レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!
1位
1回
2017/12訪問 2017/12/28
はじめてこちらのお店を強く意識したのは、今年の7月、滋賀の安土にある『魚石』を訪れた時だった。
ご主人の瀬海さんから鮎の素晴らしいお店があるとお聞きした瞬間、ぐらりと心が傾き。
その後、8月と12月の2度にわたって訪問。
『行楽庵』。
大津市萱野浦にある日本料理店。
ご主人は関西の名料亭『芝苑』にて総料理長として長年腕を振るわれた方なのだそう。
お店はご主人と奥様のお二人で切り盛りしておられます。
奥様の接客はとても温かみがあり、食材や調理法についてもお詳しく、お話しすると本当に楽しい。
「うちの主人の技術は素晴らしいですから」と笑顔でおっしゃるのも素敵♪
お店は琵琶湖のすぐ傍らにあり、夕暮れ時は美しい光景に胸を打たれます。
店内は琴の音が流れる穏やかな雰囲気。
お料理は1万、1.3万、1.6万のコースがあり、2度とも1.6万のコースをお願いしました。
初回の訪問でそのお料理の素晴らしさに心を大きく揺り動かされ、再訪時はそれを上回る鮮烈なまでの感動、その後も続く余韻。
例えば、お造り。
夏の鱧は、その骨切りの技術に感嘆。
全く骨を感じさせない完璧な骨切り。
そこに合わせるうるかの旨味の凝縮感がたまらない。
冬の鮪には昆布とエリンギの佃煮があしらわれ、濃厚な脂や旨みと絶妙に絡み合う。
例えば、お椀。
夏は茄子と鱧。食材の味わいを引き出し、見事な調和をみるお出汁に唸る。
冬は鶉の骨と身を団子にし、餅でくるり。葛でとろみをつけたお出汁の何と旨きこと!
例えば、八寸。
そこには1つの世界が表現されている。
夏は蓮の葉に包まれた中に、花弁。
あまりの美しさにしばしため息。
鱧の子、松の実を忍ばせた南京玉、鯛の真丈、鮒寿し。
冬は雪吊りを象ったもの。見事な雪景色!
擬製豆腐、鯛の卵巻き、車海老の黄身寿司、鴨肉。
数日を掛けて作られるという八寸はひとつひとつに非常に濃やかに手が入る。
酒肴としても最高の美味。そこには滋賀の香りがふんだんに織り込まれている。
そして8月にいただいた琵琶湖の鮎の焼き物は、絶妙に火入れされ、芳ばしくも瑞々しい。
立ちのぼる肝の豊かな風味。
心に響く珠玉の鮎。まさに琵琶湖の幸。
地の食材を用い、季節感を大切にしたお料理。五感を刺激する、唯一無二のお皿たち。
最初から最後まで美味なものしかない。
ただただ、幸せな時間でした。
ご主人は御年70でいらっしゃるのだそう。
圧巻の調理技術、深い知識と経験。そこから生まれる新しい風を訪れる度に感じます。
旅を続けていたからこそ、出逢えたお店。
これからも通い続けたい、素晴らしい名店。
此処にあるのは、日本料理の真髄。
******
これが、ちょうど1000件目のレビューになる。
2009年にたべろぐを始めて約9年。
よもや1000件ものレビューを書くことになるとは思わなかった。
振り返れば、ここ数年は旅ばかり。
全国を回ってかき氷を何百杯も食べた時代もあった(カキゴーラー肉子ですね)。
ご当地ソフトクリームをひたすら食べ歩いた時代もあった(まじ肥えたわ・・・)。
多くの旅を経て、今の自分がある。
そして、これほどまでに幸せな旅を重ねた1年はなかったように思う。
大好きな仲間と、自由な気持ちで地方を巡った1年。そのどれもが宝物のような時間。
やっと、やっと1000件。
わたしの破天荒な食べ歩き人生をずっと応援してくれた家族と。
これまで食事の時間をご一緒してくださったすべての皆様と。
素晴らしいお料理との出逢いをもたらしてくださったお店の方々に、この場を借りて御礼申し上げます。
そして。
わたしを広い世界に連れ出してくれた、かけがえのない食通の友人2人に、心からの感謝を。
旅することは生きること。
今すぐ次の旅に飛び出したくてうずうずなのでした(笑)
******
これが今年最後のレビューになります。
本年も拙いレビューにお付き合いいただきありがとうございました。
皆様、どうぞ良いお年をお迎えください♪
2位
1回
2017/12訪問 2017/12/14
(2017年7月訪問)
まだこちらのお店のレビューが1件もなかった頃。
全国を食べ歩いている食通の友人に、滋賀の安土に隠れた名店があると聞き、ずっと訪れたいと願っていた。
それがこちら、『魚石』。
明治時代から続く、創業100年を超える老舗。
その101年目のスタートを四代目である瀬海(ぜがい)悠一朗さんが切ったのが御年26の時。
もともとは仕出しから始まったお店だが、当代から一層懐石に力を入れるようになったのだそう。
滋賀の地で育まれてきた食材、郷土の味が、ご主人の手によって洗練され新しい扉を開く。
そこには類稀なるセンスとともに、滋賀の食文化への深い愛を感じます。
★沖島の天然小鮎のめずし
最初の一品は天然の小鮎のめずしだった。
「魚石の世界観をまずお見せしようと思いまして」。
この時の瀬海さんの一言がとても印象的で。
「めずし」とは滋賀で伝統的に造られてきた、小魚を用いた短期熟成の鮓。
その代表的なものがオイカワ(ハイ)のめずしなのだそう。
小魚を大量に使用するため少量の注文は受けられない。タイミングが合わねばいただけないお品。
今回は小鮎のめずしを出してくださった。
甘味と酸味と旨味の絶妙なバランスに唸る。
お米はこの地で20年育て続けているイセヒカリ。
しっとりしつつ粒が立つ。紫蘇と生姜も強く利いており爽やかな風味を醸し出す。これは美味!!
