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“忘れていたありのままの自分を取り戻す”
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天井の高さは4m?
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見せ皿かと思いきや
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ちっちゃなアミューズを穴ぽこに嵌めて行きます。
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インカのめざめのピューレ
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バターには岩塩を載せて
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パンは3種類
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白菜のコンパレゾン
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冷菜
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温かい白菜料理
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コンパレゾンその2はセップ茸
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セップ茸のテリーヌ
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フォアグラのポワレ
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雉(きじ)のブルーテ
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お魚はキジハタ
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蝦夷鹿
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蝦夷鹿の赤ワイン煮込み
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デザートもコンパレゾン
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塩トマトのシャーベット
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カスタードクリームをシュー生地で挟んだもの
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再構築したティラミス
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エスプレッソで〆
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小菓子
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広尾の人気店
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オープンは2009年10月27日です。
痩せ型で叩上げの貫禄が既に出ている下野昌平シェフと始終ニコニコ中村豪志支配人の新しいお店。
訪問はオープンして1ヵ月後くらいでしたが、
東京の食通の間では有名なコンビのようで、すぐ評判に火が点きました。
店名がまたいいですよね〜。「ア・ニュ」。
一発で覚えられるし、ネーミングの親しみ易さ故、何人にも開かれた感じもある。
天井の高さは4メートルだったかな、
僕が通されたのは入って左手の3卓並ぶスペース、
上に開けていて周囲は幾らかクローズドで、
狭まった空間が好きな僕には居心地が好かったです。
さて、「シェフおまかせコース」(ランチで12000円、サ込だと13200円)の紹介です。
結論から先に言っちゃえば、
無理な変化球でもズドンっと直球でもなく、
捻り具合が程好くて、接客も変に畏まっていないし、
2時間20分の長丁場も全く疲れることなく、楽しく美味しく頂けました。
ちっちゃなアミューズが3種運ばれてきて、好きな穴ポコに自分で填めるのですよ。
ちょっとしたアミューズメント。
胡椒のピリ辛味の効いたブルターニュ産オマール海老の解し身、
ラディッシュとその下に何か芥子(からし)色のソース、
そして裂いた豚肉のリエット。
本の一口サイズで、どれもかっちりとアミューズです。
次の泡状のものは、インカのめざめのピューレを底に忍ばせ、
その上にトリュフと鶉(うずら)の卵の白味、
トップにはベーコンのソースからとった泡。
ジャガイモ感を残したピューレとふんわりと軽い泡にトリュフの香りを乗せて。
小匙で混ぜて頂きます。後切れの良さ、儚さが特長。
