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昼の点数:4.5
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¥1,000~¥1,999 / 1人
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料理・味 5.0
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|サービス 4.5
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|雰囲気 5.0
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[ 料理・味5.0
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| 酒・ドリンク- ]
二毛作で収穫する上質な小麦(きぬの波)の消費のために建てた塩町館。更に消費拡大のため乾うどんの生産も。
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鴨汁せいろ
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きぬの波の石臼粗挽き
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濃厚鴨汁
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シックな外観
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看板
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2008/11/05 更新
拙店慈久庵の続き。
慈久庵で夢心地のコースの食事が終わり、居心地が良かった席を立ってレジでお金を払います。慈久庵主の小川宣夫さんにお礼を申し上げたとき、ふとレジに置いてあった石臼うどん塩町館のA5のコピーで作った案内書に気が付きました。
あの、これいただいてもいいですか。と、わたし。
あ、それは、うどんのほうですよ。と、小川さん
これから、おうどんをいただきに、塩町館に行くのです、とわたし。
このとき、小川さんの厳しいお顔が少しゆるんだように見えました。
再び秋たけなわの里を疾走し、塩町館に向かいます。どんどん坂を下って、向かう先は常陸太田の街中です。
慈久庵での繰り返しになりますが、小川さんの目指す里山の再生の大きな柱は、蕎麦と小麦の二毛作です。そこで収穫されたものを、手刈り、天日干し、そして自家製粉を経て手打ちの蕎麦とうどんを提供することで、付加価値を高めて里に還元しようという計画。その消費のために建てたのがこの慈久庵鯨荘塩町館なのでした。
じつは、小麦を生産するというのは、少し前までは現実すごく大変な困難なことだったことを、今回初めて知りました。
本には、このようなことを書かれてます。
この旧水府村は、かつてはそばだけでなく小麦の栽培も盛んだった地域。毎年六月ころには、畑が黄金色に輝く麦秋の季節を迎えるのが当たり前の風景だった。
国内小麦の生産量激減の背景にあったのが食管制度である。国内産小麦、輸入小麦とも政府が全量を買付け、製粉会社などに一方的に売り渡すという体制が長く続いてきた。この制度化では、製粉会社は産地や銘柄の指定ができない。そのため、生産者のほうも、小麦を品質で勝負する意識が薄くなってしまった。
これに加えて高齢化が進んでいた。また、小麦は出荷の際、等級検査があるため農家は採算が取りにくい。
このとき小麦の生産を続けていたのは、むらでわずか数軒だったとか。
ここで、昔から大切にしてきた里山の畑を守るには、そばと小麦の二毛作が最適と考え、農家が安心して作付できるように、出荷先を増やしていく必要がある。それには、収穫した小麦から石臼で挽いた饂飩をこの地方の名産にしよう。
このような背景のなかで2005年に、この塩町館がオープンしたのです。
小麦の栽培種は、茨城県が推奨する“きぬの波”。これを石臼で製粉して手打ちにされたうどんを食べようというものです。
さあて、ようやく塩町館に到着。塩街道に建てたことからこの名前にしたと。お店は風変わりな洋館で、お店ののれんとおみせの外観が見事にマッチングしているのか、見事はずしたミスマッチなのか。こんなお店は見たこともないので判定に困りますが、わたしは、当然、お見事!に一票入れます。
