レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!
1位
1回
2015/08訪問 2016/01/13
部屋に通された瞬間、その美しさに息を呑んだ。
暮れなずむ琵琶湖が目の前に広がる。
茜色の夕焼けが水面に映り、少しずつそれが紺碧に混じってゆく。
なんて美しいグラデーション。
滋賀県マキノにある日本料理店、『湖里庵』。
予約は1日3組のみ。
宿泊も可能だが1日1組しか取っておられない。
この日は近くに宿を取り、お店の方に送迎していただいた。
こちらはかの遠藤周作氏がこよなく愛し、『湖里庵』という名をつけたというお店。
嵐山吉兆で修行されたご主人が腕を振るう。
お料理は近江懐石、鮒寿し懐石、冬季は鍋物も。
今回は13000円の「鮒寿し懐石」を予約。
事前にアドバイスをいただき、鮒寿しの天麩羅とパスタもお願いした。
お料理は鮒寿しを堪能できるコース構成。
とにかく驚きと感動の連続。
鮒寿し自体はまろやかでフルーティーな味わい。
それをともあえにしたり、チーズで包んだり、揚げ物に仕立てたりと
非常に独創的。
ともあえはチーズのような酸味。
五感を四方八方に引っ張られるが、お酒を含むと弾けるような味わいが
きゅっとまとまり喉を滑り落ちてゆく。
チーズ包みは発酵×発酵。
お互いの持つ熟成感や酸味が溶け合って昇華するイメージ。
揚げ物は鮒寿しに油を合わせる発想が面白い。
酸味や熟味に味覚が引っ張られてどこに行くのかと思うが、最後にぐっと旨みの感覚に落ち着く。
これがめっちゃ楽しい♪
合間に鱸のお椀や焼き鱧の酢の物など、鮒寿しを用いない料理も組み込まれ、
だからこそ鮒寿しとの再会がまた楽しくなる。
これはもう、お酒なしだとツライよね。(笑)
お店の3軒隣にある蔵元が作った、『竹生島』(ちくぶじま)。
清涼感がありすっきりした味わいで、熟れ寿しにぴったり。
ご機嫌なお連れ様が差し出すおちょこに、今日はひたすらお酌を。
感動的だったのは、お茶。
まるでとうもろこしのような甘みと豊かな香り。
京都の宇治茶を完璧に淹れてある。
うぅ、美味しすぎる!
そしてそして!
最後に出されたのは、何と宇治金時のかき氷。
まさかの!!!
興奮していたらお店の方に笑われちゃった。(笑)
こんもりと山高のかき氷は、深い緑の美しさ。
さくさくしゃくしゃく、適度な粒感があって心地いい。
そしてしっかり蜜が甘い。
熟れ寿しの最後にこの甘みが来るとすべての味覚の着地点がちゃんと定まる感じがしてすごく馴染む。
計算してこの甘みにしてあるんだろうなあ。
もちろん宇治抹茶の味わいも極上。
女将さんはとても気さくでいい距離感の接客。
ただちょっとお料理を出すペースが早かったなー。
次から次に来るんだもん。(笑)
美しい琵琶湖が生み出した湖国の幸。
長い歴史に培われた豊かな味わいのお料理たち。
ここでしかいただけない、唯一無二の味。
あぁ、わたしが求めているのはこれなんだ、と。
深く心に刻まれた夜。
*************
これがちょうど800件目のレビューになる。
ここに辿り着くまでに、一言では言い表せない様々なことがあった。
かなしみも。せつなさも。いたみも。
すべてを乗り越えて、今あるのは、さざなみ。
静かで、穏やかな。
それはこの時目にした夕暮れ時の琵琶湖のような。
これまで拙いレビューを読んでくださった皆様、ありがとうございます。
深い感謝の気持ちを、ここに。
2位
1回
2015/08訪問 2015/12/07
長浜を出発した時は厚い雲に覆われていたけれど。
少しずつ雲の切れ間から光が射し始め、鯉が泳ぐ水面にゆらゆらと美しい模様ができる。
澄んだ空気を胸いっぱいに吸って、ずっと訪れたいと願っていた店の暖簾をくぐる。
『比良山荘』。
滋賀県大津にある、山の辺料理でその名を馳せる宿。
今年は様々な土地で鮎を食べ歩いた。
京都でも、岐阜でも滋賀でも。
その中で群を抜いて素晴らしいと思えたのがこちらの鮎。
今回、15000円の「鮎食べ」のコースを同行者が予約し、食いしん坊4人で訪問。
歴史を感じさせる木造家屋は趣があって素敵。
通されたのは美しい庭を望む個室。
