3回
2017/08 訪問
日本最高峰「塩芳軒」で磨いた技が光る
前回立ち寄って実に美味しい和菓子を頂けることが判った「大丸屋」に今回も足を運ぶ。直前に著名なブログ「和菓子魂」で取り上げられ、随分褒められていたので少し喜ばしく思いながらの訪問となった。目当ては季節の上生菓子で、この日はなんと7種類も用意されていた。確かに夏の終わりと秋の始まりの季節だったから意匠には事欠かない時期だったとはいえ、このごろは都内でも2−3種あれば良い方という状況だけに嬉しくなる。
こちらのご主人は菓子を作るのが天職なのだろう、こうした上生菓子に加え、実に美味しそうなアップルパイをはじめとしたケーキ類、細やかで愛らしい干菓子、地の果実を使いお土産に好適な焼菓子類等々店内にはありとあらゆる甘味・スイーツが揃っており、甘党にはこたえられない光景が広がっていて気持ちも上がる。今回は夏を感じさせる涼しげな「瓢箪」、蕾の造形が美しい「蓮花」、秋の始まりを思い起こさせる「白菊」を買って帰る。
こちらの餡の良さは、さらっとした口どけにあって、これは「白菊」「蓮花」で味わえた。透明感とその発色具合に美的感覚の高さがうかがえる「瓢箪」は口に入れた時のひんやりとした風合いとしどけなくほどけゆく様が、山奥の沢の水を掬って飲んだような瑞々しさを感じさせ、唸るものがある。
後々調べてみるとご主人のフェイスブックを発見。なんと日本最高峰と目される「塩芳軒」で修業をしたそうで、それならばとりどりの上生菓子の美しさや餡の上質な口どけぶりにも得心がいく。というより、その味が盛岡でいつでも、しかもお手頃価格で頂けるというのは実に羨ましい限りだ。
心惹かれるもののまだケーキ類は試せていないけれども、目の前の「喫茶ママ」でいただけるケーキはこちらのものだということなので、次回はそちらで美味しい珈琲とともにアップルパイや栗たっぷりのモンブランを頂くことにしたい。近所にこんな店があったらなぁ・・・と思わせる良店だと思う。
記事URL:http://aamnos.cocolog-nifty.com/all_about_mrnoone_special/2017/08/post-3ca1.html
2018/11/26 更新
2016/10 訪問
美しい上生菓子は口どけが素晴らしい佳品
県庁の裏手にある北ホテルをもう少し北へ進むと和菓子屋が三軒連なるという甘党にはまたとない一角がある。行ってみると奥の梅月堂には店先に客の車が乗り付けてあり、手前の戸田久では常連らしきご婦人と店主が歓談されている。我々の目当ての大丸屋にも品の良い親子連れが居てどれにしようか楽しげに迷っているようだった。こちらの目当ては季節の上生菓子なので数点見繕って購入し、ホテルに戻って早速食べる。
そろそろ咲き始める「山茶花」は淡い緑のぼかし具合が品よく、前日葛根田渓谷で眺めた景色を略再現したような「錦秋」も丁寧な作りが偲ばれるきんとんで美しい。
味わいの特徴はさっと淡く溶けていくその口当たり。脆く儚げな感じがあって、いかにも情緒深い気持にさせられる。甘みの調子も程が良く、ホテル備え付けの薄い茶でいただくのが勿体なく感じられるほど、完成度の高いものだった。
なお、当店には洋菓子も置いてあり、先述の親子が買っていかれたアップルパイも照りが映えて実に旨そうだったので、次は向かいにある盛岡最古の喫茶店「ママ」に行きがてら、またふっと溶けゆく上生菓子とこのアップルパイを買って楽しみたい。本町通り、なかなか奥深くて気に入った。
記事URL:http://aamnos.cocolog-nifty.com/all_about_mrnoone_special/2016/10/post-a495.html
2017/12/08 更新
盛岡へ行く楽しみの一つが大丸屋で見目麗しい生菓子を楽しむこと。今回はすぐ近くの北ホテルに宿を取ったので二回足を運んだ。
夏らしさを感じさせるとりどりの上生菓子は、やはりふかふかの餡の具合と甘さの消え様の儚さが絶妙でしみじみと美味しい。
今回は向かいの「喫茶ママ」で念願だったケーキも頂いた。ザッハトルテにはベリーとチェリー、更にはチョコで出来たオーナメントまでついていて、細部までこだわる美的センスの高さを感じる。外側のチョコクリームの苦味の利かせ方も心憎い加減で、凡百のパティシエではこうはいかない出来。いやはや唸らされた。
今回はお土産として名物の「すがの朝」も買って帰ったが、これがじめっとした梅雨の空気を切り裂くような薄荷の爽快さと口どけの儚さを併せ持っていて、この時季にうってつけの菓子だった。盛岡では夏越の祓に水無月ではなく、こちらを食べることにしたら良いとすら思った。
今回も存分に甘やかな世界に揺蕩うことができてありがたかった。