ハイのめずしもいただきたくなってしまう。
★天然の琵琶鱒の冷燻製、琵琶鱒の筋子を添えて
火を通さずに香りを加える調理法。何ていい香りだろう。
とろりとした食感。塩気と旨味が絡みあう。
★真鯛の皮霜造り
2kgの真鯛を熟成し炭で炙ったもの。箸で触っただけで分かる熟成感!炙りの香ばしさ。
旨味と甘味にぐっとくる。
★焼き茄子と無花果の冷やし鉢
焼き茄子と無花果のとろけるような食感!
そこに利休餡の甘みと香ばしさと塩分が絡み、一番出汁のジュレが全体を纏める。
夏らしい爽やかさをいっぱいに感じられる一品。
★沖島の天然鰻
奇跡的なタイミングで入ったもの。
実は道すがら、「琵琶鱒たべたいー!天然鰻たべたいー!近江牛たべたいー!」とさんざん話してたの。
それが全部出てくる奇跡(笑)
地焼きの鰻はぱりっと香ばしく、脂も乗り、小躍りする旨さ。
★鯉の筒煮
ここで突然郷土料理ど真ん中!というようなお皿が出されて驚く。
筒切りにした子持ちの鯉を甘から濃いめに炊いたもの。
ここまでの流れとは色合いを異にするようでいて、実はこちらの世界観がとてもよく出た一品のように感じた。
しかし量が多すぎて圧倒されました(苦笑)
★冷やし茶碗蒸し
安土大中産の玉蜀黍を鰹と昆布の出汁で伸ばしたもの。
玉蜀黍の甘みがたっぷり!塩分は今までよりやや強め。ゲランドの塩。
終盤に向かう良い流れを感じる。
★近江牛のみすじの餡掛け
ここで近江牛!全く違和感なくコースに溶け込む。
脂はあまり強くなく、しっとりと旨味のある肉。あぁもう、幸せ。
★琵琶鱒ご飯、赤出汁、香の物
★水菓子
最初から最後まで滋賀の風を感じられる、まさに感動の食体験となりました。
ご主人は、この人にこういうお料理を食べてほしい、という思いでその日その日で献立を組み立てておられるのだそう。
その構成力は圧巻。
一皿の中の構成力。滋賀の豊かな幸の数々がひとつのお皿の中で絶妙に絡み合い、ひとつところに着地するイメージ。
そしてコースを通しての構成力。その物語性が胸を打つ。
ちなみに器も作家ものを揃えておられ魅力的。お詳しい方にはより楽しめるかと。
わたしにとって、滋賀という土地とその食文化の魅力にすっかり虜となってから2年が経つ。
このタイミングでこちらのお店に出逢えたのは本当に幸せなこと。
その世界観に触れることで滋賀をもっと好きになれる。
滋賀をこよなく愛する方に是非訪れてほしい名店。
3位
1回
2017/12訪問 2018/01/14
(2017年11月訪問)
昨年は日本各地を巡り、『villa del nido』、『acca』など心に響くイタリアンとの出逢いに恵まれた1年だった。
その幸せな出逢いの1つがこちら、秋田県大曲の『ジュエーメ』。
東京・祖師ヶ谷大蔵の『フィオッキ』で修行されたシェフが2014年にオープン。
大好きなフィオッキのご出身ということで、秋田の旅程を決める際に「ここに行きたい~」と(わたしにしては)強く推したのが結果的には大成功。
秋田の稀少な食材をふんだんに取り入れた素晴らしいお料理をいただくことができた。
店内はテーブル7卓ほど。ナチュラル感のある素敵な内装。
ランチコースは1800円から5000円(税別)までの幅でいくつか用意されている。今回は夜のコースである『CenaC』(8500円・税別)を予約。
まずは小前菜の盛り合わせ。
それぞれに違った味わいで楽しめたが、新政の酒粕と水俣レモンでマリネしたサゴシはねっとりとした食感が印象的。酒粕の香りを纏う個性豊かな一品。
「燻製した北海道産サクラマスのティエーピド」。
ティエーピドとは「生ぬるい」という意味。
秋田市のMvegeさんのビーツや自家製ナスタチウムをあしらう。
サクラマスは生感を残しふにゅっとした独特な食感。ビーツの甘味と酸味との組み合わせが素晴らしい。クルミオイルが香ばしさを添える。
そしてなんと言ってもズッパ!