川のせせらぎ。涼やかな夏の風。鳥の啼く声。
癒され身も心もほどける。
最初に供された冷茶で喉を潤す。
そしてここから始まる鮎のコース。
こちらの鮎は琵琶湖産。
鮎はどこどこの川のものが良いとか最高だとか、そういう話をよく耳にするけれど。
正直そういう話がどうでもいいと思えてしまうほどの素晴らしい鮎、素晴らしい火入れ。
素晴らしいのは鮎だけでなく、こちらの出汁の豊かで深い味わいは感動的。
この出汁をベースに、食材の旨みの幅を広げ、深めてゆく料理の数々。
■先付
・赤い梅の蜜煮
・子持ち鮎のなれずし(酸味と熟味が渾然一体となりとろける)
・新銀杏
・鰻の肝の煮こごり
■お吸い物
琵琶湖の鰻の骨から出汁を取っている。力強さと繊細さと。沁み渡る旨み。
■鯉の洗い、琵琶湖鰻の焼き霜
■焼き鮎
焼き鮎は3回に分けて出される。
そのプレゼンテーションに感激。
焼き加減も塩加減も最高。
身のほくほく感、肝の苦み。
これほどまでに美味しい鮎は初めて。
小ぶりで、だからこそ旨みが詰まって骨すら香ばしくいただける。
■琵琶湖のスッポンと蒸し鶏のスープ
■焼き鮎
肝の苦みには個体差があってそれも面白い。
焼き鮎を一気に出さずに、合間に別の料理を挟むこの工夫がすごいと思うの。
■鮎ごはん
■鯉こく
鯉の淡いお味噌汁のような。
コクと旨みが詰まった芸術的な美味しさ。
■枝豆のお餅
ぷるぷるの食感、中には枝豆の粒。
瑞々しさに溢れ、枝豆の青みが立った素晴らしい甘味。
その場にいた全員が一品一品に感動と驚嘆、そしてため息。
これほどまでに美しく、完成された食事があっただろうか。
今でもあの時のことを思い出すと、とても幸せな気持ちになれる。
季節ごとに、何度でも通いたいと思えるお店。
文句なく満点。
3位
2回
2019/01訪問 2019/01/25
滋賀県・余呉湖の傍らにある料理旅館、『徳山鮓』。
2015年に初めて訪れた後、ご縁あって再訪を果たしたのが2017年の年末でした。
待望のジビエの時季。
鰻の飯蒸しから始まり、鹿肉のロースト、鯖の熟鮓、ジビエのプレート、そして熊鍋!
2年前よりもさらに洗練され、進化を遂げたお皿の数々に感動を覚えたひととき。
その時に思ったのは。ぜひ鴨の時季に来たい!!ということ。
徳山さんでは様々なジビエを扱っておられますが、鴨がいただけるのはほんの僅かな間で、しかも極上の鴨が供されるらしい。
その願いが叶い、今回、3度目の訪問。
1月だというのに、この日は驚くほどの暖かさ。
きらきらと輝く余呉湖の光景をしばし楽しんだのち、いよいよ徳山さんへ。
(そう言えば、徳山さんに伺う時はいつも晴天だなー。雨女なのに(笑))
そして、念願の鴨尽くしは想像を超える素晴らしさでした。
先付は公魚、猪・熊・鹿のテリーヌの山椒ソース、隠元の荏胡麻和え、そして種々の野菜。
濃厚なジビエのテリーヌに甘みを湛えた山椒のソースはベストマッチ。
そこに寄り添う野菜たちの瑞々しさ。
続いては鯉に岩魚の卵と熊肉をあしらった一品。
鯉は豊かな甘みに満ち、岩魚の卵と熊肉がさらに華やかな旨みを添えている。
ここからは鴨肉。
まずは焼き鴨。
何という力強い味わいなんだろう。
添えてある岩塩は薄く削られたような断面だったが、これがまろやかに鴨を包み、味わいを豊かに広げる。
唐揚げ(脚、頭、心臓、砂ずり)は飯(いい)のソースでいただく。柔らかな酸味と旨みが力強い鴨肉の味わいと相俟って感動的な美味しさ。
そしてメインの鴨鍋。
1人1枚ずつ摘みながら、大切にしゃぶしゃぶしていただきました。
めっちゃ柔らかいし!お出汁と一緒にいただくとえも言われぬ口福感。
鴨の脂がどんどんお出汁に溶け出て、それが鴨肉に絡むことで生まれる深い味わいにしばし恍惚となる。
こちらでは、メインのお鍋の後に鮒鮓が供される。
酸味と旨みと甘みと、五感を刺激される素晴らしい鮒鮓。
徳山さんの真骨頂。
最後に鴨の旨みと脂が存分に溶け出たお出汁で雑炊をいただき、その滋味深さに改めて感動し。
飯(いい)のアイスで〆。
素晴らしかった。
ただただ、素晴らしい時間でした。
此処でしかいただけない、唯一無二のお料理。
こちらに伺うと、いつも心が豊かに満ちるのを感じます。
