レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!
1位
1回
2015/09訪問 2020/02/28
【再訪 2015.09】
ちょっと前ですが、名古屋から上京してきたマイレビュアーさんと、昼間酒やりましょうかとこちらにやってきました。
この店は初めてというマイレビュアーさんは、約束の時間の前から店の前でスタンバイ。
運良く行列もなかったので、早速向かって右側の扉から入店すると、「いらっしゃい~」といつもの声。
2人を告げると帳場の前の一番奥の席に案内してくれました。
もちろん相席です。
先に座っていらした方は、一目でご常連さんと分かる方。
軽く会釈をして座らせていただき、ビールと「鳥わさ」と注文すると、「申し訳ありません鳥わさはちょっと」と申し訳なさそうな反応。
鳥わさは都の指導で出せなくなったのだそうです。 残念。
それでもこの店の定番の肴は、他にもいつも魅力的なものばかり。
親子煮、焼鳥(タレ)、にしん棒煮、いたわさと注文して、酒も日本酒の冷やに変更。
高い天井、きびきび動く店員さん、様々に蕎麦を楽しむお客さんを眺めながら、こちらものんびり蕎麦屋酒を楽しみます。
その間お客さんは順次入れ替わるものの、席には常に誰かが座って酒を飲み、つまみに箸をつけ、蕎麦を手繰り、それぞれの会話を楽しんでいます。
この賑わいが心地よいとこはいつ来ても変わりません。
2人で銚子を5本空けたところで、マイレビュアーさんに食べていただきたかった「天ぬき」を注文。
さらに銚子を2本。
丼に2本入った海老天の海老が甘い。
つゆを吸い込んだ衣がまた酒のいい肴。
そろそろこの辺りでいったん〆にしましょうということで、マイレビュアーさんはもり、自分はおかめ。
ここのおかめは、具材の位置がいつも決まっている美人タイプのおかめ。
そういえば、蕎麦はもりかおかめしか食べたことがないかも。
マイレビュアーさんは、つまみにも蕎麦にもご満足いただけたようでした。
ここに来るとたいていの人はよかったと言ってくれる、味はもちろんですが多分懐の深さがそう言っていただける要因ではないかと勝手に思っています。
多分今日はてんてこ舞いの忙しさでしょう。
それでもいつも雰囲気を崩さずにきっと営業されていることかと思います。
細く長くこの雰囲気を残していただきたいものです。
この年越しそばレビューで2015年の締めくくりとさせていただきます。
お読みいただいた皆さん、今年もお世話になりました。
2016年もまたよろしくお願いいたします。
【再訪 2012.09】
神田まつやの本店に連れてってくださいと、ずっと前からお願いされていた約束を先日どうにか果たしてきました。
リクエストをいただいたBさん、神田まつやには子どものころから来ていたという蕎麦通のTさん、北千住ツアー以来久しぶり?にお会いするRさんとご一緒。
4人だと、いろいろつまみも食べられるな、などと風情ある店の前に順番待ちのために並びながら考えていたところ、一仕事思い出しました。
玉子焼きを予約せねば!
今はメニューには載っていない玉子焼きは、手間がかかるからということで、事前予約しないと食べられないのです。
並んでいる間に電話。
「これから伺いたいんですが玉子焼きを予約しておきたいのです」
「かしこまりました。何時ごろお越しになりますか?」
「今、店の前でメンバーが揃うのを待ってます」
なんていうやりとりで予約も完了。
ではメンバーが揃ったところで、向かって右側の入り口から入りましょう。
人数を告げると、いつものオペレーション通り、その人数の合わせた席を指示されます。
いつもながら天井が高く、風情があっていいですねえ。
お客さんも若い方から後期高齢者だろうなという方まで幅広く、みなさんそれぞれにワイワイ楽しそうにお話ししながら、酒を飲み、つまみに箸をつけ、蕎麦を手繰っています。
お客さんは次々訪れるので、常時ほぼ満席状態。
それでも不思議に不快な五月蠅さにならないのが、この店のいつも通りの不思議な光景です。
まずはビールで乾杯。
