kanamilkさんのマイ★ベストレストラン 2012

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呑兵衛年寄りの呑み喰らい放浪記

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kanamilk (60代後半・男性・東京都) 認証済

マイ★ベストレストラン

レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!

コメント

今年は味だけでなく、居心地の良さを重視してみました。
結果として一人で行った店よりもレビュアーの皆さんや友人といった店がほとんどということになりました。
並べてみると、多くの皆さんにお世話になったことが思い出されます。
ご一緒させていただいた方々には心より感謝申し上げます。
なお、10位は12月に閉店した夢民ですが、これは個人的思い入れです。

マイ★ベストレストラン

1位

神田まつや 本店 (淡路町、小川町、新御茶ノ水 / そば)

1回

  • 夜の点数: 4.7

    • [ 料理・味 4.7
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 5.0
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク 3.6 ]
  • 昼の点数: 4.7

    • [ 料理・味 4.7
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 5.0
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク 3.6 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥4,000~¥4,999 ~¥999

2015/09訪問 2020/02/28

【再訪】蕎麦屋さんとはこういうものというお手本

【再訪 2015.09】
ちょっと前ですが、名古屋から上京してきたマイレビュアーさんと、昼間酒やりましょうかとこちらにやってきました。
この店は初めてというマイレビュアーさんは、約束の時間の前から店の前でスタンバイ。
運良く行列もなかったので、早速向かって右側の扉から入店すると、「いらっしゃい~」といつもの声。
2人を告げると帳場の前の一番奥の席に案内してくれました。
もちろん相席です。

先に座っていらした方は、一目でご常連さんと分かる方。
軽く会釈をして座らせていただき、ビールと「鳥わさ」と注文すると、「申し訳ありません鳥わさはちょっと」と申し訳なさそうな反応。
鳥わさは都の指導で出せなくなったのだそうです。 残念。
それでもこの店の定番の肴は、他にもいつも魅力的なものばかり。
親子煮、焼鳥(タレ)、にしん棒煮、いたわさと注文して、酒も日本酒の冷やに変更。

高い天井、きびきび動く店員さん、様々に蕎麦を楽しむお客さんを眺めながら、こちらものんびり蕎麦屋酒を楽しみます。
その間お客さんは順次入れ替わるものの、席には常に誰かが座って酒を飲み、つまみに箸をつけ、蕎麦を手繰り、それぞれの会話を楽しんでいます。
この賑わいが心地よいとこはいつ来ても変わりません。

2人で銚子を5本空けたところで、マイレビュアーさんに食べていただきたかった「天ぬき」を注文。
さらに銚子を2本。
丼に2本入った海老天の海老が甘い。
つゆを吸い込んだ衣がまた酒のいい肴。

そろそろこの辺りでいったん〆にしましょうということで、マイレビュアーさんはもり、自分はおかめ。
ここのおかめは、具材の位置がいつも決まっている美人タイプのおかめ。
そういえば、蕎麦はもりかおかめしか食べたことがないかも。
マイレビュアーさんは、つまみにも蕎麦にもご満足いただけたようでした。
ここに来るとたいていの人はよかったと言ってくれる、味はもちろんですが多分懐の深さがそう言っていただける要因ではないかと勝手に思っています。
多分今日はてんてこ舞いの忙しさでしょう。
それでもいつも雰囲気を崩さずにきっと営業されていることかと思います。
細く長くこの雰囲気を残していただきたいものです。

この年越しそばレビューで2015年の締めくくりとさせていただきます。
お読みいただいた皆さん、今年もお世話になりました。
2016年もまたよろしくお願いいたします。


【再訪 2012.09】
神田まつやの本店に連れてってくださいと、ずっと前からお願いされていた約束を先日どうにか果たしてきました。
リクエストをいただいたBさん、神田まつやには子どものころから来ていたという蕎麦通のTさん、北千住ツアー以来久しぶり?にお会いするRさんとご一緒。
4人だと、いろいろつまみも食べられるな、などと風情ある店の前に順番待ちのために並びながら考えていたところ、一仕事思い出しました。
玉子焼きを予約せねば!
今はメニューには載っていない玉子焼きは、手間がかかるからということで、事前予約しないと食べられないのです。
並んでいる間に電話。
「これから伺いたいんですが玉子焼きを予約しておきたいのです」
「かしこまりました。何時ごろお越しになりますか?」
「今、店の前でメンバーが揃うのを待ってます」
なんていうやりとりで予約も完了。

ではメンバーが揃ったところで、向かって右側の入り口から入りましょう。
人数を告げると、いつものオペレーション通り、その人数の合わせた席を指示されます。
いつもながら天井が高く、風情があっていいですねえ。
お客さんも若い方から後期高齢者だろうなという方まで幅広く、みなさんそれぞれにワイワイ楽しそうにお話ししながら、酒を飲み、つまみに箸をつけ、蕎麦を手繰っています。
お客さんは次々訪れるので、常時ほぼ満席状態。
それでも不思議に不快な五月蠅さにならないのが、この店のいつも通りの不思議な光景です。

まずはビールで乾杯。
いつもの蕎麦味噌を舐めてのどを潤した後、酒も追加しながらこの日いただいたのは次のもの。

○鳥わさ 
○棒にしん
○そばがき
○玉子焼き
○親子煮
○やきとり(タレ)
○焼き海苔
ほぼ、神田まつや「つまみ一座」の顔見世興行的ラインナップ。

初めて食べたそばがきは、木の葉の形に成形されて樽に入って登場、4つに切り分け、薬味を好みで入れてそばつゆで食べます。ねっとりもっちりとした歯ごたえで、蕎麦粉の味が口の中にふわっと広がります。またこの蕎麦つゆがいいですね。ネギを入れてチビチビ含めば、そのまま酒のアテになってしまいます。

お隣の方が、一生懸命メニューを探しても見当たらないので怪訝な顔をされていた玉子焼きは、きっちりした小判型。 
Tさんによればこの形にするのに手間がかかるのだそう。
表面に三つ葉がうっすら見えます。
出汁の風味が効いた甘めの玉子焼きは蕎麦屋ならではの味。
みなさんに喜んでいただけたので、やっぱり予約しておいてよかったです。

親子煮は、この店は出汁がうまいということを実証する一品。
出汁とタレのうまさは、やきとりでも実感することができます。

蕎麦はめいめい好きなものを注文。
おかめそばにしてみました。
温かいつゆの張られた丼には、蕎麦の上にもみ海苔が敷かれ、玉子焼き、たけのこ、かまぼこ、甘辛く煮た椎茸、ほうれん草、なると、湯葉が乗ってます。
蕎麦つゆよりも濃い味に煮た椎茸、甘味のある玉子焼き、シャクッとした歯ごたえのたけのこ、風味いっぱいの海苔など、一つ一つに手がかかったなかなか豪華で贅沢な蕎麦。
でも値段は950円と、にしん蕎麦より安価。
実は、昔からおかめそばって好きなんです。
温かい蕎麦は、出汁の旨味がお腹の中に染み渡りました。

この日は大相撲秋場所の初日の前日ということで、呼出さんによる触れ太鼓がちょうど回ってきました。
一層の江戸風情を味わってこの日は打ち止め。
1人4,000円ほどで、味も雰囲気も楽しめて得した気分の一日でした。
ご参加いただいたみなさま、どうもありがとうございました。


【最初のレビュー2011.09】
マイレビュアーのM氏から神田か新橋辺りで飲みたいとメール。
蕎麦屋飲みもしてみたいということなので、そんじゃあ神田まつやでしょう、ということで、久しぶりに夕方やってきました。
この辺りは戦争でも焼けなかった貴重なエリア。
戦前からのものというお店の構えは老舗の風格そのもの。
店内にかけてある昔のこね鉢や柱時計、高い天井、柱や梁からも歴史を感じることができます。
それから、入口は店の正面に立って向かって右側、出口が左側ですから出口から入らないようにね。

食べログを始めてから訪問したのは初めてですね。
その前は何度か訪問させていただいていて、ある時は午後一の仕事が終わった2時過ぎから酒を飲み始め、メニューに乗っていた肴を全部食べてもり蕎麦で〆たこともありました。
この店は通し営業ですから、昼間っから飲んでいる方もけっこういますよね。

さて、まずはビールでのどの渇きを潤します。
サッポロの赤星があるんですよね~。
酒を頼むと蕎麦味噌がちょこっと付いてくるのも蕎麦屋らしいサービスです。

蕎麦屋ですからもちろん蕎麦がメインなんですが、蕎麦に使う種ものが蕎麦前の肴になっているところが老舗の蕎麦屋さんらしいところ。
焼鳥の鶏は鶏南蛮、かまぼこはおかめ、焼き海苔は花巻、にしんの棒煮はにしんそば、天種はもちろん天ぷら蕎麦に使うもの。
それがおつまみとして出されてくるところは、昔からの蕎麦屋さんのやり方を受け継いでいるものですね。

今回は鶏わさに焼鳥、焼き海苔といったところからつまみにいただきました。
鶏わさの上には、わさびとともにたっぷりの白髪ネギが乗っています。
鶏はキレイな色をした新鮮そのもの。
ちょっと湯引きしてあります。
焼鳥は塩でいただきましたが、脂の乗ったいい鶏です。
その脂を吸った葱もまた美味しです。
焼き海苔は厚みがあってパリパリ。
適当にちぎって山葵を乗せて醤油をちょっとつけてもよし、蕎麦味噌を乗せて食べても良しです。

