東京国立博物館の「禅 こころを形に」再訪しました。
内覧会の時には、目に止まらなかったことなどを覚書。
■大仙院方丈障壁画 《四季花鳥図》狩野元信「狩野派」という名はよく耳にしますが、
その全体像は、イマイチ理解できていません。
狩野派の絵は、まだ見た点数が少なく、それぞれの情報がつながっていません。
鑑賞を重ねるうちに全体像も見えてくるのではと、その都度、記録メモに。
◆狩野派 (wiki phedhiaより)
狩野派は、日本絵画史上最大の画派
室町時代中期(15世紀)から江戸時代末期(19世紀)まで、約400年に渡り活動。
常に画壇の中心にあった専門画家集団。
始祖:室町幕府の御用絵師となった
狩野正信 室町幕府崩壊後は子孫は、織田信長、豊臣秀吉、徳川将軍などに
絵師として仕え、その時々の
権力者と結び付いて常に画壇の中心を占める。
内裏、城郭、大寺院などの障壁画から扇面などの小画面に至るまで、
あらゆるジャンルの絵画を手掛ける
職業画家集団として、
日本美術界に多大な影響を及ぼす。
狩野派は、親・兄弟などの
血族関係を主軸とした画家集団で、
約4世紀間の長期にわたって
一国の画壇に君臨したという点で、
世界的にも他にほとんど例を見ないものである。
〇これまでの鑑賞これまで狩野派の絵を見ても、あまりよくわからないし、
あまりピンとくるものもありませんでした。
東京国立博物館の狩野元信
大仙院方丈障壁画 《四季花鳥図》を見ても、
他に気になるものがあり、横眼に見た程度でした。
再度、訪れて、よくよく見ていたら、これって、すごくない?
狩野元信の絵だったのか・・・・
五百羅漢で注目された人だっけ?
◆狩野元信(p417 図録より)
狩野派の始祖
狩野正信の長男で狩野派の2代目。
多くの弟子を育成し、狩野派の体制を築く。
大和絵師が手がいていた金碧画などの技法や画題の導入に成功。
父の端正な画風を継承しつつ、いっそうの
明るさを加え、
より強く視覚に訴えかける画風を確立。
(名前はよく耳にしていましたが、マイナーな人かと思っていました。
村上隆が五百羅漢でスポットがあてられ、急に知られるようになった人
ぐらいにしか思っていなかったのですが、
狩野派の二代目で、その体制づくりをした主要人物だったんですね)
そんなことなども知らずに、再度、ゆっくり見ていたら、
なんだかよくわからないけど、この絵ってって、本当はすごいんじゃない?
って思い直しながらの鑑賞でした。
図録を見ると、
・
豪華華麗を代名詞とする
桃山障壁画の登場すら予感させる。
・元信が
画壇に君臨するであろうことは、この画を見ただれもが思ったに違いない
とあり、「うん、うん、それ、わかる、わかる・・・・」
当時の人でなく、今だに狩野派ってなんぞや?と思っている私にも、
これは、すごいわ・・・・って思わせてしまう力を持っていました。
何にも知らないのに「これって、すごくない?」って思った時というのは、
海北友松の時もそうでしたが、
桃山時代の水墨画でした。
琳派中心に江戸時代の絵を主に見ていましたが、時代をさかのぼると、
もっとすごい絵師がいて、
有無を言わせない力を持ってる
というのを見せつけられる経験をしていたのですが、またしても・・・・
という気がしました。
知識や絵のストリーなど、何もわからなくても、迫ってくるものがあるんです。
あとでその背景を知って、やっぱりそういうことだったのかと納得させられるのです。
□大仙院方丈障壁画 《四季花鳥図》・遠景・中景の表現 くっきりぼんやりの絶妙なバランス。
・水の勢いの表現が・・・・
其一展でスケッチに残した、数々の勢いあまる水表現を見ていましたが、
それとは全く違う怒涛のような水。
・返り水の飛び散り方が勢いあまる描写
・勢いのよい滝を挟んで、右側の遠景の静かな海、左の岩に波打つ海
・水墨画の景色に、着色された鳥や植物。
・急落下する直線的な水と曲線にうねる松の対比
もう、溜息ばかりでした。
[実際の状態を考えながら]
4面、4面の8面が一列に並んでいますが、
この掛け軸は、本当は襖でどのような配置で並んでいるかの解説図があったので、
頭の中で、左側の4面を直角に置き直してその中に、
身を置いてるつもりで見てみました。
部屋の中に存在した時の画面構成・・・・
そんなイメージができるのも、建仁寺で方丈の襖絵空間を経験したからかと。
実際に空間で見たという経験は,こういう時に、生きてくるのだと思いました。
海北友松の《雲龍図》の中に身を置いた感覚。
その作品がデジタル画像であったとしても、この襖を実際の空間イメージに置き換える手伝いをしてくれます。
1513年作・・・・室町時代
狩野派って江戸時代なのかと思っていたら、室町時代から・・・
これが室町時代の絵だとは思っていませんでした。
□海北友松の《竹林七賢図》(1599年)
今回、前期の展示だったので見ることができませんでしたが、
海北友松の《竹林七賢図》は、建仁寺で見ていて、