いつもの蕎麦味噌を舐めてのどを潤した後、酒も追加しながらこの日いただいたのは次のもの。
○鳥わさ
○棒にしん
○そばがき
○玉子焼き
○親子煮
○やきとり(タレ)
○焼き海苔
ほぼ、神田まつや「つまみ一座」の顔見世興行的ラインナップ。
初めて食べたそばがきは、木の葉の形に成形されて樽に入って登場、4つに切り分け、薬味を好みで入れてそばつゆで食べます。ねっとりもっちりとした歯ごたえで、蕎麦粉の味が口の中にふわっと広がります。またこの蕎麦つゆがいいですね。ネギを入れてチビチビ含めば、そのまま酒のアテになってしまいます。
お隣の方が、一生懸命メニューを探しても見当たらないので怪訝な顔をされていた玉子焼きは、きっちりした小判型。
Tさんによればこの形にするのに手間がかかるのだそう。
表面に三つ葉がうっすら見えます。
出汁の風味が効いた甘めの玉子焼きは蕎麦屋ならではの味。
みなさんに喜んでいただけたので、やっぱり予約しておいてよかったです。
親子煮は、この店は出汁がうまいということを実証する一品。
出汁とタレのうまさは、やきとりでも実感することができます。
蕎麦はめいめい好きなものを注文。
おかめそばにしてみました。
温かいつゆの張られた丼には、蕎麦の上にもみ海苔が敷かれ、玉子焼き、たけのこ、かまぼこ、甘辛く煮た椎茸、ほうれん草、なると、湯葉が乗ってます。
蕎麦つゆよりも濃い味に煮た椎茸、甘味のある玉子焼き、シャクッとした歯ごたえのたけのこ、風味いっぱいの海苔など、一つ一つに手がかかったなかなか豪華で贅沢な蕎麦。
でも値段は950円と、にしん蕎麦より安価。
実は、昔からおかめそばって好きなんです。
温かい蕎麦は、出汁の旨味がお腹の中に染み渡りました。
この日は大相撲秋場所の初日の前日ということで、呼出さんによる触れ太鼓がちょうど回ってきました。
一層の江戸風情を味わってこの日は打ち止め。
1人4,000円ほどで、味も雰囲気も楽しめて得した気分の一日でした。
ご参加いただいたみなさま、どうもありがとうございました。
【最初のレビュー2011.09】
マイレビュアーのM氏から神田か新橋辺りで飲みたいとメール。
蕎麦屋飲みもしてみたいということなので、そんじゃあ神田まつやでしょう、ということで、久しぶりに夕方やってきました。
この辺りは戦争でも焼けなかった貴重なエリア。
戦前からのものというお店の構えは老舗の風格そのもの。
店内にかけてある昔のこね鉢や柱時計、高い天井、柱や梁からも歴史を感じることができます。
それから、入口は店の正面に立って向かって右側、出口が左側ですから出口から入らないようにね。
食べログを始めてから訪問したのは初めてですね。
その前は何度か訪問させていただいていて、ある時は午後一の仕事が終わった2時過ぎから酒を飲み始め、メニューに乗っていた肴を全部食べてもり蕎麦で〆たこともありました。
この店は通し営業ですから、昼間っから飲んでいる方もけっこういますよね。
さて、まずはビールでのどの渇きを潤します。
サッポロの赤星があるんですよね~。
酒を頼むと蕎麦味噌がちょこっと付いてくるのも蕎麦屋らしいサービスです。
蕎麦屋ですからもちろん蕎麦がメインなんですが、蕎麦に使う種ものが蕎麦前の肴になっているところが老舗の蕎麦屋さんらしいところ。
焼鳥の鶏は鶏南蛮、かまぼこはおかめ、焼き海苔は花巻、にしんの棒煮はにしんそば、天種はもちろん天ぷら蕎麦に使うもの。
それがおつまみとして出されてくるところは、昔からの蕎麦屋さんのやり方を受け継いでいるものですね。
今回は鶏わさに焼鳥、焼き海苔といったところからつまみにいただきました。
鶏わさの上には、わさびとともにたっぷりの白髪ネギが乗っています。
鶏はキレイな色をした新鮮そのもの。
ちょっと湯引きしてあります。
焼鳥は塩でいただきましたが、脂の乗ったいい鶏です。
その脂を吸った葱もまた美味しです。
焼き海苔は厚みがあってパリパリ。
適当にちぎって山葵を乗せて醤油をちょっとつけてもよし、蕎麦味噌を乗せて食べても良しです。
こういうつまみがでてくるとやっぱり酒ですね。