こういうつまみがでてくるとやっぱり酒ですね。
日本酒は菊正宗だけなので、それをぬる燗でいただきます。
追加したつまみは、にしんの棒煮。
しっかり甘辛の醤油味に煮込まれたにしんは、もちろん蕎麦に乗せたら絶対美味いと思わせてくれますが、酒のアテにも最高です。
山椒をちょっとかければ、香りもアップ。
ついお銚子をもう一本追加してしまいます。

こちらで嬉しいのは、メニューには書いていませんが、天ぬき、鴨ぬきもやってもらえること。
他の席のお客さんの中には、かき揚げ蕎麦の上だけをまず持ってきてくれと注文して、お銚子を空けている方もいらっしゃいます。
我々は今回は天ぬき。
丼に張られた温かい汁に、海老の天ぷらが2本と三つ葉、結んだかまぼこが入っています。
温かいものが食べたいなと思う時はこれがいいおつまみになりますね。
プリンとした海老ももちろん美味しいですが、汁を吸った衣もまたいい味を出しています。

温かい汁物でお銚子を空けたら、もり蕎麦で〆にいたしましょう。
相変わらず風味のあるふくよかな旨味の蕎麦です。
喉越しのいい二八。
汁はかなり濃い味の江戸の辛汁。
このくらい濃いから、そばをつけるのは半分未満で十分です。

店内は6人掛けと8人掛けのテーブルなので、相席は当然。
みなさん賑やかに酒を飲みつまみを食べ、そばを手繰っています。
奥様がちゃんと両手でご主人にお酌をしてあげている老夫婦、背筋をきちんと伸ばして蒲鉾と焼き海苔でお銚子を重ねる紳士、子どもにこの店のうんちくを語って酒を酌み交わしているお父さん、職場の話題で盛り上がるサラリーマン、蕎麦屋デートらしいカップル、今度は○○にも行ってみようよと語り合っている蕎麦屋巡りの方、いろんな方々が、それぞれの話題で話しています。
でもそれが騒がしくも五月蠅くもないのがこの店の不思議。
お客さんの賑やかさがこの店の+の活気になっているのを感じます。
誰でも気軽に入って一杯やっていける蕎麦屋さんの気取らない雰囲気が、店の中に染み込んでいるんでしょうね。

店内の女性スタッフの目配りや連携もお見事。
荷物のあるお客さんには、「お荷物をお持ちしましょうか」と声をかけたり、席の埋まり具合を把握して、次に来る客が何人かによって案内する席をみなさんで目配せ確認していたり、てきぱきと動かれています。

料理だけでにとどまらない老舗の力を感じさせてくれる総合力の高い店だなと、こちらに伺うたびに感じさせてくれます。

帳場に座るのは大旦那。
うちの職場の大先輩と昔の同級生だったそうで、勘定の際に昔の話を懐かしそうに語っていただいたときは、物腰の柔らかい一方で気骨もある方だと感じました。
いつまでもお元気でいていただきたいものだと思っています。

  • おかめそば
  • 天ぬき
  • 板わさ

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2位

手打ち蕎麦処 火群 (新井薬師前、沼袋 / そば、居酒屋)

1回

  • 夜の点数: 4.0

    • [ 料理・味 4.1
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 4.1
    • | CP 3.9
    • | 酒・ドリンク 3.9 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥5,000~¥5,999 -

2012/11訪問 2016/05/05

女将さんの心遣いが行きわたるくつろぎのお店

【再訪2012.11】
蕎麦のお師匠さんレビュアーさんからオフ会のお誘い。
師匠の命とあらばと、喜んで馳せ参じました。
この日は7名のレビュアーさんでカウンター席を貸切。
みなさん豊富な話題とお店の情報をお持ちで、たいへん楽しい時間を過ごさせていただきました。

この日は3,000円の料理コースとのこと。
しかし、この日の女将さんの気合の入り方には脱帽。
どの料理も丁寧に作られ美味しいものばかり。
その美味しい料理が、3,000円でこんなに出していただいていいんでしょうかと恐縮してしまうくらいたくさんのものを出していただきました。

まずは、煎り銀杏と前菜の盛り合わせからスタート。
銀杏はほっくりして美味しいです。
らっきょうのもろみ和え、おくらのおひたし、鴨ロースの燻製の前菜は、生ビールから早く日本酒に替えろと催促されるかのようなアテです。

続いて〆サバ、大トロ、赤身、鯨ベーコンの刺身盛り合わせ。
〆サバは残念ながら食べられないので、お隣へスルーパス。
トロが口の中で上品に溶けるのも美味いのですが、赤身がまたいい部分。これ中トロに近い赤身のところじゃないでしょうか。
鯨ベーコンは臭みもなくコクのある味。 実は大好物です。

シャキッとした歯ごたえの野菜の牛肉サラダに続いて登場は海老の塩焼き。
ただの塩焼きにしてはずいぶんコクがあるなと思ったら、塩麹なんですね。 納得です。

根菜と椎茸の煮物は、一緒に入っている鶏の旨味が野菜にしっかり浸み込んだもの。
個人的には、椎茸とごぼうと蓮根が気に入りました。

牡蠣のあんかけは、柚子の香りの大根おろしの上に牡蠣を乗せ、そこに和風の餡をかけたもの。
これは、酒と相性がいいですねえ。 牡蠣の旨味を餡が引きたてます。

鴨つくねの柚須こしょうは、鴨の旨味がギュッと詰まったつくねを柚子こしょうがピリッと引き締めてます。
これは女将さんのお得意の料理のようですね。

珍味しじみは、飲みすぎの肝臓と弱った眼にはありがたい一品。
赤カブと水茄子の漬物は、箸休めにぴったり。 女将さんが自ら漬けた赤カブがいい歯ごたえです。

〆の蕎麦は、喉ごしのいい二八。
新蕎麦なので、前回食べた時より風味が強く、口に含むと蕎麦の味がふわっと広がります。
濃いめのつゆが、その新蕎麦の風味をしっかり引きたてていました。

料理名は献立表がないので適当につけてますが、どれも女将さんの気合と心配りがたっぷり込められています。

さて、そうした料理には、この日お店にあった日本酒を5種類すべて合わせてみることに。
東方美人がみなさん好評のようですね。
フルーティーで甘い旨味のある美味しい酒でした。
磯自慢、獺祭、田酒、真澄もそれぞれにいい味。
調子に乗って、そば焼酎の仁左衛門も蕎麦湯割にして、4合飲んでしまいました。

よく飲みよく食べた夜、気が付けはあっという間に4時間経過。
いろんな料理のこと、いろんな店のこと、それぞれの世代の話題のこと、飲むほどに、食べるほどに打ち解けさせていただいて楽しい時間でした。
この時、「○○さん、最近見ないねえ」と話題になった、しばらくお休みしていたあるレビュアーさんが、このオフ会の翌日に復活レビューをアップさせていらしたのは、我々の話が聞こえたからでしょうか?
まさかね。

いずれにしても、こうした楽しい場をおもてなしの心で美味しいものを提供していただいた女将さん、この場を設定していただいた幹事役のお師匠さま、楽しい時間をご一緒させていただいたみなさまに感謝でございます。


【最初のレビュー2010.11】
「陶芸が趣味なんです」と女将さんが話してくれました。
店内には、女将さんが焼いた猫やシーサーや犬などのいろんな作品があちらこちらに配されています。
こちらで店を開かれて8年だそうです。
「露地の奥の目立たないところで小さい店をやろうと思って」と女将さん。
確かにあまり目立たない場所です。
会社を辞めて店を始めるときは、続かないからやめた方がいいと周囲からずいぶん反対されたそうです。
それでも8年も続いているのは、何でも一人で切り盛りするママさんの努力と、店の隅々まで行きわたる女将さんの心遣いの成果でしょう。
10人入れば満席になる小さな店は、ほんわかととしたくつろぎのスペースとなっています。

そんな女将さんの手作りメニューですが、ビールを頼むとまずは突き出しが出てきました。
和風のミニロールキャベツです。
出汁が優しい味。中の肉は鴨ではないかと思います。
味はしっかりしているのに、ふわ~っと優しく包み込んでくれるような味。この店の雰囲気そのままの味付けです。

鴨のつくねの柚子こしょうは、柚子こしょうの香りと刺激が効いた一品。
鴨の肉の旨みがよく出ています。
料理はその日その日によって女将さんが作るので、メニューが変わります。
しかしこんなアテがでてくると、お酒も焼酎のそば湯割に交代です。

牛肉とごぼうの卵とじは、平べったく薄切りにしたごぼうと赤身の牛肉が醤油味の出汁で煮込まれて半熟卵でとじてあります。
グツグツと音を立てる小鍋に入った卵とじは、これも出汁が優しい味をしています。
ごぼうの歯ごたえと牛肉の旨みもきちんと出ている一品。
珍味しじみは、しじみを燻製にしたもの。これまたしじみの旨みが凝縮されて止まらない味でした。

