『写楽 2011年以前の文章』一級うん築士さんの日記

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日記詳細

写楽の文章が規定を超えたので2011年以前の文章はこちらへ移転

2011.6.3
雨の降りしきる鎌倉の常盤。それでも恋人に会いたいかのように気が急いて鎌倉駅からタクシーに乗り込みました。トンネルをいくつか通過し、やがて梶原から常盤へ。ついに東洲斎写楽の暖簾が現れました。

相変わらずの不思議な、いや趣のある空間。普通、このような空間を志向する主人はまるで頑固、一徹の固定観念や先入観で凝り固まった親爺なのですが、この店の主人は物事に柔軟に対応し、その懐の広さ、おおらかな女性観、すべてが粋です。きっと昔はよく遊んだのでしょう(失礼)。シャレが通じます!

しかし食材の目利き、調理の妥協を許さぬプロの根性は素晴らしい。もしこの店が銀座にあれば予約の難しい超繁忙店になっているのでしょう。でもこの風流人はそれを好まずこの鄙とも思える地でまるで趣味のように超越しているのです。

蟹足、ホタテ燻製、そら豆の豪華なお通し、小笠原の尾長鯛(塩で)、中華風野菜炒め、アサリの天ぷらと美味の数々を羽根屋など名酒で存分に堪能しました。夜も更け行く常磐の片隅で人も羨むひと時を過ごしました。

*今回の写真は最初の6枚です。

2010.3.21
いろいろな表情を持つ時計が微妙な時差を保って時を告げます。

一体正確な時刻なんてこのすべてが曖昧で理不尽、不透明な世の中で何の価値を持つのかと問いかけるように。それがこの空間では何故か逆らえない正当性を持つように感じます。

鎌倉の奥座敷とも言える梶原に密やかに店を構えています。源氏山を控えてまだ春遠いこの時期にはただ静かに芽生えの季節を待ち続けます。(訪問は今年1月)

この店では主人の人柄が最高のご馳走。しかし魚の目利きと丁寧な調理には並の料理屋では到底太刀打ち出来ない凄みを感じます。

メニューを見ると「ハタの刺身」があります。1800円と良いお値段ではありますが高級魚ですのでその微妙な歯応えと旨味には高い満足感を覚えます。さらに「カサゴ塩焼」は頭から尾まで食べ尽くす楽しみと充実感があります。

酒は最初が而今の特別純米(にごり酒)でこってりとした風合いに打たれます。次が醸し人九平次の純米でさわやかさはさすが。

いいなあ!この素晴らしい主人、料理と酒の世界は…。幸せです!

*最初の15枚が今回の写真です。

2008.5.13
それにしてもこの雰囲気。日常と非日常、現実と幻想が境界線なしに交錯する空間とでも言いましょうか。ミステリアスであり、何かトリックが仕掛けてあるような。素敵に幻想的な世界です。

いや錯綜する小宇宙に対し眼はその先にある現実を求めて部屋の中をさまよいますがやがて落ち着きを取り戻して静かにこの空間を共有するのです。

時折、古い時計が時を刻みますがそれは時間の経過を示すものでは無くてこの現実離れした空間に一瞬たりとも経過してしまった過去を知らせるものでしかありません。

まるで見知らぬ土地へ迷い込んだ者が彷徨の果てに、最後に店主と話すうち天からの一条の光を受けるような気分です。

恐らく一度でもこの店に足を踏み入れた者のみが感じる不思議な空間ですが、いずれそれが本物の羅列である事を認識する事になります。

ご主人は寡黙(シャイと思いますが)ですからそう思ってゆっくりと付き合えばやがて大変信頼出来る、大人(おとなでありたいじん)である事がわかります。


鎌倉の常盤という鎌倉山と源氏山に挟まれた閑静なエリアにあります。夕方ではなくて夜になってからおもむろに店を開くのでほとんど地元の住民しかその存在を知らずにいます。(時折、東京からこの店と主人を目当てに通ってくる風流人がいるそうですが)