日本酒は菊正宗だけなので、それをぬる燗でいただきます。
追加したつまみは、にしんの棒煮。
しっかり甘辛の醤油味に煮込まれたにしんは、もちろん蕎麦に乗せたら絶対美味いと思わせてくれますが、酒のアテにも最高です。
山椒をちょっとかければ、香りもアップ。
ついお銚子をもう一本追加してしまいます。
こちらで嬉しいのは、メニューには書いていませんが、天ぬき、鴨ぬきもやってもらえること。
他の席のお客さんの中には、かき揚げ蕎麦の上だけをまず持ってきてくれと注文して、お銚子を空けている方もいらっしゃいます。
我々は今回は天ぬき。
丼に張られた温かい汁に、海老の天ぷらが2本と三つ葉、結んだかまぼこが入っています。
温かいものが食べたいなと思う時はこれがいいおつまみになりますね。
プリンとした海老ももちろん美味しいですが、汁を吸った衣もまたいい味を出しています。
温かい汁物でお銚子を空けたら、もり蕎麦で〆にいたしましょう。
相変わらず風味のあるふくよかな旨味の蕎麦です。
喉越しのいい二八。
汁はかなり濃い味の江戸の辛汁。
このくらい濃いから、そばをつけるのは半分未満で十分です。
店内は6人掛けと8人掛けのテーブルなので、相席は当然。
みなさん賑やかに酒を飲みつまみを食べ、そばを手繰っています。
奥様がちゃんと両手でご主人にお酌をしてあげている老夫婦、背筋をきちんと伸ばして蒲鉾と焼き海苔でお銚子を重ねる紳士、子どもにこの店のうんちくを語って酒を酌み交わしているお父さん、職場の話題で盛り上がるサラリーマン、蕎麦屋デートらしいカップル、今度は○○にも行ってみようよと語り合っている蕎麦屋巡りの方、いろんな方々が、それぞれの話題で話しています。
でもそれが騒がしくも五月蠅くもないのがこの店の不思議。
お客さんの賑やかさがこの店の+の活気になっているのを感じます。
誰でも気軽に入って一杯やっていける蕎麦屋さんの気取らない雰囲気が、店の中に染み込んでいるんでしょうね。
店内の女性スタッフの目配りや連携もお見事。
荷物のあるお客さんには、「お荷物をお持ちしましょうか」と声をかけたり、席の埋まり具合を把握して、次に来る客が何人かによって案内する席をみなさんで目配せ確認していたり、てきぱきと動かれています。
料理だけでにとどまらない老舗の力を感じさせてくれる総合力の高い店だなと、こちらに伺うたびに感じさせてくれます。
帳場に座るのは大旦那。
うちの職場の大先輩と昔の同級生だったそうで、勘定の際に昔の話を懐かしそうに語っていただいたときは、物腰の柔らかい一方で気骨もある方だと感じました。
いつまでもお元気でいていただきたいものだと思っています。
2位
1回
2014/12訪問 2016/05/05
【再訪2014.12】
「この前いらしたお客さんが鶏の料理を食べて、美味しいですねぇこの鶏はどこの地鶏なのですか? と聞かれたんです」とシェフ。
「奥様、この鶏は地鶏でもなんでもなく、普通に肉屋さんに売っている鶏ですよ。皮目からきちんと焼いて、基本をちゃんと踏まえて焼けばそういう鶏でもちゃんと美味しくなるんです」と解説されたとか。
このやりとりにこの店の基本姿勢が表れています。
客席6つの小さな個人営業の店。
ハンバーグ900円、ビーフカツ1,530円、ポークソテーきのこソース1,150円、本日の魚料理は1,250円で出すこの店は、素材に高級なものなど使えるわけがありません。
「高級な素材を使って美味しく作るのは当たり前で、普通のものを使っていかに美味しく作るかがプロですから」というのがシェフの考え。
基本を守って丁寧に作る姿勢が表れています。
昨年も、ハンバーグ、ビーフカツ、ポークソテーきのこソース、ずわい蟹とホタテのパイ包み、牡蠣のベーコン巻、牡蠣のグラタンなどをいただいてきました。
どれもシェフの腕前が発揮されてます。
「年のせいかちょっと疲れるようになったんで、営業時間を少し短くしたんです」と、夜は9時閉店になり、休みも月曜日と火曜日になりました。
そんなことを言っても厨房でのシェフの動きは、相変わらずの見事なパフォーマンスを見せてくれます。
