2回
2025/12 訪問
カジュアルコースA+中国茶3種
◆前菜十品
レイ家菜の代表作 翡翠豆腐
西太后の精進料理 人参の炒め物
初代レイ子嘉考案 牛肉のスパイス焼き
レイ家秘伝 鱈のスパイス揚げ
清朝宮廷料理番 豚三枚肉の燻製
海老の黄金巻き揚げ 京劇太鼓仕立て
龍を模った 胡瓜の和え物
北京の名菜 麻豆腐
雛鳥とレイ家の葱 ・ 山椒ソース
老北京の常備菜 白菜の芥子漬け
◆主菜三品
・レイ家秘伝北京ダック
・オマールエビの甘酢炒め 宮廷スタイル
・豚肉と白菜の煮込み
◆甜品
・豌豆黄の羊羹 宮廷スタイル
・無形文化財 レイ家ヨーグルト
ノン・アルコールの日だったので、中国茶を三種、最初から最後まで楽しみました。
①文山包種 台湾新北市の文山地区で作られる最も発酵度の軽い烏龍茶。
②特製薔薇茶 新鮮なハマナス、メイクイ花とライチ紅茶を独自ブレンドしたオリジナルの薔薇茶
③龍井茶 浙江省杭州市を産地とする中国緑茶で、中国十大銘茶
コースは前菜十品から始まります。
①翡翠豆腐は、西太后が愛した翡翠の色を写した料理として知られますが、実際に印象に残るのは、その舌触りの穏やかさです。枝豆と貝柱という比較的身近な素材を用いながら、蒸すという工程で角を削ぎ落とし、味の輪郭を柔らかく整えています。視覚的象徴性を持ちながら、味はあくまで内向きで、静かに身体に入ってくるのです。
②精進料理として供される人参の炒め物も同様です。西太后が仏教徒として月に二度口にしたとされる料理ですが、禁欲的というよりは、むしろ滋味に満ちている。弱火での調理により、人参の持つ甘みが前面に現れ、素材そのものが持つ栄養と味覚が結びついていると思います。
③牛肉のスパイス焼きは、宮廷料理が異文化と向き合った痕跡を伝える一皿のようです。本来、豚肉文化であった中国において、宗教的理由から豚肉を口にできない客人のために考案された料理だという背景は、味の設計にも反映されている気がします。香辛料は刺激を与えるためではなく、牛肉の繊維と香りを整理するために使われ、結果として料理全体は驚くほど穏やかな印象です。
④北京本店では川魚・桂魚を用いるというスパイス揚げは、日本では鱈に置き換えられています。
再現ではなく翻訳。鱈は桂魚に近い性質を持つ魚として選ばれ、揚げの工程も軽やかで、油脂の重さをほとんど感じさせません。素材の置換が思想の逸脱につながっていない点が、素晴らしいと思いました。
⑤皮付きの豚三枚肉を用いた燻製は、お店の説明書によると、脂を削ぎ落とすことによってこそ成立する料理のようです。蒸す、茹でるという工程を繰り返し、余分な脂肪を徹底的に除去したうえで、皮下に残る上質なコラーゲンだけを活かす。この一皿は、味覚以上に身体感覚に作用し、「満足」と「軽さ」が同時に成立する料理だと思いました。
⑥⑦⑧京劇の太鼓を模した海老の黄金巻き揚げ、一本の胡瓜から成形される昇龍の胡瓜和え、切り株に見立てられた白菜の芥子漬け――これらはいずれも高い包丁技と造形性を備えていますが、決して技巧が前に出ることはありません。造形は象徴であり、象徴は祈りです。長寿、調和、循環といった観念が、味覚の背後で静かに息づいていると思いました。
⑨⑩麻豆腐や雛鳥と葱・山椒ソースに至っては、発酵や香辛料といった中国料理の核となる要素が、刺激ではなく身体調整のために用いられていることがはっきりとわかります。山椒は辛味としてではなく代謝を促すために、発酵はコクを誇示するためではなく免疫や循環を意識して設計されていると感じました。
主菜の一品目は、厲家秘伝の北京ダックです。北京ダックというと皮のみを味わう印象が先行しがちですが、こちらでは肉の部分もきちんと供され、鴨という食材を余すところなく味わえる構成になっていました。食材を無駄にしないという宮廷料理本来の倫理が、自然な形で表れているように感じられます。鴨の皮は香ばしく焼き上げられ、鴨肉はジューシーで柔らかく、火入れの確かさが際立っていました。一方で、肉や野菜を包む薄餅(包む皮)は、蒸したてなのか驚くほどもちもちとした食感で、生地としての完成度の高さが強く印象に残りました。
