レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!
2位
1回
2014/08訪問 2014/11/20
鯉川筋西、住宅と飲食店が混在する場所にひっそり佇むフレンチレストラン。
2011年の1月、店舗のオープン前に、店先を通りかかった際、どこかで拝見したお顔が…と思って足を止めてみると、かつて、フランスの様々な地方料理を供され、人気を博した、北野の人気レストラン「レストロエスパストランキル」のシェフではありませんか。
前のお店のお料理には信頼を置いていたので、どんなお料理が頂けるのかと楽しみにしておりました。
外観は一見すると美容室のようで、通り過ぎてしまいそうなほど控え目。
エントランスの扉の奥にはまた扉があり、外から店内の様子が窺い知れないようになっております。
エントランスでマダムにお出迎え頂き、一呼吸置いた後、店内へ入ると、わずか8席のカウンターに綺麗に整頓されたオープンキッチンがお目見え。
それはまるでプライベートダイニングのようで、カウンターが苦手な方は最初は緊張されるかもしれませんが、木の温もりがあたたかく、マダムが付かず離れずの心地良いサービスをして下さるので、心配はご無用だと思われます。
そんな空間で供されるお料理はまさに驚きの連続。
前のお店でも、アラカルトで、「カレー風味のマカロン」や「黒毛和牛のタルタルと弓削牧場のフロマージュフレ、マスタードアイス」など、意外性あるお料理の数々に驚かされましたが、コース1本となった新店では、最初から最後まで、意外性のあるお皿が振る舞われます。
これまで相当な試行錯誤をされてこられたのでしょう、意外性がある食材のコンビネーションが面白く、また、よくマッチしています。
例えば、魚介と古代米を用いたおじや風のスープトポワソン。
胃に染み渡る、深く優しい味わいです。
表現力不足で言い方に窮するのですが、いかにも二日酔いの時に頂きたくなるお味と申し上げれば少しは分っていただけるでしょうか(笑)。
キジのペーストにはユリ根とナッツをあしらって。
上品なキジの風味にユリ根の食感とナッツの香ばしい甘味が加わり、少量でも満足できる味わいに。
新鮮なイカのソテーは灰のソースの焦がし風味が加わり、フレッシュさと香ばしさが共存する一皿に仕上がっています。
雪のような白いカリフラワーとイタヤ貝のコルネは想像もつかない組み合わせと調理法。
薄くスライスされたシャキシャキの生カリフラワーとニョッキのような食感のコルネが違和感なくマッチ。
添えられた小さな肝の濃厚な味わいも存在感は充分で、しっかりアクセントになっています。
メインの牛ランプ肉とビーツのカネロニ+赤タマネギ、ヤシの子は統一的な色彩な美しさもさることながら、ミディアムレアに焼かれた柔らかいお肉と少し甘いカネロニを一緒に頂く妙が素晴らしいと思いました。
デザートは、チョコレートアイスに野菜をあしらい、イカスミのフレークを振り掛け、サラダ仕立てに。
生の葉野菜が入ったデザートは初めて頂きましたが、チョコレート、イカスミとの相性の良さがこれまた意外な、濃く深い味わいでした。
コースのなかに、ドイツパンのベッカライ・ビオブロートとフランスパンのサ・マーシュという有名店のものを取り入れているところも面白いです。
決して手を抜いている訳ではなく、自分の料理の良き理解者である、信頼する職人に、最高の技術を用いて、自分の料理にベストマッチするパンを特注されているのだとお察しします。
総じて、前のお店とは全く異なるスタイルになりましたが、意外性あるお料理は不変です。
いや、確実に驚きの度合いは増していると思われます。
そして、シェフが独り、ご自身の独特のセンスだけに頼って創り出されたお料理は新しい領域に進まれたと思います。
間違いなく賛否はあるでしょうが、シェフの感性を真っ向から受け留められるお皿を食すことができるようになり、非常に嬉しいです。
今流行のモダンスパニッシュのアプローチに近いものを感じますが、そういったお店のお料理ほどは精緻で画一化されたものに仕上がっておらず、意図的にあそび・余裕を持たせているところにもまた、シェフの個性が感じられます。