今年も時々食べに行かせていただくつもりです。
【再訪2011.10】
西武線沿線ということでなんとなく集まったメンバーの第3回オフ会。
今回はコロタンさんが幹事となって企画をしていただきました。
会場は、西武線沿線の名店の一つ、三浦亭。
カウンター6席だけの店を90分間独占して、みんなで美味しいものをシェアして食べてしまおうという企画です。
この日、参加者6人でシェアして食べたのは次のもの。
カキのベーコン巻 2皿
メンチカツ 2皿
グリエールチーズハンバーグ 3皿
牛ヒレのカツレツ 2皿
オムライス 2皿
ズワイガニのトマトクリームスパッゲッティー 2皿
クリームブリュレ 2人前
昔ながらのカスタードプリン 2人前
アプリコットタルト 2人前
ガトーショコラ 2人前
都合6種類13皿の料理と4種8人前のデザート。
よく食べました。
通常の2人分の料理を食べてしまえるところがこの店の実力です。
最初は、「料理はどれも1人前ですからそれをどれだけ注文されるかは、お客様がお決めになることです」と、相変わらず素っ気なかったシェフ。料理が進むにつれて、この日はどんどん饒舌になって、みなさんがビックリするほど語ってくれました。
一番最初に食べたのは、カキのエキスが口の中に広がるカキのベーコン巻き。
写真で、この日のカキのベーコン巻きと以前のカキのベーコン巻きの盛りつけが違うのがお分かりいただけますでしょうか?
今日は盛りつけがいつもと違うねというと、「普段は一人の方が食べるのであの盛りつけです。今日はみなさんでシェアされるので、取り分けしやすいようにこういう盛りつけにしています。これを分かってほしいなあ」とシェフ。
なかなか細かいご配慮痛み入ります。
さて、この発言の後、シェフは次々に料理を作り、そして語り、質問に答えます。
メンチカツとハンバーグの、ナイフを入れた瞬間に相変わらず溢れかえる肉汁には、「これがうちのやり方なんです」。
今回もすごい肉汁。
ライスをもらって肉汁ライスにしたいという声もあったんですが、今回は種類を食べることに力点を置いたので、ライスはなし。
メンチカツとハンバーグのソースが同じであることについて、「料理は調理法や素材の組み合わせによって何通りにも変わります。だからソースが同じでも味が違うように感じられるのです」。
確かに、チーズハンバーグとメンチカツではソースの感覚がちょっと異なるんですが、それもシェフの計算なわけですね。
オムライスの中のご飯がトマトソースのリゾット風になっていることについて、「うちのはべちゃべちゃにしちゃうのがやり方なんです」。
しっかり焼いた薄焼き卵の中にはリゾットという食感の違いがシェフのこだわりなのかもしれません。
牛ヒレのカツレツが柔らかいのは国産牛なのか、叩いたりしているのかとの質問に、「いえ、輸入ですよ。コスト的に和牛はこの値段では使えませんよ。それになにもしてませんよ。みなさんご覧になってたでしょ。塩コショウして調理するだけです」。
限られた食材を美味しく料理に仕上げるシェフの自負ですね。
残り時間が迫っている中でデザートをどうするか迷っていると、「4種類を全部お出ししますからみなさんでシェアされたらいかがですか」。
ただちにクリームブリュレの表面をバーナーで炙るシェフ。
短時間に全4種類のデザートを用意するスピードはさすがです。
昔ながらのカスタードプリンが大きな器から取りだされるのをみんなが見とれていると、「全部くれとか、丼持ってくるからそれに作ってくれとか言うお客さんもいますよ。でもそんなこという人に限って絶対丼なんか持ってきませんけどね」。
お客さん観察も相変わらず鋭いシェフです。
我々に対しても、「いきなり写真をバシャっは、ちょっと待ってくれと言いたくなりますよね。気持ちの通じ合いですから」、 「隣で奥さんがずっと写真を撮っていてちっとも旦那さんが食べられないという人もいるんですけど、いつ食べるんだと思っちゃいますよ」、 「料理人としては料理は温かいうちに食べてほしいですよね」、 「みなさんも(レビューを)書く人なら、どう作っているかもよく見てほしいですよね」 などなど、 いろんなお話をしていただきました。