水を一切使っていないスープ。たくさんの野菜から滲み出る旨み、甘み、酸味が渾然一体となる。これは美味!
「タリアテッレ 秋田産川ガニとポルチーニ茸のソース」は川ガニの旨みとポルチーニ茸の深い香りが絡まり感動的に美味しい。
「季節の根菜と秋田産真鯛のリゾット」は真鯛の香ばしい香りと旨みがしみしみ、クミンとレモングラスを利かせたエスニックな風味が楽しい。
「秋田産イシモチのムニャイヤ」はマルサラワインをきかせた酸味のあるソース、肝の濃厚感にぐっとくる。
メインの真鴨は大沢郷の戸嶋さんが捕らえた個体。
鴨独特の味わいがほとばしる。フォンを煮詰めたソースがさらに旨みを高める。ナツハゼのピュレの酸味が程よくアクセントを添える。
料理に合わせて出されたフォカッチャと、そばきり長助の蕎麦粉を用いたパンも香り豊かで個性ある仕上がりでした。
白ぶどうのジュースをいただき、お会計は1万円ちょっと。とても良心的なお値段だと思います。
サーブについては最初はテンポよく出していただいていたのですが、次第にお皿の間隔が30分以上空くようになり、色んな意味で内心ドキドキ。
ランチタイムに夜のコースを予約する客は殆どいないだろうし、無理なお願いをしてしまったのでは・・・と申し訳なく。
その後の予定もあったため、お店の方にそのことをお伝えしてからはスムーズに出していただけました。
(その節は本当にありがとうございました)
秋田の食材に繊細に手を加えたお料理たち。食材ひとつひとつが活き、そのエネルギーが豊かに芽吹く。
食材の組み合わせ、火入れ、コースの組み立てなどシェフの創造性と卓越したセンスを感じます。
塩の利かせ具合も見事。
こんなにひと皿ひと皿との出逢いにワクワクするお店は久しぶり!
秋田に煌めく星。
次に秋田を訪れる時もぜひ伺いたいレストランです。
4位
1回
2017/12訪問 2018/01/06
(2017年10月訪問)
昨年の秋は西日本縦断2000kmの旅。
その2日目に訪れたのが岡山県牛窓にある『acca』。
かつて東京・広尾にあって絶大な人気を誇ったイタリアンレストラン。
2013年にご家庭の事情で閉店され、翌年、この牛窓の地で再始動。
移転当時からずっと訪れたいと熱望していたのだが、なかなかご縁がなく。
今回、凄腕の幹事殿が何ヶ月も前から予約を入れて下さり、待望の初訪問!
お店は東洋のエーゲ海とも呼ばれる瀬戸内海を望む絶好のロケーション。
吹き抜けの天井や大きく切り取られた窓。開放感があって清々しい。
この日は窓越しに打ち上げ花火が見え、その光景も相まって胸がいっぱいに。
シェフは林冬青氏。
フルオープンではないが厨房の様子が垣間見え、林シェフの気迫というかその熱量が伝わってくる。
ちなみにお料理の撮影は禁止です(飲み物は撮影可)。
まずはマダム(かな?)と相談して白ワインをボトルで注文。
・MUZIC COLLIO BIANCO(2014)(6000円)
柑橘のような爽やかな風味と仄かな苦み。料理との相性がとても良い。
★平目のマリネとマスカット
一品目でズキュンと胸を打ち抜かれた。
マスカットのみずみずしい甘みに、強く〆た平目の凝縮した旨みが濃密に絡み合う。
この組み合わせの妙!