最後は女将さんがご自身で手打ちで作るというもりそばで〆。
「来週から新そばになるので、まだ今日は去年の粉なんです」
まあ言われてみれば、甘味と香りがもう少しあってもいいのかもしれませんが、十分平均点を出せるそばだと思います。
半分は、そのままとわさびと辛味大根だけで食べてしまいましたし。
そばつゆも返しが効いて濃いめの好みの味でした。

蕎麦屋というよりは、女将さんの手料理が楽しめるくつろぎの小料理屋で最後に蕎麦をいただけるというお店。
仕事の鎧を外したい時に寄らせてもらえるとうれしいお店です。

  • せいろ
  • 鴨つくねの柚子こしょう
  • 牛肉とごぼうの卵とじ

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3位

玄蕎麦 野中 (中村橋、練馬 / そば)

1回

  • 夜の点数: 4.3

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 4.2
    • | 雰囲気 4.2
    • | CP 3.9
    • | 酒・ドリンク 4.1 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥5,000~¥5,999 -

2012/11訪問 2023/06/19

安定感のある甘味の蕎麦

平日限定のそばがきを食べるオフ会に参加しませんかと、いつもお世話になっているレビュアーさんからお誘いがありました。
蕎麦の師匠でもあるレビュアーさんも参加されるとのことで、そんな貴重な機会を逃すわけにいかないと参加させていただきました。

当日は突発的な仕事で集合時間に間に合わず、もとは座敷だったという部屋にじゅうたんを敷いてテーブルを置いた席で、すでに「小魚の網焼き」を炙りながら、先に一杯始められてたお二人に遅れて合流。
6種の天日干しの干物があったそうですが、残しておいていただいた、さより、キス、カワハギ、たたみいわしを分けていただき、玉川の熱燗でまずは乾杯。
味醂の風味の効いた干物は、ボディのしっかりした玉川の熱燗と相性よしです。

自分の到着まで「そばがき」の注文を待っていただいていたので、早速お目当ての品を注文。
平日限定10食という貴重品です。
土鍋のような器に入ってお湯に浸かった「そばがき」は、品書きにある通り淡い緑色で艶やか、形は真ん丸。
もっちりとした柔らかい弾力、ねっとりとした歯触り。
新蕎麦の甘味がふんわり口の中に広がる美味しさです。
取り分ける小鉢にはあらかじめ蕎麦つゆが注がれていました。
もちろん旨味のある美味しい蕎麦つゆなんですが、濃口のつゆなので、どっぷり浸けるとつゆの味が勝ってしまいます。
「つゆはちょっとだけにして食べた方が美味しいね」とは、三人の一致した感想でした。

飲み物の追加は、神奈川の「黒蜻蛉」、福井の「九頭龍」の冷酒。
どちらも旨味と味に深みのある日本酒でしたが、「九頭龍」のほうが、若干やさしさを感じる味のような気がしました。

この日本酒に合わせたアテは、まずは「だし巻き玉子」。
しっかりした甘味があって、江戸前の蕎麦屋さん伝統味。

「天ぷら盛り合わせ」は、大きめの海老が2尾にキス、カボチャ・エリンギ・ししとうというラインナップの盛り合わせ。
軽く上品な揚げ上がり、ごま油は香る程度の控えめな使い方ですね。
海老がプリンプリンとして弾力がある美味しい天ぷらでした。

「にしんの旨煮」は、柔らかく煮てあるので、口の中でホロッと身が崩れます。
脂分も適度にあって、その脂分が身に煮含まれた煮汁と合わさるとなんともいい旨味になって、酒が進んで仕方がありません。

「かまぼこ」には、酒粕と山葵であえたつぶ貝がついていて、それをちょっと乗せて食べることでアクセントをつけています。

〆の蕎麦は、それぞれに違うものにしてみようということで、お二人は「とろろそば」に、「黒豆納豆そば」。
自分は、「おろしそば」。
しかし、なんと自分の食べたおろしそばだけ、写真が消えているではないですか…
なので、他の方のレビューで写真はご覧ください。
いずれにしても、ちょっと味見させていただきましたが、どの蕎麦も美味しいです。
おろしそばは、葱、鰹節、海苔、生姜が乗った蕎麦に、さらに大根おろしを乗せて汁をかけまわすぶっかけタイプ。
お行儀悪く、ぐしゃぐしゃとかき混ぜていただきます。
大根おろしの瑞々しさ、鰹節の旨味、海苔の香り、生姜のピリッとした刺激が混然一体のるつぼ。
その中から蕎麦の甘味がしっかり浮上してきます。
いろんな薬味系がたっぷり入っているのに、蕎麦がその薬味系をしっかり従えて、甘味と旨味を湛えて真ん中に存在しているという感じの蕎麦。
安定感のある堂々とした蕎麦です。

蕎麦湯はナチュラルなタイプ。
ここで濃い蕎麦湯が出てきたのでは、せっかくのこれまでの料理の印象がぼやけてしまいますから、最後はこのようにあっさりとありたいものです。

料理も美味しく、会話も弾んで閉店時間を大幅に過ぎてしまったにもかかわらず、嫌な顔一つされなかったお店の方に感謝。
そしてなによりも、この席に声をかけていただいてご一緒させていただいた方々に心より感謝でございます。

  • そばがき
  • とろろそば
  • 黒豆納豆そば

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4位

蕎麦 たじま (広尾、麻布十番 / そば)

1回

  • 昼の点数: 4.2

    • [ 料理・味 4.3
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 4.2
    • | CP 3.5
    • | 酒・ドリンク 4.2 ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥4,000~¥4,999

2012/09訪問 2016/05/05

ゆったりした気分で蕎麦前と蕎麦を楽しむ

広尾・西麻布。
自分の職場からはけっして遠くはない地域なんですが、ガサツな人間性のせいかどうもこうしたエリアにご縁が少ない人生を送っています。
自分一人では必要がない限り出向くことはないであろうエリアの蕎麦屋さんに、オフ会をやるので参加しませんか、とこのエリアにぴったりの雰囲気の方からお誘い。
そんなことでもないと出向く機会もないでしょうから、行きます行きますと条件反射のようにお返事させていただきました。

時間は11:30、最近領土問題で微妙な関係の中国大使館のすぐそばにあるこの店にやってきました。
正確に言うと、三育病院前の信号から、中国大使館方に曲がって歩いたのですが、気がつかずに店の前を通り過ぎてしまい、大使館を警備するおまわりさんの胡散臭そうな視線を浴びつつUターン。 どうにか店を発見しました。 
入り口はちと分かりにくいです。

今回は3人のミニオフ会。
何度かすでにお会いをしている気心の知れた方々なので、まずはビールで乾杯。
瓶ビールはプレミアムモルツです。

この店は季節の野菜を使った蕎麦前が充実していることでも有名。
そういう創造性のある料理がミシュランガイドブックに掲載される要因の一つでしょう。

蕎麦前には次のものをいただきました。

○焼き椎茸 鬼おろし和え(800円)
粗く刻んだ焼椎茸が、たっぷりの鬼おろしと和えてあります。
椎茸に旨味があって酒のアテにいいですね。

○冬瓜 木の子 海老しんじょ スープ(1,000円)
これは出汁が美味しい。
海老しんじょからも海老の味が出汁にしっかり出ています。
冬瓜のさっぱり感が夏らしいですね。

○野菜の天ぷら(1,000円)
茗荷、万願寺唐辛子、舞茸、蓮根、ヤングコーン、椎茸など、季節の野菜を中心とした野菜の盛り合わせ。
天つゆと塩が付いてきます。
一皿しか頼んでいないのに、天つゆや塩も3人分を用意していただけるところはたいへんホスピタリティが高いです。
蕎麦屋の天ぷらというよりちょっと上品な天ぷら。
カラリと上手に揚がっています。

○真子鰈の昆布〆
花番さんが「品書きにないものもあります」薦めていただいたのがこれ。
昆布で〆てあるので水分が抜け、旨味が凝縮されています。
そこに昆布の味と旨味が加わって、噛むごとに口の中に魚と昆布の旨味が染み出してくるようでした。

どの料理も丁寧な仕事ぶりがうかがえる一皿。
他の方がレビューで高い評価をされるのもなるほどというところです。

日本酒は、青森の「陸奥八仙純米吟醸ひだほまれ」(950円)と秋田の「鳥海山吟味良香純米吟醸」を選択。
フルーティでさっぱりした甘味の陸奥八仙、ボディのしっかりした旨味のある鳥海山の味を楽しませていただきました。

蕎麦は、「冷やかけ」がお勧めですという、すでにこの店の味を体験済みのお二人のアドバイスに従いながら、季節限定の「茄子とにしんの冷かけそば」(1,700円)を注文。
さっぱりした甘味で柔らかく炊かれた身の厚い鰊と、出汁をしっかり含ませたホロっと柔らかい揚げだしの茄子が乗っています。
鰊が上品に炊かれてますねえ。
揚げた茄子のおかげで、そばつゆにコクが加わっています。
そばつゆは、夏を意識したひやかけのためか、ほんのり酸味を感じる薄味の仕上がり。
蕎麦はそのそばつゆの中にあって、最後までダレることのないしっかりした風味を感じました。

Aさんご注文の「冷やかけしらすおろしそば」(1,300円)もちょっと一口。
しらすがたっぷり、辛味大根の味がしっかり効いてさっぱりした出汁の味。
こちらは一年中あるそうです。