3回訪れて、3度とも素晴らしい食体験になりました。
この日はかつて毎月こちらを訪れていたという超常連殿もご一緒で、徳山さんがとても嬉しそうでいらしたのが印象的でした。
そういう場に立ち会えたことも含め、幸せな時間だったな。
次回の訪問が今からとても楽しみです。
琵琶湖の北に位置する余呉湖。
その余呉湖の傍に店を構えるのが『徳山鮓』。
滋賀といえば熟鮓。
発酵の文化が根付く土地。
ご主人の徳山氏は京都で修業された後、生まれ育った長浜市余呉へ。
発酵研究所の所長である小泉氏の影響を受けて熟鮓の研究を続け、
ご実家を料理旅館『徳山鮓』として開業されたそう。
徳山鮓に行きたいね、という話が出たのは去年の年末のことだった。
たべろぐにレビューを書くようになってからほどなくしてこちらの
ことを知り、ずっと訪れたいと思っていたお店。
昼、夜、宿泊という3つの区分で予約を受けているが、土日の予約は至難。
今回、『日の出』の予約と併せてこちらの予約が取れたのは
本当に幸運だったと思う。
そしてこちらを訪れる直前、ANAの機内誌で徳山鮓の記事を目にして
めっちゃテンションが上がったという。(笑)
6月のある日。
曇り空が晴れ、澄んだ空の青と余呉湖の美しさに心打たれながら店へと向かう。
店内はとてもシンプルなしつらえ。
メインダイニングと、奥には個室。
窓側の席であれば、余呉湖を望みながら食事をいただくことができる。
接客は徳山さんのお嬢さんが担当されていて、その素朴で丁寧な物腰に
ほっこり癒される。
いただいたお料理は写真の通り。
何と言っても熟鮓。
実は人生で初めての熟鮓体験。
「鯖の熟鮓」は飯(いい)を取り去りトマトとチーズをあしらったもの。
ふわっと柔らかな発酵の香り、フルーティーなトマトの味わい、チーズの酸味。
この三位一体。
発酵×発酵。計算され尽くされた味。
そして「鮒鮓」。
これが本当に凄い。凄いほどに面白い。
酸味と発酵の香り、蜂蜜の甘みと深みが絡み合う。
感覚を四方八方に持っていかれて最後はひとつに着地する。
この味覚の揺らされ加減がすごく楽しい!
「余呉湖の天然鰻」も圧巻。
すぐ傍で採れたという実山椒と一緒に。
さくっと表面は香ばしく、身はしっとりと。
非常に濃い味わい。いつまでも噛み続けていたい美味しさ。
「熊肉の雑炊」はスッポンのお出汁の旨みに熊肉のしっかりした旨みが
重なり合ってもうもう。
〆の「鮒ずしの飯で作ったアイス」はチーズアイスをひとひねりしたようなお味。
さくさくな食感。これも初めて出逢う味。
発酵ってまさに科学だよね。
わたしには到底はかり知ることのできない長く深い歴史のある食べもの。
その歴史と食文化をいただいているのだという深い感慨に包まれる。
まさに究極の郷土料理。
最後は徳山さんが一組ずつご挨拶に回られていて。
こちらの常連である友人の名前を出すととても嬉しそうにされていた。
美しい余呉湖を背景に記念撮影もしてくださったし^^
徳山さんのあくなき探究心。
目指す方向が決まっている、ブレのない姿勢。
それがこの唯一無二の味を生み出している。
終わりゆくのが寂しくなるほどの、美味しく幸せな時間だった。
次回は泊まりで、お酒と一緒にこちらのお料理を楽しみたいな。
4位
2回
2017/09訪問 2017/09/05
(2016年5月、2016年10月、2017年5月再訪)
その後も年2回のペースで訪れています。
アクセスしづらい地方のお店の中で、わたしがいちばん通っているお店が此方。
特に春の山菜と秋の茸の時季はマスト。煌めくような山菜、珍しい茸、この地で育った、ここでしかいただけない山の恵み。瑞々しいいのち。
いちばん最近訪れたのは、今年の5月。7回目の訪問。
まずは木曽福島の地酒、中乗さん(純米大吟醸・無濾過原酒)をいただきながら。
香りがふわーーっと、どんどん花開く。軽やかすっきりな味わいから、コクのある味わいへ変化する。
★山菜のお皿
・野生のクレソンをキュルノンチュエの生ハムで巻いたもの
・ももえら(山ホップ)
・うどの木の芽酢味噌
・花わさびのお浸し
・うるい
・わらび
何て美しいんだろう。。そして一つ一つの山菜の味や香りが活きてる。しみじみと美味しい。
