8回
2026/01 訪問
正月ラーメン+チャーシュー丼+ハートランド
1月2日に、豪華なお雑煮のような正月限定ラーメンを戴きました。丸みを感じる正月にぴったりの醤油系スープで、ハーブ等を使った味変マジックもあり、最後まで美味しく感じました。お餅は揚げ焼きしてたのかな? 油でコーティングされてる様でスープを急には吸わないから濁らず、時間差で餅の甘味が出て来ました。前半はラーメンの具として楽しめ、後半はスープに厚みが出ていたと思います。食べ始めから終わるまで味の変化を楽しめるshizukuマジックは今年も健在だと思いました。海老頭は香り高く祝祭気分を盛り上げていましたし、蓮根や牛蒡の根菜類、青菜や花には、懐石料理のような流れを感じました。また、いつもの大葉ペーストのお蔭なのか、後半になってもスープを軽く感じました。正月に食べるのに相応しい一杯だと思いました。shizukuの限定はいつも大当たりですが、今回の正月限定ラーメン1,700円も、この値段では考えられないくらい驚きに満ちた作品で、とてもリーズナブルだと思いました。今年の外食の食べ初めでしたが、令和八年も美味しいものを戴けそうな予感がします。前払い・来られなかった時の返金なしで良いから、自由な発想の限定も続けて貰えると嬉しいですね。
2026/01/14 更新
2025/12 訪問
蟹ビスクラーメン + シャリアーピンのチャーシュー丼
2025年最大の発見だったshizukuで、蟹ビスク・ラーメンを戴いた。僕にとっては今年の外食の、食べ納めメニューだ。期待を裏切らない作品で、満足しただけではなく、その後数日にわたって身体の調子が良い。良い食事を取ることは、健康であり続けるのに一番効果があると実感できる一品だった。「新しい御馳走の発見は、人類の幸福にとって天体の発見以上のものである」とは、ジャン・アンテルム・ブリア=サヴァランの言葉だが、shizukuで戴くご馳走は、僕にとっては間違いなく、新しい天体だと思う。
なぜ美味しかったのか。年末なので、少し考えてみた。注文したのは、蟹ビスク・ラーメンとシャリアーピン・チャーシュー丼。そもそも蟹ビスク・ラーメン自体、挑戦的で、攻めたメニューだと思う。ビスク(bisque)とは、甲殻類(海老・蟹・ロブスターなど)の殻を主素材として抽出した、濃厚で脂質を含むスープのこと。このスープの主役は、身ではなく殻。旨味・香り・色素(アスタキサンチン)は殻側に多い。一度ローストするか炒めることで、メイラード反応と脂溶性香気を引き出し、さらにバターや油、生クリームなどの脂質と乳化させて味に拡がりを出す。西洋的な殻の出汁だが、同じビスクでも、海老のビスクと蟹のビスクは性質が大きく異なる。海老は小型甲殻類なので殻が砕けやすく、抽出効率が高い。香りが前に出て、甘味が明確、クリーミーさとの相性も良い。分かり易く、簡単に美味しいビスクになる。言い換えると、海老の殻や頭には、揮発性香気成分や甘味アミノ酸、比較的単純な旨味構造が多い。そのため、作りやすいし、失敗しにくい。一口目が非常に美味しい。しかしその代償として、味の情報量が早く出尽くしまう性質があるらしい。スープ単体、前菜、少量なら理想的だが、ラーメンに使用すると、後半が単調になりやすい。味が消えたり旨味がなくなったりする訳ではなく、味のピークが早くやって来て、その後、味の変化が起きないから、最初から最後まで同じ表情で、途中で驚きがなく、後半重く感じてしまうというのだ。
一方、蟹の殻や身はミネラル成分が多く、苦味と渋味が微量に含まれるし、香りは抑制的で、脂に強く依存する。雑味管理が難しく、制御された設計で初めて成立するビスクだ。高度な技術で難関を突破すれば、香りは後追いで出て来るし、旨味が段階的に感じられる。つまり口中で変化が起き続けるのだ。特に重要なのは、後半に旨味だけが残ること。高い技術を要するが、成功すれば、ラーメンのスープとしては理想的だ。何故ならラーメンを食べるという行為は、一篇の物語を読むのと同じで、食べ始めから食べ終わりまで、それなりの時間を要するし、その間、塩味や油分、麺との絡み、スープの温度低下の中で物語が進行するからだ。脂質がスープの輪郭を保ち、乳化により温度低下でも味が壊れず、殻由来の旨味が麺のデンプンと結合し、香味野菜やスパイスが後味の逃げを作る。shizuku の蟹ビスク・ラーメンが特に美味かった理由は、上記の点に加え、スープ表面の油膜が薄く均一で、過剰な重さがなかったことにもある。蓮根と南瓜のローストによる食感と香りのリズム、トマト系の酸味による味の焦点とリセット、ハーブを粉砕せず刻むことで香りが瞬間的に立って消える設計——そのすべての結果として、濃厚だが飲み疲れせず、最後の一口が軽い作品が成立していた。何と言うか、天才としか言いようがない。
