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この口コミは、Mr.noone specialさんが訪問した当時の主観的なご意見・ご感想です。
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1回
夜の点数:4.0
2015/05 訪問
夜の点数:4.0
ただのおでん屋ではない
St330046
記事URL:http://aamnos.cocolog-nifty.com/all_about_mrnoone_special/2009/02/post-8c8c.html
2015/06/23 更新
2015年6月追記
平日の夜9時前にうかがったら先客は一組で、途中からは我々だけになった。緑陰深くなる候におでんを思い起こす人はやはり少ないのだろう。
しかし、開け放している入り口から川面を渡ってきた爽風が店の中にそよそよと吹きわたって実に心地よく、これはこの時期だけの醍醐味だと感じた。ご主人に聞くとGW後から5月いっぱいまでは虫も飛んでいないのでこの風が楽しめるのだという。頬を柔らかく風に撫でられながらつまむおでんは冬とは違った風趣があって、大変良いものだった。
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2014年3月追記
改装されてから初めて訪問したが中の様子は変わらず、またおでんの味も舌代も引き続き納得の水準。惜しむらくは女性客が増えて回転が悪くなり、随分と待たされた点。この点、店に責めはない。カウンターだけの小体な店だけに、さっと済ませて次の客を招じ入れる配慮を持って訪問して欲しいと感じた。
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2009年3月
祇園の「山ふく」で小菜をつまみに軽く呑み、ここで鍋にゆらぐタネを眺めつつおでんを食べ、団栗橋を渡って木屋町の「あと村」で弁当を買って帰る。京都の食を存分に味わいたいと思った時に選ぶコースだが、やはりそこには「蛸長」が入らないわけにはいかない。カウンターだけの小体な店ながら、世紀を超えてなお団栗橋角の孤塁を守っているのだから、感服するよりほかない。
淡く清澄な出汁で大事に暖められているタネは何を食べても旨いのだが、個人的には海老芋が随一だと思う。散々煮含めているにも関わらず、皮を剥いた時にできる鋭利な直線を失わず、ほれぼれするような姿態のまま供されるそれを口に頬張ると、「あっ・・・」と思う間もなく見事にほどけて、舌にまったりとした風合いだけを残しながら消えていってしまう。こればっかりは、ここでしか味わえないだろう。
また、ロールキャベツにはベシャメルソースが、昆布巻にはベーコンが巻かれていたりして、古い店ながら軸足はぶれずに、新しいものを取り入れているところも素晴らしいと思う。ことに昆布巻のベーコンは出汁に塩気を供出し、うまい具合に枯れた味わいとなっていて、実に良い塩梅だ。それから、タネに添えられる九条ネギと粉山椒の取り合わせも全体を引き締める名脇役として頼もしく機能していて、この店ならではの風味を添えている。
磨きこまれて鈍く光るちろりは星霜を感じさせ、またご主人を中心に切り盛りする店の人々の動きも惚れ惚れするくらい無駄がなく見ていて実に気分がいい。こうしたことも旨い酒が飲める要素の一部だと思っている。いついつまでも繁盛されることを祈念してやまない。