その日になってメニューを決めるのですがどれも見事な逸品ばかりでただただ驚いてしまいます。男のこだわりの料理なんて水準ではなくて、材料も含めて高い水準のものを頑強に求めています。

メニューを見るとかなり高価な食材を仕入れているようにも思えそれらを常に揃えておくのはコスト面でかなりの負担になると思いますが、ご主人はその律儀さゆえに頑張っていると思います。

最初の訪問は紅鮭の刺身と葱トロを頂きました。紅鮭は脂が嫌味なくこってりして思わず「旨い!」と唸ります。葱トロは混ぜ方が丁寧で上手いので一口一口が幸せを感じます。

酒は最初に田酒、それから珍しい天狗舞の五凜を飲みました。この店は焼酎が無くて日本酒それも純米酒、純米吟醸だけと言うのが見事です!酒飲みの王道です。

しばらくしてから若い男女が3人ほど入って来ました。嬉しそうにメニューを見ていて、またご主人も楽しそうに相談にのっていました。


後日に再訪しました。お通しは黒豆。最初に呑む雪中梅が甘口なのでこちらを食べると程よい加減になると配慮してくださいました。肴は鰤の刺身、鰤大根、アサリの天ぷらですが、まあ鰤刺の見事なこと!

このご主人の刺身は本当に半端ではない見事さです。よほど魚のめききが良いのでしょうが、このメニューの数の多さからは信じがたいものです。まざに寒鰤の醍醐味を味わう見事なふくよかさです。量も豪快です。続く鰤大根、アサリの天ぷらと一気に食べてしまいました。酒は天狗舞 五凜です。

最近の訪問はシマアジを頂きました。事情があってあまり食べることが出来ず、酒の石槌(しずく)と南(高知)の純米吟醸です。美味い!

なお、この店はJR大船からモノレールに乗り湘南深沢駅で降りて長谷方面へ歩いて行き、TOYOPETの手前を左折して行くのですが、駅から歩いて10分かかります。訪問する時には前日夜9時すぎ以降に電話で確認(予約)されるとよいと思います。ご主人が一人ですべて行っていますから。

飲んで、食べて一人4000~5000円くらいですが、肴や魚が美味しいので出来れば数人で訪問してシェアするのが宜しいでしょう。


2012.10.10
満月に魅入られて。心のおもむくままに。美酒と美肴を楽しむ。亭主と洒脱な会話を楽しむ。秋の夜長も心地よく更けていく。鎌倉で日本酒と魚料理が断トツに美味しい店だから。道楽でやっているとしか思えない。何時訪れても新鮮で身質の良い魚介が用意されている。まさに奇跡なのだ。

2012年の中秋の名月はこの店でと決めていた。鎌倉で田楽と並んで最も好きな店。場所は梶原というまるで観光客は来るな、とでもいう不便なところ。それでも最近は食べログを見て遠くは京都からの客も。東京からなんて近いという。この日も満席。主人が忙しいので会話もろくろく出来ない。客は若い、食べログ世代のカップルが多い。

○酒は
恵比寿琥珀
クリスタル麦芽を配合した琥珀色の深みのある味わい。通常の麦芽をより多く使用しており熟成感を感じる。
山本
秋田の栽培醸造家山本氏の造る銘酒。優しい味わいでふくらみのある香り。ただ、フィニッシュにやや微発酵のような余韻があるので少し残念。

○お通し
相変わらず凝ったもの。柿なます、タラバ蟹、パラオのチビマグロ、ピッテロビアンコの辛し和え、ブランド栗。

○刺身はマグロの赤身、中トロ、カンパチ
そして別皿で内輪海老刺身
内輪海老は文字通り団扇の形。半透明の白色。伊勢海老に良く似た味わいで甘みと旨みがある。

*今回の写真は最初の4枚です

2012.7.3
今回は主人の調理の凄腕をまざまざと見せつけられた。もともと食材は素晴らしいのだが、調理もかなり凝っている。この店、いや主人はまったく奥の深い御仁だ。平日なので何時もの軽快な、外し気味の洒脱な会話を楽しんだ。

