取り上げて、この素材のこの使い方はどう、って言うのは簡単かもしれないけれど、
作り手がなぜそういう決断をしたのか、
そしてその料理のバックグラウンドにどういう流れがあったのか。
そういうことを考えながら食べると楽しみがぐっと広がる気がする。
信頼している人が、食の話をするとき時々「文化人類学」の話をするけれど、
なんかそういうゆったりとした食文化の流れ・・みたいなものに思いを馳ながら
個人的な舌の記憶のフラグメンツを思い出しつつ、
次の瞬間にはあとかたもなく消えてしまう「今」を味わう。
その日のテーブルをどれ程楽しむことができたか、それが満足の本質であり、記憶の強度なのだと思う。