★渡り蟹のアーリオオーリオ
たっぷりの渡り蟹に薫り高い大蒜を合わせて。
オイリー、ぴりり、うんまい!(すみません、表現力が追いつきません)
★穴子のサルサヴェルデソース
ぷっくらふっくらな穴子はとても良い風味。
サルサヴェルデとはイタリアンパセリ、ハーブ、大蒜、レモン、オリーブオイルなどを用いたソース。
酸味と青みを感じる味わいが素晴らしい。
★胡麻のパン
★茄子のまっくろけ
真っ黒に焼け付けられた茄子。押し寄せる香ばしさ!
茄子は甘みたっぷりでジューシー!
モッツァレラの仄かな塩分が良いアクセントに。
★バジルと青唐辛子とピクルスのパスタ
酸味と辛味のバランスが絶妙!バジルの青々しさが香る。
(内心、「からいいいいいー!!うまいいー!!」と叫んでおりました)
★海老とカワハギのオレキエッテ
パスタ二品目。こちらは仄かな酸味に濃厚な旨味が乗る。そこに豊かなハーブの香り。
★鱸
林シェフのお料理はどれも火の入れ具合が天才的。
この鱸もふんわりと火入れされている。
ソースにはナンプラーとスイートチリ。ビネガーで酸味も利かせてある。
エスニックな香りにときめく。このソースにはやられました。何という美味!
★南の島豚の無花果添え、赤ワインソース煮
良い意味で風味の強い豚。塩の利かせ具合が秀逸。
甘み、酸味、旨みを感じるソース。フルーティな無花果が非常に合う。
★栗のシュークリーム
香ばしいシューに軽やかなクリーム。栗がとろけるような風合い!
シンプルだが奥深い味わいのイタリアン。素材の活かし方、掛け合わせ方はまるで魔法を見ているかのよう。
はっきり言って、好みど真ん中のお料理でした。
「美味しい!!」と思わず声が漏れ出てしまう。自然と笑みが零れる。
夢中でお料理を頬張り続けた幸せな時間。
お会計は12000円ほど。
機会をいただけるのであれば、ぜひ再訪したいお店。
そしてこの後、チームの皆様と南彦根に向けて出発。
旅はまだまだ続くのでした(笑)
5位
2回
2017/11訪問 2017/11/02
(2017年8月再訪)
真夏に待望の再訪。今回も3500円のコースをいただきました。
★湧き水のフォカッチャ
★突き出し:じゃがいも、ヨーグルト、発酵胡瓜
パリパリと香ばしいじゃがいもの器の中に、ヨーグルトと発酵胡瓜、有明海の蛸。
発酵を重ねる面白さ。やわらかな酸味で纏められており、爽やかな味わいが踊る。これぞ夏!というお料理。
蛸はかなり固めの食感でしたが、もう少し柔らかい方が調和が取れるように感じました。
★前菜:フリット、茄子、夏野菜
太刀魚をフリットにして茄子のピューレをあしらったお皿。
さくさくと軽やか!ピューレは酸味が生きていて絶妙なアクセントとなっている。
自家栽培のオクラと茗荷の香りの強さにやはり夏を感じます。
★手打ちパスタ タリオリーニ
細い平打ちの麺に雲仙鶏のソースを絡め、鶏節と赤ワインの粉末をトッピング。
鶏の優しい旨みにスモーキーな鶏節がコクを添える。めっちゃ美味しい♪
★雲仙スーパーポークのロースト
モロヘイヤにくるまれた雲仙スーパーポークは、しっかり固めの肉質。トッピングのニガウリのマリネは、甘酸っぱさと苦さが同居。つぶつぶのソースは、雲仙のこぶ高菜の種を発酵させたものでしっかりとした酸味。付け合わせの玉ねぎが最高に甘く香ばしい。甘みと苦みと酸味をうまく使った一皿。
★口之津焙煎所の珈琲
前回は紅茶と珈琲から選べたのですが、今回は選べなかったのが残念。
でもこの珈琲が大変美味でした。豊かな香り、柔らかな酸味と旨味が広がる。普段珈琲を飲まないわたしでも美味しくいただけました。
★ドルチェ
自家製のフロマージュブラン。地元産の蜂蜜。セモリナ粉のガレット。抹茶のクランブル。
もったりとした食感の濃厚なドルチェ。今回の構成と季節を考えると、冷たくさっぱりしたものがいただけるとより着地がすっきりしたように思われます。
夏らしさをめいっぱい感じられる素晴らしいコース。
今回もハーフサイズのワインコース(3杯)をいただきました。
お会計は3人で14000円弱。
この内容でこのお値段、満足度は非常に高いです。
最後に、これから立ち上がるらしいあるお店の情報もいただきました。まさか長崎にそんなお店が!というサプライズ。
新しい風がまた吹こうとしていますね。今から楽しみ。
