1回
2010/12 訪問
技術をいただく幸せを~白金台『カンテサンス』
クッキー地の甘さがアクセントになったアミューズ
ミントの香りのするそら豆のスープ
スペシャリテのババロア
熟成感も出始めた2003年のもの
オーストラリアで取れた黒トリュフを散らした一皿
ズッキーニとパルメザン、そしてボタンエビという組み合わせ
ブーダンノワールとフォアグラの組み合わせ
心から感謝の一皿に合わせたのはもちろん甘口ワイン
大好きなのどぐろ
羊に合わせて
自信作の仔羊
ホッと一息はまるでクリームソーダ
特別な日に、と考えてくださったその気持ちに感謝を込めて
2011/11/20 更新
(2010.6)
梅雨に入る直前、残り少ない初夏の爽やかさと日中の夏の日差しを感じさせる頃。
色んなタイミングが重なった結果、幸運にも再び白金台『カンテサンス』を訪問しました。
落ち着いたブラックのトーンが印象的な店内。
休日よりもやや年齢層が高いような気がする平日の夜。
どのテーブルにも落ち着いた雰囲気が漂う中、ご案内いただいたのは一番奥の個室。
2か月前の訪問で訪れたのもこちらのお部屋。
けれど、レストランで過ごす時間は本当に一期一会。
同じお店、同じ空間でも、二度と同じ時間は流れないもの。
ご一緒する方が違えば、季節が違えば、シチュエーションが違えば…
また全然違った雰囲気をまとうから不思議。
「きっと今日もまたお店の素敵な一面を発見することができるはず。」
そんな嬉しい予感が溢れるスタート。
それは主として…ご一緒した方が岸田シェフに寄せる絶対的な信頼感ゆえ。
そこに至るまで積み重ねた時間の重さ、気持ちの大きさ。
レストランに通い始めて知ったことは、大切に想うお店へ連れて行っていただけることの価値。
お店に愛されるお客様と共にひと時を共有させていただけることがいかに光栄かということ。
日中のあわただしさのせいか、グラスシャンパーニュをいただきながら、早くもほろ酔い加減な自分を発見。
だからこの日がゆっくり過ごせる日であったのは幸運。
お料理とワインをゆっくり味わえば、きっと最後まで素敵なマリアージュを堪能できそうです。
そんなディナーをちょっとだけ振り返ります。
クッキー地の甘さがアクセントになったアミューズは優しいスタート。
ややトースト香の漂うシャンパーニュと共にいただくと、とても幸せな気分です。
次いでミントの香りのするそら豆のスープ。
爽やかな一口目と、アフターに残るほろ苦みのニュアンスが対照的。
爽やかだけでは終わらない、大人のエッセンスのあるお皿。
こちらのスペシャリテのババロア。
この時期の山羊のミルクの濃厚さに合わせたのはリースリング。
熟成感も出始めた2003年のもの。
特有のペトロール香が、お料理に合うことがあると教えていただけたお皿。
オーストラリアで取れた黒トリュフを散らした一皿。
プレッセの中には帆立の甘味といわゆる揚げ浸しの状態からプレッセで水分を除いた茄子。
シャンパーニュを帆立の甘味に合わせたり、ハーブに合わせてフレッシュなサンセールをいただいたり。
ズッキーニとパルメザン、そしてボタンエビという組み合わせがとても印象的なこちらのお皿。
薄いズッキーニの下に隠れてるボタンエビも見えますか?
24か月熟成のチーズに合わせてくださったのは、アルボワのサバニャンの辛口です。
甘口以外飲んだことがないワインですからとても新鮮な印象を受けました。
二度と同じお皿は出さないポリシーの岸田シェフがあえて出してくださった一皿。
ブーダンノワールとフォアグラの組み合わせ、その火入れ、添えられた甘味がご一緒した方にとって忘れられない記憶だったことを尊重してくださったから。
そういう「特別」。
心から感謝の一皿に合わせたのはもちろん甘口ワイン。
次いで大好きなのどぐろ。
添えられているソースの苦みがトロトロのお魚と合わせるととても複雑な味に。
この苦みに私が合わせるとしたら…南の太陽をたっぷりと浴びたぶどうから作る白ワイン。
その感覚の微妙な差も楽しいのがこちらのお店。
まずは何もつけずにそのまま食べてみてください、と出された自信作の仔羊。
少し小さめに出していただいたのはお腹のキャパシティのため。
その分ご一緒した方のお皿に少しだけ多く。
語ることが出来ないほどの極上のお皿に全力で向き合えないのはちょっと残念です。
ホッと一息はまるでクリームソーダ。
クラウンメロンに生クリームを落としたものです。
まだまだ続くデザートですが、それは割愛。
この日が3回目のカンテサンス。
テンポが良いのに気が付けば4時間のディナーショーになるのも毎回のこと。
でもそれはきっと技術をいただくことが出来るから。
火入れを含むお料理の技術。
ワインを合わせるソムリエの技術。
場を心地よく盛り上げるサービスの技術…
お店の方々が一致団結して技術を高めようとしているからこそ、あっという間に過ぎる4時間。
今日のテーブルに流れたのは優しい4時間。
そして、その気持ちが嬉しかった素敵な時間。
特別な日に、と考えてくださったその気持ちに感謝を込めて。
