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外苑前駅から徒歩少々。
オーストリア料理のお店。
お誘いいただいて、4人での訪問。
こういう機会でもないと、オーストリア料理のお店に行こうと思わないもんなぁ。
とても素晴らしい料理でした。感銘を受けました。
自分がこれまで知らなかった食の世界を経験できて、知的好奇心も満たされました。
お誘いいただいて、ほんと感謝。
さて。
ランチで訪問。
店内こじんまり。
あらゆるものが整理整頓され、あらゆるものがピカピカ。
すべてがキッチリした空間。シェフの性格が如実に表れている。
それは、この後出てくるすべての料理にも表れており、料理もとにかくキッチリ。
好きだわ、こういうの。
ランチだけれど、ディナーコースをご用意いただいた(税込18,000円)。
白ワインを1杯いただいて、会計は20,000円弱。
内容を考えると、こんな価格でいいの?と思う。
コースの内容はこんな感じ。
(1)グーラッシュの鋳込み
(2)赤パプリカのスープ
(3)アミューズ2種
・ヴィーナシュニッツェル
・グランメルシュマルツ
(4)スマガツオの叩き
(5)赤パプリカペーストと自家製パン
(6)フォアグラのテリーヌザッハトルテ風
(7)稚鮎のパン粉揚げ
(8)コロダイのクレープ包み
(9)ブレス産の鳩のロースト
(10)デザート:杏のコンポートのマリレンクネーデルとバニラアイス
(11)デザート:モーツァルトパラチンケン
(12)小菓子と食後の飲み物
少量多皿。
しかしながら、すべての料理にかなりの手間がかかっている。
パッと調理して出しました、というようなものは一切無し。
これはすごいわ。
これだけのものを下拵えして、完璧な調理で出せるって、
シェフとスタッフのお二人のすべての調理技術と情熱(と多くの時間)がここに詰まっている感じ。
それを考えると、ソース1滴たりとも残せません。
料理の印象。
口に入れ口内調理されるときにどのような味が生まれるかを最初から計算して、
そのまんまの状態で皿の上にいろいろな食材やソースなどが乗せられている。
ナイフで切って、フォークで口に運び、咀嚼すると、
何もせずとも完璧なバランスで味と味が交じり合い、新たな味が生まれる。
素材の旨みはもちろんのこと、甘味、酸味、塩味、などなど、
様々な味があの手この手で綺麗なバランスで交じり合う。
これはすごい。個人的に感動ものでした。
特に、(6)フォアグラのテリーヌザッハトルテ風、(8)コロダイのクレープ包み、
(11)デザート:モーツァルトパラチンケン、は最上級に素晴らしかったです。
以下、料理の寸評です。
(1)グーラッシュの鋳込み
鋳込みというか、コロンのような粉を焼いた円筒状の生地の中に、
豚のグーラッシュ(煮込み)を詰めて、
それがこぼれないように生地の両端をシブレットで蓋をした料理。
ガブッとかじると、生地が割れて中からグーラッシュが溢れ出て、
生地の炭水化物的な旨みとグーラッシュの煮込み的な旨みが融合。
そこにシブレットが爽やかな青みを加え、全体バランスの完成。
完璧な味の組み立て。何もせずとも、ベストな口内調理。
こんな手間がかかった料理がコースの最初に出てきて驚きです。
(2)赤パプリカのスープ
赤パプリカの旨み凝縮。
それだけでなく他の様々な旨みが加えられており、奥行きがある。
(3)アミューズ2種
一般的にアミューズ的な料理はコースの最初に出てくるが、こちらでは3番目に登場。
1,2番目で自分の味覚はすっかりこのお店のコース料理にドップリ浸かっており、
味覚に下地ができた状態でいただくアミューズって、ほんと美味しい。
そうだよ、最初に持ってこられたら味覚の下地ができていないから
あっという間に終わってしまうけど、
3番目だと一口のアミューズもしっかりと味わうことができる。
(4)スマガツオの叩き
スマガツオの表面を軽く炙って香ばしくして、その下に茄子。
そこに、赤パプリカのソース。全体バランスも見事だけれど、
この赤パプリカの透明なソースがやたらと美味しい。
世の中の多くのフレンチやイタリアンで出てくる魚介の冷菜にかけられるドレッシングが
なんとも陳腐に思えてくる。
(5)赤パプリカペーストと自家製パン
その赤パプリカ。ペーストとしても登場。
パンにつけていただきます。
これも美味しいです。
(6)フォアグラのテリーヌザッハトルテ風
シェフのスペシャリテ的な料理。
ザッハトルテのような黒いフォルム。この正体は薄くスライスされたトリュフ。
その中に、フォアグラのテリーヌ。エア感たっぷりで、シットリなのに軽い。
フォアグラの味がメインで、そこにアプリコットジャムの強めの甘みが加わり、
更にカカオのスポンジ生地で若干の苦味がエア感と共に加わるので、
フォアグラの味もトリュフの香りも様々な方向に広がっていく。
これ、めっちゃ美味しいです。
(7)稚鮎のパン粉揚げ
見た目のフォルムから、何の変哲もない稚鮎のフリットかと思っていたら、
なんのなんの、何だこれ?と思うくらいすごい逸品だった。
稚鮎自体の個性が全開。こんなちっこいのに味に存在感あり。
それを活かすのがカリカリの衣と、ソース(これも赤パプリカ?)。
(8)コロダイのクレープ包み
このクレープ包みも凄かった。
コロダイのたっぷりの旨みが、薄い皮クレープ生地の中に閉じ込められて、ほっくり。
酸味と出汁が効いたソースを絡めると、完全バランスの旨み完成。
脇に添えられたジロール茸も強いアクセントになり味がビシッと締まる。
(9)ブレス産の鳩のロースト
メインの肉料理が、もっともシンプルな調理。
ところがどっこい、完璧な火の通り具合に仕上げられて出てきた。
鳩の旨みや、血っぽい感じも、ベストな状態。
めっちゃ手間かかってるやん。美味しいよぉ。
(10)デザート:杏のコンポートのマリレンクネーデルとバニラアイス
シュークリームが焼き上がる前の半生状態の生地が、艶かしい食感。
そして、そういう中間状態にある、微妙なバランスの旨み。
アイスクリームの冷たい甘みや、杏の仄かな酸味や甘みと合います。
(11)デザート:モーツァルトパラチンケン
デザート2品目。ここで凄い仕掛けのやつが出てきた。
クレープ生地の下には、2層のピスタチオアイス。その間にチョコレートムース。
口の中に入れると、クレープ生地の脇からピスタチオアイスがはみ出てきて、
口腔の上と下でその冷たさと甘さを感じ、更に咀嚼するとピスタチオアイスの間から
甘いチョコレートムースが出てきて舌の上に乗っかり甘さを感じる、という計算。
凄いな、これ。
(12)小菓子と食後の飲み物
柔らかめ食感で、舌に馴染む小菓子。最後まで美味しい。
コーヒーも美味でした。
また行きたいです。
ご一緒して下さった皆さま、ありがとうございました。