のぼさんが投稿した国登録文化財 二木屋(埼玉/北浦和)の口コミ詳細

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のぼ (男性・東京都)

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国登録文化財 二木屋北浦和、南与野/日本料理、ステーキ、しゃぶしゃぶ

1

  • 昼の点数:5.0

    • ¥4,000~¥4,999 / 1人
      • 料理・味 5.0
      • |サービス 5.0
      • |雰囲気 5.0
      • |CP 4.8
      • |酒・ドリンク -
1回目

2022/01 訪問

  • 昼の点数:5.0

    • [ 料理・味5.0
    • | サービス5.0
    • | 雰囲気5.0
    • | CP4.8
    • | 酒・ドリンク-
    ¥4,000~¥4,999
    / 1人

先代の物語が語り継がれている店

二木屋の先代主人、小林玖仁男君は1984年に日本能率協会主催のSP道場という泊まり込み研修で、同じグループになった人だった。互いに別々の広告会社に勤めており、会場の大磯プリンスホテルで初めて出会い、講師の水口健次先生から出題された課題に対して、素晴らしい感覚で取り組み、見事な成果を収めた。
その後、特に連絡はなかったが、1998年、おじいさんの住まいを今でいう古民家レストランにしたので、来てくれと言われ、当時のメンバー数人で集まった。
立派な建物、風情ある庭の見事な施設で、料理の味もよく、彼自身はまだ試行錯誤で不安のほうが多かったと思うが、広告の道を辞めてからこのような進路もあるのかと、感心した。
それから半世紀がたち、さいたま市で仕事をしているので二木屋を思い出し、帰りにランチを食べて久しぶりに小林君と旧交をあっためようとネットを調べた。

すると愕然とした。小林君は不治の病で余命宣告を受けて、2019年に亡くなっていたのだ。

小林君とは二度と会えない。だが、検索したのだから二木屋には行こう。
予約をして二木屋を訪れた。

彼の姉上が出迎えてくれて、死を目前として書いた著書などを見せていただいた。彼の書いた本「日本の室礼」を見て、またびっくりした。SP道場の講師の水口健次先生が寄稿していたのだ。あの数日の研修で水口先生に傾倒して、何度もやり取りがあり、先生も食べに来たことがあるという。

料理は鹿児島4400円(税込)をいただいた。料理も仲居さんの所作も申し分なかった。途中で料理長が各テーブルを挨拶して回っていた。

玄関には「国指定登録有形文化財」のプレートが貼られていた。
普通なら壊してマンションにするような家だが、大事に使われており、それだけで維持管理が大変だと思う。この建物で人を満足させるにはレストランしかないという結論に至ったそうで、それからが大変で、ずっと大変だったと思う。

テーブルのマットは小林君の作品だ。こういうことが好き、というか得意な人。

まずは箸付 里芋鱈子煮凍り ピーナッツ掛。小鉢は牛肉と牛蒡のきんぴら木の芽。
これから出てくる料理の期待感が高まる小品だ。
これは祖母、小林カツ子さんのレシピを再現したものという。明治の味だ。

前菜 鯛小袖寿司 長芹胡麻和え 筍粉節和え 丁呂木 サーモン柚庵焼 蟹玉子松風。
小さな一つ一つがどれも一枚一枚の皿に載った料理のように世界観が広がる。それぞれの味が未体験ゾーンで、もっと食べたいけれども、これが適量なのだろう。

ここで日本酒が欲しくなった。車なのでそうはいかない。ヘンにソフトドリンクを飲んでも料理の味を損ねるだけと思い、お茶で食べ進む。誤解のないように、酒のつまみになりそうだからしょっぱいかと思えばまったく違う。上品な味わい深い料理で、酒があればもっとおいしくなるだろうと思っただけだ。

店内というか室内というか、ひな人形のコレクションがすごくて、あとで色々見せていただいた。

お椀 白魚進丈 若芽 人参 水菜 柚子。
白魚をしんじょうにするなんて。白魚ってあの白魚だよな。ふんわりとはんぺんのようだ。若芽は歯ごたえがありおいしい。ダシも上品だ。

造里 鮪 勘八 寄せ生海苔 山葵。
どこの部位だろうと思うような、刺身。コリコリとした食感だ。
手前の四角いのは生海苔のゼリー。山葵をつけていただいた。

煮物 鹿児島産黒毛和牛角煮 天蕪 小松菜 鼈甲飴。
角煮はやわらかく、日本的な味付けで中華料理のそれとはまったく異なる。七味ならぬ十味唐辛子を軽く振りかけた。蕪もおいしい。

メインの強肴(しいざかな) 鹿児島産黒毛和牛素焼きステーキ 天日干野菜 クレソン 山葵。山形産無農薬ひとめぼれ 赤だし 香物。
このステーキは焼き加減は聞かれなかったが柔らかく、あくまで柔らかく、岩塩とわさび醤油で交互に楽しんだ。
中はしっとりだ。

ご飯茶碗がユニークで、小さな穴が開いていた。盛ってから蒸かすのだろうか。

甘味 わらび餅 五家宝。
五家宝を食べるのは久しぶりだった。こういう味、こういう食感だったか。懐かしさがある。
コーヒーはまずストレートで飲み、次にミルクと角砂糖一つだったね。

久しぶりに見事な日本料理を堪能できた。4400円でこのボリュームと味は素晴らしくリーズナブルだ。

その後、姉上にひな人形コレクションを見させてもらった。ちょうどいい時期に訪れたものだ。
小林君は雛人形の研究家とも知られている。

小林君は余命宣告を受けて書いた本「あの世へ逝く力」の最後に
「死は人生の終焉ではなく、生涯の完成。
生きているときに自分の物語をつくり、死んでもその物語の中で生き続ける。」
と書いている。小林君は物語をしっかりと作った。それは料理やサービスにいまだに現れている。

創業者が亡くなって悲惨な結果になる会社や店はあまたある。だが彼の物語は続いている。彼の志や広告屋的に言うとコンセプトがいかにしっかりしており、スタッフに息づいているのか、わかる。

こうやって僅か数日しか会ったことがない私がこのようにしたためるのも、小林君の物語に感銘したからであり、また語り継がれるのだろう。
築いた店が、亡くなっても繁盛しているのは、今でも物語が続いている証左だ。見事だ。
合掌。

2022/01/25 更新

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