今後もマダムとお二人で、唯一無二の空間に磨きをかけて頂きたいと思います。
今夜はどんなものが出るのだろう…そうワクワクしながら、何度でも通いたくなるお店のひとつです。
3位
1回
2015/04訪問 2015/06/01
京都・祇園は白川沿い。
うなぎの寝床のような暗いビルの通路を抜けたところにひっそりと佇む割烹です。
こちらの特長は、まず何と言っても、店内からの眺めでしょう。
風に靡く柳の木に目の前を流れる白川のせせらぎ、川面を悠々と泳ぐ鴨が小路を歩く舞妓さんと行き交うさま…京の風情を全て凝縮したかのような美しい風景を心行くまで堪能できます。
1階というロケーションが川面に近く、低い目線から風景を眺めることができるため、より臨場感が増しています。
店内はカウンター6席に掘炬燵式テーブル2卓のみというミニマムなキャパシティ。
板場がご主人と若いお弟子さんが1人、サービスが女将さんおひとりということを考えれば、細部にまで目が行き届く、最適な広さでしょう。
お料理は全て潔く、それでいて実によく計算されています。
食前の甘い食前酒と白粥で胃を調えたあと、丁寧な仕事ぶりの八寸や目利きが光る新鮮な刺身に焼き物等に舌鼓を打ちながら、どんどん日本酒が進みます。
特に炊き合わせは滋味溢れる素材の旨味を最大限に活かす引き算の味付けで、圧巻です。
そして、そろそろ胃が疲れてきそうな頃合いに、名物の振り湯葉が供されます。
体裁が良い正方形の湯豆腐樽に備長炭を挿し、熱々に湯がかれた生湯葉をかつおだしで頂きますが、優しいだしの旨味によって引き立つ大豆本来の甘さは、終盤のこのタイミングで味わうからこそ、余計に際立って感じられるものでありましょう。
最後に頂く湯葉湯が胃に浸み渡り、有り難いことに食欲が回復、〆のご飯、デザートまでペロリといけてしまいます。
総じて、上質な素材を選ぶことができる目利き力、その素材の旨さを最大限に発揮させる技術力、どのタイミングで供すれば一番美味しく感じられるかを心得た構成力を全て持ち合わせた方によりつくられた素晴らしいお料理だと思います。
ご主人は若干41歳、脱サラされて先代の跡を継がれていますが、修行経験10年余りでこの領域に達されているとは凄いの一言。
今後がますます楽しみです。
なお、サービス担当の女将さんは先代の奥様(つまりは2代目のお母様)。
京都らしい雰囲気を醸し出しながら、それでいて決して敷居の高くない、付かず離れずの接客は大変心地良く、申し分ありません。
今後、通いつめたいお店のひとつです。
4位
1回
2014/10訪問 2014/12/07
2014.12
『ミシュランガイド東京2015』で新たに一つ星を獲得されたとのこと、おめでとうございます!
******
東急田園都市線駒沢大学駅から徒歩10分強の住宅街。
おおよそ日本料理店が入っているとは思えない淡いピンク色のポップな建物の1階にこちらのお店はありますが、店内に入ればそこは別世界、白壁に木の椅子とテーブルがすっきりとした印象を与えるれっきとした日本料理店の風格で、全く違和感はなくなります。
カウンター席が4つ、テーブル席が4つの計18席、BGMはなく、静かで落ち着いた雰囲気に凛とした空気が漂います。
とはいえ、ご主人もサービスの女性スタッフも気さくでとても愛想が良いので、緊張せずに食事を愉しむことができます。
メニューは旬の食材をふんだんに用いた、四季折々を美味しさを感じることができるコース料理が中心ですが、お昼には\1,000前後の日替わり膳も提供されています。
先日は桃の節句の季節感を味わいたくて、夜にお邪魔しましたが、
・前菜には、蓬胡麻豆腐、白アスパラ、海水雲丹
・八寸には、桃の花をあしらい、浅利のスープ煮、菜の花等の春野菜のお浸し、蕗の煮付け、花山葵の酢浸しなど
・お造りには、アイナメ、アオリイカ
・焼き物には、カマスの塩焼き
・炊合せには、春キャベツ入りの鶏つくね、筍を使った炊き合わせ
・お食事には、鰆の卵とじ丼
など、コースの随所に旬の食材が散りばめられており、大満足の内容でした。