(2017年3月訪問)
長崎県・雲仙にあるリストランテ、『villa del nido』。
約1年半前にオープン。
こちらのお店を教えてくださったのは、日本中を食べ歩いておられる食通の方。
その方はあの『カイノヤ』のシェフから情報を得たらしい。
この繋がりがすごいなあ。
畑が広がる緑豊かなロケーション。晴天であればとても気持ちが良さそう。
その中に一際目立つ外観の建物。
店内は14席。洗練された素敵な雰囲気です。
吉田シェフはもともとこちらのご出身。
福岡のお店で修行され、イタリアにも1年いらしたそう。
メニューは昼・夜とも3500円・7000円のコースのみ。
今回は3500円のコースとハーフサイズのワインペアリング(3杯で1400円)をお願いしました。
こちらのお店の特徴は、何と言っても地産地消。
この地で生まれたものを大切にしていこうというシェフの思いがぐいぐい伝わるお料理たち。
突き出しはセモリナ粉とイカスミの黒く薄い生地で甲烏賊をサンドしたもの。
ねっとりとした烏賊の食感とやや硬めの生地とのコントラストが楽しい。
コースの始まりがこのお料理。きゅんとくるぜ。
そこからのコースの流れは本当に素晴らしかったのだけれど、特に印象に残ったのは前菜と肉料理。
前菜は「アスパラ、卵、雲仙こぶ高菜」。
アスパラは奥様のお母様が作られたもの。
それをフリットにして海老のマリネをあしらい、この辺りで古くから採れるというこぶ高菜のピクルスをトッピング。
下には70℃のスクランブルエッグの滑らかなソース。
地産の胡麻油が香りを添える。
野菜の甘み、海老や卵の旨み、こぶ高菜の酸味が見事に調和したぐっとくるひと品!
やばい、めっちゃ美味しい♪(笑)
肉料理は「雲仙スーパーポークのロースト」。
しっとりした柔らかさの奥から甘みのある脂が染み出し、火入れの妙を感じさせる。
う、旨い・・・。
ソースは様々な野菜を合わせてペーストにしたもので非常に面白い。
酸味が勝っているがこれが抜群に肉に合う!
そして付け合わせの野菜が瑞々しく旨みに溢れる。
大地の力を感じるよね。
お料理の素晴らしさをさらに高めてくれたのがワイン。
自然派のものを提案してくださったがハズレがなく、ご主人の確かな感覚が窺われた。
特に肉料理に合わせた赤は燻製をかけたような深い香り。
この香りが豚肉にベストマッチ!
食材の掛け合わせにセンスがあり、ひと品ひと品にときめく。
お料理は季節ごとに変えていかれるそうだが、その時々に入る食材によっても変わるらしい。
長崎の光と風を感じられるお料理。
またぜひ訪れたい名店。
6位
1回
2017/12訪問 2018/01/06
(2017年11月訪問)
2年前に秋田を旅した際、現地の方々が口を揃えておっしゃっていたこと。
「ぜひ新米の時季に来て下さい。きりたんぽがすごく美味しいから」。
(ちなみにその時は6月の旅でした)
それ以来、ずっと新米が出る時季に秋田を訪れたいと思い続け。
昨冬、絶好の時季に秋田を旅する機会を得たのでした。やったぜ☆
今回訪れたのは大館にある『昔のきりたんぽや』。
あの『美味しんぼ』でも取り上げられたことのあるお店です。
こちらのサイト(http://www.nagateku.co.jp/navi-kb/001085/02/1/)によると、
・備長炭で焼き上げた手作りきりたんぽ
・大館産比内地鶏のガラのみを使って8時間かけてとったスープ
・大館産のネギ・セリ・ゴボウ、比内町の特別仕立ての生の比内地鶏肉を使用
とのこと。
ちなみに訪れたのは11月11日。何ときりたんぽの日なのだそう。
素晴らしいタイミングでの訪問となりました。
メニューはきりたんぽ鍋(1人前2000円)と比内地鶏のたたき(1500円)のみ。
こちらを事前に予約。
お店に入った瞬間、お出汁の甘い香りがします。うっとり。
店内は小上がりに4人がけのテーブル4卓。
どこか懐かしい雰囲気。落ち着くなあ。
最初に出てくるのは突き出し3品。
なます、とんぶりと長芋、いぶりがっこ。
秋田らしい突き出しを楽しみつつ鍋を待ちます。
そしてきりたんぽ鍋が登場♪
ぐつぐつと音を立てる鍋。何ていい香り!
スープを啜ると比内地鶏から出た力強い旨味と脂がじゅわわわーっと口いっぱいに広がります。
う、旨い・・・!!