今回はシェフの鮮やかな料理製作の手さばきとパフォーマンス、そしてどれもみんなが納得する美味さの料理、さらに珍しく饒舌なおしゃべりと、90分間のシェフのショータイムを満喫でしたオフ会でした。
ショータイムのお代は、ビールやソフトドリンクの飲み物を入れて、6人分で23,000円せず。
これまたCP高し。
それにしても90分できっちりショーを演じきるシェフの仕事の段取りは、いつも爽快です。
ご本人は、「私は手が遅くて」とか謙遜してますが、そんなの今回見ていた6人は誰も信じませんよ。
【再訪2010.05】
4月からはまた春・夏メニューに、メニューが変わっています。
写真にある、カキ、子羊、ポークヒレソテーはベンチに下がりました。
ある意味ここは、自分にとって基準点として考えているお店。
同等のCPでここよりも感動するような美味しい店なら、★5でもいいかなと。
牛ヒレのカツレツ、かきのベーコン巻、ハンバーグは、それくらいの感動を与えてくれました。
ビーフシチューもポークヒレのソテーも、シェフのこだわりを感じる一品でした。
今回食べに行って、気がついた点を一つ。
シェフはオーブンをよく活用しますね。
ハンバーグも子羊もポークソテーも真鯛のソテーもカキのベーコン巻きも、みんな表面をフライパンで焼いてからオーブンに入れて、じっくり火を通します。
ビーフカツの場合も少なめの油でオイル焼きのようにしてから、オーブンに投入します。
このオーブンが料理の旨みを増幅させる、シェフの魔法のオーブン。
シェフの手際とともに、このオーブンが強力な武器になっている気がします。
ビーフカツは美味しかったですよ。
中はレア。でもオーブンの力できちんと火が通って、中の旨みが活性化したレア。
真鯛のソテーは、まず皮目をしっかり焼いてからひっくりかえしてちょっとしたらオーブンへ。
トマトソースは、塩を加えたらバターでコクを出しバジルを加えて味を確認したら真鯛の上へ。
相変わらず、そんなシェフの見事な料理ショーは、食べる前の期待値を確実にアップさせてくれます。
またときどき行きますね。
この間に食べたものの写真をアップしてなかったので、まとめて公開しました。
【11月2日再訪】
カキのベーコン巻(900円)と子羊のソテーマスタードソース(1300円)を食べて来たので、写真をアップしました。どちらも秋からのメニューです。
カキは程よく熱が通って、少し厚めに巻かれたベーコンと一緒に食べると、カキのジュースが口の中いっぱいに。カキの下に敷かれたフランスパンにはソースがしっかりしみ込んで、これまたカキの余韻が楽しめました。
子羊は、一口食べると「私間違いなく羊でしょ?」と、ちゃんと羊であることを自己主張します。でも香草のいい香り。脂もけしてくどくなく、美味しくいただきました。最後は骨についている肉までしゃぶってしまうほどです。
「香草は肉料理の基本ですからね、羊には羊のための基本の処理があるので、それをきちんとやるかどうかですよ。でも脂が嫌いという方には、脂を取るんですけどね。」というシェフ。基本をきちんと守るお仕事ぶりが味に出てますよね。
この日は、急に寒くなったせいか、8時半頃から貸し切り状態。料理をいただきながら、マスターの修業時代の話もいろいろ聞かせてもらいました。ポケットにマイスプーンを忍ばせて、先輩の目を盗んで味見をしまくっていたという話。皿洗い時代は必ず残ったものを口に入れて、いつか自分もちゃんとしたものを食べるようになってやると思っていたという話。昔のレストラン厨房と今のレストラン厨房の人間関係の違いの話。「自分でも美味しいものが食べたいし、お客さんにも美味しいものが出したいんですよね」というシェフ、ちゃんと基本を守って手抜きをしない姿勢がにじみ出てます。
そんなシェフも、お話に熱が入って、今回は「パンの焼き忘れ」が。お皿のソースの御掃用に注文したパンを子羊焼くのとお話するのに集中しすぎて飛んでいたご様子。「ついうっかりパンはよく忘れちゃうんです。すいません」。