また、こちらのお料理はしっかりした味付けなので、日本酒が非常によく合いますが、「獺祭」や「奥播磨」、「千代むすび じゅんから」など、渋いお酒が常時6、7種類豊富に取り揃えられているのも嬉しいところ。
この日は美しい個性的な御猪口の布賭けに、雄雛と雌雛が描かれた桃の節句バージョンのものが使用されており、細部まで季節感を感じさせて下さる演出でした。
以前、ご主人は、雑誌の取材に対して、「気軽に食べられる値段をキープし、地域に密着して、都心に行かなくても本当に美味しいものが食べられる店を目指している」といった趣旨のお話をされていましたが、コースを頂く度に、内容の素晴らしさとコストパフォーマンスの良さに感嘆させられ、その信念と志の高さを改めて実感させられる次第です。
私には交通の便が良くありませんが、今後も、あえてこの地で旬の美味しさを末永く提供いただければと思います。
5位
1回
2015/12訪問 2016/01/17
学生時代から利用させて頂いております。
今ではネットや雑誌などで絶賛され、休日は行列ができるほどの超有名店となりましたが、2003年頃まではお客は比較的まばらな印象でした。
初めてわらび餅をオーダーしたとき、女将さんが「先日、来○けいさんがバケツ一杯くらい食べたいと言って帰られました」と仰り、「○栖けいって一体誰だろう」と思ったことを思い出します。
お店は閑静な住宅街裏にひっそりと佇んでおります。
暖簾を潜り、庭石畳を歩むと、ここは改めて京都なのだと実感させられます。
格子戸を開き、靴を脱いで広い畳座敷に案内されると、全面ガラス張りの窓から中庭を眺めることができます。
苔生した地面に美しく刈り込まれた玉物、風情のある蹲や石灯籠等が配され、実に見事なお庭です。
季節によって四季折々の表情が加わるので、何度訪れても飽きることはありません。
ここで供されるのは、いずれも素晴らしいお庭に遜色のない上質な和菓子と飲み物ばかりですが、とりわけ名物「わらび餅」は絶品です。
国産の本わらび粉のみが使用され、オーダーを受けてから作られるというこだわり様です。
1人前は5つで\1,100ですが、5つだとあっという間に平らげられてしまう割には高いというのが最初の印象でしたが、自分なりの味わい方を確立した今では、むしろ安いと感じております。
「自分なりの味わい方」とは、1つのわらび餅を2分程かけて噛み続けるだけなのですが、これで2分×5つ=トータル10分間、変わり行くわらびの味わいを存分に愉しむことができます。
口にした瞬間は本わらび粉の清清しい風味が鼻を抜け、暫くは上質な刺身蒟蒻のような歯応えが堪能できます。
その後、噛めば噛むほど徐々にでんぷんが変質し、甘味が増していきます。
個人的には、黒蜜は敢えて必要ないと思います。
最後は液状に溶けて無くなってゴクリ・・・よろしければ一度お試し頂きたいと思います。
席を立ったり座ったり、庭園を隅から隅まで観賞し、濃いお抹茶も併せてじっくり楽しめば、延べ1時間弱の滞在となります。
お庭の拝観料を\300くらいと考えれば、もっとお得感を実感できますね。
個人的には、夏の夕立のあと、こちらで夕涼みをして帰路に就くのが一番好みです。
私にとって最も居心地の良いと思える茶寮のひとつです。
6位
1回
2016/01訪問 2016/03/19
ハンター坂を少し上がったところに位置する雑居ビル2階のバーラウンジ。
道沿いから店内の様子を窺い知ることはできないので、最初は躊躇していましたが、いつも窓からこぼれ出ている雰囲気の良いオレンジ色の光に惹かれ、意を決して入店したのが最初でした。
階段をのぼると、立派なガラス張りのドアがお目見え。
その先には想像以上に広く美しい空間が広がっております。
店内は分厚い立派なカウンターにテーブル席が2つという構成、カウンター奥に並べられたボトル後ろには竹の木で造られた壁が配されており、和の要素も見られます。
一方、テーブル席には一輪の美しい生花が活けられ、先ほどのオレンジ色の光が全てを温かく包み込む雰囲気は大変ムーディーでスタイリッシュです。
サービスはお若いマスターとスタッフがお二人で担当されており、最初に好みなどを聞いて下さいます。