モダンな造りの落ち着いた店内で、気の置けないおしゃべりをしながら、酒を飲み蕎麦を楽しみ、気がつけばもう2時。
すっかり長居をしてくつろがせていただきました。
こうした貴重な場を設定していただいたAさん、いつも蘊蓄のあるお話を伺うTさんに改めて感謝申し上げます。

  • 茄子とにしんの冷かけそば
  • 冷かけしらすおろしそば
  • 焼き椎茸 鬼おろし和え

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5位

美酒嘉肴 ゆきみさけ (中野、新井薬師前 / 日本酒バー、居酒屋、日本料理)

1回

  • 夜の点数: 3.9

    • [ 料理・味 3.9
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 3.0
    • | CP 4.3
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥8,000~¥9,999 -

2013/11訪問 2016/05/05

ホスピタリティを学ぶならこの店のママさんを見習うべし

11月のある日、中野をM氏と徘徊。
ポン酒飲みたいねえということで、某店の前に行ったのですが、品ぞろえがつまんないなあとパス。
ふらふら歩くと、福島のお酒という看板を偶然発見。
すでに一軒目で気が大きくなっているので、行ってみるかぁと2階に上がりました。

開店は1年前だそうです。
おそらく居抜きで始めたと思われます。
9席のカウンターと6席のテーブルの割には広めの空間を持つこの店は、女性店主がお一人で切り盛りしていらっしゃいます。

なかなか気風のいい店主さん。
福島県の石川町というところのご出身だそうで、その石川町の若清水酒造が造る、若清水という日本酒をメインに扱っていらっしゃいます。
「東京ではこの店でしか飲めません」とのこと。
いきなり19度という「原酒 生」(1,100円)からスタートすることになりました。
けっこうガツンときます。
重量感のある旨味の酒。

続いて、蓬田岳純米無濾過生原酒(1,100円)
口開けをいただきましたが、開けてから日が経つにつれて酒の色が変わり、味もこなれていくそうです。
確かに口開けは若さを感じる味。
汲みたての酒を飲むようなちょっとツンとした刺激と酸味。
その後から爽やかな甘味が追いかけてきます。

〆は、若清水(800円)
これは普通酒。
お気軽にどうぞというお酒。

2軒目だから、3杯しか飲まなかったのかって?
いえいえ、この店はグラスに1.5合分注いでくれるのです。
なんと気前がいいこと。
それでこの値段ですからね。
なので、3杯で4.5合。
十分な量です。

お通しは、その日のお惣菜メニューの中から、「お好きなものを一つ選んでください」とのこと。
ぜんまいと油揚げの煮物と鳥もつをいただくことにしました。
安心できる手料理の味です。
和みますねえ。

お酒も気前よく注いでくれるなあと思ったら、その気前良さは料理にも。
お酒を注文すると、「私、勝手にちょっと一品付けちゃうんですよ」とママさん。
自家製イカの塩辛、ご実家で漬けた梅干し、鰊の煮物、カブの蟹あんかけ、さらには一口分のご飯まで、「これもどうぞ」。
いずれも小皿に少しずつではあるんですが、素晴らしく気前のいいサービス。
しかも、どれも美味いのです。
イカの塩辛は柚子を効かせた浅めの塩味、カブのあんかけは蟹の風味たっぷりでカブはほっくり、身欠きにしんの煮物はアテにもご飯のおかずにもぴったり、梅干しは酸味が控えめのいつまでもしゃぶっていたくなる漬け加減。
ご飯がまた美味い、クリアな味でおかずを一緒に食べると相性の良さを発揮する米の味。
結局我々が追加でこの日注文したのは、なめこの味噌汁だけ。
これがまた出汁が美味いのです。

だから、2人で合計で7,000円ぐらいで終了。
速攻で次の予約を入れてしまったのでした。


さて、その後予約で2回、フラリと2軒目利用で1回の計3回訪問。
予約のときは、一人2,000円でお惣菜食べ放題にしてもらい、そのほかに一人1,000円見当で人数分の刺身盛り合わせを出してもらいました。
しかし、ここのお惣菜食べ放題と刺身の盛り合わせはサービス精神の塊のような量と質!

3人で訪問した際に、ママさんが出してくれたお惣菜は、かぼちゃの煮物、筍の煮物、厚揚げとがんもの煮物、蓮根の煮物、鶏レバーとハツの煮物、大根の煮物、身欠きにしんの煮物、アサリの煮物、ワカサギの天ぷら、サラダ、イカの肝和え、中華風野菜炒めあんかけ、こんにゃくの煮物、豆腐の出汁かけ、〆に豚肉の生姜焼きとご飯。
お腹がいっぱいにならない方がどうかしているというくらい、次から次への大サービスです。
それ以外にこの日の刺身の盛り合わせは、中トロ、赤身、ホタテ、タコ、それに雲丹がドンと乗ってました。
中トロの切り身の分厚さは、どう見ても2切れ分以上はあるだろうという厚みです。

そんな料理なのでお酒も進むわ進むわ。
アサヒの熟撰で乾杯の後は、前回飲んだ、蓬田岳純米無濾過生原酒と「原酒 生」に加えて、純米の和泉式部、古々酒、東豊国ひやおろし、会津ほまれ純米といただいてしまいました。
和泉式部は爽やかな甘味の口当たりのいい丸みのある酒。
古々酒は長期熟成の深みのある味の酒。
東豊国ひやおろしにはコクがあり、会津ほまれ純米はすっきりした飲み口。
蓬田岳が前回飲んだ時よりもちょっと濁りが入って、やや酸味が出てきているのが印象的でした。
5杯ってことは7.5合ですね。
従って、料理は3,000円なのに約9,000円のお支払。
そりゃこれだけ飲めばね。

さらにその上を行ったのが12月に入ってからレビュアーさん6人で忘年会を行った時のこと。
この日にママさんが出してくれたお惣菜は、筑前煮、かぼちゃの煮物、筍の土佐煮、厚揚げとがんもの煮物、蓮根の煮物、鶏レバーとハツの煮物、大根とタコの煮物、身欠きにしんの煮物、ぜんまいと油揚げの煮物、昆布と人参とさつま揚げの炒め煮、青梗菜の炒めものサクラエビあんかけ、パリパリの海苔、豆腐の出汁かけ、〆にご飯と自家製漬物、それにM氏がわがまま言って作ってもらったイカの肝和えに豆腐とネギの味噌汁。
そして、5,000円で注文した刺身の盛り合わせには中とろ、赤貝、ボタンエビ、たこ、イナダがドカンと盛られています。
もう全員がこれ以上食べられません、というくらいの大サービス。
そしてまたこの料理がホッとする味なのです。
ビックリするような美味しさというわけではないのですが、心が和むような家庭的なホッとする美味しさ。
「日本酒飲んで悪酔いしないように、ちゃんと食べてもらいたいからなんか作って出しちゃうんですよ」という、ママさんの人柄がこの料理によく出ています。

さて、この時の酒量がまた記録的、前述の銘柄を冷やや燗にしてもらって飲んだ日本酒の量は6人で25杯。
合計3升7合5勺!
この量はさすがにママさんもビックリ(爆)。
お一人で切り盛りしてるのに、こんなに次々と注文してすいませんでした。
これで、一人8,000円しか払わなかったし^^;

もしこの店に行こうという方は、ママさんをこんなに忙しく働かせてはいけませんですよ(笑)。

  • がんもと厚揚げの煮もの
  • たけのこの土佐煮
  • れんこんの煮もの

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6位

川蝉 (宇都宮、宇都宮駅東口 / うなぎ、日本料理、居酒屋)

2回

  • 夜の点数: 4.4

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 4.8
    • | 雰囲気 4.6
    • | CP 3.9
    • | 酒・ドリンク 4.1 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥8,000~¥9,999 -

2019/11訪問 2023/06/19

この店の流儀というものがある

今年はCOVID-19のおかげで、毎年恒例の宇都宮出張が中止になってしまいました。
ということはこの店に行くチャンスも今年はなくなってしまいました。
なので、昨年行った時のレビューです。
2010年に初めて伺って以来、何度か伺っていたのに、今年は行くことがかなわず残念です。

18時前に入るなら電話で予約を受け付けてくれるのですが、それ以降の時間になると予約ができないのです。
出張するといつも仕事が18時30分ぐらいまでかかるので、その前2年間はその時間に電話をしても満席で入れませんでした。
もうすっかり人気店なのです。
そのため、昨年は昼前に店に直接行って、18時30分過ぎになるけどいい?と聞くと、いつも笑顔の女将さんが顔を覚えていてくれて、快く「よろしゅうございますよ」と仰っていただいたのでした。

時間に間に合うように仕事を切り上げ暖簾をくぐると、「お久しぶりですね」とカウンターの向こうからご主人が声をかけてくれました。
3年ぶりですからね。それでも覚えていてくれるところがありがたい。
カウンター席の端に座らせていただき、まずはビール。
いつも通りのヱビスです。
お通しには、干しシイタケと大根のすり流しが出てきました。
刻んだベーコンが乗り、干しシイタケの旨味とともに、ちょっと洋風の味付け。
若旦那の作品だそうです。
東日本大震災の後に、東京の修行先から戻ってきた若旦那も今やお店の中心的存在。
食べログのこの店のトップページにも、「料理人」として紹介されてますね。

