陶酔さんが投稿した鮨 安吉(福岡/博多)の口コミ詳細

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鮨 安吉博多、櫛田神社前、祇園/寿司

1

  • 夜の点数:4.5

    • ¥20,000~¥29,999 / 1人
      • 料理・味 4.5
      • |サービス 4.0
      • |雰囲気 4.0
      • |CP 4.0
      • |酒・ドリンク 3.0
1回目

2015/06 訪問

  • 夜の点数:4.5

    • [ 料理・味4.5
    • | サービス4.0
    • | 雰囲気4.0
    • | CP4.0
    • | 酒・ドリンク3.0
    ¥20,000~¥29,999
    / 1人

若い店主の人柄

 板さんが少しシャイで、ひたすら料理のことをいつも考えていることが分かる。たまたま認められてすごく予約も取れなくなっているようだけれど、どうやって今のスタイルを確立していったのか、興味深い。
 この日、僕はたまたまキャンセルがあって、入れたみたいだ。そりゃ、このレベルでこの価格なら、予約は1か月前から一杯でしょうね。

 料理はほかの方が書いておられる通り。
 テンポよく一口大のおつまみが流れるように繰り出される。
それぞれによい仕事であるし、同じ食材を食べて、いつも感じていた違和感を完全に払しょくしてある。はやしさんが言っていた通り、修行中にひたすら疑問を感じそれを解消していったらこうもなるだろという料理だ。定番料理には疑問があふれている。その解決方法は実現すればそうややこしいものではないのだが、そこのたどり着くまでには並大抵ならぬ努力が必要なものだ。クックパッドを見てそう簡単においしい料理はできない。

・タコ 温かいまま出すので、うまみの点では少々あっさりになるが、ともかく柔らかい。柔らかいタコなるものは何度も食べたが、本当に歯触りが自然なのだ。ある意味、サクッと歯が入る。このタイミングでこのタコだから成立するのだろう。これはタコの柔らかさを楽しむ料理だ。
・白エビ ピンと張りつめた昆布締めで、エビからは適切に水分が抜け、おそらくは熟成利尻であろうすっきりとした昆布の香り。白エビが二チャットしたり、醤油で味わいが台無しになったりしない。
・カツオの醤油漬け 季節によって魚は変えるのだろうがしっかりとした漬け。和ガラシのアクセントが重要である。しっかりした醤油漬けを自分で作ってみると分かるのだが、この漬かり方の按配はなかなか難しいものだ。
・・・
と10数品が出てくる。
 生姜も良くできている。新生姜だと思うが、適度に辛みを抜いて、柔らかく、甘酢も不必要に強くない。おつまみサイズに切って供される。生姜を食べて、辛すぎたり、酢が強かったり、硬かったり、大きすぎたりした思いがすべて調和されている。なので、ついたくさん食べてしまう。椎屋さん、意識してやっているに違いない。なんとなくやってこんな風に出来たりはしない。すべての料理がそうだ。理解して、努力して、最適点を見極めた料理だ。
 アナゴを骨切りして、炙って食べるのは高橋さんからならって、僕も自宅でやる。ここでは、皮を剥ぎ、両側から切目がクロスになるように包丁を入れる。うなった。なるほどこうやれば、皮を残さなくても骨切りできる。対馬のアナゴのほんのりとしたピンクの身が美しい。おろした後の丁寧な処理ということになる。これを少し甘いたれにつけて、レンジで炙って醤油を少し焦す。中はレアである。アナゴの刺身は美味であるが、洗いすぎて触感が悪くなったり、臭みがいくらか残ったりするが、こうやって炙れば脂も活性化されて、しかもレアのうまさも残り、味の良さが焦げたしょうゆで引き立つ。
 カマスの押しずしにも考えさせられた。もちろんカマスは干して水を抜くのだが、ここではその抜き方が実に自然で、カマスの臭いはない。多分軽い酢締めにしてあるカマスは皮目をあぶってあり、シャリは、甘さを強調し、ゴマ、生姜スライス、芽ねぎを仕込んで押し鮨にしてある。削り昆布を適度な濃度の醤油漬けにしてありそれを撒いて包丁を入れる。素直なカマスのさやしいうまさが、甘めの飯にしみこんでいて、アクセントの薬味が心地よい。棒寿司とは時間がかかる料理なのであるが、よくできている。
 きりがない。ほんの一口の品で、すごくたくさん考えることがあるのだ。
 この日のベストは、大振りなイサキ(市場で特に頼んで取り置きするらしい)の白子。真子のめんたい漬けも良かったが、白子がすごい!タチもフグも素晴らしいのではあるが、ちょっとこんなに上品で甘くとろける白子には驚愕した。ほんの少しばかりなんだろうが、真子は珍味であるが、白子は正統派の堂々たる食材であった。
 叩いたホタルイカの味噌和えの杉板焼きが、つまみの最後。これがまた行けてる!適度に叩くのって実は簡単ではない。いくらかホタルイカの肉の感触が残りつつ、臭みなく内臓と合わせ、程よい感じに焼き味噌風に仕上げる。
つまみの品数は、どういう理由か知らないが、両側の二組よりも僕がたくさん出た。たくさん飲んだせいかもしれない。

本当にきりがないな。どれも記憶の中にしっかりと刻まれているので、メモも不要だ。
うまいものは一人に限るよ。にやにやしながらおっさんが感動して一人で集中して一口一口ゴチャゴチャ考えながら食べているのだ。お気に入りの人が隣にいればそれはまた素晴らしいのではあるが、一人もまた良いものだ。エチェバリ、また一人旅しようかな。