私は定番的なものよりもそのお店オリジナルのものを頂きたいと思ってしまう性格なので、マスターに色々伺ってから、「今日はこんな感じで」とだけ申し上げて、あとはお任せしております。
私が特にお勧めしたいのは、フルーツを使ったカクテルです。
四季折々の旬のフルーツが常時6,7種類ほど用意されているのではないでしょうか。
喉ごしが本当に気持ち良く、清涼感満点のスイカのカクテル、ずっしり濃厚で自然の甘さの底力を改めて実感させてくれるマンゴーのカクテルなど、名品は沢山ありますが、なかでも私のお気に入りはバナナのカクテルです。
ジューサーでトロトロになったバナナジュースにブランデーで香りをつけた、ややデザート的要素が強い一杯ですが、瀬戸物の器に注いで木製のスプーンで頂くという意外性や、最後に霧吹きでブランデーをスプレーするという心にくい演出に、マスターの世界観が凝縮されています。
フルーツのカクテルは、好みによって如何様にでもアレンジして下さると思いますので、ご自身の嗜好をできるだけ詳しくお伝えすれば、最高の一杯ができあがることでしょう。
お酒とともに供されるおつまみのレベルの高さもまた特筆すべき点です。
ナッツ、イチゴとピスタチオのチョコレート、生チョコ、チーズ…等々日によって内容は異なりますが、いずれも強いこだわりが感じられるものばかり。
ナッツはふっくらと綺麗な丸みを帯び、歯応えもよく、瑞々しさすら感じます。
チーズは3年熟成されたという代物で大変濃厚、削られた一片を少しずつ大事に頂きたい一品。
ひとたび、これほどまでに美味しいおつまみを頂いてしまうと、コンビニで市販されているようなチョコレートやおかきを供されているお店ではなかなか満足できなくなってしまいます。
マスターは非常に腰が低く気さくな方で、お客のペースに合わせた心地良い接客をして下さいますが、独学でお店を開店されただけあり、一本筋が通ってらっしゃいますし、大変博学です。
神戸には様々なバーラウンジが数あれど、お酒、接客、空間と、これほど完成度が高いお店はそうはないと思います。
非常に素晴らしいお店です。
7位
1回
2016/02訪問 2016/02/19
ソフィア・コッポラの映画「Lost in Translation」にも登場した、代官山・猿楽橋近くのお鮨屋さんです。
ちなみに大将はこの映画をまだ一度も見たことがないようです(笑)。
外からは、なかの様子を窺い知ることが難しく、一見、敷居が高く、入りにくい印象を受けますが、決してそんなことはありません。
暖簾を潜ると大将と若い職人さんが威勢よく「いらっしゃい」とお声を掛けて下さいます。
店内は想像以上に広く、2箇所に分かれたカウンターに加え、テーブル席もあります。
お昼は非常にリーズナブルなお値段で、豊富なネタを提供して下さいます。
私はいつも1.5人前\1,500(付き出し、味噌汁付)をオーダーしますが、それでも飽き足りず単品で一貫ずつ好きなものを握って頂きます。
カウンター席では瑞々しい笹の葉の上に、大将が小気味良くネタを次々と握って下さいます。
笹の葉の上にずらりと並べられた鮨は宝石箱のような美しさを呈しています。
内容は毎日の仕入れによって変えていらっしゃるようなので、今日は何が出てくるのだろうという楽しみもあります。
丁度良い上品な大きさに切られネタ、人肌並みの温かさで少し緩めのシャリはかなり私好みです。
また、大将のネタ選びと味付けのセンスも光ります。
例えば、夏場だと、酢の締め具合が絶妙な新子。キスは昆布で絞め、スダチを搾って頂きます。
冬場だと、寒鰤の最高に脂が乗った部分を数日間熟成させて。肝にタレとスダチを少々効かせたカワハギも絶品。
大将にその日のおすすめを伺いながら、握ってもらうのが良いでしょう。
接客も気持ち良いですし、美味しい鮨が食べたいと思ったら、必ず頭の中で候補のひとつに挙がるお気に入りのお店です。
8位
1回
2015/07訪問 2015/09/17
2014.7
2014年4月末、お店が近くの雑居ビルの4階に移転され、カウンター席以外にもテーブル席が設けられた、広い空間になりました。