いやいや大丈夫です。前回同様これもシェフの味。今日もとても美味しかったです。
【最初のレビュー2009.10】
武蔵関でこの店を見つけた時はホントに掘り出し物だと思いました。住んでいるところは一つ隣の駅の方ですが、一駅分歩いても食べに行きたくなる店です。10月からは秋メニューになっているので、前菜にカキが出てきましたね。カキのベーコン巻(900円)がまた美味しいんです。カキの火の通しかたがぴったりで、うま味が凝縮されたタイミングで焼きあがって目の前に出てきます。ビーフカツレツ(1380円)もちょうど肉のうま味が活性化された揚げ上がりで、かけられたデミグラスソースも美味しいです。
テレビに出たのはハンバーグの時でしたが、シェフ曰く、「切った瞬間の肉汁が湧き出てくる感じを大事にしている」通り、ナイフを入れると肉汁が飛び出してきます。肉は合びきですがその配合比率があの肉汁のポイントの一つとか。テレビで紹介されたほかのお店は、「うん美味しい」「ああ美味しい」という感想でしたが、三浦亭のハンバーグ(880円)は「うわっ、美味しい!」という感じでした。
そんな巨匠のシェフでもたまにはミスをする時があります。この前行ったとき、ハンバーグにナイフを入れると、肉汁がいつもより少ないなと思ったのですが、切ると中がまだ若かったんですね。そのことを指摘するとシェフは、すぐさま「申し訳ありません、作り直しますね」と言って、即座に若いハンバーグをゴミ箱へ。ちょっとデミグラスソースで煮込めば美味しいかなとも思ったのですが、「お客さんが時間がないから煮込めばいいと言っていただいた時はお言葉に甘えるときもありますが、やっぱり納得できないので作り直します」と言って、新しいのを作り直してくれました。もちろんいつも通りに肉汁が飛び出すものをね。「たまにやっちゃうんですよ」というシェフ。いえいえそんなことぐらいでこの店嫌いにならないから大丈夫ですよ。いつも美味しいもの御馳走になっているんですから。そんなシェフの人柄もこの店の味ですしね。
夜はシェフ一人で切り盛りしてます。カウンターだけなので、目の前で素材に下味をつけ、ソテーし、グリルし、ソースをかけて盛り付ける姿が見られます。その手際も見ていて颯爽としています。また行きますね。
そうそう、ハンバーグ頼んだらパンも一緒に頼んで残ったソースでお皿を御掃除するのも好きです。オムライス(850円)もみなさんおっしゃる通り美味しかったです。
3位
1回
2013/04訪問 2020/02/28
6年ほど前に一度来たことがあるのです。
その時も美味い蕎麦屋さんだなと思ったし、隣に座った方が、「出版社の者です」とか「フードコーディネータです」とか自己紹介してくれたりしてましたので、けっこう食通の方が来る店なのだなとは思っていました。
この界隈は仕事の関係でしょっちゅうウロウロしているところなので、機会があればまた来たいなと思っていたのです。
そんなある日、マイレビュアーの蓼喰人さんから「カウンターを貸切にしたのでいらっしゃいませんか」というご丁寧なご案内。
そりゃもう二つ返事で喜んで参加させていただきました。
開始時間には続々みなさん集合。
入り口上に飾られた蕎麦のこね鉢を使った店の看板など外観を撮影したら靴を脱いで店内へ。
8人座れる掘りごたつ形式のカウンター席に横並びで座らせていただきました。
ご主人とは対面式になる形。
この店は調理から接客まですべてご主人がお一人で切り盛りしますから、基本はカウンター席だけが使われるのです。
歴史を感じる飾り棚など重厚感ある木製の調度品。
その中には、「江戸時代のものもあるよ」という蕎麦ちょこや器が納められています。
では早速生ビールで乾杯。
まずは前菜の4種盛りがカウンター越しにご主人から手渡されました。
蕗味噌、味噌納豆、わらびの煮物、葉山葵のひたしの4種。
味噌納豆は納豆といっても粘り気はほとんどなく、味噌風味の大豆マメという感じ。
蕗味噌は苦味、葉山葵は辛味がそれぞれアクセント。
しかし、これはいかん、すぐに日本酒が欲しくなってしまいます。
その気配を察知したご主人は、「日本酒いきますか」?