この日は特に鮎の火干(ひぼかし=火乾)ダシ煮。真子や白子、腸を取った後の鮎を炭でじっくり焼いて水分を飛ばして乾燥させ火干させたものをさらにダシで煮込む。もともと煮物やダシの材料になるものだから旨み十分。スープまで実に滋味で美味しい。

前菜は豪華。空豆、かに、筍、あさり、キノコ、エリンギ、イカ。刺身も赤穂牡蠣、伊東鰤、境港鯛とこれまた舌も驚く美味。脂身たっぷりの合鴨の後で、ほろよい苦味のたらの芽の天ぷらとくれば至福のひと時でした。

酒は風が吹く、磯自慢生原酒。あと天青など

*今回の写真は最初の5枚。


2012.5.25
ジャズと写楽と、粋な亭主。なんとなく無秩序と混沌。しかしすべて計算された演出。粋とは外し、だから。すべての時計までが外して時を打つ。

主人は最近かなり忙しい。食べログの効果が絶大で週末など予約必須。おかげで以前は主人との会話を楽しめた。が、今では難しい。遠くは京都からも来店があるとか。早朝4時まで営業しているので、ご近所もかなり増えたらしい。

いつもながら見事な前菜。空豆すり流し、山ウド煮、倉掛豆。筍、合鴨、蟹、金時芋。これだけで酒の肴には十分すぎる逸品。器用な料理人なのだ。

この店は魚の質が高い。それで刺身盛合わせと岩牡蠣を。鯛、長崎ひらまさ、平目エンガワ、初鰹。みずみずしい上に脂が執拗に乗って旨い!岩牡蠣も弾むような食感にクリーミー。たまらない!

酒は最初に田酒。次に珍しい「風が吹く」。福島の白井酒造店。生酒の香り、山廃の濃厚、芳醇な旨味。力強さも加わり美味しい!

*今回の写真は最初の4枚です。

2012.3
柱時計が鳴った。でも9時15分。腕時計を見たら夜の20時半。いったい何を暗示しているのだろう。主人の顔は平然と「うちは時間などと言う小さな物差しでは計れない」という顔つき。相変わらずミステリアスな男だ。

きっとこの店では未来なんて銀河系の彼方、来年なんて太陽系の先、そして明日なんて月への旅路という尺度なのだろう。時間を超えろと言っているのではないか。世に沖縄時間なんてあるが写楽時間はもっと壮大。時間を超えたら何が残るのか。それは遊び心!洒落、酔狂、いやそれこそ店主の思い描く世界ではないのか。

しかし、何時もながら肴と酒は美味しい。お通しから意表を突く。蟹、鴨、牛蒡煮、タコ、サーモン、ケールと芽キャベツ。豪勢。これで冷酒3杯可能。つぎの関サバは写真の通り凄い!大きい。ネギのお浸しもよく味が染みていて美味しい。酒は田酒、三好菊、磯自慢など。

最近ではかなり人気店になってしまったが昔のように閑散として主人と洒脱な会話を楽しんだころが懐かしい。

*最初の4枚が今回の写真です。

2011.6.3
雨の降りしきる鎌倉の常盤。それでも恋人に会いたいかのように気が急いて鎌倉駅からタクシーに乗り込みました。トンネルをいくつか通過し、やがて梶原から常盤へ。ついに東洲斎写楽の暖簾が現れました。

相変わらずの不思議な、いや趣のある空間。普通、このような空間を志向する主人はまるで頑固、一徹の固定観念や先入観で凝り固まった親爺なのですが、この店の主人は物事に柔軟に対応し、その懐の広さ、おおらかな女性観、すべてが粋です。きっと昔はよく遊んだのでしょう(失礼)。シャレが通じます!