つゆはやや甘め。牛蒡や舞茸の風味が利いていますね。
様々な野菜から香りと旨みが沁みだし、鶏の旨味とあいまってめっちゃ幸せな味わい。
きりたんぽは新米を使用。
新米ならではの甘みが感じられ、もったりもっちりしていて噛み応えがある。
ここにお出汁が沁みるとこれまた旨い。
鶏のたたきはもも肉と胸肉。
もも肉、すごい弾力ですね。ぶりんぶりん!
肉自体の旨みが強く、じゅわっと滲み出る脂も香ばしい。
胸肉の方はしっかりした繊維質。こちらも比内地鶏の濃く強い味わいが感じられます。
きりたんぽ鍋も鶏のたたきも絶品。
今の時季、秋田でしかいただくことのできない極上の美味。
思い出す度に幸せな気持ちになれる、2017年の鍋オブザイヤー☆
この後は雪の降る中を乳頭温泉郷へ。
お鍋に温泉、秋田を満喫した1日でありました。
7位
1回
2017/12訪問 2018/01/08
(2017年4月訪問)
名古屋にある日本料理店、『八泉』。
木曽福島の『わらび野』のご主人にご紹介いただいて以来、ずっと気になっていたお店。
昨年春、三重を旅した帰路に名古屋へ立ち寄ることとなり、ここぞとばかりに訪問。
お店は本山駅から歩いて10分ほど。
カウンター5席、テーブル2卓のこじんまりした設え。
今回は2万円のコースをいただいたが、まさに圧巻の美味。
旬の食材をふんだんに取り入れた、季節感溢れるお皿たち。
そして食材の持ち味を最大限に引き出す熟練の調理技術。
こういう書き方をするのも何ですが、キレッキレのお料理です。
最初に供されたのは蕗の薹のお茶。いい香り♪
一皿目は鮑のお料理。うすい豆とすりつぶしたお豆腐を合わせてあります。
鮑の旨みを出汁が支え、見事な調和をみる一品。割としっかりした味つけですね。
お造りは車海老、海胆、平目。筍と菜花が春の香りを添えます。どれもほどよい寝かせ具合。
白眉だったのは八寸。
氷蒟蒻の胡麻和え、春菊荏胡麻、椎茸人参、白和え、焼き筍、まな鰹の柚庵焼き、烏賊の海鼠腸焼き、百合根の木の芽味噌和え。
何という美しい彩り。一品一品に繊細に手が入っており、それぞれが非常に美味。熟練の技を感じます。
お椀は蛤の深い旨みと豊かな香りがいっぱいに広がる。シンプルなようで奥深い一品。
〆は筍と生姜のご飯。
最後に素朴な味わいのご飯というのがとても好ましい。
筍がめっちゃいい香り!そこに生姜の風味がきりり。
唯一残念だったのはご飯の水分が過多だったこと。
お食事を終え、思わずほうっと幸せな溜め息が漏れ出る。
筍と山菜と貝づくし!
春を全身で感じさせてくれるお料理。
お箸の国のひとだもの。和の食材に丁寧に手を入れ、季節の香りを美しく乗せたお皿にやはり胸を打たれます。
ご主人は一見厳い見目でおられますが優しげな雰囲気が滲み出ておられ、お料理にもそのお人柄がよく出ておられます。
お酒をそこそこいただいて、お会計は29000円ほど。
ややお高めですが、その価値のあるお料理だと思います。
このお店に伺うために名古屋へ行きたいと言っても過言ではない。
是非季節を替えて再訪したいお店です。
(と思いつつ名古屋とのご縁が薄くなかなか伺えていないのでした。うう、無念)
8位
1回
2017/12訪問 2018/01/10
(2017年7月訪問)
昨年の夏は東北縦断2000kmの旅。
最終日に訪れたのは福島県いわき市にある『Hagiフランス料理店』。
3年前に旅行で訪れて以来のいわき、懐かしさがこみあげます。
こちらは萩春朋シェフが腕を振るうフレンチレストラン。
2011年の震災前までは多くのスタッフとともに洋食店を営んでおられたそう。
震災の影響で店を閉じた後、こちらのお店をオープン。
人件費を抑え、できる限りお客に還元したいとの思いからご夫婦のみで切り盛りしておられます。
こちらのお店の素晴らしさ。それはシェフが地産の食材に深い愛と誇りを持っておられる点。
地元の生産者の方々と繋がり、福島の食材の魅力を余すことなくそのお料理の中に表現しておられる。
客は1日1組のみ。
お料理のベースはクラシカルだが、エスプーマや液体窒素を用いたガストロノミックな手法も駆使されており個性的。
お料理が運ばれる前に、食材と生産者の方について紹介されたカードがテーブルに置かれる。
食材についての知識を得た上でお料理をいただけるのがとても楽しく嬉しい。
