『「名作映画でみるー男たちの人生劇場」 @神保町シアター』AI94さんの日記

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AI94 (女性・東京都) 認証済

日記詳細

10月4日(土)から31日(金)まで上記特集上映があり、以下4作品を鑑賞してきました。

『大番』(1957年)
昭和二年の夏。愛媛県宇和島近郊の農村に生まれた田舎青年・赤羽丑之助は、村の男女の出会いの場である村祭りの夜に、なんとか彼女を作ろうと知恵を絞り、ラブレターをガリ版印刷で大量生産し、村の女の子に見境なく渡す、数撃ちの物量作戦に出る。祭りの当日、彼は印刷したラブレターの一枚を、血迷って地元資産家の令嬢の可奈子に渡してしまい、これが村中に知れて大騒ぎとなり、追い込まれた丑之助は村から夜逃げする羽目になった。
東京で、太田屋という三流の株屋に小僧として住込んだ丑之助は、トンマでノロマ、しかも大飯食いで、そこからギューちゃんの綽名を頂戴する。翌年の春、丑之助は一階級昇って“相場通し”を仰せつかり、生れつきの記憶のよさで立派に役目を果たしていく・・・。

ギューちゃんこと丑之助を加東大介、ギューちゃんを支える同僚新どんを仲代達矢、待合女中おまきを淡島千景という芸達者な三人が適役で絡み合い、笑いあり、涙ありのストーリーを綴っていきます。
資産家の令嬢、後に有島伯爵の令息と結婚するというギューちゃんにとって特別な存在のマドンナ加奈子を原節子が演じていて、出演場面は少ないですが、正にうってつけの役柄でした(クレジットの最後に特別出演となっていました)。美人だからと言ってすべての女優がこの手の役は出来ませんね。
他に沢村貞子(丑之助の母)、多々良純(森家番頭)、三木のり平(宿長)、有島一郎(顧客)、河津清三郎(富士証券 木谷)、東野栄次郎(大相場師チャップリンさん)、小林桂樹(巡査)等お馴染みの役者が多数出演していました。


『続大番 風雲篇』(1957年)
折角儲けた大金も、株の大変動で一文なしになった丑之助は捲土重来を期して故郷に帰って来たものの、逢う人々は何れも彼を出世者と敬ってくれる。
故郷で七カ月を送った頃、おまきから百円の為替が送られてきて、兜町での丑之助の失敗のほとぼりがさめたから帰ってこいと促され、新たな闘志を抱いて上京する・・・。

心機一転上京し、時代の波に乗って再び大金を儲けるも、戦時下の株の暴落で一文無しに、さらに今まで可愛がってくれた富士証券の木谷の自殺の報が入る・・・という波乱の展開は前作同様。
ちょっと羽振りが良くなると他の女にうつつを抜かしてしまう丑之助が何とも憎めない性格で、見ていて楽しいです。

前作の主要キャストの他に、青山京子(宇和島築地の待合芸者 梅香)、中田康子(芸者 小花)、平田明彦(有島伯爵)、一の宮あつ子(有島家女中)が出演。


『続々大番 怒濤篇』(1957年)
昭和十三年初秋、六十五万円の借金を背負った上、後援者木谷さんを失った丑之助は、おまきさんとも別れ、百姓になろうと故郷に帰った。
日中戦争は次第に本格化し、村ではイリコが統制品になって自由に売れぬ反面、軍手や地下足袋に不足している。丑之助はこれに目をつけ、イリコを船で大阪に送り、帰りに軍手や地下足袋を仕入れようと計画、昭和十六年には大口を相手にそうとうな利益を上げるようになる・・・。

舞台を宇和島と大阪に移し、株に代わってヤミ屋として一儲けするギューちゃんの活躍と挫折が描かれています。
人生の浮き沈みに負けず生き抜いていく彼の姿を応援せずにはいられません!

今篇では十朱久雄(警察署長)が出演。


『大番 完結篇』(1958年)
昭和二十四年、東京証券取引所再開。かつて兜町から旗をまいて故郷に逃げ返った丑之助は、野望に燃えて再び上京。新どんの喫茶店を根城に細々と株の売買をしながら機会をねらっていた。
パルプ株が有望というチャップリンさんからの情報により、丑之助はおまきさんを通じて伝手を求める皇国パルプの重役 川田氏を訪れた。二人は意気投合し、パルプ株の上昇と、続いて買ったガラス株の暴騰で丑之助は一億の儲けと取引所正会員証を勝ち取った。
社屋を新築し、新どんを専務に据え、売りの角政の向うを張った丑之助は、いまや兜町で押しも押されもせぬ存在となる・・・。

ゴルフ場やホテル経営の計画や、キャバレーでの夜遊びが出てきたりと、戦後の日本の世相が描かれていて興味深かったです。

朝鮮休戦と政情不安からの株式暴落で彼の会社も大損害を受け、中小証券会社が大儲けできなくなる時代になり、生涯の夢の女性、可奈子の死に直面するギューちゃん。
一時は意気消沈したものの、チャップリンさんの死亡記事を見て若き日のサイトリとしての不屈の精神を思い出し、相場師として再度奮い立つギューちゃんに拍手!

今篇では団令子(秘書マリ子)、山村聰(川田)が出演。


愛媛県宇和島近郊の農村から上京し日本橋兜町の株仲買店の小僧に就職、戦前から戦後にかけての東京証券界を舞台に、相場師「ギューちゃん」となった赤羽丑之助の破天荒な一代記を描いた、獅子文六の痛快小説「大番」の映画化(週間朝日に連載され話題をよんだ)。
監督は4作共に千葉泰樹。

一発当てると巨万の富を得るが、一夜にして全財産を失ってしまう相場師のローラーコースター人生が、その時代の情景、世相を映し込みながら如術に描かれていました。


原節子が出演していること、父母が話題にしていたことから映画館に出向き鑑賞してみましたが、波乱に富んだギューちゃんの笑いあり涙ありの人情劇でとても面白く、当時とても人気だったことが伺えました。
前半では河津清三郎演ずる木谷、時に登場する東野英治郎演ずるチャップリンさんがストーリー展開の中でエッセンスを効かせているように感じました。
昔懐かしき俳優陣の若き日の姿が見れたのも良かったです。


平日と週末に観ましたが、共に6割程度の入場で落ち着いていました。
ただ、以前に観ているからかもしれませんが、まだ映画が完全に終わらない時点で上着を着出すのは止めて欲しいと思いました(画面が隠れるじゃん!)。
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