特に窓側のテーブル席はガラス張りの天窓が開放感を演出、明るい雰囲気で心地良く食事を愉しむことができます。
シックな紅いカーテンにも、どことなく香港のかおりが漂い、異国情緒に溢れています。
お料理も、新たなシェフが香港から加わって、本場の飲茶が愉しめるよりになりました。
飲茶はテイクアウトも可能なので、お土産としても重宝することでしょう。
夜のコースは¥7,500〜と以前よりも大幅に価格がアップしていますが、珍しい新鮮な魚介や中国野菜など高級食材を堪能できるとあって、妥当な設定かと思います。
総じて、利用できるシチュエーションもお料理の幅も広がり、ワンランク上のお店にリニューアルされました。
今後も引き続き素晴らしいお料理を提供して頂きたいと思います。
******
神戸・ハンター坂を登ってすぐ、左手の雑居ビル1階奥に佇む中華料理店。
店名はオーナーのお名前に由来し、「施さん家のお料理」という意味だそうです。
お店は狭小でカウンター8席しかありませんが、カウンターの寿司屋さながらのネタケースには、色んな種類の鮮魚の切り身が並び、生け簀には生きが良い魚や蟹が所狭しと泳いでおり、見どころ満載。
いずれも淡路島の岩屋漁港や他県、さらには上海等で揚がった新鮮なもので、魚介類に強いこだわりがあるお店であることが窺えます。
メニューはお昼のランチが、中華粥のセットか香港風焼きそばのセットの2種でいずれも1,380円。
最初に出てくる前菜4種盛りは蒸し鶏やチャーシューなど定番的なものから豆腐にポルチーニのソースをかけた創作的なものまで含まれ、実に多要素。
2皿目には前述の鮮魚を使った蒸籠蒸しが登場。
豆鼓の旨味やネギの香りが新鮮な魚によく馴染み、美味です。
このお値段でこの一品が含まれているのは、かなりのお値打ちです。
メインについては、個人的に中華粥派。
あっさり上品な味付けのスープに、少しずつあしらわれた葱や香菜、揚げ雲呑の風味が香る優しい一品ですが、テーブル上に配された醤油と胡椒をかけながら頂くのが香港式だそう。
プラス料金で頂くことができる杏仁豆腐は少量ですが、香り高く、きめ細かい滑らな舌触りが癖になる上品なお味。
一方、ディナーはメニューがあって無いようなもの。
一応は3,500円からのコース設定があるようですが、ネタケースや生け簀を眺めながら、サービスを担当されるオーナーと相談しながら、構成を決めていくのが賢明。
高級な牛肉や珍しい中国野菜も取り扱われている点も魅力的ですが、まずはやはり魚介類中心にオーダーすることをお勧めします。
その日一押しのネタやよく合う調理法等を細かく解説して下さるとともに、勿論、お客側の好みも聞いて下さるので、失敗することは少ないでしょう。
生け簀から揚げられたネタを目の前で調理していただく贅沢な演出とともに供されるお料理は、ネタ一匹を丸のまま蒸したり煮込んだりしたシンプルで豪快な調理法。
その反面、お味は実に繊細で控え目、ネタの新鮮さがよく活かされています。
二人でお邪魔すれば大体4、5品でお腹がいっぱいになり、お会計は1人当たり7,000円前後が相場でしょうか(※勿論、お料理には幅広い価格帯があり、頂くお酒の量にも個人差があるので、大きく変動すると思われます。あくまで私がうかがった時の目安です)。
コストパフォーマンスはかなり高いと思います。
総じて、ランチでも充分に満足できますが、ディナーで真価が発揮されるお店だと思います。
9位
1回
2013/04訪問 2013/04/28
西麻布の交差点にある、ランチ限定営業のフライ専門店。
店頭には常に行列ができるほどの人気ぶりです。
入り口には、毛筆で「西麻布名物 コロッケ メンチ とんかつ 海老フライ」と書かれた、味のある看板。
元々は精肉店だったと伺いました。
店内は簡素そのもの、カウンター席が5つにテーブル席が3つ、計17席で構成されています。
壁には、お店周辺の昔の写真が貼られていて、細かい注釈も付いているので、ついつい読み込んでしまいます。
一人での入店なら、待ち時間の間、携帯をいじらなくても賢く時間潰しができることでしょう。