しかし食材の目利き、調理の妥協を許さぬプロの根性は素晴らしい。もしこの店が銀座にあれば予約の難しい超繁忙店になっているのでしょう。でもこの風流人はそれを好まずこの鄙とも思える地でまるで趣味のように超越しているのです。

蟹足、ホタテ燻製、そら豆の豪華なお通し、小笠原の尾長鯛(塩で)、中華風野菜炒め、アサリの天ぷらと美味の数々を羽根屋など名酒で存分に堪能しました。夜も更け行く常磐の片隅で人も羨むひと時を過ごしました。

*今回の写真は最初の6枚です。

2010.3.21
いろいろな表情を持つ時計が微妙な時差を保って時を告げます。

一体正確な時刻なんてこのすべてが曖昧で理不尽、不透明な世の中で何の価値を持つのかと問いかけるように。それがこの空間では何故か逆らえない正当性を持つように感じます。

鎌倉の奥座敷とも言える梶原に密やかに店を構えています。源氏山を控えてまだ春遠いこの時期にはただ静かに芽生えの季節を待ち続けます。(訪問は今年1月)

この店では主人の人柄が最高のご馳走。しかし魚の目利きと丁寧な調理には並の料理屋では到底太刀打ち出来ない凄みを感じます。

メニューを見ると「ハタの刺身」があります。1800円と良いお値段ではありますが高級魚ですのでその微妙な歯応えと旨味には高い満足感を覚えます。さらに「カサゴ塩焼」は頭から尾まで食べ尽くす楽しみと充実感があります。

酒は最初が而今の特別純米(にごり酒)でこってりとした風合いに打たれます。次が醸し人九平次の純米でさわやかさはさすが。

いいなあ!この素晴らしい主人、料理と酒の世界は…。幸せです!

*最初の15枚が今回の写真です。

2008.5.13
それにしてもこの雰囲気。日常と非日常、現実と幻想が境界線なしに交錯する空間とでも言いましょうか。ミステリアスであり、何かトリックが仕掛けてあるような。素敵に幻想的な世界です。

いや錯綜する小宇宙に対し眼はその先にある現実を求めて部屋の中をさまよいますがやがて落ち着きを取り戻して静かにこの空間を共有するのです。

時折、古い時計が時を刻みますがそれは時間の経過を示すものでは無くてこの現実離れした空間に一瞬たりとも経過してしまった過去を知らせるものでしかありません。

まるで見知らぬ土地へ迷い込んだ者が彷徨の果てに、最後に店主と話すうち天からの一条の光を受けるような気分です。

恐らく一度でもこの店に足を踏み入れた者のみが感じる不思議な空間ですが、いずれそれが本物の羅列である事を認識する事になります。

ご主人は寡黙(シャイと思いますが)ですからそう思ってゆっくりと付き合えばやがて大変信頼出来る、大人(おとなでありたいじん)である事がわかります。


鎌倉の常盤という鎌倉山と源氏山に挟まれた閑静なエリアにあります。夕方ではなくて夜になってからおもむろに店を開くのでほとんど地元の住民しかその存在を知らずにいます。(時折、東京からこの店と主人を目当てに通ってくる風流人がいるそうですが)

その日になってメニューを決めるのですがどれも見事な逸品ばかりでただただ驚いてしまいます。男のこだわりの料理なんて水準ではなくて、材料も含めて高い水準のものを頑強に求めています。

メニューを見るとかなり高価な食材を仕入れているようにも思えそれらを常に揃えておくのはコスト面でかなりの負担になると思いますが、ご主人はその律儀さゆえに頑張っていると思います。

最初の訪問は紅鮭の刺身と葱トロを頂きました。紅鮭は脂が嫌味なくこってりして思わず「旨い!」と唸ります。葱トロは混ぜ方が丁寧で上手いので一口一口が幸せを感じます。

酒は最初に田酒、それから珍しい天狗舞の五凜を飲みました。この店は焼酎が無くて日本酒それも純米酒、純米吟醸だけと言うのが見事です!酒飲みの王道です。

しばらくしてから若い男女が3人ほど入って来ました。嬉しそうにメニューを見ていて、またご主人も楽しそうに相談にのっていました。


後日に再訪しました。お通しは黒豆。最初に呑む雪中梅が甘口なのでこちらを食べると程よい加減になると配慮してくださいました。肴は鰤の刺身、鰤大根、アサリの天ぷらですが、まあ鰤刺の見事なこと!