このお店は、旧太田銀行とその裏にあった土蔵をリフォームして作ったとか。そう言われれば、なるほどと思います。創立されたころは、この辺では一際目立つ建物だったでしょうね。今でも十分目立っていますが。のれんをくぐって中に入ります。
お店のなかは、想像した通りのシンプルなつくりで、形のいいテーブルと椅子が配置され、なかなか居心地がよさそうです。
このとき、お店は満席でした。一番手前のテーブルの上には、慈久庵や小川宣夫さんのことが掲載されている雑誌や本やそれから小川さんの蕎麦・饂飩指南なんかが置いてありました。当然、このテーブルにはお客さんは座っていないので、ここに置いてあった椅子に腰かけて本を読みながらテーブルが空くのを待ちます。時間つぶしの本が目の前にこんなにあるので、何時間待っても平気の状況です。
この塩町館は、小川さんはお弟子さんにすべてを任せるやり方をとっています。お名前がでている本を読みながらも、お名前を書きとめるのを忘れていました。ここも、お弟子さんが、注文受け、調理、配膳、片付け、レジを一人で全部やります。だいたいは調理が一番忙しいので、お店にお客さんが入って来ても気がつかない時も出てきます。わたしの場合もそうでした。いいですよ、こっちは勝手に楽しみますから。
セルフのお水を持ってきて、来栖ケイの本でも見てましょう。やっぱりね、慈久庵も塩町館もそば、うどんの部でそれぞれベスト10のトップをはじめ、上位を独占してます。ついでですから、ラーメンなんかも情報を仕入れておきましょう。
ようやく席もあき、ようやく注文を取ってくれました。オーダーは鴨汁せいろ(冷たいうどん)(1150円)で。オーダーしても、すでにずいぶん長い時間待っていそうな大人数の家族分を作らねばならないので、当分うどんは来ないでしょう。でも、ぜんぜんだいじょうぶですよ。適当に指南書でも勉強していますから。これがきっかけで、行列、初老にしてうどん打ちの道へ、やがて技を究め宮内庁の目にとまり、陛下に手打ちの饂飩を献上する栄誉に見舞われ、あれ~、どうしましょう。また、悪い癖が出たようです。
鴨汁せいろうどんの登場。
うあー、うどんが黄色っぽい細打ちで水にぬれてきらきらしてます。あとで聞いたのですが、小麦を全粒で石臼粗挽きするので、小麦の外側の黄色い部分も一緒に製粉するから、黄色がかかるそうです。妖しい魅力的なすがたです。
つけ汁の鴨汁は、表面に脂がきらきら光り、いかにもコクのありそうな濃い目のたれに見えます。カモ肉が沈んでいるようなので、はしで引っ張り出してみましょう。ああ、結構な量がありました。記念撮影しましょう。ついでに、一枚食べちゃいましょう。
ほほう、やわらかいねえ。ふんわりとしていながら鴨のコク味が口のなかに広がっていきます。この鴨はどこからやってきたのでしょうか。地元水府の出身でしょうか。生前お声を聞かなかったので、なまりがわかりませんでした。
それでは、この特産品に育てるべく生まれてきたうどんを一口いただきましょう。
まあ、この細いながらも内に秘めたこしの強さ。さぬきうどんとは、また、全くちがう腰の強さです。やわらかふんわりでも腰がある。この、もうこたえられない食感は、うどんづくりの製法に秘密がありました。
小川さんの饂飩打ちの技術を最も特徴づけているのは、延しの工程で使われる“浮き打ち”と呼ばれている手法です。めん棒に巻きつけた生地を両手で上下に引っ張って延ばすという延し方。いわば、空中で延ばすことからの名称がついたのでしょう。味のためとは言え、なんと手のかかる延し方でしょうか。うまいなあ。また、小麦のにおいがして、このにおいを嗅ぐだけでも幸せな気持ちになります。
それでは、饂飩はつゆと出会って初めて真価を発揮する、という慈久庵主の言葉にしたがって、鴨汁と一緒にうどんをいただきましょう。
ひゃー、口のなかできぬの波と鴨の脂が一体になり、おしょうゆNIPPONの刷り込まれたDNAがプラスして、怒涛のおいしさに変貌しました。うどんのかおりも負けません。小麦と脂は相性がいいのでしょうか。オーダーの時、せいろうどんにしようか、鴨汁せいろにしようか、迷いましたが、鴨さんに来ていただきすっかり場に立体感がうまれました。正解でした。
ちゅるり、ちゅるちゅる。うめ~。ちゅらちゅら、ずずー。鴨肉でアクセントをつけながらも、あっという間の完食でした。
お蕎麦と饂飩。この2大麺に対してすばらしい気持ちにさせられました。忘れられない日になりました。今日おこったこと、を反芻しながら、太田の町へと繰り出していきました。しあわせな気持ちはずっと続いていました。