いつも通り、刺身盛り合わせをお任せでいただきます。
今回は、かんぱち、ひげたら、さより、さわらの4種。
皮目を炙ってあったり、隠し包丁が入ったりという一仕事がされているところは、いつもながらさすがです。

日本酒に切り替えて飲み始めたところに、「ちょっとだけですけど」といただいたのは、蕎麦の実、鴨、桜海老を合わせた小鉢。
蕎麦の風味、鴨の旨味、桜海老の甘さが混然一体となった味。

この日はうなぎの肝串もいただいてみました。
ほろ苦さとしっかりしたコク、弾力もあってミディアムレアぐらいの焼き上がりなので、トロリとした味わい。
もちろん酒がホイホイ進んでしまいます。

3年ぶりなのでもう一品欲しいなと思ったら、タラの白子と湯波のみぞれ煮を出してくれました。
この料理、初めてこの店に伺った時に出していただいたもの。
実は得意料理なのだそうです。
みぞれは大根ではなく、聖護院蕪を使うところがこの店の流儀。
湯波には厚みがあり、蕪には独特の風味と甘みがあるところが特長で、それぞれの素材の味を邪魔しない出汁がしっかりまとめています。

すっかり料理を堪能したところで、いよいよメインの鰻。
さすがにうな重の値段は上がりましたね。
それでもせっかくなので「松」をいただきます。
注文を受けてから鰻を裂いて作り始めるので、いつも帰りの新幹線の時間を目安に出してもらう時間を先に伝えておきます。
お重の蓋を取ると、ご飯をほぼ覆う感じで一尾分のかば焼きが乗っていました。
つやつやした照り具合。
箸を入れるとふわっとした感覚が伝わってきます。
もちろん食べてもふんわりした柔らかな食感。
口の中でほとびれていきまきました。
蒸しの工程を経ているので、脂も適度に落ちて食べやすく仕上がっています。
品のいいさっぱりした甘みのあるタレも変わらぬ味。
プリッとした肝の入った肝吸いや、味のしっかりした奈良漬けを挟みながらしっかり味合わせていただきました。

地元の方にとってはこの店は「日常」の店なのでしょう。
昔は、旦那衆の集まりなどでよく賑わったそうです。
「今はそういうのはなくなりましたねぇ」とご主人。
その頃の名残を今に残す店。
「私らは変わりようがないんですよ」と最初に訪問した時に仰っていたご主人の仕事ぶりは、その丁寧さがいささかも変わっていませんでした。
ご主人や若旦那の料理も、女将さんの気持ちのいい接客もまだまだ伝えていってほしいと思います。
【再訪 2014.06】
またまた今年もこの時期に恒例の宇都宮出張にやってきました。
宇都宮といえば、私にとってはこの店。
連絡を入れるといつも電話に出てくれる女将さんではなく、若旦那が出て席を確保してくれました。
はたして、この日は女将さんは、「喉が痛いと言って休んでいるんです」とのこと。
今頃はもう回復されたでしょうか、いつもお元気にでいていただきたいと思います。
ちゃきちゃきっとしたおもてなしの女将さんがいらっしゃらなかったのは残念でしたが、ご主人と弟さんのご兄弟による料理の方は、今回もとても充実していました。

ビールの後の白隠正宗純米吟醸と花垣純米吟醸に合わせた刺身はすずき。
さっぱりした白身、でも噛むとジワリとした旨味があります。
とこぶしの酒蒸しには煮切り酒のタレをつけていただきます、
この辺りが、この店の仕事の丁寧なところ。
貝の旨味をこの煮切り酒のタレがさらにふくらませてくれました。
鯛のすりながしは、鯛の風味と旨味がしっかり汁の中に溶け込んでいます。
白焼きは前回同様、脂分を落としてさっぱりふっくら。
〆のうな重も、固めに炊かれたご飯と相性のいいふっくら感のある鰻。
今回もしっかり堪能させていただきました。
毎度ごちそうさまでございます。


【再訪 2013.06】
宇都宮出張があれば必ずと言っていいくらい訪問する川蝉さん。
女将さんもご主人もお元気そうで、いつも通りの温かいおもてなしで迎えていただきました。

ふっくらした柔らかな鰻のうな重もいつも通り。
刺身の盛り合わせは、たいら貝、鯛、いさき、ひらまさ。

そして今回は初めて白焼きもいただきました。
いつも頼もうと思って忘れてたんです。
だいぶ脂を落としたふっくらとした仕上がり。
仙禽や山形正宗、賀茂金秀といった日本酒が進んでしまいます。

年に一度の宇都宮でのお楽しみ。
女将さんとご主人には、また来年も元気な姿でお会いしたいと思います。


【再訪 2012.03】
前回訪問したのは、震災の一週間前のこと。
久しぶりに訪問すると、女将さんもご主人もお元気そうで一安心しました。
地震の時はかなり揺れたそうですが、幸い店に大きな被害はなく、今は通常通り営業しているとのことでした。

女将さんやご主人の、温かみのあるもてなしぶりはいささかも変わりません。
ふっくらとした鰻の美味しさも前回同様。
盛り合わせにしてもらったお造りは、鯛・金目鯛・さより・鯵。
この時期に来るといつもさよりが入りますね。

今回いただいたお酒は、全国16の蔵が協力して製造し、売り上げの一部を被災地にカンパして愛も届けるという「KANPA+I」という名前の酒。
製造は天狗舞の車多酒造でした。

今年からは、東京の料亭で修業していた息子さんが戻ってきて店を手伝っていらっしゃるとか。
女将さんもなんとなく、安心した表情をしています。
「あと何年やれるかと思ってるんですよ」という女将さんですが、跡取りも戻ってきたことだし、まだまだお元気で心和む接客を続けていただきたいものだと思います。


【再訪 2011.03】
宇都宮に出張となると、もうこの店で一杯やってから帰るのが楽しみになってしまいました。
これまで、3回訪問させていただきましたが、女将さんやご主人のホスピタリティに溢れた客あしらい、季節のものを活かした丁寧な肴、そしてもちろん柔らかくふんわりと焼きあげられた鰻、ここにくるといつも心がくつろいだ気分になって帰ることができます。

刺身にしても季節感豊か。
6月に訪問した時はあいなめや金目鯛などを出していただきました。
今年の3月には、あら、アンコウの肝などが入っています。
3月の時は2人で行ったので種類も多めに出してくれました。
こちらの都合に合わせて、その時の旬のものを中心に見つくろってくれるので、いつもすっかりご主人にお任せです。

その他の肴も季節によって変わります。
6月はとこぶしの煮貝や青柳でした。
貝類は産卵前のこの時期が一番身が太ってますからね。
とこぶしの煮貝は海のない地方独特の保存食でもあります。
コリっとした歯ごたえがあり、貝の旨味は凝縮され、薄味の醤油で煮込まれていて言うことなし。
この時は思わず、地元の日本酒の惣誉という、さっぱりした飲み口の酒を頼んでしまいました。
もちろん青柳もぷりぷりで、日本酒との相性は抜群です。

今年の3月に訪問した時はせりの胡麻和えや蕗味噌が出てきました。
ホントに季節感のあるその時々のものが楽しめます。

こちらの鰻は背開きして蒸しあげてから焼く関東風の仕事。
注文を受けてから鰻をさばくので、出来上がりには30分以上かかります。
「関西から来たお客さんから、蒸さずに焼いてくれと注文されたこともあるんですが、それはできませんとお断りしたんですよ」、とご主人。
「私はこのやり方しか修行してきてないんで、他のやり方はできないんです」と語ります。
この店の流儀をきちんと守られた、丁寧なお仕事。
それがふっくらと柔らかくっ仕上がった鰻だけでなく、いつも楽しませていただく料理全体に表れていると思います。

それに、女将さんの接客はいつも心のコリがほぐれます。
いつもにこやかで、客の要望をよく聞いていただいて、いいものを勧めていただいて、料理や地元のこともいろいろ教えていただいて、一見も馴染みも関係ない、ホントに気持ちのいい接客にはいつも感謝です。

また宇都宮行った時は寄りますので、美味しい鰻と季節の肴でゆったりとした時間を過ごさせていただきたいと思っています。
そういえば、まだ初回に食べそびれた白焼きも食べてないし^^;


【最初のレビュー 2010.03】
「うなぎにもその店その店のやり方がありましてね」と語るのはご主人。
「35年やってます。周りはいろいろ変わるんですが、私たちは変わりようがないんです」とのこと。
いやいや、ずっと変わらずこちらのやり方を通してこられたというのは、とっても大事なことだと思いますよ。
こちらは、うなぎだけでなく、そのほかの酒の肴も豊富。
「栃木は海のない県ですから、少し珍しい魚も扱おうと思って出してるんですよ」と、おかみさん。
ではまず、適当にみつくろっていただきましょう。