 寿司も感動と疑問の連続。
やりイカから。嘘っ!ってレベルの包丁の冴え。弥七さんもすごいし、寿司屋ならだれでもイカこそが包丁の冴えを発揮する料理なのだから、これに素直に感動するということは技術の的確さを物語る。とても素人の僕にはこれは無理だ。腕も包丁もまな板もお話にならない。イカとはうまい食材なのだが、そのうまさを理解するまでの僕はずいぶんと時間を要した。そして、にぎりとはこうあってほしいということを体感できる。頭の中で、にぎりの立体構造イメージがぐるぐる回ってしまう。そこまで専門ではないが、コメの選択、水加減、炊き方、酢の種類と量、握る力加減、シャリとのバランス。これらか調和して初めてにぎりになる。ネタと一緒に噛み込んでいって、ネタのうまさをシャリがしっかりと引き受ける。シャリには空気がいっぱいだから、ネタのうまみとすぐに一体化し、シャリの粒感が心地よく歯ごたえを生み出していく。ゆっくりと噛み締めていき唾液と混在しうまみが口いっぱいに広がり、シャリとともに喉の奥に消えていく。
他のネタはまあいいや。

 ワインはプイィフメ2011Demiのみであったが、悪くはない。まあまだ若くてそう楽しいワインじゃない。少し温度が上がったほうがロワールのソーヴィニヨンブランのミネラルと果実を感じてよろしい。小さいグラスビールから始め、燗、冷も並べて楽しんだ。一人で。
 プイィヒュメともっとも合ったのはアジだった。
 中トロには燗だった。酸を感じる良い中トロだったが、これを同じ固体の赤みの漬けには酸が感じられなかった。どうしてなんだろうか?
 酒に関してはこだわりがある冷酒が多くそろえられている。が、この点の問題はまだ解決できていない。寿司は完成しているが、マリアージュになっていない。多様な料理が出てくるとき、酒はどうあるべきなんだろうか?Nさんの意見を今度聞いてみたい。30品出てきて、ワインなり燗なり冷なりを合わせていくのは不可能ともいえるだろう。だから好きなのを飲んで良いか?
 酒も料理のうちなのであり、本当はお仕着せでもよいから、合わせて出してほしい。じゃ、お猪口30杯なのか?そうなのだ。そうやって欲しいのだ。ウィーンのレストランで10皿コースグラスワイン付、トロンハイムのイタリアンでも6皿ワイン付ですごく楽しかった。さらにすごいワインが飲みたければ、食後に開ければよろしい。酔っぱらいたければ別の店に行けばよろしい。ブログの内容になってきたのでこれくらいにしておこう。

 にぎりで気になったのは、どれもこれも煮切がしっかり塗られるので、ある意味飽きてくる。これだけは改良の余地がある。
鮨であっても、熱い冷たいのアクセントもつけられるだろう。熱いのが最後のアナゴだけではなくても良いのではないか?
 にぎりでは唐津の赤うにが素晴らしかった。ウニのにぎりも仕事をする。握り飯に乗っけて食べさせるくらいは誰でも今ややるが、そこに手酢でそっと最後に一握りして出す。これがまた決まっていてうまい。ただしである、追加でもらってはいけない。感動は瞬間の出会いであり再現はしない。こうして見ると、流れは味わいの変化がしっかりと盛り込まれていることに改めて気づく。
 最後の泡立てた卵白のふんわりしっとりした卵焼きにはまた最後の感動がある。何気なく口にいれたら、爆発だ!これを読んだ人はこの感動を得られないのだからかわいそうでさえある。

価格は安い。これだけの仕事でこの価格だ。1.5倍くらいにして、客を減らして、好きな料理をさらにやればいいと思う。

 何が良かったか改めて考えるけれども、すべてに配慮が行き届いている。吉富さん、太田さん、すごいけれど、ここまでもまた、素晴らしい職人に出会えた。努力も含めて才能とは素晴らしい。上野さん、修くん、ひたすら努力をして、その土地土地でよい仕事をしている人に出会える僕は実に幸せで、自分の料理も充実するな。地元の舌に合わせる料理をしなくてよい幸せをここの店主も今は味わっていることだろう。
 店の入り口も風情があり、ふらりと入るような場所ではない。内装も器も料理に合っている。グラスも薄く、行き届いている。和らぎ水も優しい水がさりげなく出てくる。料理だけではなく、料理をいただく側の目線ですべてに配慮が行き届いているのだ。が、トイレにはもう少しやるべきことがある。気持ちが良いトイレというものが存在する以上、頑張れ!

 料理はお任せのみ。そういう芸術的料理の店だ。文句などない。我々より彼の方がうまいものは分かっている。そして彼のペースで出すので、だらだらといつまでも居続けることにはならない。なので、この店は必ず2回転できる。3回転目があるのかどうかは知らないが、彼の能力と見合ったやり方だ。

 料理は最後は、職人の自分の舌のバランスだと思います。食材はあるもので何かできる。最高のものを使えばそのように、そうでなければそれなりに。でも、彼はその日のベストを選ぶことができる店を作り上げ、自分がやっていることを分かって出している。すごいと思う。本当に真剣勝負。そして、若い彼は驕っていない。
 ここまで来たな、という感慨もありそうだ。若いので次の発展(決して、多店舗展開や、金儲けではない)を芸としての料理に期待したい。

2015/06/16 更新

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