山菜はいつも庭で採れたものを出しておられるそうだが、今年は山菜が遅く、ふきのとうやたらの芽は南木曽から取り寄せたりもしているらしい。
★伊勢の蛤のしんじょうのお椀
出汁がやはり素晴らしい。旨みが品良く、でもちゃんとそこにある。最高です。
★岩魚のお刺身
捌きたて。ぶりんぶりんの弾力!お醤油は名古屋のお醤油に根昆布のおだしを加えてとろみをつけておられるとのこと。
★王鹿村の鹿肉のたたき
★天ぷら
・ふきのとう。中にアンチョビとチーズ
・こごみ
・岩魚の身で山うどを巻いたもの
・こしあぶら
天ぷらはどれもめっちゃ旨い。香りが豊かで濃い味わいの山菜たち。今回からちょっと創作てんぷらも組み込まれるようになったんですね。岩魚と山うどはベストマッチだったなあ。噛むとふっくらした岩魚とうどの香りが立つ。
★仙台牛のとんびのステーキとアスパラ
「とんび」とはももの近くのお肉。柔らかく脂も乗って美味!特に脂がうんまい(笑)アスパラは甘く香り高く。春の恵み!
★鰻とこしあぶらのご飯、赤出汁
こしあぶらの青々した味わいがさっぱりとさせてくれる。赤出汁も本当に美味しい。
初めてこちらを訪れてから3年の月日が経った。
季節をぐるり、3周り。
こちらに伺う度に、心も体も生き返るような感覚になれる。
現在は1日1組しか客を取っておられないらしい。
色々な面で訪問のハードルは以前より上がっているけれど、また必ず伺います。そうさせる引力のある、稀有なお店。
木曽の開田高原にある和食料理店、『わらび野』。
これまでに4回訪問。
訪れる度に感動を与えてくれるお店。
事前にこれが食べたい、あれが食べたいとご主人の小木曽さんに
お願いする時のワクワク感。
旅は、その時から始まっている。
2014年9月、はじめてのわらび野。
松茸と岩魚を組み込んだ8000円のコース。
・いぐち茸の大根おろし和え
・松茸の土瓶蒸し
・岩魚のお刺身
・岩魚の塩焼き
・松茸の焼き物
・名古屋コーチンのつくねと夕顔の煮物
・松茸粥
この地で育った茸や魚たちを使ったお料理。
岩魚の刺身は、〆た後15分しか保てないぶるんぶるんの弾力とみずみずしさに悶絶。
岩魚の塩焼きは絶妙な火入れ加減で、野趣に溢れ、力強く。
地物の松茸は、素晴らしい薫りと沁み出でる旨み。
そして、圧巻なのがお出汁。
シンプルだが奥深く、複雑。
素材を支え、素材に支えられて渾然一体となる出汁。
こんなにも心にまっすぐに響く出汁に出逢ったのは初めてのこと。
しばし目を閉じてこのお出汁を全身で味わった。
本当に、本当に、幸せな、口福な食事。
お連れ様方と、ためいき、うなずく。
その後、冬、春、秋、と季節ごとに訪問。
冬は鹿や猪などのジビエ。
春は山菜。
もうもう、山菜は素晴らしかったなあ。
春の輝くような恵みを思う存分堪能した。
岩魚の卵と山菜のてこね寿司は美しすぎて美味しすぎて♪
毎回出されるしんじょうのお椀もとても楽しみ。
小木曽さんはもともと名古屋でおでん割烹を営んでおられた方で、
その流れが今もこちらのお料理に生きている。
初めて出逢ってから1年が経ち。
季節をぐるり、ひとまわり。
昨秋、再び松茸をいただいて、またこちらのお店に出逢えたことに
心から幸せを感じたのだった。
その季節季節で出される食材はもちろん異なる。
いい食材が入らなければ、予約を断ることもあるという。
自然の恵みに感謝し、この地に生きとし生けるものへの畏敬の念を常に持ち続けている。
ご主人のそんな真摯な姿勢がこちらのお料理に現れているとわたしは思う。
いのちをいただくということ。
その原点に触れられるお店。
その原点にいつも立ち返ることのできるお店。
そして。
これまでも、これからも。
通い続けるであろう大好きなお店。
5位
1回
2016/09訪問 2016/12/27
夏の夜、待望の再訪。
前回訪れた時もその素晴らしさに胸を打たれたが、1年ぶりに訪れて
さらに進化したお料理に驚嘆し感動を覚えた。
全9品の物語。
・原木椎茸のローストとビーフン
一皿目から完成度が高すぎて圧倒される。
胡麻油の香りに心躍り、原木椎茸の瑞々しさと抜群の塩分濃度に唸る。
・ポルチーニと黒トリュフのスープ
ボンダボンのペルシュのコンソメと茸の競演。