人物がモチーフになった絵は苦手だなぁ・・・・
よくわからない・・・と思って、スルーしていたものです。
ここで、実物を目にできていたら、デジタル画像を見ていることもあり、
興味は持てたはず。受け止め方もできたのかもと残念でした。
狩野元信って、海北友松よりも前のの人だったんですね。
■南禅寺本坊小方丈障壁画 うち《群虎図》 狩野探幽関連情報
◆南禅寺 境内内案内図
・
案内図 ・
境内案内 ・
本坊略図 ・
本坊入り口・
南禅寺 本坊(図面あり) ・
群虎図・
方丈庭園 ・
妙心庭・
山門 ・
法堂 ・
南禅院(出典:ワタシャジ ~ワタクシの社寺めぐり(とか)~)
10年ほど前に見た、狩野派の虎の絵は、どこのお寺のどの絵だったのか・・・
いろいろ、記憶をたどってみると、
南禅寺本坊小方丈障壁画 《群虎図》 狩野探幽のような気が気がしてきました。
図録に描かれた解説(p419)
竹林を舞台に
「うずくまる」「疾走する」「あたりを伺う」「水を飲む」様々な虎と豹の姿
確かこんな感じの絵だった気が・・・・
そして、その襖を見た時に、
虎の威厳のようなものをあまり感じなかった記憶がありました。
この虎だとしたら、そう感じておかしくないかも・・・と思われました。
今見ても、虎と豹が猫のようにじゃれ合っているような・・・・
それをほほえましく眺めて見ている親の視線のような・・・
そして岩にくりぬかれた穴が気になった記憶もかすかによみがえってきました。
それにしてもこのような虎ばかりの襖が40枚というのは圧巻。
写真や図面から、どのような構成になっているのか探ろうとしてみましたが、
40枚の画像は探すことができません。
現在、虎の間は、常時公開されているのかどうか・・・・・
デジタルアーカイブの展示なのか・・・
■長谷川等伯 竹林猿猴図屏風 相国寺長谷川等伯だ・・・ 猿だ・・・・
まあ、いいやとスル―していましたが、等伯の代表作らしいということで、
再度、鑑賞。
樹木は松の古木から
葉の茂った広葉樹に変化・・・・と解説にありますが、
図録ほどはっきり描かれているわけではなく、退色してしまっています。
これが松? これが広葉樹?
双眼鏡でつぶさに見ましたが、そう思ってみても、そうかなぁ・・
という感じでした。ほとんど見えない・・・・
お猿さんは、
毛並みがふさふさ・・・
この猿は、
牧谿の猿猴図を参考に描かれたらしいのですが、
牧谿って誰? 知らないし・・・・
どこかで展示されているかと思ったら、そういうことではないみたい。
そういえば、この絵の前で、たくさんのお連れの方を携えて、
「牧谿がいたから、これが描けたわけだね」と話しながら、
通り過ぎていったお笑いの大御所の方と遭遇しました。
牧谿の猿を調べてみると・・・・
〇
南禅寺とドラッカー・コレクションの猿の系譜 〇
猿猴図の系譜猿表現も、いろんな人が、いろいろに描いていたわけですね。
そういう一つ一つを見ながら、鑑賞を積み上げてこそいろいろわかってくるというもの。
ここで、ちゃんと見ておくことは、その後に何か、ヒントを与えてくれることを期待して・・・・
牧谿は、
母子の深い情愛、いてつく
寒さに耐える姿から自然の厳しさ等伯は、
明るく楽しい。
父と子の理想を表現。
という解説がありましたが・・・・
等伯の親子は、確かに表情に柔らかさがあったようには感じられましたが、
牧谿の猿を見てないし・・・
たまたま、この猿がそういう猿だったということで、
他の猿は、また違うのでしょうし・・・ なんて思っていることをメモ。
《松林図屏風》は、なんとも言えない空気感を感じさせられたのですが
(美の巨人たちで見た時)
こちらの松、広葉樹は、
図録だと、微妙なニュアンスや、
墨の表現の絶妙な描かれ方を感じさせられるのですが、
本物は、ほとんど退色してしまっている感じで、よくわかりませんでした。
図録ってやはり、
色が協調されたり、墨の濃淡も明確に補正されているようで、
実物とニュアンスが変わってしまいます。
もしかしたら、《松林図屏風》も実際見たら、あれ? と思ってしまう可能性がありそう・・(笑)
と思いながらも、今回、展示されていた他の等伯の絵。
《阻師図》
等伯ってこんなにも、画風が違うの? と戸惑ってしまいました。
⇒
等伯の作品2(
出典)
筆の癖によって作者がわかると山下先生はおっしゃっていましたが、
等伯のこの変化も、わかるのだろうか・・・・
常設展に行ったら、そこにも等伯がありました。(⇒写真)
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【展覧会情報】
■展覧会名:特別展『禅―心をかたちに―』
■会期:2016年10月18日(火)~11月27日(日
前期展示=10月18日(火)-11月6日(日)
後期展示=11月8日(火)-11月27日(日)
■会場:東京国立博物館 平成館
*写真は、常設展で展示されていた等伯