まず、「すこしずつ3種ほどお持ちしました」という刺身の盛り合わせを出していただきました。
あら、ほうぼう、さよりの3種盛り合わせです。
この3種、さよりははまだ東京でもたまに出ますけど、あらやほうぼうは、そうは見ません。
「少し珍しい」ではなく、かなり珍しい魚が出ていると思います。
ほうぼうは、歯ごたえがこりこり、淡白であっさりしていますが、噛むと旨みが染み出てくるような刺身です。
あらは、ほんのり脂が乗って少し濃厚感があります。でも軽い脂でしつこさは全然ありません。
さよりは、この時期だけの春を告げる魚。透き通る白身で淡白、あっさりしています。
あらは、九州では鍋にすると取り合いになる高級魚。
今回刺身で出していただいたあらは、10キロの目方のものだそうです。
「あらとクエ似てますが違うんですよ。あらはスズキの仲間です。クエは養殖できますがあらは天然ものしかありません」とご主人。勉強になります。

次に出てきたのは、タラの白子と湯波のみぞれ煮。
湯葉ではありません、ここは栃木、だから湯波です。
しっかりとした厚みのある湯波。食べ応えがあります。
白子はちょうどよい炊き具合。旨みがしっかり閉じ込められています。
それにこのみぞれ煮のみぞれ、大根ではなく、聖護院かぶらなんです。
だからカブの甘みがいっぱい。出汁もよく効いてやさしい味になっています。

さらに春の息吹を感じる蕗味噌などで一杯やって、ちょうど4杯目の焼酎のグラスが空く頃、いよいよ真打のうな重が登場です。
普通は注文して30分ぐらいで出されるそうです。ちゃんと作っていただいている訳ですね。
頃合いを見計らうように、ちょうどグラスとつまみが空になった頃に出していただきました。
お重に一匹分、うなぎが横たわっています。
早速一口。
こちらのうなぎは、あっさり仕立てですね。
ふっくら柔らか、口の中でやさしく身がほとびれていきます。
脂っぽさが抑えられて、軽い焼きあがりです。
真ん中の身の厚いところはホクホク、尻尾の方はややカリッとして、食感の違いも楽しめます。
たれは、品のいい甘さをもったあっさり味。
ご飯と相性いいですね。
静岡は吉田のうなぎだそうです。今の時期は養殖ものしかでません。
夏場になると天然ものも出せるそうですが、値段は3倍違うそうです。

こちらの接客も、とても素晴らしいものでした。
飲んでいる途中で上着を脱ごうとすると、さっと後ろで手伝っていただいたり、一見の客なのに、とても丁寧に説明をしていただいたり、でもけっしておせっかいや押しつけがましさもなく、おかみさんもご主人も、とても気持ちのいい方でした。
「私たちはこのやり方なので、この味がよいと思う方に来ていただければいいと思ってます」というご主人。
これからも、長くここでお店を続けていただきたいて、また寄らせていただきたいと思います。
今度来るときは、今回食べるのを忘れた白焼きをいただかなくては。

  • うな重松
  • うな重松
  • 刺身盛り合わせ(かんぱち、ひげたら、さより、さわら)

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7位

土家 (東村山 / そば)

1回

  • 昼の点数: 4.1

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 3.6
    • | 酒・ドリンク 4.1 ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥6,000~¥7,999

2012/04訪問 2016/05/05

丁寧な仕事ぶりとご夫婦の人柄が伝わってくる店

いつもお世話になっているマイレビュアーさんが、この店での食事会に誘ってくれました、
しかも、尊敬をするマイレビュアーさんとご一緒とのこと。
こんなチャンスは逃すわけにいきません。

当日、築100年以上という民家を使った店の門をくぐり、引き戸を開けると奥さんが出迎えてくれました。
予約の名前を告げると席に案内してくれます。
先にいらしていた蕎麦のプロフェッショナルレビュアーさんと初対面のごあいさつ。

店内はカウンター席5席と6人掛けのテーブル席が一つだけという店内。
でも狭いのではなく、広い空間をぜいたくに使った席の配置。
天井の高い古い木造家屋は、ご夫婦の人柄そのもののようなぬくもりを感じられる空間です。

全員揃ったところで、料理スタート。
昼は、4,200円のコースのみのようです。

まずは、「蕎麦豆腐でございます」
上に菜花が乗っての青豆あんかけがかけられています。
春らしい色合い。
あんに出汁がよく効いています。
この出汁なら、これからの料理もきっと美味しいだろうなと期待が膨らむ出汁の味。
同時にフワッとした甘いコクのある豆の風味が口の中に広がってきます。

続いて季節の盛り合わせ。
「ホワイトアスパラガスの摺りながし・蛍烏賊と春キャベツの酢味噌かけ・生青海苔入りの出汁巻き玉子・氷魚(鮎の稚魚)の時雨煮・辛子菜のお浸し・芹の煮浸し・桜の葉で巻いた白魚の天ぷら・蕗の酢漬け・桜を模した長芋の蜜煮」と、先にレビューをアップしていただいた方が記載しているのでそのまま転載させていただきます。
出汁巻き玉子は最初、ほうれん草か?菜花か?三つ葉にしてはクセがないぞ、などと3人で中身を詮索していたのですが、ご主人に伺うと「青海苔です」とのこと、完全に裏をかかれる脱帽の美味しさでした。
長芋の蜜煮は、まるで梨のような味と食感、甘さもすっきりしています。
白魚の天ぷらは桜の葉が巻かれて揚げられていて、春の香りがふんわり。
芹の煮浸しはきんぴら風になってこの中では強めの味のアクセント。
氷魚は、「煮ると3分の1ぐらいになってしまうのです」というかわいらしいサイズの鮎の稚魚、この季節ならではの新たな命をいただけるという一品。命に感謝していただきます。
もう、この盛り合わせの中にはご主人の丁寧な仕事がいっぱい詰まっていて、一同大いに感心しながらいただいてしまいました。

椀物は、「蕎麦がき、鴨つくね、筍、ほうれん草の花穂、蕨、木の芽」(これも転載させていただきました)。
ほうれん草は、種をとるために花を咲かせる用に収穫せずに育てたものとのことで、茎の歯ごたえがしっかりしていることが特長、えぐ味は完全に消えてます。
鴨つくねは丁寧に叩かれ、コクがたっぷり、弾力のある柔らかな歯応えは、筍のシャクシャクした歯応えと好対照。
蕎麦がきはねっとりして美味しいですねえ。
その素材をまとめている出汁がまたたまりません。

続いて、鰆の刺身と千切り野菜のサラダ仕立て。
身の厚い鰆は食べ応え十分。
やや淡白な鰆の脂分を補うドレッシングのバランスがいいですね。

今回の蕎麦は、粗挽き田舎蕎麦。
田舎そばでも細打ちで喉越しがよい打ち方です。
一口蕎麦だけ食べると甘味が広がります。
つゆのとの相性がとてもよく、このバランス感は蕎麦の甘味が活きてくるつゆでした。
蕎麦湯もナチュラルなタイプで好みです。

デザートは、酒粕のシャーベット。
酒粕の甘さとコクがよく出ています。

こうした料理に合わせた酒は、少々冷える雨の日だったので、燗に向いているという山形県の鯉川の純米から。
ちょっと酸味のあるボディのしっかりしたお酒。

続いて、栃木県の愛の澤純米、石川県の手取川純米うすにごり、長野県の佐久の花純米吟醸をいただきました。
この日は、食事の邪魔にならない飲みやすい酒を揃えていますね。
また、うすにごりの手取川の時は、猪口に透明の江戸切子のグラスが出てくる気の遣い方。

丁寧な料理と楽しい会話ですっかりくつろがせていただき、ご主人が申し訳なさそうに「そろそろ午後の営業時間の終了なんですが」と言いだすまで居座ってしまいました。
しかも、ご夫婦そろって門まで見送りに出ていただくし。
料理も接客も丁寧でたいへん充実した時間でした。
こうした場を設定していただいたAさん、興味深いお話しをいろいろ教えていただいたTさん、どうもありがとうございました。

  • 蕎麦豆腐と菜花の青豆あんかけ
  • 季節の盛り合わせ
  • そばがきと鴨つくねの椀物

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8位

まにわ (阿佐ケ谷、南阿佐ケ谷 / 日本料理、居酒屋、日本酒バー)

1回

  • 夜の点数: 4.0

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 3.6
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥6,000~¥7,999 -

2012/03訪問 2016/05/05

いつも満席なのは狭いから? いえいえこの店の持つ魅力からですよ

なかなか予約が取れないというまにわさん。
マイレビュアーさんから予約が取れたので行きませんかとの嬉しいお誘い。
こんなチャンスはめったにないので、この日は出張先から直行でやってきました。

阿佐ヶ谷駅の北口から歩いて5分ほどの店は、カウンター7席だけの小さなお店。
うっかりすると見過ごしてしまいそうな店構え。
地元レビュアーさんも「近くまで来るのに気がつかなかった」と言っていたほどです。
予約が取れない店ですよね、とこの店を一人で切り盛りする女性店主に、メンバーの一人が声をかけると、「店が狭いだけなんですよ」と御謙遜。
その言葉がホントに御謙遜であることは、後からよく分かることになります。

先に到着したメンバーでまずは生ビールで乾杯。
すると店主が、「とりあえずどうぞ」と、わた入りイカの丸干しをサービスしてくれました。
これがまた中のわたの味がしっかりする干物。
酒飲みの気持を掻き立てるうれしいサービスです。