今回、事前に幹事殿が予約したのは1万円のコース。
前菜から数品の流れは感動的。
野菜を使ったお料理が特に素晴らしかった。
一品目、「生木葉ファームの空豆、千葉の車海老と赤海胆、福島牛のコンソメのエスプーマ」。
無農薬の空豆を急速凍結して保存したものを使用。
空豆の瑞々しい甘みと苦みに、コンソメの泡、海老と雲丹の旨みが重なり合う。海と大地の融合。
めっちゃ美味しい!(笑)
二品目は「会津のホワイトアスパラ、自家製モッツァレラ、グレープフルーツのソース」。
酸味を帯びた香りがふわっと立つ。
ファームつばさの牛乳で作った自家製モッツァレラ。剣先いかの炙り。液体窒素を用いたグレープフルーツのソース。
香ばしい烏賊に種々のハーブ。紫蘇の香り。
これだけ様々に食材が重なっているのに、アスパラの瑞々しさと旨みの強さが際立つ。
グレープフルーツのソースが華やかな酸味を添え、その酸味が全体を纏めている。
三品目は「北塩原の蓴菜、鱧とトリュフのスープ」。
北塩原の蓴菜は小ぶりだがゼリー部分が大きい。雪から身を守るのでそうなるのだそう。
スープの下はフラン。強い旨味を感じる。トリュフも香る香る♪
素材それぞれの香り、旨みが立っているがうまく調和しているのが素晴らしい。
この三品で思ったこと。
様々な素材を掛け合わせつつ、それは全てメインとなる野菜を際立たせる仕掛け。
ちゃんと野菜が主役になってるの。
1本、真っ直ぐに芯が通ったお皿たち。
さらに魚、肉料理を経て、最後に出てきたのはかき氷!!
まさかかき氷が出るとは思わず、カキゴーラー肉子、不意を突かれました(笑)
四代目徳次郎の天然氷と古山果樹園の桃を用いたかき氷。
濃厚で甘みの強い桃のソースと果実がたっぷり。美味しい!
氷は粒状の削りで蜜が染みると非常にしっとりといい塩梅。ただ下の方は再結晶していたのが残念。
これはもう主食になりうるボリューム。もう少し量が少なめだと嬉しゅうございます。。
桃のジュースと、白、赤を1杯ずついただき、お会計は15000円ちょっと。とても良心的。
またぜひ訪れたい、地産地消の素晴らしいレストランです。
※余談ですが、萩シェフは昨年、NHK『ガッテン!』のジャムの回にご出演されました。
シェフが作っておられるジャム、絶品です!瑞々しく濃い果実の味わい。ビートグラニュー糖の優しい甘み。
ジャム好きのそこの貴方、ぜひ一度ご賞味あれ♪
9位
1回
2017/10訪問 2017/10/30
(2017年7月訪問)
今年の夏に沖縄を旅した際、もっとも感銘を受けたお店がこちら、『潭亭』。
八重山料理のお店として知られています。
八重山諸島とは、石垣島、西表島、与那国島、竹富島を中心とした32の島々を指し、沖縄本島とは異なる独自の食文化の歴史があるらしい。
今回の旅では琉球料理の名店『美榮』も訪問し、改めて沖縄の食文化の独自性と豊かさを感じさせられました。
お店の場所は儀保駅からは歩いて10分程度ですが、虎頭山の高台に位置しており、辿り着くまではやや大変。
訪れたのはちょうど日没前の時間帯。美しい夕焼けに浮かぶ那覇の街並み、遠くには那覇港、そして正面には首里城が見渡せる素晴らしい眺望。
こちらはご夫婦お二人で切り盛りしておられます。
お料理は奥様の宮城礼子さんが、配膳と接客をご主人の宮城信博さんが担当。
ご主人のお声がとっても素敵♪お料理の説明も丁寧にしてくださいます。
夜のお料理は「八重山会席」(7560円、8640円、10800円、21600円)と八重山東道盆(16200円)がありますが、今回は10800円の八重山会席を予約。
店内はテーブル4卓とテラス席。後で気付いたが個室もあるよう。
今回は首里城が臨める窓側のお席へ。
★前菜
ハイビスカスの泡盛、豆腐よう、ゴーヤのゼリー、八重山味噌、ヘチマ。
豆腐ようのチーズのような濃厚なまろやかさにうっとり。
ゴーヤのゼリーは苦みは仄かで爽やかさが前面に出た造り、ヘチマの美しいとろーり感。
★炊き合わせ
オオタニワタリ、島人参、胡椒の葉っぱが入ったがんもどき、かぼちゃなど。
お出汁は、野菜や昆布、椎茸を煎じて取り、「塩味・甘み・酸味」の三味を基調としているのが特徴なのだそう。
このお出汁が素晴らしい!豊かな旨味が乗る。
★どぅるわかしー
