『「ジャン・グレミヨン&ジャック・ベッケル特集」 @シネマヴェーラ渋谷』AI94さんの日記

レビュアーのカバー画像

AI94のレストランガイド

メッセージを送る

AI94 (女性・東京都) 認証済

日記詳細

5月31日(土)から6月20日(金)までの上記特集上映中、気になる2本を観てきました。

『愛欲』(1937年) 監督:ジャン・グレミヨン
キュール・ダムール(口説や)とあだ名されていた植民地軍の下士官ルシアンのところへ、従妹が急死しその遺産一万フランがころがり込む。
その金を取りにカンヌへ行った彼はマドレーヌという女に会い、惚れ込んだ彼はナイトクラブで勝負に負けた彼女に一万フランを投出、一緒に帰宅しようとするが軽くあしらわれてドアに鍵を掛けられてしまう。女に関して自信のあった彼はその初めての出来事以来彼女を忘れることが出来ず、除隊するや彼女を探し求め、やがて彼女は彼の女となったのだが・・・。

ルシアンを名優ジャン・ギャバン、マドレーヌをミレーユ・バランという往年の名作『望郷』(1937年)のコンビが演じ、それだけで観る価値はたっぷりなのですが、ルシアンを翻弄するマドレーヌのファム・ファタールぶりがバランにぴったりはまっていました。
生活を狂わされ心身共に疲れ果てたルシアンが戦友を救うためもあって狂気にとりつかれるシーンはギャバンらしい感情の移入、迫真の演技が見て取れました。
(このシーンを見て、『獣人』(1938年)をふと思い出してしまいました。彼の感情ほとばしる演技は通ずるものがあるのではないかと。)

原題“Gueule d'amour”は直訳すると“愛の顔”、劇中では“伊達男”(だったかな?“女好き”だったかも)と訳されていました。
『望郷』のヒットがあったことで、このコンビによる本作が作られたのかもしれません。


『曳き舟』(1941年) 監督:ジャン・グレミヨン
フランス西部、ブルターニュ半島ブレスト。
海難救助“サイクロン号/曳き船”の船長アンドレは、ある日船員の結婚式に妻イヴォンヌと出席する。宴もたけなわの頃、救助要請の指令が入り船長以下船員たちは港へと向かう。
救援を求めていたミネルヴァ号を救助し港へと曳航するが、二度も引き綱が切れた後、曳航費用を支払いたくない強欲なミネルヴァ号の船長は自力で航行、綱は切れたと主張する。ミネルヴァ号の船長の妻カトリーヌは夫から逃げたい一心で船員らとボートで脱出したが、アンドレによって引き戻されてしまう。
急速に惹かれ合ったカトリーヌとアンドレは海辺の家で密会するようになるが、長年連れ添った妻は心臓の持病を抱えていた…。

波にもまれる曳き船、荒波の中格闘する船員たちのシーンとは対照的にギャバンとモルガンが白い浜辺を歩くシーンはゆったりと時間が流れ本当に美しいです!
少し渋みを増してきたギャバンと、端正な顔立ちにきりっとした瞳とブロンドの髪が揺れるモルガンはとっても魅力的。

留守がちになる夫への不満を募らせる妻の脅迫じみた要求に嫌気がさし、カトリーヌに溺れ、仕事の方もないがしろにしてしまうアンドレに最後突き付けられた結末は・・・。
ラスト、荒海をバックに聖書の一説がたたみかけるように流れるシーンは重いです。


ジャン・ギャバン、そしてミレーユ・バラン、ミシェル・モルガン二人の名前で観ることを決めましたが、二本共に満喫できました。
ギャバンは息の長い俳優さんですが、若き日の彼を劇場の画面で観てその魅力に浸ることが出来て良かったです。
(okurで探せばきっと見つかるとは思いますが、何せフランス語じゃたとえあらすじを読んでいたとしてもちんぷんかんぷんでわかりませんからね。)

フランス映画で超有名な男女優が主演する作品なので当然とも言えますが、画面から醸し出されるフランスの匂いがたまりません!
たとえセリフが無かったとしても、映画の背景等からフランスの香りが溢れ出ていて、これこそがフランス映画をお好きな方が魅了されているものなのかもしれません。

当日は他に『現金に手を出すな』も上映され、正にジャン・ギャバンの日といった感じで、彼のファンは続けざまに観たのかも。
(私はこちらに関しては既に観ているので見送りました。いくら映画好きでも、一日に3本は集中力が続きません。。。)

平日だったせいもあり客波は落ち着いていました。
ページの先頭へ