揚げ手は、50年以上のキャリアを持つおばあちゃん、いかにも美味しいものを作りそうなにこやかな笑顔が印象的です。
おばあちゃんはオーダーが通ってからその都度揚げられているようで、常に出来立ての美味しさを味わうことができるのも嬉しいところ。
その心意気に感心・感謝、待ち時間が少々長くても苦にはなりません。
供されるのは、ボリュームたっぷりのフライに千切りキャベツ、大盛りご飯と味噌汁、漬け物で、トータルバランスが非常に良いです。
メインのフライはいずれも揚げ加減が絶妙。
外はサクサク、中はそれぞれの旨味が最大限に引き出されています。
メンチカツはふかふかに柔らかく仕上げられ、肉汁を存分に感じることができる味わい。黒胡椒が効いており、ソースをかけないで頂くのが個人的に好みです。
ハムカツは、ハムが肉厚に切られていますが、他店のハムカツの多くは、往々にして、薄いハムが衣の存在感に負けているので、私のそんな不満を解消してくれるワンランク上の味わいです。
その他、分厚く柔らかいジューシーなチキンカツ、ホクホクのジャガイモが甘いコロッケも外せないので、これらを一度にできるだけ多く味わいたい欲張りな私は大体ミックス定食(\950)をオーダーしております。
夜の時間帯も営業して下さったら、どれだけ有り難いことか…などと思うこともありますが、揚げ手のおばあちゃんあってこそ、ご高齢なのでご無理をなさらず、今後も末永く、我々が笑顔になれる味を提供して頂きたいと思います。
10位
1回
2013/03訪問 2013/03/05
三軒茶屋駅からしばらく歩いたところにグッチーナというイタリアンの有名店がありますが、こちらはその隣に位置する姉妹店です。
店内はオープンキッチンで、1階席と2階席があります。
1階席は1名でも利用できるカフェスペースからカウンター席、4名掛けのテーブル席があり、カジュアルな雰囲気です。
一方、2階席はテーブル席とキャパシティ10名程度の個室で構成され、1階よりもシックな雰囲気を醸し出しており、様々なシチュエーションで利用できます。
お料理はコースでもアラカルトでもオーダーが可能。
前菜、パスタ、メイン、デザートともにポーションは充分にあり、いずれもしっかりとしたメリハリのあるお味で、ワインが進みます。
特に、パスタは自家製手打ち麺が使われており、歴代シェフのオリジナリティ溢れるスペシャルメニューが受け継がれているため、大変お薦めです。
一点注文させて頂くとすれば、カプレーゼなど冷たいお料理の温度が中途半端な温度であることでしょうか。
食材は良いものを使われているだけに、是非改善頂ければと思います。
最後に、サービスについて。
基本的にはソムリエの方が肩肘張らない感じのよい接客をして下さいますが、シェフも厨房から出てきてサーブして下さり、オーダーの相談にも乗って下さるので、安心感があります。
総じて、カジュアルに気持ちよく食事を楽しむことができる良いお店だと思います。
再訪した折、レビューの足取りを辿って写真を撮影してみました。
偶然にもレビューの時と同じような天候となりました。
少しでもレビューの雰囲気が伝わればと思います。
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数年に一度、素晴らしいお店と出会い、そのお店のお料理や演出に心から酔ってしまい、魔法にかけられたような気分になることがありますが、今回、こちらのお店でそのような体験をしましたので、以下に記させていただきたいと思います。
※当日の出来事を回想しながら、これまでとは趣向の異なる文体でレビューにトライしてみたいと思います。
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新緑香る5月某日。
午後9時半を過ぎていた。
昼間から降り続いた強い雨がようやく上がり、雲が消えた東京の空は異様に明るかった。
渋谷駅から鶯谷・南平台方面に向かい、雨の匂いが残る住宅街を歩むなか、闇夜に浮かび上がるセルリアンタワーのシルエットが不気味に感じた。
しばらくして大使館やファッションビルが林立する旧山手通に出た。