このご主人の刺身は本当に半端ではない見事さです。よほど魚のめききが良いのでしょうが、このメニューの数の多さからは信じがたいものです。まざに寒鰤の醍醐味を味わう見事なふくよかさです。量も豪快です。続く鰤大根、アサリの天ぷらと一気に食べてしまいました。酒は天狗舞 五凜です。

最近の訪問はシマアジを頂きました。事情があってあまり食べることが出来ず、酒の石槌(しずく)と南(高知)の純米吟醸です。美味い!

なお、この店はJR大船からモノレールに乗り湘南深沢駅で降りて長谷方面へ歩いて行き、TOYOPETの手前を左折して行くのですが、駅から歩いて10分かかります。訪問する時には前日夜9時すぎ以降に電話で確認(予約)されるとよいと思います。ご主人が一人ですべて行っていますから。

飲んで、食べて一人4000~5000円くらいですが、肴や魚が美味しいので出来れば数人で訪問してシェアするのが宜しいでしょう。』

2012.10.10
満月に魅入られて。心のおもむくままに。美酒と美肴を楽しむ。亭主と洒脱な会話を楽しむ。秋の夜長も心地よく更けていく。鎌倉で日本酒と魚料理が断トツに美味しい店だから。道楽でやっているとしか思えない。何時訪れても新鮮で身質の良い魚介が用意されている。まさに奇跡なのだ。

2012年の中秋の名月はこの店でと決めていた。鎌倉で田楽と並んで最も好きな店。場所は梶原というまるで観光客は来るな、とでもいう不便なところ。それでも最近は食べログを見て遠くは京都からの客も。東京からなんて近いという。この日も満席。主人が忙しいので会話もろくろく出来ない。客は若い、食べログ世代のカップルが多い。

○酒は
恵比寿琥珀
クリスタル麦芽を配合した琥珀色の深みのある味わい。通常の麦芽をより多く使用しており熟成感を感じる。
山本
秋田の栽培醸造家山本氏の造る銘酒。優しい味わいでふくらみのある香り。ただ、フィニッシュにやや微発酵のような余韻があるので少し残念。

○お通し
相変わらず凝ったもの。柿なます、タラバ蟹、パラオのチビマグロ、ピッテロビアンコの辛し和え、ブランド栗。

○刺身はマグロの赤身、中トロ、カンパチ
そして別皿で内輪海老刺身
内輪海老は文字通り団扇の形。半透明の白色。伊勢海老に良く似た味わいで甘みと旨みがある。

*今回の写真は最初の4枚です

2012.7.3
今回は主人の調理の凄腕をまざまざと見せつけられた。もともと食材は素晴らしいのだが、調理もかなり凝っている。この店、いや主人はまったく奥の深い御仁だ。平日なので何時もの軽快な、外し気味の洒脱な会話を楽しんだ。

この日は特に鮎の火干(ひぼかし=火乾)ダシ煮。真子や白子、腸を取った後の鮎を炭でじっくり焼いて水分を飛ばして乾燥させ火干させたものをさらにダシで煮込む。もともと煮物やダシの材料になるものだから旨み十分。スープまで実に滋味で美味しい。

前菜は豪華。空豆、かに、筍、あさり、キノコ、エリンギ、イカ。刺身も赤穂牡蠣、伊東鰤、境港鯛とこれまた舌も驚く美味。脂身たっぷりの合鴨の後で、ほろよい苦味のたらの芽の天ぷらとくれば至福のひと時でした。

酒は風が吹く、磯自慢生原酒。あと天青など

*今回の写真は最初の5枚。


2012.5.25
ジャズと写楽と、粋な亭主。なんとなく無秩序と混沌。しかしすべて計算された演出。粋とは外し、だから。すべての時計までが外して時を打つ。

主人は最近かなり忙しい。食べログの効果が絶大で週末など予約必須。おかげで以前は主人との会話を楽しめた。が、今では難しい。遠くは京都からも来店があるとか。早朝4時まで営業しているので、ご近所もかなり増えたらしい。

いつもながら見事な前菜。空豆すり流し、山ウド煮、倉掛豆。筍、合鴨、蟹、金時芋。これだけで酒の肴には十分すぎる逸品。器用な料理人なのだ。

この店は魚の質が高い。それで刺身盛合わせと岩牡蠣を。鯛、長崎ひらまさ、平目エンガワ、初鰹。みずみずしい上に脂が執拗に乗って旨い!岩牡蠣も弾むような食感にクリーミー。たまらない!

