2回
2020/10 訪問
水分と油分の抜け加減が絶妙
長野県茅野市にあるイタリア料理店。
場所は蓼科高原、と言った方が分かり易いか。
リゾート地に佇む一軒家レストラン。
店内は非常にゆったりとした造りで、開放感たっぷり。
ここでは密になることはなさそう。
秋の訪問ということで、キノコを取り入れたコース料理を頂いた。
コース10,000円+ワインペアリング3,800円。
税込みで、更にサービス料なしで、この価格ポッキリ。
後述するが、料理やワインの内容が素晴らしく、この価格設定は異常。
さて、料理。
キノコ料理も美味しかったが、野菜も肉も魚も、前菜からデザートに至るまで、
何から何まで完璧とも思える充実した内容。
基本的に、素材重視系。素材の本質的な美味しさ重視。
ただ単に良質な素材を使って終わりではなく、
必ずしもそうではない素材に微かな仕事を施し、素材の良さが綺麗に引き出されている。
恐らくだが。一貫して余計な水分が抜かれ、また脂や油も抜かれ、旨みが凝縮。
そこに丁度良いバランスの塩分が加わり、味わい的に極大点に達している。
また、野菜の使い方もとても綺麗。メインの食材を引き立てる使い方。
熱の入り方がとても良く、野菜の甘味や滋味が丁度いい盛り上がりポイントに到達。
そしてまた、パスタの茹で加減も丁度いいポイント。
そしてだ。
ワインのセレクトも見事。
決して高くないお手頃価格のワインを使用しつつも、
料理とのバランスがとても綺麗だし、
またワイン単独で頂いても充分に堪能できるクオリティ。
素晴らしすぎる。
お客が僕たち1組だけだったこともあるかもしれないが、
料理が出てくるテンポも丁度よくスピーディー。
キノコの季節でなく、どの季節に訪れても良さそう。
これだけ野菜が美味しければ、季節季節の味を楽しめそう。
おススメです。
2021/01/11 更新
前回いただいた料理。とても素晴らしかった。食べログに書いた。
そして今回訪れて、ご主人から、
「以前お越しいただきましたよね」「あのときからは料理が変わりました」と。
前回、ほとんど話してもいないのに。
しっかり顔を覚えられていて、また食べログに書いた内容もしっかり読まれていて、驚いた。
さて。
確かに料理は変わった。
多種多様な多皿コースに。
でもそれ以上に変わったのは、料理の本質だ。
いや、以前の本質はそのままに、更に立体感という新しい要素が加わり、
まったく異なる領域に達している。この世界観は他のどのお店にもない。
一言で表現するなら、タイトルにも書いた「味の立体的な構築」。
ひとつひとつの食材が丁寧に調理され、その特徴を最大限引き出したいポイントで寸止め。
ひとつの皿で、そうした食材が組み合わさり、少ないポーションで提供される。
ここまでは、物理的かつ立体的な構築。
そして、これらを口に運んだときに、味の立体的な構築が始まる。
口に運ぶとすぐに、各々の食材の旨みや特徴の存在感に気付く。
それも、口の中のあちこちで。
この旨みは舌の上、あの旨みは上顎、別の旨みは右の方、また別の旨みは左の方。
この酸味は舌の上、あの酸味は上顎、別の酸味は右の方、また別の酸味は左の方。
この甘みは舌の上、あの甘みは上顎、別の甘みは右の方、また別の甘みは左の方。
咀嚼すると、これらが徐々に融合していく。しかも立体的に。しかも、かけあわせで。
この旨みがあの酸味やあの甘みと合わさると、あぁこんな味わいに変化するのか。
あの旨みがこの酸味やこの甘みと合わさると、あぁこんな味わいに変化するのか。
また、随所に散らされた野菜も、まったく手抜かりなくきちんと調理されており、
味の立体感の中に割り込んで立体感を更に複雑化させ、味の構築に重要な役割を果たしている。
単に飾り付けではないのだ。すごい。
酸味の使い方がとても素晴らしい。
酸味こそが、料理の旨さや、その料理の特徴を方向付ける本質的な要素かもしれない。
旨みだけなら、食材の旨みを引き出せばいいので、
調理する人の個性を実はあまり出せないのかもしれないが、
ここに酸味を加えると、どのような性質の酸味をどのような形で加えるかで、
食材の旨みが全く違った方向になるので、調理する人の個性を存分に発揮できるのかもしれない。
とにかく、すごい。感銘した。