蓋を開けた瞬間の香りが素敵すぎて昇天してしまう。
コンソメの味わい深さ、香りが折り重なるこの素晴らしさ。
・6年かけて発酵させたかんずりで調味したチョリソー、じゃがいものソース、ブラウンマッシュルーム
運ばれて来た時から強い肉の香りにぐっときます。
(つくづくこちらの料理は香りでまず食べさせる料理だなと思うの)
肉の旨みとじゃがいもの甘みの融合。
・鮑のメロッソ
蒸した鮑の水分、ポルト酒とバターで作られた一品。
磯の豊かな香りが胸いっぱいに広がる。
シンプルなようで素晴らしく奥行きがあって感動。おいしすぎる!(笑)
・郡上和良川の鮎のスープ
鮎、塩、水のみで作られたスープ。
鮎の肝の苦みと、身の味わいが凝縮!
舌の上にいつまでも旨みが残り続けるこの幸せ。
・三河のノドグロのソテー、賀茂茄子のソース
2時間かけて火入れしたノドグロはとろうり。
茄子の甘みと相まってうまし!
・天城黒豚のタン元のロースト
肉は弾力があり、脂と肉汁の旨みがぎゅんぎゅん。
ソースの酸味が加わり旨味が深まり広がる。
・揖斐川の夏の猪のロースト
バラ肉を1週間漬けてオーブンでローストしたもの。
これは中華風の甘めな味つけ。
美しく澄んだ脂がとろりととろけてゆく。
・炭火で焼いた無花果のエクラゼと紹興酒のアイス、ラズベリーパウダー
エクラゼ、というのは「潰す」という意味。
これも香りがめちゃくちゃいい。
炭火で焼くことで無花果の甘みがぎゅっと濃縮。素晴らしいデセール。
再訪して改めて感じたのは、ファーストインパクトがどのお皿もすごいのね。
まさに七色の香り。
さらに構成や流れが完璧で非の打ちどころがない。
決して奇を衒うことなく、素材同士が必然性をもって出逢い、そこで紡がれる一篇の物語。
実は、今回はパンが供されなかったが全く違和感がなかった。
シェフによると、客が料理に向き合うための仕掛けでもあり、パンで満腹になることを
避けたかったためでもあるらしい。
そのためにリゾットを入れ、ソースも掬いやすいように固形に近い形にしたとのこと。
この計算と意図には脱帽だよね。
そして、盛り付け。
今流行のモダンフレンチのお店のようにソースや様々な素材を散らすのではなく、
全て中心にまとめているのは、もっともその料理を美味しくいただける最適な温度帯を
逃さないために、というシェフの意図。
実際この日のお皿は全て絶妙な温度で提供されていた。
最後にたくさんシェフとお話しさせていただいて、ここ最近フレンチを食べ歩きながら
感じていたもやもやした感覚が晴れたのでした。
シェフの哲学とブレのない方向性、それが体現されたお皿たち。
これほどまでの味を紡ぎ出せるシェフをわたしは他に知らない。
そして。
岐阜のお店を閉じ、明日、12月28日に銀座に新店『CHIUnE』がオープンする。
開店のお知らせをいただいて、すぐに予約を入れました。
岐阜に通う気まんまんだったわたしにとってはちょっと寂しくもあるのだけれど、
諭史シェフの新しい挑戦を心から応援したい。
1月の訪問が、今からめちゃくちゃ楽しみ。(笑)
■■2015年9月初訪レビュー
振り返ると今年は岐阜という土地に本当に縁のあった1年だった。
2月、6月、8月、9月、10月と旅行で訪れる機会があり、
そのどれもが深く胸に刻まれている。
そして、今年最も心を揺り動かされた至高のフレンチとの出逢い。
『Restaurant Satoshi.F』。
古民家を改装したレストラン。
店内は個室3室のみ。
最初は8月に行きたいね、と話していたのだが、予約を入れたらお店の夏休みと
タイミング悪く重なっていたという不運があり。
今回、待望の訪問。
お昼に伺い、事前にお願いしておいた夜のコースをいただいた。
まさに地産地消。
岐阜の風、岐阜の空気、岐阜の香り。
地の食材が古田シェフの手によって形を変え、
驚くほどの洗練をもって立ち現れる。
「東濃の松茸と茄子のコンソメ」はセロハンをパチリと切った瞬間、
ふわぁっと松茸の香りに包まれる。
『ボン・ダボン』の生ハムの出汁が松茸の香りとあいまって
悶絶ものの旨さ。
そして深い感動をもたらしたのは、「和良川の鮎のスープ」。
炭火焼きした鮎に胡瓜とクレソン。
この鮎の風味の何と濃いこと!