ねっとりもったりとした田芋の中に豚肉や椎茸が織り込まれている。
出汁の旨みが際立つ。心を揺り動かされる美味しさでした。
★苦菜の白和え
★ジーマーミ豆腐
ぷるるんと撥ねるような食感。
タレが程よい塩分で落花生の風味を上手に活かしている。
★お漬け物の盛り合わせ
大根、きゅうり、梅がつお、島らっきょ、パパイヤ、甘草、ゴーヤ、生の長命草。
甘味と深い旨味。それぞれに絶妙で丁寧な漬け具合。
★落花生のお椀、はんだま
この日最も感動した一品。
落花生の甘みと香り。そこに出汁の旨味が絡まり合い、素晴らしい塩梅となっている。何て美味しいの。
★こういかの燻製、わさび菜
これは石垣風の食べ方なのだそう。ほんのり燻製。わさび菜の苦みと相性抜群。
★近海ものの鮪
旨味が綺麗に乗っている。処理が良く臭みが全くない。「寝かせてあるんですか?」とお聞きしたら必然的にそうなるのだそう。
★みぬだる、八重山蒲鉾、かじきの昆布巻き、素揚げした田芋
みぬだるとは、豚肉に黒胡麻をつけて蒸したもの。昆布巻きは八重山地方では必ずかじきを使うのだそうです。
素朴だがしみじみと旨い品々。
★菜飯(さいふぁん)
様々な野菜と鶏肉が美しく盛られたご飯。
これがもう、〆として最高!めっちゃお出汁が生きてる!椎茸の香りがふわっと立つ。
★パッションフルーツとパイン
甘く瑞々しいフルーツ!
こちらでは、食材の多くを石垣島から取り寄せておられるのだそう。
その扱いには卓越したものを感じます。
どのお皿を取っても静かな感動がそこにある。
伝統的な琉球宮廷料理ともまた異なるお料理たち。
古くから伝わる伝統料理は定式を大事にし、そこから変化することをむしろ避ける方向なのかと思っていたけれど。
こちらのお料理は八重山地方の伝統料理をさらに洗練させ、オリジナリティを打ち出したお料理なのだと思われます。
沖縄最後の夜に、こちらのお店を訪れることができて本当に良かった。
ここまでの間に何軒か巡ってさまざまな沖縄の食材や調理法に触れていたため、こちらのお料理の独自性や素晴らしさをより感じられたように思います。
次に沖縄を旅する時も、ぜひ訪れたい名店。
10位
1回
2017/12訪問 2017/12/17
(2017年5月訪問)
ソフトクリーマー肉子の旅。
今年も様々な地方を巡りソフトクリームを食べ歩きました。
加齢とともに食べられる量が減り、以前は1日5本食べても平気だったのですが、最近は1日1本がやっと。
そろそろソフトクリーマーも引退だなあと思う今日この頃。
そんな2017年、もっとも感銘を受けたのは長野県安曇野市にある『北アルプス牧場』のソフトクリーム。
HPによると、新鮮な生乳を牧場の加工所でノンホモ低温殺菌処理したものを使っておられるとのこと。
市販の牛乳のほとんどは乳脂肪中の脂肪球を細かく砕き、 安定した状態にする均質化(ホモジナイズ)を行っているが、ノンホモ牛乳というのはその処理を行わず、牛乳の中の乳脂肪をそのままにしてあるものを指すそうです。
乳には詳しいつもりでいたが、まだまだじゃのう~。
・北アルプス牧場牛乳ソフトクリーム(320円)
表面に細かな凹凸があり、見るからに他のソフトクリームとは異なっている。
口に含むと非常に軽やか。牛乳の自然な旨みと甘みが伝わります。余分なものが入っていない美しい味。
コーンも軽くさくさくです。めっちゃ美味しい!!大満足!
ソフトクリームにはりんごのコンポートなど色々トッピングもできるらしいが、そうするとコーンではなくカップになってしまうので今回は断念。
ほら、ソフトクリームってやっぱりコーンで食べたいし(笑)
店内にはこちらで作られたチーズなども売られておりお土産品を選ぶのにも困りません。
この後も牧場系ソフトを何本かいただきましたが、こちらのソフトは卓越した美味しさがありました。
美しい青空、澄んだ空気の中でいただくソフトクリームは格別。安曇野にお越しの際はぜひ。
店名しりとりを続けながら、ようやく1000レビューを達成した2017年。
滋賀を中心に、沖縄、岡山、三重、岐阜、福井、新潟、長野、そして東北。昨年以上に全国を旅して食べ歩きました。
1人でも、2人でも、大勢でも。やっぱり旅って素晴らしい♪
どの旅も心に深く刻まれていますが、その中で特に胸を打たれた10店をピックアップしました。