全員が揃ったところで料理がスタート。
一品物もあるのですが、基本は3,150円のコースのようで、今回はそのコースをいただきました。

先付 わかさぎの南蛮漬け 新玉ねぎと菜の花が入っています。
刺身 牡丹海老ときはだ鮪と京都の湯葉の刺身
焼物 福岡八女の新筍の炙り焼きとじゃこの山椒炊き
揚物 春山菜(タラの芽とふきのとう)の天ぷら
酢物 沖縄の太もずく酢
煮物 大山鶏つみれの味噌小鍋(焼豆腐、蒟蒻、牛蒡、きのこ、水菜)
漬物 自家製ぬか漬け

というのが今回のコース料理。
味噌小鍋が美味しかったですねえ。
ちょっと甘味のある味噌でコクがあって、鶏つくねの出汁がよく出ていて、つみれも野菜もいい味に仕上がっていて、スープも全部飲みたくなるのですが、そこはちょっと待った。
+350円で雑炊にしてもらえるので、〆にはこの雑炊がたまりません。

どの料理も美味しいのですが、味だけ見れば高級料亭の味ではありません。
なんだかホッと和める上質の家庭料理の味。
エグミもなく春の香りが広がる筍の炙り焼きにしても、ほんのり苦みを感じるふきのとうの天ぷらにしても、やさしい酸味の南蛮漬けにしても、作り手の気持ちが込められているのが分かる味。
自家製ぬか漬けのぬか床は毎日かき混ぜるそうで、もう何とも自然な手作り感満載の味。

こういうところがこの店にお客さんが集まる魅力の一つでしょう。

1合ずつをみんなでシェアした日本酒は、まずは、「遊穂 山田錦 うすにごり」、「加茂金秀 桜吹雪 うすにごり」 からスタート。
まだ若い感じのちょっとツンと酸味のあるお酒。
続いて、白岳仙山田錦と東北泉美山錦。
さらには、小左衛門美山錦おりがらみ、白爆酒こまち、宝剣八反錦超辛、播州一献雄町山廃、遊穂五百万石山廃、三重錦八反山廃と、この日店主が揃えていた日本酒を一通り一周させていただいた後、もう少々好みのものをちょこっと追加させていただきました。

店主の目と舌で仕入れたお酒は、どれも美味しいものばかりだったのですが、さらに感心するのは店主の対応。
次々と繰り出される飲兵衛の注文に、料理を作りながらも素早く対応して設えをしていただくのはもちろんのこと、「燗なら度数の高いものの方がいいですね」とか、「今年のこのお酒は出来がいいです」とか、いろいろと情報提供していただけるのです。
さらには、我々の通常の会話にも加わっていただいて会話を盛り上げていただくなど、とても一人ですべてを切り盛りしているとは思えないくらいホスピタリティは抜群。
すっかり和ませていただき、くつろがせていただきました。

こういうところがこの店が予約がなかなか取れない理由でしょうね。

  • わかさぎの南蛮漬け
  • 牡丹海老ときはだ鮪と京都の湯葉の刺身
  • 福岡八女の新筍の炙り焼きとじゃこの山椒炊き

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9位

大塚 みや穂 (大塚、大塚駅前、向原 / 居酒屋、海鮮、ラーメン)

1回

  • 夜の点数: 4.1

    • [ 料理・味 4.1
    • | サービス 4.1
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 3.7
    • | 酒・ドリンク 4.5 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥6,000~¥7,999 -

2014/06訪問 2016/05/05

【再訪】いろんな日本酒を楽しんでほしいというご主人の気持ちのこもった店

【再訪2014.06】
前々からこの店の料理が食べてみたいというマイレビュアーさんからのリクエストにお応えしてようやくに再訪です。
でもご主人は前回のこともその前のこともちゃんと覚えていてくれて、「この前はあそこの席でみなさんよく飲まれましたね」と歓迎してくれました。

5人以上だとコースしか受け付けてもらえないのですが、今回は4人なのでアラカルト。
刺身の盛り合わせだけは事前に注文してあります。

4人揃ったところでいきなり日本酒からスタート。
いつもは店のスタッフに任せれば間違えないのですが、個性の強い参加者の皆さんはそれぞれに好きなものを注文。
龍神純米吟醸に花陽谷に結人とそれぞれ好みのものを最初の1杯に選びます。

この日のお通しは、焼き鯖の椀物に山東菜のおひたし。
出汁が沁みます。
刺身が出てくる間は、大人のポテトサラダに農園サラダがアテ。
大人のポテトサラダは、チーズでコクを出し、塩昆布で旨味を+しています。
農園サラダには、クレソン、春菊、サニーレタス、小蕪、ルッコラ、サニーレタス、赤高菜、紫人参、ズッキーニ、ラディッシュ、ベビーレタス等々多彩な野菜を使ったサラダ。
4人で分けたので、自分のところには何が入っていたのでしょう?(笑)

刺身の盛り合わせは、ボタン海老、柳タコ、赤いか、ひらめ、かつお、鰹のはらかわのところ、南まぐろ、雲丹、のどぐろ、鰆、かますの棒鮨と11種も乗ってました。
のどくろ、鰆、かますはバーナーで炙ってくれる演出付。
のどぐろがトロトロに脂乗り、南まぐろはしっとり、鰹のはらかわはちょっと炙ってあって旨味がしっかりしてます。

さらに鰹のカツレツ、鮪のほほ肉のステーキで、不動吊るし絞り純米無濾過生原酒、会津中将純米吟醸、秀鳳純米吟醸夏吟醸、三光正宗蛇形、巌純米吟醸をいただきました。
〆には蛤入りの稲庭うどん。
これがまた出汁がよく出ていて、飲んだ後の〆にピッタリでした。

日本酒と魚の充実度はこれまで同様。
自分のカードの中にきちんと入れておきたい一軒です。


【再訪2013.02】
マイレビュアーさんから、日本酒の美味しいのを飲みにつててって欲しいとのリクエスト。
いくつか候補の店を挙げると、ここがいい!ということで当店へ再訪。
何人かの方に声をおかけしたところ、6人の集まりとなりました。

この店は、100mlのグラスで一杯400円が基本。
スタッフの方が日本酒をよく勉強されているので、何を飲むかは任せて安心。
トリビーをすっ飛ばして、いきなり日本酒のスタートは、両関酒造が立ち上げた限定ブランドの「花邑」の純米酒から。
フルーティーで爽やかな甘味のある旨味たっぷりの酒
これがスタートにくると日本酒ってやっぱり美味いなあと思えてしまいます。

続いて選んでいただいたのは、
結人 純米吟醸無濾過  酸味と甘みのある軽やかな酒

ここから先は、料理が本格的になることから、
武勇、そして七本槍の純米渡船
どちらもちょっと飲み応えのある酒。
特に七本槍はちょっと酸味のある辛口。

さらには、
長珍の純米夢錦ささにごり生 これまたちょいと酸味のお酒
日置桜 純米生原酒 これもちょっと酸味、でも味がふっくらした感じなのは酔っぱらってきてるからでしょうか^^;
亀泉 純米原酒    わりとさっぱり系のすっきりした味 
鏡野 純米無濾過生原酒 ちょっとフルーティで軽やかな酒 これで〆。

料理の方は、5人以上の場合はコースになるということで、今回は3,800円のコース。
前菜的位置づけのサラダの段階で、日本酒が2杯進むボリュームとしっかりドレッシング味。

日本酒もガツンとくるタイプに代わったところで出していただいた刺身盛り合わせには、中トロ、甘エビ、タコ、ダルマイカ、ナガスクジラ、サゴチ、ホタテ、白子ポン酢が乗ってます。
サゴチとホタテは、目の前でバーナーで炙ってくれる演出付。
ホタテが甘くなりますね。
ナガスクジラには、甘い高知のたまり醤油、炙った2つは塩(絞ったのはカボスかスダチかどっちか覚えてませんが^^;)、そのほかは生醤油でいただきます。
鯨が臭味もなく、トロリとして旨いです。

以前は前菜に出ていた蛤の吸い物が続いて登場。
これから貝は美味いですね。

酒肴三種は、焼いた空豆、筋子と大根おろし、そしてこの店の名物である大人のポテトサラダ。
ポテサラには、塩昆布とともにチーズが隠し味に入っているので旨味とコクが出ています。

鰹のカツレツはこの店の名物料理。
前回はもうちょっとレアだったんだけど、今回はちょっと火が入り過ぎていたかも。
でもみなさんには大好評で一安心。
我々が酔っぱらっている間に、横に並んでいた土鍋で作ったカニの炊き込みご飯はちょっと柔らかめですが、これを食べるともうお腹いっぱい。
余った分は女性陣がお土産にお持ち帰り(したよね?)。

デザートではバニラアイスに王禄の古酒「琥珀のしずく」をかけていただきます。

それにしても今回もまたよく飲みましたな。
酒が変わるたびにグラスも替えてくれるので、スタッフの方も大忙し。
3,800円のコースに、8杯飲んだ人は8×400円=3,200円だから合計7,000円。
明朗会計で、今回もまたいろんな日本酒を楽しませていただきました。
ご参加いただいたみなさま、ありがとうございます。


【最初のレビュー2012.04】
ある日、マイレビュアーさんから次週にどっかで飲みませんかとメール。
そんなら、最近発見したところにみんなで行っちゃいましょうということで、この日集まったのは6人。