旨みと苦みが絶妙な塩梅で絡み合い口の中を満たしてゆく。
この鮎の料理はここでしかいただけない、まさにスペシャリテ。
もうひとつの感動は、火入れの素晴らしさ。
「5日間寝かせた金目のソテー」は、レアさも残しつつ香りが立つように
火入れがなされている。
大和の蛤のスープがさらにその香りを膨らませる。
めちゃくちゃ美味しい。(笑)
デセールまでの流れるような構成に圧倒される。
どの皿も食材と食材の掛け合わせに必然性があり、コースに物語がある。
素材の輪郭をくっきりと浮かび上がらせる料理の数々。
自分の味覚がどんどん広がり、この味わいの全てを受け止めたくなる。
そんな心躍るフレンチとの久々の出逢い。
サービスもとてもあたたかく心地良い。
カトラリーの置き方が斜めなの。だから取りやすい。
これはサービスのセンスだなあと思う。
最後に古田シェフとたくさんお話させていただきました。
瑞々しい情熱を持ち、非常に勉強家。
たかむらさんやしのはらさんとも交流があるという。
多くの方に愛されるシェフというのが分かる気がした。
岐阜のことがもっと好きになっちゃった^^
岐阜を訪れる理由になる名店。
文句なく★5.0。
6位
1回
2015/08訪問 2015/11/21
目の前でぱちぱちと火が躍る。
じゅわっと、ぽたっと、焼けゆく肉の脂が落ちてゆく。
いい匂いが胸いっぱいに広がって、
周りを見ると、みんな子どもみたいにほっぺたを紅くして、わくわくしながら
お肉の焼ける様を見守っている。
囲炉裏を囲んで、幸せを待つ。
それが柳家さんの光景。
こちらを訪れるまでは、ジビエがこんなに美味しいものなんだってことが
本当の意味では分かっていなかったんだと思う。
囲炉裏の炭火でじっくりと、ゆっくりと焼き上げられるお肉たち。
一切ごまかしがない。
シンプルだからこそ見える食材の質の高さと焼きの技術の素晴らしさ。
契約している猟師さんから何が届くかで、その日出てくるお肉が変わってくる。
この日は「猪が獲れましたので」って抜群に美味しい猪を出してくださった。
自然の恵みをそのままいただくからこそ起きる偶然性と幸運。
コースは12960円。
・はちのこの佃煮
・大根
・青首鴨の皮のねぎま
・鴨ロース
・生の猪のロース
・鹿ロース
・仔鴨
・猪のお鍋
・自然薯とごはん
・みかん
前半は焼きもの。
鴨も、猪も、鹿も。
肉の弾力がまるで踊るよう。
水分が抜けて旨味がぎゅっと濃縮し、香り高い脂と絡まり合う。
ぶりん、じゅわっ。
美味しい・・・!!
大根は地のものをただ切っただけなのにこれがまたみずみずしくてたまらない。
後半はお鍋。
猪の鍋は自家製の赤味噌仕立て。
コクと深い旨味に溢れた赤味噌と出汁。
猪のお肉がたーっぷり!
うんまい!!
〆に自然薯とごはん。
炊きたての白いごはんの甘みと、自然薯のクリーミーで香り立つ青々しさがもうもう。
おかわり!