ご馳走様、そして、ありがとうございます。
(2010.4)
約1年前に初訪問を果たした白金台の『カンテサンス』。
電話がつながらないことでも有名なこちらのお店。
根性無しの私に再訪はないな…と思っておりましたところ、根性のある方から思いがけないお誘い。
人の予約に便乗させていただいての再訪となりました。
1年前、お料理や接客の総合印象として「独創的」「エネルギッシュ」等々を感じたこちらのお店。
レビューにも残せなかったくらいわけわからないその印象を言葉にすると(^^;…
もちろん美味しいし、素敵なお店ですが、向き合うには体力もいるぞ!という感じ。
弱った私を癒して…というスタンスではなく、一緒に元気でいようね、という気持ちにフィットする…
そんなお店というのが初訪問の印象でした。
(相変わらず変な表現ですいません。)
さて、そんなカンテサンス。
行ってみてびっくりしたのは、その印象が半分も見つけられなかったこと。
今回は個室にご案内いただけたこと、お店の方に覚えられている方とご一緒したこと、テーブルを囲む私たちの作る場の雰囲気が優しかったこと、お料理の印象が違ったこと、そしてなにより食べ手としての能力が私の数倍上回っている方々とご一緒だったこと…
でも、原因は今もよくわかりません。
はっきりわかるのは、「私は今日のお店のほうがずっと好き」ということ。
いただいたお料理のうち、特に印象に残った1皿を挙げれば「イサキ コシアブラのソース」。
イサキは好きなお魚。
でも印象に残ったのはイサキより、添えられたお野菜。
山菜や香りの強い野菜を中心に、その使い方が魅力的だったこと。
メイン前の満腹を危惧しながらも完食したのは、まるで野菜の数だけ異なるソースがあるがごとくに感じさせてくれる。
そんな楽しいお皿だったからです。
トロン、とした食感を残して火入れされたイサキ。
それぞれの野菜と一緒にいただくと、苦みだったり、逆に甘みだったり、あるいは絡めた油の食感だったり…
シンプルなイサキが何回も変化をすることを感じられるお皿。
野菜の特徴を活かすお料理はとても好き。
「特徴を活かす」を超えて、付け合わせの野菜をソースとまで感じさせてくれたお皿に会ったのは恐らくこれが初めてです。
だからとても印象的なお皿です。
また、約1年前より市村さんの説明が優しく感じられたこの日。
易しくではなく、優しくです。
各お皿に少しずつ合わせていただいたワインの説明を聞きながら…
この印象はワインの知識とは恐らく無関係かな、なんて。
でもなぜそう感じるのか…これもやっぱりよくわかりません。
「独創的」「エネルギッシュ」という感覚はだいぶ薄れ…前より好きになったこちらのお店。
最後にお見送りいただいた岸田シェフの笑顔が前よりずっと柔らかく感じられたのは…私の気持ちも前よりずっと柔らかかったからかもしれません。
理由はわからないままに、でも、とても心地よかった再訪の時。
きっともっと好きになる、そんな予感も感じたこの日。
肩の力を抜いて笑顔になれれば、それが私にとってのレストランの価値。
今度はもっと柔らかい私がそこにあることを期待させる今回の訪問。
幸運にも再び訪れるそう遠くない日も含め、これからますます幸せな時間を味わえるはず。
力強くそう思えたのもこの日の再訪があってこそ。
食べ手として大先輩の素敵な方々に囲まれて過ごした4時間は、思いもかけない贈り物のような時間でした。
(2009.5)※一部削除
白金台のフレンチカンテサンス。
ミシュランの三ッ星獲得レストラン。
他の三ッ星獲得レストラン同様、「さすが」という声、「がっかり」という声が分かれるお店。
ここは特に評価が分かれているような気がします。
一体どんなお店なのだろう????
論より証拠ということで、実際に行って体験してみることにしました。
お料理で一番心に残ったのは、前菜でいただいたシェフのスペシャリテ「塩とオリーブオイルが主役 山羊のミルクババロア」です。
もちろんそれ以外のお皿も、びっくりするくらいこだわり満載で素敵なお皿だったのですが、13皿もありますので、一番心に残ったお皿のレビューにとどめます。
本日ご一緒した大変塩に詳しい方がもっとも美味しいと言う塩が使われている素敵なスペシャリテ。
まずは、山羊のミルクのババロア(一切臭みはありません)と塩の華だけを一口。
ミルクの甘さと塩が引き立てあっていて美味しい!
とても軽いデザートとしてもいけちゃいそうな味です。
次に、オリーブオイルも合わせて一口。
オリーブオイルの緑とミルクの白のコントラストが綺麗なように、口の中でも異なるタイプのコクが綺麗にコントラストしながら共存します。
ちょっと青い香りのするオリーブオイルとこのコクのコントラストが仲良く余韻を残します。
ロオジエのように夢をみせてくれる雰囲気はないのですが、三ッ星としてお高くとまっていない感じがとてもリラックスさせてくれました。
ジョエルロブションのように豪華な内装と視覚的なお皿のきらびやかさはないけれど、クリームやバターに頼らない味付けは私の味覚に合っていました。