お料理全体に言えることですが、塩気が控えめで物によってはとても淡い味付けです。
亦、極力バターは使わず、押し並べて軽めの料理にしてあるとか。
パンは3種類。温められてから出てきます。
バゲットはまぁバゲット、奥の天然酵母のハードパンは代官山「ファミーユ」のもの、
お子様舌の僕は手前の柔らかでまぁるい自家製のミルクパンを殊の外気に入りました。
毎朝焼き上げるそうです。
ふっくらとしていて、甘みがあって美味しい。
さてここから前菜です。
同じ素材を違う(温冷の)調理法で食わせる「コンパレゾン」が下野シェフの手法で、先ずは白菜から。
冷菜の方は小さなキュービック状のオマール海老を白菜で包んで。
周囲には生ハムから採ったゴロゴロとしたジュレを回してあり、グリーンリーフをアクセントに。
軽く潮の香。
程好い旨味のあるジュレの口どけと白菜のシャクシャク感にしっとりと仕上がったオマールの歯応え。
淡白とまでは行かないさっぱりとした味わいが好き。
次に温かい白菜料理です。
感心したのは、提供時の温度が、熱くも温くもなく、ちょうど良い点。
白菜の角切りの見えるクリーム色の部分は、
白菜の芯の方を使いパルメザンチーズと生クリームでコクを出した少しとろみのあるクリーミーなソース。
周囲の緑色のは、白菜の先の方で採った比較的さらっとしたソース。
上に見える生の白菜には、浸透圧でホタテのエキスを染みこませてあるそう。
仲良く調和したバランスの良い味わい。
コンパレゾンその2はセップ茸。イタリアンで言うポルチーニ茸ですね。
冷たい方はセップ茸のテリーヌと山形産藤沢蕪(赤いカブ)、パセリのソースでラインを引いて。
テリーヌは柔らかでキノコの穏やかな風味が立ち食べ易いです。
瑞々しい生の蕪の仄かな苦味にパセリの一寸苦酸味のあるソース。
温の方はフォアグラのポワレです。
赤みさすトロトロのフォアグラに嫌なレバー臭なし。
粒粒はエポートルという麦を乾燥させたものだそうで、
仕上げにセップ茸で採ったコンソメスープを注ぎます。
お皿の縁のセップ茸のパウダーでフォアグラに味のアクセントをつける。
キノコ風味のスープは、例えばお肉で採ったものに比べて、
そんなに旨味があるわけではないけど、
その分フォアグラの脂感が中和され、さらりと頂けました。
次は雉(きじ)のブルーテ。内臓と骨をミキサーにかけた一物全体的な料理です。
やはり食べ易い温度での提供。
程好いとろみのある濃厚スープのザラ付は強め、臭みなく食べ易く、
深いコクと旨味の凝縮感があります。
中央のしっとりと仕上がった低温調理の胸肉の上にはクラッシュしたホール胡椒一粒&塩少々。
この一寸した一手間が、ややもするとのっぺりとしそうなスープの輪郭をすくっと際立たせていて、美味しく頂けました。
お魚はキジハタ、西の方では高級魚として扱われるそう。
上に見える半透明の物はラルド、豚の背脂を熟成させて作る物ですね。
ラルドの弱い塩気+脂気、カリカリの皮の香ばしさ、
白身のしっとり感、ピンクグレープフルーツの弱い甘酸味。
火入れは水気があと本の少し多く残っているとベストだと思いましたが、
いろいろと組合せを変えて食べ合わせると楽しい。
お肉はリクエストしておいたジビエで。この日は蝦夷鹿でした。
摂氏2.5度の熟成庫で1ヶ月熟成させたものだそうで、血抜きは完了済み、
死後硬直感も獣臭もなく、僕みたいな初心者向けの癖のないジビエ。
ジュ(肉汁)にエピス(ピリっと辛い香辛料)を加えたソースで頂きます。
切り口の赤が鮮やかな中まで熱の入った内腿(もも)のお肉は柔らか。
付け合せは林檎と春菊だったかな。
ここでもコンパレゾン。
蝦夷鹿の赤ワイン煮込みを解した物に白人参で作ったベシャメルソースを被せてあります。
こちらは風味に幾らか癖があり、それもまた美味。
デセールは、塩トマトを使った物。塩分濃度が高い乾いた土地で作られる糖度の高いトマトです。
ひとつはシャーベット。さらりとした口どけ。ソースは種から作ってあるそう。
もうひとつはねっちりとしたカスタードクリームをカリカリのシュー生地で挟んだ上にパウダー砂糖かけ。
赤く見えるは果肉を残した塩トマトのソース。
普通のトマトのような風味も酸味も弱く、自然な甘みが出ていて、共に美味しく頂けました。
デセールその2はティラミス。下野シェフ解釈による「再構築」だそう。
うまかったですね。
マスカルポーネのとろみあるスープに浮かぶは焼きメレンゲ。
スープの中にはベリー、それからブラックタピオカをエスプレッソに漬け込んだものが忍ばせてあります。
穏やかな甘さのスープにタピオカのクチョっとした食感と苦味がいいアクセント。
軽量級で口どけの良いメレンゲとスープの食べ合せも○まる。
お皿の縁にはカカオパウダー。
〆は幾種類もの紅茶とカフェから選びます。
選んだのは一番酸味と苦味が効いているらしいアルペジオをエスプレッソで。
自分がコンパレゾンをどう評価するかも訪問の楽しみのひとつでしたが、
コースの流れが途切れる感じもなく、またしつこさも感じず、
個人的にはとても楽しめました。
調理人歴何年になるのか、下野シェフの料理は既にだいぶ完成されているようでしたが、
まだまだ伸びて行く感じもあって、そんな安定感と進取の気風の同居も良かったと思います。
それにしてもネットの威力って凄いですね。
ひと月と経たずに評判が出て、依然人気店。