『「蓮實重彦著「日本映画のために」刊行記念特集」 @シネマヴェーラ渋谷』AI94さんの日記

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AI94 (女性・東京都) 認証済

日記詳細

9月20日(土)から10月10日(金)までの上記特集上映中以下の2作品を鑑賞してきました。

『東京の女性』(1939年)
銀座の自動車会社でタイピストとして働く君塚節子は、家庭の事情でお金が必要となり、同じ会社のセールスマン 木幡に一人前のセールスマンにしてほしいと頼む。
節子は車の知識を身につけ、セールスマンとしてバリバリ仕事をして、会社で優秀な営業成績を上げるが、木幡はそんな彼女に違和感を覚えるように・・・。

セールスマンとして味わう同僚とのせめぎ合いや女性ゆえに体験する男性からの嫌がらせを乗り越え、お互いに好意を持っていた木幡を妹にさらわれたとしても屈せず生き抜いていく君塚節子がカッコイイことこの上ないです!
凛とした佇まいで、モダンな服装を身に着けた原節子が素敵なことは当然なのですが、初々しさを感じる『巨人傳』の翌年にこの作品が作られたことがとても興味深かったです(驚くことに当時まだ19歳、たった一年でこの成長ぶり。後の大女優としての風格すら感じとれます)。

妹 水代を江波和子(江波杏子の母)、木幡好之を立松晃、同僚のタイピスト たき子を水上怜子が好演。
立松晃はいかにも戦前の二枚目俳優という風貌(容姿の美しい男女が俳優になった時代ですねぇ)。
音楽を服部良一、挿入歌2曲をそれぞれ二葉あき子と淡谷のり子が歌い、最後の方で「夜のプラットホーム」がBGMとして使われていました。


『暴れん坊街道』(1957年)
丹波国由留木城下。奥小姓を勤める与作は、行儀見習のため御殿へ奉公中の家老稲葉幸太夫の娘重野と恋仲になり与之助という男の子まで儲けたが、不義を問われて城を追放された。
一番家老の計らいで重野は姫君の乳母と決まり、与之助と縁を切るよう厳命される。
それから十余年、与作は浪々の身で与之助の行方を求めて旅を続け、幼い馬方三吉の馬に乗って宿場の宿へ向かう・・・。

言うに言われぬ理由があったにせよ実の親の顔を知らず、里親に捨てられ生きて来た三吉と、実の息子とは知らずに接する与作の掛け合いが楽しく、運命のいたずらで巡り合うことになる重野と三吉の悲喜こもごもの感情のもつれ、そして実の親子とわかった3人が出会う最後は何とも切ないです。
常に大人びて意地を張り、子供らしく素直になれない三吉(与之助)役の植木基晴(片岡千恵蔵の長男だそう)の名子役ぶりが素晴らしく、やさぐれた浪人与作を佐野周二(時代劇初出演だったそう)と現在の役目柄実母としてうまく接することができない重野を山田五十鈴のスター俳優二人が演じています。
他に、宿屋での女 小こまん役で千原しのぶ、馬方の親分役で進藤栄太郎も出演。

前半コミカルな場面も入れながら最終的には時代劇らしい格調高さや重厚さのある作品に仕上がっているのは、近松の名作浄瑠璃“丹波与作待夜小室節”いわゆる重の井子別れの映画化であるからなのだと、後で作品情報を読んで納得しました。


共に国立映画アーカイブの特別上映とあってとても見応えがありました。
この2本は大好きな男女優が出演しているから観たいと思ったわけですが、今まで知らなかった日本映画を開拓できた良い機会となりました。
(プロットが優しい作品ならすんなり内容が入ってきますが、難しい場合は外国映画の方が字幕を観なければならない分、やや疲れる感じがしないでもなく。。)
実はもう一本、これも国立映画アーカイブからの『残菊物語』を観たかったのですが、スケジュールが都合がつかなかったのと、ネットでも観れそうだったので諦めました。


シネマヴェーラ渋谷で初めて日本映画を鑑賞しましたが、共に週末、国立映画アーカイブの特別上映だったせいなのか、9割くらいとかなり混んでいました。
(あくまでも私の予想ですが、私が興味がある古い洋画よりは日本映画の方が認知度があって人気なのかもしれません。)
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