酒は最初に田酒。次に珍しい「風が吹く」。福島の白井酒造店。生酒の香り、山廃の濃厚、芳醇な旨味。力強さも加わり美味しい!

*今回の写真は最初の4枚です。

2012.3
柱時計が鳴った。でも9時15分。腕時計を見たら夜の20時半。いったい何を暗示しているのだろう。主人の顔は平然と「うちは時間などと言う小さな物差しでは計れない」という顔つき。相変わらずミステリアスな男だ。

きっとこの店では未来なんて銀河系の彼方、来年なんて太陽系の先、そして明日なんて月への旅路という尺度なのだろう。時間を超えろと言っているのではないか。世に沖縄時間なんてあるが写楽時間はもっと壮大。時間を超えたら何が残るのか。それは遊び心!洒落、酔狂、いやそれこそ店主の思い描く世界ではないのか。

しかし、何時もながら肴と酒は美味しい。お通しから意表を突く。蟹、鴨、牛蒡煮、タコ、サーモン、ケールと芽キャベツ。豪勢。これで冷酒3杯可能。つぎの関サバは写真の通り凄い!大きい。ネギのお浸しもよく味が染みていて美味しい。酒は田酒、三好菊、磯自慢など。

最近ではかなり人気店になってしまったが昔のように閑散として主人と洒脱な会話を楽しんだころが懐かしい。

*最初の4枚が今回の写真です。

2011.6.3
雨の降りしきる鎌倉の常盤。それでも恋人に会いたいかのように気が急いて鎌倉駅からタクシーに乗り込みました。トンネルをいくつか通過し、やがて梶原から常盤へ。ついに東洲斎写楽の暖簾が現れました。

相変わらずの不思議な、いや趣のある空間。普通、このような空間を志向する主人はまるで頑固、一徹の固定観念や先入観で凝り固まった親爺なのですが、この店の主人は物事に柔軟に対応し、その懐の広さ、おおらかな女性観、すべてが粋です。きっと昔はよく遊んだのでしょう(失礼)。シャレが通じます!

しかし食材の目利き、調理の妥協を許さぬプロの根性は素晴らしい。もしこの店が銀座にあれば予約の難しい超繁忙店になっているのでしょう。でもこの風流人はそれを好まずこの鄙とも思える地でまるで趣味のように超越しているのです。

蟹足、ホタテ燻製、そら豆の豪華なお通し、小笠原の尾長鯛(塩で)、中華風野菜炒め、アサリの天ぷらと美味の数々を羽根屋など名酒で存分に堪能しました。夜も更け行く常磐の片隅で人も羨むひと時を過ごしました。

*今回の写真は最初の6枚です。

2010.3.21
いろいろな表情を持つ時計が微妙な時差を保って時を告げます。

一体正確な時刻なんてこのすべてが曖昧で理不尽、不透明な世の中で何の価値を持つのかと問いかけるように。それがこの空間では何故か逆らえない正当性を持つように感じます。

鎌倉の奥座敷とも言える梶原に密やかに店を構えています。源氏山を控えてまだ春遠いこの時期にはただ静かに芽生えの季節を待ち続けます。(訪問は今年1月)

この店では主人の人柄が最高のご馳走。しかし魚の目利きと丁寧な調理には並の料理屋では到底太刀打ち出来ない凄みを感じます。

メニューを見ると「ハタの刺身」があります。1800円と良いお値段ではありますが高級魚ですのでその微妙な歯応えと旨味には高い満足感を覚えます。さらに「カサゴ塩焼」は頭から尾まで食べ尽くす楽しみと充実感があります。

酒は最初が而今の特別純米(にごり酒)でこってりとした風合いに打たれます。次が醸し人九平次の純米でさわやかさはさすが。

いいなあ!この素晴らしい主人、料理と酒の世界は…。幸せです!