一緒に注文したシャリアーピン・チャーシュー丼も、蟹のビスク・ラーメンととても良く合っていた。これまでも他の限定や定番のラーメンと組み合わせて美味しく戴いてきたが、今回は特に相性が良かった。
シャリアーピン丼の肉の脂、玉ねぎの甘味、醤油の輪郭は系統が異なるためか、繊細なバランスで成立しているビスクの甘味と喧嘩せず、どちらも重くならずに軽く感じられた。
2025/12/31 更新
2025/12 訪問
限定 煮干しラーメン
限定の煮干しラーメンを2日連続で戴いた。shizuku の限定を戴く時はいつも、新しい味を知る驚きを感じるのだが、今回も例外ではなく、いわゆる「煮干しラーメン」とは一線を画す繊細な料理を体験できた。初日の驚きが記憶に新しい翌日、店の前を通りかかると「限定煮干しは今日まで」と看板に出ていたので迷わず入店した。煮干しの個性を強く前面に押し出しながらも、味の荒れを精緻に制御した一杯だと思った。煮干しの香りは前面に立つが、苦味や金属的なニュアンスが突出する手前で抑えられ、出汁の輪郭は一貫して繊細に整っている。煮干しを強く出すことと、粗くすることを意識的に切り分けた設計が見て取れた。スープは濁りすぎない褐色で、魚介の旨味が支配的でありながら、後味に重さを残さない。チャーシューの下には、とろろ芋の摺り下ろしが忍ばせてあり、そこに山椒オイルが混ぜ込まれているようだ。これは味を足すためというより、煮干しの角を粘性と微細な痺れで受け止めるための構造的要素なのだろう。脂や乳化に頼らず、舌触りと香りのレイヤーで出汁の当たりを調整する手法は、ラーメンというより料理的な発想に近いと思った。序盤は煮干しの存在感を明確に提示し、中盤以降に口当たりがほどけていく構成が巧みだ。麺はやや太めで不揃いな形状。過度な滑らかさを避け、煮干しの密度をしっかり受け止める弾力と加水に設定されている。啜った瞬間にスープと一体化し、煮干しの旨味を的確に運ぶ点で、この一杯のスープ専用といえる。ワンタンも印象的だ。皮は薄く、主張は控えめだが、中の餡にはシャリッとした歯触りがあり、紫蘇の葉と思われる香味がアクセントとして効いている。煮干しの世界観を壊さず、むしろ一瞬の清涼感を挟み込む役割を果たしており、単なる具材以上の意味を持つ。ここでも「足す」のではなく「流れを変える」ための配置がなされている。チャーシューは複数の表情を持たせつつ、いずれも煮干しの塩味と拮抗しすぎないバランスに留められている。紫玉ねぎや青ネギは揮発性の香りで輪郭を補強し、岩海苔は煮干しと同じ海の文脈を静かに補完する。総じて本作は、煮干しの個性を最大限に引き出しながら、ラーメンとしての品位を失わない一杯である。とろろ芋と山椒、紫蘇を用いた香味設計により、食後感まで見据えた構造が与えられており、限定メニューという枠を超えて、店主の思想と技術水準の高さを明確に示す提示となっているように感じた。
2025/12/24 更新
2025/12 訪問
チュクミラーメン チャーシュー丼(葱塩大蒜ソース)
チュクミは、韓国でよく食べられるヒメダコのこと。 以前チュクミポックム(チュクミ炒め)を、韓国家庭料理店で食べたことがある。手のひらに乗る小さなタコで、食感は柔らかく、甘味があり、コチュジャン・唐辛子・生姜・ニンニクとの相性が抜群だった。shizukuは、韓国では春の味覚とされている食材と韓国式調理法を自然な形で取り入れ、品格ある「日本の」冬のラーメンに仕上げている。味わい深く、驚きと気付きに満ちた一杯だった。美味しかった。卵の黄身が印象的な葱塩大蒜ソースのチャーシュー丼も、チュクミのスープに良く合っていた。
2025/12/10 更新
2025/10 訪問
牡蠣塩ラーメン 牡蠣和え玉 ハートランド・ビール 採れたて小松菜
ハートランド・ビールにサービスで付いてくる鶏チャーシューが美味しい。これだけでも至福のひと時だ。本当にお得。他に採れたて小松菜を摘まみながら、ラーメンの出来上がる様子を見るのが楽しかった。心地良い酔い加減になったところへ、限定の牡蠣塩ラーメンが到着。牡蠣の旨みのスープが格別な味わいだ。岩のりや牡蠣ペーストなど、トッピングされている食材のそれぞれが、このスープとエッジの効いた麵の絡み合いに参戦して来る。まるで美しいオーケストラの響きのように、それぞれが個性的で複雑な物語を語り、素晴らしいハーモニーを聴かせる。もちろん主題は、牡蠣の旨みだ。ワンタンに入っている柑橘の爽やかな香りが、一瞬のうちに、見えている景色を変える。驚きの連続である。追加で入れる牡蠣和え玉は、アンチョビ・バターの香りが素晴らしく、それだけで食べても美味いが、替え玉として残ったスープに入れると、再び物語の第二章が始まる。想像力を刺激する絶品に出会った気がした。