とにかく量がハンパなく多い。
ばんごはんいらず。(笑)
そして炭火に当たるせいか、塩が利いているせいなのか、水分がたっぷり必要になります。
ひたすら感動のひととき。
うまい、うまいと言い合いながら気の合う仲間と囲炉裏を囲むこの幸せ。
本物のジビエに出逢う、新しい旅のはじまり。
この日、別室でオフ会をやっておられたWさんご一行ともお目に掛かれて、
大変楽しい会でありました^^
それが、今年の2月のおはなし。
8月に、2度目の柳家さん。
夏は鮎と天然鰻。
非常に大ぶりの鮎は頭の部分も骨もかなり硬く、食べるのに相当苦労してしまいました。
自然の素材を扱うのはとても難しいことなのだなあと。
こちらは完全紹介制。4人以上でないと予約はできない。
そんなハードルの高いお店に2度も訪問できて本当に幸せ。
紹介してくださった方、そしてご一緒してくださった皆様に心からの感謝を。
やはりこちらの真髄は冬。
次回はやっぱりジビエ。
今からほっぺたが紅くなりそうです。(笑)
7位
1回
2015/06訪問 2016/01/06
琵琶湖に面したロケーションの和カフェ。
最初は琵琶湖を望めるテラス席が全部埋まっていて、
中のテーブル席に通されたのだけれど。
しばらくすると「こちらの席が空きましたので」と、
向かいの建物の方へ案内された。
わあ・・・・!!
テラス席から一面に広がる水面の青。
陽射しを受けて、きらきら、きらきら。
美しい青、輝く湖面、そして風とともにゆらめくきらめき。
水上ではボードを漕ぐひとが。
そのひとが水面を滑ると、あとからキラキラした波動がついてゆく。
きれい・・・。
しばらく時が止まっていた。
ピーチのフレーバーティーに添えられた砂時計。
その砂がゆっくりと落ちてゆく。
時が、また動き出す。
この景色を見ることが出来て本当に良かった。
ありがとう。
8位
1回
2015/01訪問 2015/12/25
仙台の奥、定義山にある『定義とうふ店』。
何年も前からこちらの三角揚げが食べたくて食べたくて。
しかしこちらは山奥のお店。
ヒッチハイクを試みようとしたこともあった。
バスで行こうとしたこともあった。
その度に周りに止められて断念した歴史があった。
この日、わたしの顔には「じょうぎ」と書いてあったのだろう。
「定義の方に行こうか」という提案をいただいた時はどれだけ嬉しかったか。
車はどんどん山奥へと進んでいく。
ハンパない雪深さ。
初めての雪山に大興奮!
外に出ると強風に煽られた雪が顔に当たる。
こんなお天気なのに店内はお客さんでいっぱい。
お揚げを揚げるいい匂いが漂う。
揚げている様子も見ることができてなかなか楽しい。
たっぷりの油の中に泳ぐようにたっぷりのお揚げ。
低温でじっくり揚げているよう。
そして今、わたしの目の前に揚げたての三角揚げがある。
感動で涙が出そうだった。
・三角定義あぶらあげ(1枚120円)
お醤油をちりちりーっとたらして。
いっただきます!!
さくっ、さくさくっ!
何て軽い食感♪
低温揚げでじっくり揚げたおあげは外側さっくり、中ふわふわ。
これは厚揚げ豆腐を薄くしたようなものなんだね。
お豆腐もほっこほこしていてしっとりとした舌触りがいい。
お揚げが醤油を吸って油と混ざり合い、これがもうめっちゃいい風味。
香ばしさとしっとり感とさくさくの食感と醤油と油の旨みと。
おいしーーい!たのしーーい!
これはおやつに最高!ぺろりである♪
こんなに美味しいお揚げは初めて。
何年越しかの思いを遂げた感動の瞬間でありました。
9位
1回
2015/01訪問 2015/02/21
こちらのお店を訪れるのは、実は今回で2度目。
1度目は2年前の冬だった。
今回、ふたたびこちらのお店と出逢えたのは、本当に偶然の重なり、縁の繋がり。
予約を入れたのは11月初旬。
待ち遠しい2か月を経て、雪の宮城へ。
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本塩釜駅から車で10分ほど。
『千松しま』。
1日2組限定、完全予約制の割烹。
お料理は10000円と13000円のコースがあり、今回お願いしたのは10000円のコース。
2年前は和食の経験値が本当に低くて、よく分からないまま食事が終わってしまったという
感じが残ったのだけれど。
今回、その印象は完全に覆った。
素晴らしかった。
決して派手ではない。
奇をてらった料理もない。
そこにあるのは、丁寧に、素直に、素材の良さを引き出すよう造られたお料理。
やさしく柔らかく澄んだ出汁が素材を支え、包み込み。
真っ直ぐ、舌に心に届く。