この店は、今年に入って店の名前を変えたのだそうです。
ご主人の名字からとった字に、「日本酒の店なので米の稲穂の穂の字をつけてみました」とのこと。
「いろんな日本酒を楽しんでいただきたいと思っているんです」とご主人が語る店は、常時30~50種類の日本酒が冷蔵庫に保管されています。
特注の陶器のグラスは、「100cc入るように作ってもらいました」というもの。
そのグラス注がれた日本酒は、大吟醸とかでない限りは、基本は一杯400円です。

いきなり日本酒の人、とりあえずはビールの人に分かれてまずは乾杯。
日本酒は、バランスのいい龍神(群馬県)からスタート。
この日は、スタッフのお勧めを順番にいただくことになり、続けて次のものをいただきました。
亀泉 純米吟醸原酒(高知県)
結人 純米吟醸(群馬県)
磐城壽(福島県)
一博 純米生酒(滋賀県)
屋守 純米無調整生(東京都)
群馬泉 山廃酛純米(群馬県)
香取 純米自然酒(千葉県)
最後の2種類は燗酒、なかなかどっしりした飲み応えです。

料理は、まずお通し(600円)が2品出されます。
この日は、蛤の吸い物とししとうの煮びたし。
さらに、この店の名物の大人のポテトサラダ(700円)
若干塊を残したクリーミーなポテサラには、チーズが隠し味に入ってコクを出しています。
そしてこのポテサラの味の決め手は刻んで混ぜ込まれた塩昆布。
これが味を引き締めるとともに旨味を加えて、しっかり大人の味に仕上げていて、みなさんには好評でした。

そして、やはりこの店の名物でもある鮪のほほ肉のステーキ。
生姜醤油に漬け込んだと思われる鮪で、焼き方はレア。
しっかりした歯応えでありながら、そこは鮪。
トロリと舌の上で身がほとびれていくところを日本酒で流し込むのはとっても贅沢な気分です。

刺身の盛り合わせは、5点盛りを6人用にアレンジしてもらいました。
鰹、石鰈、本鮪、スミイカ、シマエビ、〆サバの6点乗ってます。
醤油は、関東の醤油と愛媛県の醤油の2種類を出していただきました。

さらには、大粒で旨味のしっかりしたカキフライ、レアに揚げられたカツオカツレツ、シャクシャクの歯応えの焼筍、鴨焼きをみなさんでシェア。
魚は、ご主人が築地まで自ら自転車で仕入れに行くというだけあって、なかなか質が高いです。

今回頼んだ中で渋い肴は、酒のアテの5点盛りセット。
豆腐の味噌漬け、鮭とば、鰯のへしこ、牡蠣の塩辛、イカのガーリック漬け、ふぐの卵巣、からすみ、アンチョビめんたいといったところが、二皿に分かれて登場。
日本酒の進行を加速させてくれました。

この日は8種類の日本酒を飲んで、一人7,000円弱。
肴も充実しているので、つい飲み過ぎペースとなってしまいました。

この店は、時々蔵元を招いて酒を楽しむ会も開催しているとか。
ご主人の日本酒に対する愛情がよく分かる店です。


ここからは、初回訪問時のこと。

この日いただいた酒は、次のもの。
結人(群馬県) 汲み出しなので、酸味と甘味があって、なかなか元気のいいやんちゃな味
龍神(群馬県) 料理の味を邪魔しないバランスのいいすっきりした味
巌(群馬県)  これまた食中酒にいいバランスのいい味
屋守(東京都) ちょっと癖を持つ自己主張のある酒
一博(滋賀県)  華やかさのあるフルーティーな一杯
不老泉(滋賀県) これは最後にふさわしい華やかなラストの名曲のファンファーレのような味
この日はお任せで選んでもらったのですが、なかなか酒飲みの気持ちの分かるセレクション。
好みを言えばそれにも応えてくれるそうです。

こうした酒に合わせたアテは、次のもの。
まずは、お通し(600円)が2種類出されました。
今日は蛤の吸い物とかきのきだけと水菜のおひたしです。
寒い日にこういう椀物を最初にもらえるのはありがたいですね。
ちょっと味付けが濃い味でしたが、蛤はプリプリでした。

この店の自慢は魚。
毎日築地まで仕入れに行くというご主人が、「魚は絶対損はさせませんよ」と勧めてくれたのは刺身の盛り合わせ。
3点盛り(1,200円)でいただくことにしました。
しかしなんと、鯛、鰹、シマエビ、ホタルイカ、それに「今日は鯛の肝のいいものがあるのでサービスです」と事実上の5点盛りでいただいてしまいました。
鰹は厚切り、まだ3月の鰹なので脂は少なめのあっさりしたタイプ。
皮目を軽く炙った鯛の身がコリコリして美味いです。
鯛の肝もトロリ、あん肝よりはあっさりしてますね。
これなら損した気分にはなりません。

もう一品お願いしたのは、これもお勧めという鮪のほほ肉のステーキ(1,000円)。
レアに焼かれて旨し。

最後にもう一つお勧めは?と聞いて出してくれたのは大人のポテトサラダ(550円)。
これはあまりに美味かったので、前述のように再訪時には最初にオーダーしました。

入口を入ってカウンター席を通り過ぎると、中は20人程度が入れるテーブル席。
蔵元の法被も店内にいくつか飾られています。
7時過ぎには、そのテーブル席も満席になる盛況ぶり。
大塚ってやっぱり安くて美味い名店がまだまだ隠れてますね。

  • 鰹のカツレツ
  • 刺身盛り合わせ(雲丹入り)
  • のどぐろと鰆とかますはバーナーで炙ってくれます

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10位

夢民 本店 (西早稲田、高田馬場、面影橋 / インドカレー、カレー)

1回

  • 昼の点数: 4.0

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 3.9
    • | 雰囲気 3.8
    • | CP 3.6
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ~¥999

2012/12訪問 2016/05/05

37年間お疲れさまでした

夢民が閉店します。
2012年12月29日で閉店、37年6か月の歴史に幕を下ろします。

初めて夢民のカレーを食べたのは1976年。
理工にいた友人が、学部の近くに美味いカレー屋があるんだと言って連れてきてくれたのです。
当時は、やはり今年閉店した「えぞ菊本店」のそばに店があって、もっと狭いカウンターだけの店だったと思います。
今はトッピング追加は1種類だけのようですが、昔はもっと自由にトッピングの組わせができたような気がするのは気のせいかな。

学生時代には何度か食べに行ったことがありましたが、卒業してからはすっかりご無沙汰。
閉店されると伺って、ともかく今のうちにと思って食べに行ってきました。

一回めの訪問時は、カキカレー(980円)。
そのカレーは、学生がカキを持ち込んだのをご主人がアレンジしてメニューに加わったのだそうです。
ポパイカレーもそうですが、この店に通っていた学生のアイデアがメニューに活かされいることもこの店の特長です。
そう言えば、この店に連れてきてくれた友人も、「野菜が多くなりすぎると味が薄くなるのを何とかした方がいい」とか、「もっと辛くした方が学生にはウケる」とか、なんだか偉そうな顔して、当時まだお若かったご主人や奥さんに注文つけていたのを思い出しました。

カキカレーには、カキだけではなくベーコンと野菜も入っています。
ご主人が、キャベツ、ニンジン、ピーマンの野菜とベーコンを炒め、さらに牡蠣を加えてからルーと合体。
このカレーをオタマ一杯分ぐらいご飯にかけて、あとのルーはカレーポットに入って出してくれます。
カレーポットは昔のままの形のような気がするなあ。
ルーの量は、カレーポットに満タン、入りきらない分がご飯の上にかかっているという状態ですね。

サラサラのルー、シャキッとしたキャベツの歯ごたえ、今の味が開店以来お客さんの声を聴いて改良を重ねた到達点なんだろうと思います。
素材にはずいぶんこだわっていらっしゃるようです。
これもこれまでいろいろとよりよいものを探してこられた成果なのでしょう。
キャベツが瑞々しいです。
固めに炊かれたご飯の米の味が美味しいです。
サラサラのルーは、すっきりした辛さ。
半分も食べれば汗が噴き出してくるくらいのスパイス感があります。

二回目は、ポパイベーコンカレー(960円)。
ポパイカレーにベーコンをトッピングしたものです。
ほうれん草とトマトとベーコン、それに半熟玉子を加えたカレー。
学生たちに野菜を食べてもらおうというご主人の工夫が見えます。

三回目は、エビトマトエッグカレー(840円)。
海老をサッと炒めてカレーに合わせてあります。
プリプリの食感と海老の甘味がスパイスと交じり合います。
半熟玉子がマイルド感を演出。
野菜はトマトだけなので、酸味が効いてスパイスと合体したストレートな味わいのカレーになっている印象です。

他にもまだ食べたいカレーはありますが、残念ながらもうこれで食べ納めとなりそう。
ご主人と奥様の体調が万全でないための閉店のようです。
37年間お疲れさまでした。
この店の味はレトルトでは残るようです。
名残惜しい方はレトルトで、自分流にトッピングを工夫して味わってください。

  • ポパイベーコンカレー
  • ポパイベーコンカレーとご飯
  • カキカレー

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