2025/10/24 更新
2025/09 訪問
辛いラーメン
限定の「辛いラーメン」は、そんなに辛くなかった。麻辣(痺れ+辛さ)で感覚の誤作動を楽しむ四川・成都式の担々麺などと違い、海老の旨味を良く感じられるように最適化した結果、辿り着いた辛さのような気がした。あくまで主観だが、自然な味覚の追求の先にある境地だからこそ、一口スープを口に含むと、滋味深く、飲む度に元気が湧いてくるのではないかと思った。実に特別なスープだった。それにも増して特筆すべきは、トップに鎮座する海老の見事さである。今年、懐石やフレンチを含むあらゆるジャンルで食べた「海老料理」の最高峰だった。
私見だが、海老の最大の特徴は天然の甘味と強い旨味が共存していることにあると思っている。甘味は筋肉中のグリシンやアラニンなどのアミノ酸に起因し、旨味はイノシン酸やグルタミン酸、核酸系の成分が豊富な事による。この二つが熱で引き出されると、口の中で、とろけるような甘さと濃厚なコクが生まれる。しかし海老の筋肉は熱変性にとても敏感で、ほんの数度の温度差で、甘味、香り、食感、色、汁気のすべてが変わってしまう。つまり海老料理では、熱のコントロールがすべてを決して仕舞うと言っても過言では無いと、僕は考えている。
今回shizukuで戴いた辛いラーメンに載っていた海老の火入れの具合は本当に絶妙で、海老の甘味と旨味を余すところなく引き出していた。特に海老みそ(海老の頭の中の濃厚な部分)の具合が最高だった。海老みそは、海老の肝膵臓、つまり肝臓と膵臓が一体化した臓器だが、消化酵素を分泌し、栄養を貯蔵・代謝し、毒素を分解する役割を持つ。海老が食べたものの旨味成分の集積地なので、濃厚でコクがあり、香り高い。海老みそには、グルタミン酸・イノシン酸・グアニル酸の三大旨味成分が揃っている上に、脂質が多いため、舌にまったりとしたコクが残る。そこに少量の苦味成分(胆汁酸・金属イオン由来)が混じることで、甘味・苦味・旨味の三層構造ができあがる。海老みそは、舌に乗せるとまずグルタミン酸・イノシン酸などの濃い旨味が広がり、次に甲殻類特有の甘苦さがやって来る。香りは、海のミネラル香・甲殻香・ナッツ香が混じったような複雑なもの。焼く・煮る・炒めることで、香りの層がどんどん深くなる。つまり生のままだとクリーミーで甘いが、加熱すると脂質の酸化とアミノ酸のメイラード反応により、芳ばしくナッティーに変化する。shizukuの海老は身の部分と頭で火入れの度合いを変えているように推察するが、海老みそに関しては生に近い地点から香りが立つぎりぎりの地点まで加熱されているように思えた。強い甘味と上品な香りが、高度で繊細な火入れの技術を示していたように感じた。
shizukuの辛いラーメン、名品です。
2025/10/06 更新
2025/08 訪問
3種のチャーシューと味玉の塩ラーメン+チャーシュー丼シャリアーピンソース
昔別のラーメン屋があった所に、新しい店ができていた。3ヶ月前の5月25日に開店したそうだ。
店に足を一歩踏み入れた瞬間から、何か良いことが待っているような予感があった。3種のチャーシューと味玉の塩ラーメンとチャーシュー丼シャリアーピンソースを注文。女性店主が茹で上がった麵を丼に盛り付ける美しい所作を見ているうちに、期待はいやが上にも高まった。チャーシュー丼と麵の丼が運ばれ、その凛とした佇まいに、しばし陶然とする。先ずはスープを一口味わう。複雑で、美味しい。かための麵がスープによく絡む。しっとりした鶏肉を始め、乗っている具材のすべてに丁寧な仕事がしてある。炭火焼きの肩ロースの叉焼には大葉のペーストも載っていて、食べている最中に味変が楽しめる仕掛けだ。極めて完成度の高い一杯だと思った。大変感銘を受けた。シャリアーピンソースのチャーシュー丼を残ったスープと一緒に戴いたが、これも特筆すべき出来映えだった。わざわざ旅をしてでも行くべきレストランの一つです。
2025/09/01 更新
限定の「とんこつラーメン」は塩か醤油が選べて、替え玉が一つ無料で付いてきます。shizuku らしく、ハーブや野菜など様々なアイテムが入っていて、最後まで味の変化が楽しめます。アイテムにはそれぞれ丁寧な仕事がしてあり、刻み方一つとっても繊細な技を感じます。このクオリティで、しかも熱々の替え玉が後で付いてきて、1200円。この価格で、こんなに美味しいものを、お腹いっぱい食べられるとは驚きました。大満足です。