*最初の15枚が今回の写真です。

2008.5.13
それにしてもこの雰囲気。日常と非日常、現実と幻想が境界線なしに交錯する空間とでも言いましょうか。ミステリアスであり、何かトリックが仕掛けてあるような。素敵に幻想的な世界です。

いや錯綜する小宇宙に対し眼はその先にある現実を求めて部屋の中をさまよいますがやがて落ち着きを取り戻して静かにこの空間を共有するのです。

時折、古い時計が時を刻みますがそれは時間の経過を示すものでは無くてこの現実離れした空間に一瞬たりとも経過してしまった過去を知らせるものでしかありません。

まるで見知らぬ土地へ迷い込んだ者が彷徨の果てに、最後に店主と話すうち天からの一条の光を受けるような気分です。

恐らく一度でもこの店に足を踏み入れた者のみが感じる不思議な空間ですが、いずれそれが本物の羅列である事を認識する事になります。

ご主人は寡黙(シャイと思いますが)ですからそう思ってゆっくりと付き合えばやがて大変信頼出来る、大人(おとなでありたいじん)である事がわかります。


鎌倉の常盤という鎌倉山と源氏山に挟まれた閑静なエリアにあります。夕方ではなくて夜になってからおもむろに店を開くのでほとんど地元の住民しかその存在を知らずにいます。(時折、東京からこの店と主人を目当てに通ってくる風流人がいるそうですが)

その日になってメニューを決めるのですがどれも見事な逸品ばかりでただただ驚いてしまいます。男のこだわりの料理なんて水準ではなくて、材料も含めて高い水準のものを頑強に求めています。

メニューを見るとかなり高価な食材を仕入れているようにも思えそれらを常に揃えておくのはコスト面でかなりの負担になると思いますが、ご主人はその律儀さゆえに頑張っていると思います。

最初の訪問は紅鮭の刺身と葱トロを頂きました。紅鮭は脂が嫌味なくこってりして思わず「旨い!」と唸ります。葱トロは混ぜ方が丁寧で上手いので一口一口が幸せを感じます。

酒は最初に田酒、それから珍しい天狗舞の五凜を飲みました。この店は焼酎が無くて日本酒それも純米酒、純米吟醸だけと言うのが見事です!酒飲みの王道です。

しばらくしてから若い男女が3人ほど入って来ました。嬉しそうにメニューを見ていて、またご主人も楽しそうに相談にのっていました。


後日に再訪しました。お通しは黒豆。最初に呑む雪中梅が甘口なのでこちらを食べると程よい加減になると配慮してくださいました。肴は鰤の刺身、鰤大根、アサリの天ぷらですが、まあ鰤刺の見事なこと!

このご主人の刺身は本当に半端ではない見事さです。よほど魚のめききが良いのでしょうが、このメニューの数の多さからは信じがたいものです。まざに寒鰤の醍醐味を味わう見事なふくよかさです。量も豪快です。続く鰤大根、アサリの天ぷらと一気に食べてしまいました。酒は天狗舞 五凜です。

最近の訪問はシマアジを頂きました。事情があってあまり食べることが出来ず、酒の石槌(しずく)と南(高知)の純米吟醸です。美味い!

なお、この店はJR大船からモノレールに乗り湘南深沢駅で降りて長谷方面へ歩いて行き、TOYOPETの手前を左折して行くのですが、駅から歩いて10分かかります。訪問する時には前日夜9時すぎ以降に電話で確認(予約)されるとよいと思います。ご主人が一人ですべて行っていますから。

飲んで、食べて一人4000~5000円くらいですが、肴や魚が美味しいので出来れば数人で訪問してシェアするのが宜しいでしょう。
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