牡蠣はこの辺りのものが今年ようやく出せるようになったとのこと。
ぷっくりとした身は薄衣で揚げられ、やさしい味わいの出汁をまとい、
牡蠣の旨みと絡み合ってえも言えぬ口福を醸し出す。
お造りはそれぞれに深浅のある絶妙な寝かせ具合。
いかはねっとりとし、鮪はより一層艶を増し。
ハゼとその精巣は初めていただく珍味、旨みが乗ったハゼに濃厚な精巣って、
もうこれはお酒が進むよね。(笑)
鯨のステーキをちょこっと間に挟み。
ハゼの天麩羅に添えられた牡蠣の燻製がこれまた滋味深さに溢れる。
最後の白いご飯は炊きたてのほくほく感、お米を噛むごとに広がる甘みに
幸せな気持ちでいっぱいになる。
ずずっと味噌汁をすすると、若布の瑞々しさと香り高い出汁にまたため息が出る。
幸せだった。
最初から最後まで。ただ、幸せだった。
食べ終わってしまうことが本当に惜しくせつなく。
ずっと食べ続けていたいと思えるほどに心満たされる食事だった。
そしてこちらのお料理はお酒に本当に合う。
お酒ありきの料理とも言えるだろう。
のんべえ3人で、「酒飲みのための料理だよね」とほくそ笑む。(笑)
今回、同行者にもお酒を召し上がっていただきたくて、
強硬に「タクシーで行こう!」と仕切って正解だったなあ。
こちらのお料理は、お酒が寄り添うことでさらに深みを増すお料理だから。
出逢い直せて良かった。
2年前のわたしには分からなかった、この口福。
おかみさんは明るく楽しくユーモアがあり、なおかつ濃やか。
お茶目な一面に思わずくすっ。^^
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2年前に訪れた時、部屋に掛かっていた掛け軸の言葉。
------------「知足」(足るを知る)。
「真の富とは財貨や名利ではなく、その人間のあり方によるものだ」という意味らしい。
本当に心豊かに生きるとはどういうことなのかを、あの頃も、今もわたしは考えている。
東京のお店では得られない、幸せいっぱいに満たされる感覚。
またぜひ訪れたい。
そう心に刻んだ旅の終わりの食事だった。
10位
1回
2015/06訪問 2015/11/19
三重県下野代にある郷土料理店、『大和』。
実は去年のお伊勢参りの際もこちらに予約トライしたのだが、満席。
今回、念願の初訪問となったのだった。
みどりの中に佇む、素敵な平屋造りのお店。
こちらは自然薯、山菜、はまぐり、と季節ごとの食材を大事にしたお店。
今回は事前に、地のはまぐりのしゃぶしゃぶ(4320円)と、鯉の糸づくり(片身2160円)を予約。
しゃぶしゃぶはコース仕立てになっており、前菜や天麩羅もいただける。
美しい庭を楽しみながら、個室でゆったりと食事を堪能した。
■地の野菜の焼きもの
■あまながと、原木椎茸の天麩羅
■鯉の糸づくり
多度の郷土料理。
「糸づくり」とは登竜門をめざす鯉が登る滝に見立て、刺身を細く長く切る調理法。
しっぽから頭に向けて細長く切ることで、骨が分からない感じになるらしい。
半分に折って食べるとさらに骨を感じにくくなる。
唐辛子の入った味噌と、普通のタレでどうぞ。
多度の鯉は臭みがないらしい。
確かにあっさりしているし、鯉とは分からないくらいすっきり綺麗なお味。
やわらかく脂が乗ってとても美味しい。
鯉を2本重ねて食べるとさらにぎゅんぎゅん!ぶるんぶるんの弾力に♪
実は鯉をいただくのは米沢の六十里以来2度目。
すっかり苦手食材になっていたのだが、こちらの鯉をいただいてその美味しさに開眼。
鯉も二度目なら、なんて。(笑)
■地のはまぐりのしゃぶしゃぶ
昆布出汁と塩のおつゆ。
はまぐりを出汁の中に投入して、ぱかっと開いたらすぐ食べます♪
だしがうんまい!!はまぐりの味わいがぶわっと!
身は3、4年もので小さ目だが、とろっとしているのが特徴。
この日の昼、『日の出』でいただいたぷりっとしっかりしたはまぐりとは
また味わいが違う。
こちらは自分たちで鍋を扱うのだが、
お連れ様が鍋を仕切ってくれて助かった。
いや~、人に作ってもらうのって楽ちん楽ちん。(笑)
■豆腐とみつば:ポン酢でいただきます。
■雑炊:はまぐりの出汁に卵たっぷり!
■わらびもち:多度豆を使った上品なきなこ。ぷるんぷるんの瑞々しい食感。
大満足の鯉とはまぐり♪
お会計は、2人で11000円ほど。安い。
今度は違う季節に訪れてみたいな^^
旅に始まり、旅に終わった2015年。
その土地でしかいただけない食材や、郷土料理の世界に夢中になった1年でした^^
今年のマイベストレストランは、「地産地消」をテーマに、今年もっとも多く訪れた岐阜と滋賀を中心に選んだ10店。