『飽きないということは凄いこと。』くいしんぼうヤマゲンさんの日記

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くいしんぼうヤマゲン (60代前半・男性・埼玉県) 認証済

日記詳細

7月25日西東京市保谷庁舎に隣接しているこもれびホールで、自分が一番聴く機会を持っているピアニストである
伊藤恵さんのピアノリサイタルを妻と聴いてまいりました。

こもれびホールは初めてでしたが、660席ぐらいながら二階席がないせいか、奥行きが深く
また壁に石材が組み込まれた硬質な響きが豊かなホールでした。
そこで前半が伊藤さん得意のシューマンの曲にシューベルト楽興の時、後半がショパンの
幻想即興曲、子犬のワルツ、最後に12のエチュード作品25というプログラムでした。
今回もどれも大いに楽しませていただきましたが、最初はホールの響きとピアノの関係か
やや高音が目立つ時もありました。しかし次第にホールもピアノも含め素晴らしい音のそして
素晴らしい演奏堪能しました。どのようなホール、ピアノでも伊藤さんは条件を選ばず
ハイレベルな演奏を展開します。そして何回聞いても飽きない。凄いとおもいます。
もちろん自分のピアノをどの会場にも持ち込んで演奏する方もいますが、それも立派なこと。
要は素晴らしいピアノを聴かせていただくことが何よりですから。

前半のシューマン、シューベルトそしてショパンのはじめの二曲も素晴らしかった。
特に楽興の時は今年3回目ですが、聴くたびに進化しているような気がしますし、前回は
紀尾井ホールでしたが、ホールに響きの違いも興味深かったです。
しかしショパンのエチュードは圧巻。エチュードは抜粋で演奏されることもあるのですが、
12曲通して弾くのがどれだけ大変であるか良くわかりました。7曲目ではその素晴らしさで眠気で
なく、意識が少し遠のきましたし(カミサンは撃沈です・・・)、一気にひき切ったラスト3曲の凄さには
呆然とするばかしでした。

しかしとてもタフな恵さんが弾き終わったあと疲れた表情を見せたのは珍しい。本人もおっしゃってましたが、ハードだったのでしょう。それでもアンコールにマズルカ一曲弾いてくれて、とても充実した
リサイタルとなりました。ホールから出た時サイン会に向かう伊藤さんに出会い、伊藤さんのほうから「いつも来ていただきありがとうございます。」と声をかけていただいたので、「エチュード熱演でしたね。」行ったところ「暑かったからね。」いつもの気さくな笑顔でおっしゃってました。
そしてサイン会で妻とともにサインもいただき、ホールを後にしました。
その夜は蒼天の美味しい焼きとりまた食べることができたのは口コミの通りです。

このリサイタル正直お客さんあまり入ってませんでした。でもシューマンが終わった後「こんな
暑い日にこんなにたくさんの皆さんに来ていただきうれしいです。」とステージから話しかける
伊藤さんの人柄にもいつも感心します。彼女はクラシックの女流ピアニストとしてもちろん日本の
トップクラスの評価を受けています。(NHKの名曲探偵などにも出演しているのですが。)しかしレコード会社も地味なせいか、一般の知名度はその実力に見合った物ではないようです。また首都圏での
各地の中ホールのリサイタルでも満席になることはまずありません(紀尾井ホールの春を呼ぶコンサートは例外です)。しかし常に印象深い演奏を聞かせてくれます。

自分が店の料理で飽きの来ない美味しさという表現をよく使うのですが、それは自分にとって最高の
褒め言葉です。飽きの来ない料理を出し続けることは無難にやるだけは不可能。その根っこに卓越した実力と情熱と探究心がないとだめだと思います。ですからまず自分にとって飽きがこないそして何度も足を運ぶ存在が最高なのです。もちろんそれに世間の高い評価とが一致すればもちろんうれしいです。

クラシックでそのような存在は、ピアニスト伊藤恵さん、指揮者マリス・ヤンソンス、オーケストラで
東京交響楽団。この三つです。いずれも10回を軽く超えて足を運んでます。ヤンソンスは1977年の
初来日鹿児島で聴いた演奏は悲しいぐらいひどかったけど、96年オスロ響の見違えるような演奏を
聴き、それ以降来日時は必ず一回は聴いてます。ことしは川崎のマーラー楽しみ。

そして料理では5点の3軒でしょうか。(4.5点の店にもありますが。)レカン、おおの、ヌーヴェルエールに
共通しているのは飽きるどころか、これからも何度も足を運びたいと思っていること。
でも音楽にせよ、料理にせよ、東京を含む首都圏に住む素晴らしさを忘れてはいけませんね。



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