さらに進むこと数分、首都高の下を抜け、いよいよお目当ての神泉エリアへ。
京王線の神泉駅に繋がる路地裏道、ここは私たちをそれまでの闇夜の閑静な街並みから、バルや居酒屋が立ち並び、深夜まで賑わう別世界に誘う秘密のルートだ。
久方ぶりに訪れた別世界は新しい店舗が増え、以前にも増して活気があった。
雨上がりの夜に輝くちょうちん、ネオンの赤色・黄色が妙に楽しげに、また、妖艶に映った。
別世界を抜けると、コンビニエンスストアと神泉駅の踏み切りの間に挟まれるようにして、そのお店はあった。
アンティークのランプだけに照らされた、ややもすると見過ごしてしまいそうな控え目なエントランス、扉の奥は全く窺い知ることができない。
ゆっくりと扉を開くと、そこにはまた別世界が開けたのだった。
眼前に広がったのは、厨房の灯りと小さなランプを除けばあとは真っ暗闇と言っても差し支えないほど暗い空間だった。
足元も覚束ないほどの暗さだが、マダムに案内されるがままテーブルにつく。
テーブルから暗闇を見渡すと、小さな窓が採ってくる雨上がりの空の夜光が真っ青な色を呈していて、とても綺麗だった。
程なくしてマダムにより、テーブルの上の大きな2本の蝋燭に火が灯された。
白金色に黄色を少し加えたような鮮やかな火の色に、蝋燭の灯りとはこんなに柔らかく美しいものなのか、と思わず見入ってしまう。
同時に、アンティークの食器や家具、エイジング加工を施された白壁が浮かび上がり、お店の全容が照らし出された。
入店時は気が付かなかったのだが、フランスの歌謡曲が流れているようだ。
入店からほんの数分で、どこか温かく懐かしさを憶える雰囲気が出来あがっており、ここが安息の空間であることを確信した。
「今夜は赤ワインを頂きながら食事を楽しみたい」…私たちの意見は一致した。
重めのものをセレクトした後、マダムにおすすめをうかがいつつ、自分達が食べたいものをオーダーする。
・田舎のパテ
保存が効くよう上にラードを被せ、空気に触れない状態にしている。きめが細かく、濃密。胡椒がしっかり効いていてスパイシーな味わい。
・自家製天然酵母パン
ふっくらとした心地良い食感。料理を邪魔せず、最高の脇役といった感じ。
・タンポポのサラダ
タンポポの茎の程よい苦味とシャキシャキした食感が主役だが、上にのせられたポーチドエッグ、下に敷かれたベーコンとの相性も抜群。
・フレッシュガチョウのフォアグラサラダ
濃厚な味付けのフォアグラにバルサミコの酸味が効いたサラダがベストマッチ。素朴だが、実によく計算されていて間違いない一皿。
・牛テールの赤ワイン煮込み マッシュポテト添え
おそらく赤ワインだけで煮込まれたのではないだろうか、濃縮された酸味は素晴らしい味わい。香味野菜の風味も効いている。別皿に盛られた付け合せのマッシュポテトは滑らかでクリーミー、対照的な二つの味を合わせながら、どんどん食が進む。
・チーズ盛り合わせ
アオカビとカマンベールを薄くカリカリのバゲットと一緒に。程よい小休止といきたいところだが、ついついワインが進んでしまう。
・ガトーバスク
フランス領バスクラブール地方発祥の伝統的な焼き菓子。たっぷりとカスタードを含んでいて、とても甘い。それゆえに赤ワインとの相性は抜群。
・チョコレートのムース
濃厚な味わいと滑らかな食感で、こちらも赤ワインがよく進む。チーズを頂いた際に残ったバゲットと合わせても相性が良かった。
・イチゴのパルフェ
このデザートのラインナップの中では唯一ソフトドリンクとの相性も良いはず。とはいえ、私はワインで頂いてしまったが…。
・ホットコーヒー
幸せな余韻と名残惜しさが交錯する中、〆の一杯として。美味しく頂いた。
食後はしばし時間を忘れ、楽しいマダムとの談笑に終始した。
午後10時の入店から約3時間、こんなに充実したディナータイムは久しぶりだった。
会計を終え、シェフ、マダムに見送られながら扉を開けると、また雨が降っていた。
終電の時刻も過ぎ、普段なら一気に現実世界に引き戻される瞬間であるが、不思議と魔法は解けなかった。
雨降る中、持続する余韻をしっかりと噛み締めながら、私たちは満たされた気持ちで再び同じ経路で帰路についたのだった。