この日用意してある日本酒を我々の目の前に並べてくれました。
では、順番にお勧めのものをということで、とりどりの猪口の中から各自好きなものを選択。
なぜか我々の座った席の側は大きな猪口ばかりを取る人が集まったのは、やはり自然とそういう席の配置だったのでしょうか^^;
ご主人のお勧めに従って、ちょっと酸味があってボディのしっかりした「景虎」(新潟)、ほんのりした甘味のあるさっぱり系の「真澄」(長野)、ボディのしっかりした飲み応えのある「大七」(福島)、バランスのいい船中八策(高知)、甘味があってフルーティな「東洋美人」(山口)、すっきりした飲み口の「写楽」(福島)、辛口すっきり系の「山頭火」(山口)と、結局ストックの日本酒を全種類制覇。
この店では「ちろり」で日本酒が提供されるのが特徴。
あの重みのある「ちろり」は錫製かな。
そんなお酒を飲みながらいただいた料理は次のもの。
〇八寸
近江の赤こんにゃく、鰯の胡麻漬け、空豆、鰆の山椒煮、鯨ベーコン、金時の梅肉乗せ、葉山葵を挟んだかまぼこ、ながらみ(巻貝です)、玉子焼き、ホタルイカ、酢蓮根、ごぼう、茹で筍など15種。
どれも酒に合うものばかり。
作り置きのものもあるとは思いますけど、きちんと手をかけてあるものばかり。
玉子焼きは椎茸が入っていい味を出してました。
どれも一口サイズですが、そういう小さなものを全てきちんと作られるところがさすがと感じられます。
〇そばのスープ
蕎麦の実を半分程度に挽いて鰹出汁で割っているのだそうです。
かかっているのは蕎麦茶。
クリーミーでなんともやさしい味がします。
〇蕎麦寿司
蕎麦と一緒に錦糸玉子、きゅうり、海老が海苔で巻かれています。
蕎麦の水切りがきちんとしているので、海苔がパリンとしています。
かといって、そばがパサつくなんていうこともなく適度な水分があり、この見極めってなかなかすごいなと思います。
〇そばがき
そばがきを揚げて鬼おろしと出汁で食べます。
もっちりねっとりとして甘味のあるそばがきは、口の中に蕎麦の風味がいっぱいに広がります。
鬼おろしが合いますね。
「鬼おろしの方が水っぽくならないんですよ」とご主人の説明がありました。
蕎麦がきを食べ終わったお椀には、蕎麦湯を入れてくれるサービス。
一椀で二度美味しく楽しめます。
〇蕎麦クレープ
カリカリのにんじん、みょうが、かいわれ、水菜などが蕎麦のクレープで巻かれてあります。
味付けは甘めの八丁味噌。
出汁と醤油の世界とはちょっと変わったアクセントが楽しめる味。
蕎麦クレープはふっくらで蕎麦の風味がたっぷりです。
〆の蕎麦は「深山」という田舎風の太目の粗挽き蕎麦とせいろの2色盛り。
せいろは喉ごしがよく、加えて蕎麦の風味が広がって甘味があります。
「深山」は、蕎麦が太い分さらに風味と甘味が強くなります。
喉ごしはよろしくはないですが、噛んで楽しみたくなる蕎麦。
そしてその蕎麦をさらに引き立てるのが蕎麦つゆの存在だと思います。
以前に来た時も、こちらのつゆは蕎麦の味を引き立てるなとは思っていたのですが、今回感じたのは、蕎麦をそのまま食べるよりも蕎麦つゆにつけて食べる方がずっと蕎麦の甘味が増すということ。
蕎麦の実力をさらにアップさせる蕎麦つゆもこの店の実力だと思います。
蕎麦湯は釜から汲んでいただくナチュラルなもの。
今回はご主人と直接お話しできる時間は多くはありませんでしたが、ご自分の世界をきちんとお持ちの方であることは改めて感じました。
こうしたご主人の実力を存分に楽しませていただく機会を作っていただいた蓼喰人さんと、ご一緒させていただいたみなさまに改めて感謝申し上げます。
4位
2回
2020/06訪問 2023/06/19
緊急事態宣言も解除され、テレワークから通常勤務に戻った6月初旬の12時40分。
この店の前に行列がありません。
テレワークでも仕事ができるなら、これからもテレワークでっていう会社もけっこうあるとか。
通勤時間の負担が減るのはいいですが、美味いランチを会社のみんなでたわいもない話をしながら食べるという楽しみはなくなりますな。
そんな影響のせいで、2月に来たときはまだ長い行列があったこの時間でも行列なし状態だったのでしょう。
入ってみると、中で待っている人も一組だけで、手をアルコール消毒してからほどなくに席に案内してもらえました。
2人だったので、4人掛けの席に「向かい合わせにならないようにお座りください」。
ポークジンジャーは当然のことながら売り切れ。