続くオマール海老の甘酢炒めは、まず提供時のプレゼンテーションが印象的でした。香ばしく揚げられたオマール海老は、山葱や大蒜を加えた油ベースのソースでまとめられ、そこにごく控えめな酢が加えられています。甘酢と呼ばれながらも、甘味や酸味が前に出ることはなく、あくまで甲殻類の香りと旨味を引き立てていました。西洋の高級食材を中華の文法に収める技術の確かさを感じました。
三品目の豚肉と白菜の煮込みは、今回のコースの中でも特に印象深い料理でした。老鶏から取られた澄んだスープを基準に、豚肉と白菜という極めて簡素な素材が、時間をかけて調和しています。派手さはありませんが、滋味は深く、食後に身体の軽さが残る点が印象的でした。
食事の終盤に供された甜品二品も身体を整えてくれそうな品でした。まず供された豌豆黄の羊羹は、えんどう豆の澱粉質を生かした、きわめて抑制の効いた甘味です。舌にのせると、豆由来の穏やかな甘さがゆっくりとほどけます。厲家のヨーグルトは、騎馬民族の伝統に由来する甜品であり、一般に想像される発酵乳製品とは異なります。実際には発酵を行わず、牛乳に酢・砂糖・白ワインを加え、オーブンで蒸し焼きにするという独自の製法によって仕上げられ、材料の配分と火入れの加減はきわめて繊細で、この技術は中国の無形文化財として継承されているそうです。口に含むと、酸味は驚くほど柔らかく、乳の輪郭だけが静かに残ります。添えられた薔薇の花びらは、西太后が好んだ香りを象徴するのでしょう。印象深いデザートです。
今回の食事を通して、「医食同源」という言葉が理念ではなく、実感として理解できた気がしました。厲家菜の料理は、身体を満たすと同時に、静かに整えていきます。実際、食事の後、とても元気になり、翌朝の目覚めも爽やかで、身体が軽くなった気がしました。
胡瓜の和え物
人参の炒め物
牛肉のスパイス焼き
海老の黄金巻き揚げ
レイ家秘伝北京ダック
もちもちした
レイ家秘伝北京ダック
レイ家秘伝北京ダック
オマールエビの甘酢炒め
オマールエビの甘酢炒め
豚肉と白菜の煮込み
豚肉と白菜の煮込み
レイ家ヨーグルト
2025/12/24 更新
お正月限定◇銀◇コースで、新年会。新年早々激動の幕開けだが、お目出度い品々が並ぶ清朝宮廷料理で世界平和を祈念した。
<前菜10品>
レイ家菜の代表作 翡翠豆腐
西太后の精進料理 人参の炒め物
初代レイ子嘉考案 牛肉のスパイス焼き
レイ家秘伝 鱈のスパイス揚げ
清朝宮廷料理番 豚三枚肉の燻製
海老の黄金巻き揚げ 京劇太鼓仕立て
龍を模った 胡瓜の和え物
北京の名菜 麻豆腐
雛鳥とレイ家の葱 ・ 山椒ソース
老北京の常備菜 白菜の芥子漬け
<主菜>
・オマールエビの甘酢炒め 宮廷スタイル
これは定番だが、お正月に戴くと、ことのほかお目出度く感じた。
・ローストビーフ 宮廷ソース仕立て
写真の通り量も十分。インパクトのある皿で、食後、もの凄く元気になったのは言うまでもない。
・レイ家菜オリジナル海老真丈の白菜あんかけ~金粉を添えて
海老真丈は大好物。白菜との組合せが素晴らしい。
<湯>
・レイ家オリジナル中華風雑煮
スープが美味しかった。日本と中国の文化的な近さを思わずにはいられない一椀だった。
<甜品>
・紅白 ココナッツ団子
・中国無形文化財 レイ家のヨーグルト
REIKASAI 名物 幻のデザート 『三不粘』
皿に付かない・箸につかない・歯につかない、三つのものに粘らない(=くっつかない)という意味のデザート。1日3組様限定。黄色は皇帝の色でもある。美味しくて、食べ応えもあった。
定型メッセージプレートにフルーツを盛り合わせ
中国茶 東方美人茶 黄茶 茉莉茶 白茶
お茶は良いね。料理にはアルコールより、お茶が合う。