西穂山荘からは、ガレた稜線を登っていく。
ガレ場は、浮き石も多く、慎重に歩く。
10歩歩いて、休む、の繰り返しだ。初心者には、想像以上に堪える。
そこから上の断崖は、すれ違い困難。
手と足を置くスペースのみの登り道だ。
幸い、手と足の位置にちょうど良いくぼみはあるのだが・・・
踏み外したら、一気に転落だ。
両手の手のひら・指の一本一本から伝わってくる、岩の感触・ざらつき・傾き・熱さ・・・・・
これまで経験したことのないほど、手の感触がリアルに伝わってくる。
自分の指の一本一本が、手足のパーツのすべてが、どこに位置しているか、感覚が研ぎ澄まされて伝わってくる・・・
慎重に、登る。
近くにいた、経験者の方が声をかけて励ましてくれる。
「ここまで来たんだから、あと少し。頑張って」
よいしょ、と岩を乗り越えたら・・・・そこは、西穂独標だった。
360度のパノラマ。
笠ヶ岳、奥穂高岳、焼岳、白山。
眼下には上高地・・・
凄すぎる景色に、圧倒されるばかりだった。
ここでお会いしたたくさんの登山者の方々、ほんとうにみんな笑顔がまぶしい。
本当に、来て良かった。この眺めが見られたこと、来られたことに感謝したい。
さて、本当の西穂高岳の頂上は、さらに断崖とピークをいくつも乗り越えて90分ほど先なのだが、初心者はここまで、とどのガイド本にも書いてある。
確かに、この先は垂直に下る崖。
もと来た道を、慎重に引き返した。
コースタイムよりも早い4時間20分の歩行時間でゴール。