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昼の点数:4.8
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¥1,000~¥1,999 / 1人
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料理・味 4.8
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|サービス 4.8
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|雰囲気 4.8
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|CP 4.8
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|酒・ドリンク 4.8
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[ 料理・味4.8
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| サービス4.8
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| 雰囲気4.8
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| CP4.8
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| 酒・ドリンク4.8 ]
海街にあった名前。。
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2025/09/06 更新
鎌倉と江の島の間に「腰越」というところがある。
鎌倉から江ノ電に乗り、美しい海岸を抜けて江の島に着くひとつ前の駅がその腰越だ。
腰越から江の島までは、海岸線より一本中の一般道。その道路の真ん中を江ノ電が走っている。
昭和の街並みと路面を抜ける江ノ電の姿が情緒を醸し出し、電車であれ車であれ、この区間を通ると必ず記憶に残る。
海の仲間から、その腰越にある中華そば屋が美味いと聞いたのは7〜8年前のことだった。
線路沿いの店の前を通るたびに長い行列を目にするが、なかなか機会に恵まれなかった。
少し忘れかけていた頃、仲良しのラーメン評論家・大崎さんがSNSで「RDBや食べログでそんなにポイントは高くないけど行列店」と書いていた。その言葉に再び興味を惹かれた。
続けて「出てきたラーメンは相当ラーメンが好きなんだろうな、という仕上がり。心に響くラーメンだったのでこれを作ってる人がどんな人なのか、知りたくなり…」と綴っていた。
そこで早速、食べに行った。
無化調で強いこだわりを感じさせるスープは、抜群にバランスがいい。
気づけばスープの減りが異様に早く、麺を食べ切るのと同時に丼の底が見える。
そんな経験は初めてだった。
その後何度か足を運んでも、やはり同じように食べ終わっていた。あれほど自然に完食へ導く一杯には、未だ他で出会えていない。
その店「トランポリン」が、旭川の隣町・東川に移転すると聞いた。
オレには札幌に実家があり、年老いた両親の見守りで年に5〜6度帰省するので、同じ北海道。早いうちに寄れるだろうと思っていた。
けれど、腰越なら渋滞しても1時間かからず行けたのに、札幌から東川までは車で2時間半以上。片道160キロ。気軽な距離ではなく、訪れるのは一日仕事になる。
今年の春、うちのアチキが「大雪山に行こう」と言った。
ヤツにとってはうちの実家への表敬訪問も兼ねていたのだろうが、どうやら日帰りで“さささっ”と行ける山域とイメージしていたらしい。
うちの山行スタイルからすれば、大雪山はそんな簡単に対峙できる相手ではない。だからまずは手始めに、一泊二日で旭岳から白雲岳をぐるりと縦走する計画を立てた。
入口も出口も旭岳=東川町。ならば下山後の目的地は「トランポリン」で決まりだった。
白雲岳避難小屋を朝3時半に出て、大自然の中をひたすら歩き、予定より少し遅れて午前10時に下山。車で向かうと、店の前の駐車場はほぼ満車で、外には7〜8人の列ができていた。
40分ほど待って入店すると、懐かしい木札が迎えてくれた。
札がなくなればそのメニューは売り切れ。腰越時代から続くトランポリン独自の仕組みだ。
メニューは中華そばと限定の二種。オレは限定そば(塩)を選んだ。
麺は腰越の頃のように選ぶ余地はなく、一種類の自家製麺。
だが、ひと口すすった瞬間、その制限がむしろ自然に思えた。
スープに寄り添うために調律された麺は、余計な選択肢を排したぶん、こちらの意識をまっすぐスープへと導く。
スープは以前と同じく無化調。魚介の輪郭がくっきりしていながら出しゃばらない。
口に含めば素材の声が澄んで響き合い、最後に小さな余白を残して消えていく。
腰越で最初に飲み干したときのあの感覚が、北海道の空気の中でふたたび立ち上がった。
江ノ電の音が聞こえた。丼を手に窓の外を見やると、腰越のあの道路を思い出す。海風とともに江ノ電が走り抜けていた光景。
その記憶が、いま東川の広い大地と結びつく。
移動距離は160キロどころではなく、海から山へ、鎌倉から北海道へ。けれど「トランポリン」のラーメンは、その隔たりを軽々と飛び越えて、変わらぬ場所に着地していた。
食べ終わると、自然に笑みがこぼれた。やはり、スープと麺は同時に消える。
レンゲを傾ける右手と箸を動かす左手のリズムが、不思議と同じテンポで進んでいく。
偶然ではなく必然の構造。
ラーメンに仕組まれた跳躍装置。それが「トランポリン」という名の意味なのだろう。
旭岳からの下山後、靴底に残る土の匂いと、身体にまとわりついた疲労感。それらすべてを受け止めるように、一杯の中華そばが腹に収まった。
山と海、そして一杯のラーメン。その三角形を思い描いたとき、旅はひとつの完結を迎えていた。