『「終戦80年 映画で振り返るーー「戦後」を生きるということ」 @神保町シアター』AI94さんの日記

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今テーマで7月19日(土)から8月15日(金)まで特集上映があり、気になる作品が数本あった中、絞って観に行ってきました。

『風の中の牝鶏』(1948年) 監督:小津安二郎
間借り生活の時子は、小さい息子をかかえ、まだ復員してこぬ夫修一の帰りを待ちわびていた。頼りにしている友達秋子を時折訪ねては着物を託し、同じアパートの織江に買ってもらっている生活だった。
そんな折、息子の急病から入院費を工面せねばならず、彼女はどうすることも出来ずに月島のいかがわしい家で知らぬ男との一ときを過ごしてしまった。
時子は犯した過ちの大きさに今更胸を締め付けられる思いであったが、ある日突然修一が帰還して・・・。

戦争の傷跡が残る背景に、細々と暮らす子持ちの妻と彼女の過ちを許すことがなかなかできない夫修一を田中絹代と佐野周二が細やかな心の機微と動きを丁寧に演じています。
戦後の女性が陥った過酷な現実を直視した小津の異色作で、当時は失敗作とされてきたそうですが、“戦争”という言葉自体が現実味のない今、今作で描かれたストーリー、脚本、情景、衣装等とても興味深く、以前とは違った解釈になっているのではないかと思います。

(以下ネタバレ含みますが)出ていこうとする夫を引き留めようとした妻を夫が振り払ったことで妻が急な階段から転げ落ち、上から声をかけたものの妻の元に駆け寄らない夫の姿に妙に違和感を覚えました(虐待の場面でない限り、理由が何であれ、今だったら即刻‘アウト’の内容です)。

佐野周二主演の小津作品ということで観に行くことを決めましたが、主演二人はもちろんのこと、友人秋子に村田知英子、修一の同僚佐竹に笠智衆(老け役ではなく年相応の(笑))、下宿屋の夫婦に坂本武、高松栄子と芸達者な脇役陣を観るのも楽しかったです。


連休中でしたが、客数は落ち着いていてやはり男性率が高かったです。
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