ミックスフライも売り切れだったので、タスマニア産サーモンのムニエル焦がしバターとケッパーソース(1,300円)にしてみました。
「初めて来ました」という同行者は、ハンバーグと散々迷った挙句にメンチカツ(1,100円)を選択です。
まずはいつものスープ。
キャベツと人参の甘味を感じる素材の味の旨味を出したコンソメスープ。
そのスープを飲んでいる間に同行者のメンチカツがやってきました。
丸型メンチカツが3つ皿に乗っています。
「これは美味いです」との感想。
彼に食レポは無理ですな(;^_^A
サーモンのムニエルは運ばれてきた瞬間ににんにくと香草のいい香りがしてきました。
切り身のサイズもかなり大きめ。
刻んだトマトが散らされ、ブロッコリーとズッキーニのソテーが添えられています。
ナイフを入れると、皮目がパリッとして身はふっくら。
魚自体にも脂がのっていますが、さらに焦がしバターのソースがコクをサーモンの身に加えていました。
このソース、付け合わせの野菜につけても美味いんだよなぁ。
ポークジンジャーやハンバーグやポークカツなどの肉系ランチは、この店のメインの顔ですが、魚系ランチも全く負けていません。
秋になったらカキフライも出てくるし、やっぱり仕事に出てきてランチに行くのは格別です。
テレワークじゃ味わえません。
こういう店で美味いランチ食べてON・OFF切り替えて午後の仕事のエネルギーを充填させるっていうのも、仕事の効率や成果に目に見えない貢献をしてるんじゃないかと思うのは、食いしん坊の勝手な意見ですかね。
午前中に八丁堀方面で仕事をした後、事務所に戻るために京橋駅まで向かう途中でランチを済ませてしまおうとこの店に入りました。
夜はフレンチレストラン、しかし店の雰囲気はカジュアル。
ランチタイムだったせいか、フレンチの店だからと言って堅苦しい感じはありませんでした。
フロアスタッフは全員男性陣。
愛想のある対応ではないですけど、この人たちなら間違えはなさそうだなという安定的な接客スタイルでした。
ランチは、ハンバーグ、ポークジンジャー、海老フライ、カレー、ポークカツなど10種類ほど。
1,050円から1,300円程度のメニューが並んでいます。
初めて訪問した12月はその中から、カキフライのランチ(1,200円)。
注文するとお箸が運ばれてきました。
箸で食べる洋食なんですね。
こういう気取りのない店って好きです。
12時50分の時点で店内はほぼ満席に近い状態。
それもあってか、料理の提供には15分ほどの時間がかかりました。
きちんと作ってくれている証拠ですね。
15分ほどして、カップスープが運ばれてきました。
ニンジン、オニオン、キャベツ、セロリ、ベーコンなどが細かくカットされた野菜のたっぷり入ったコンソメスープ。
野菜の甘みが溶け出した旨味があるスープです。
続いて、カキフライとライスがやってきました。
カキフライは5粒、タルタルソースの上に乗って登場です。
添えてあるのは、キャベツの千切りにカイワレ、オニオンのスライス、にんじんの千切りをを乗せたサラダとポテトサラダ。
盛り付けもちょっと上品なところは、さすがフレンチの店という感じです。
カキフライの下に敷かれたタルタルソースはかなり分厚い層となっているので、たっぷりつけてまずはカキフライをパクリ。
これがとってもジューシー。
熱の通し方が上手、カキのジュースがちょうど旨味が活性化する程度に熱くなっています。
火傷するほどの熱々という熱さではなく、ちょうど食べやすい熱さでこの旨味を出すところは、シェフはなかなかの腕前と見ました。
タルタルソースがそこにさらにコクを加えてくれる役割で、これまた美味し。
ここまでまた食べに来るのはちとたいへんですけど、シーズン中にもう一回は食べたくなるカキフライでした。
付け合せのポテトサラダもまたクリーミーでいい味だしてます。
なかなか上品で上質な洋食ランチになっていました。
最初の訪問から1ヶ月後に再訪。
午後1時をちょっと過ぎた時間なのに店内には順番待ちのお客さんが8人もいました。
人気ありますねえ。
すでに2つほどのメニューは売り切れ。
今回は洋食の定番ハンバーグのランチを目玉焼き付き(1,100円)で注文です。
俵型にふっくら膨らんで、デミグラスソースをたっぷりかけられ、目玉焼きを乗せたハンバーグが、マッシュポテトとサラダとスパゲティを従えて登場してきました。
カットすると肉汁がジワジワ流れ出てくるのが見えてきます。
丁寧に肉が挽かれたしっとり系のハンバーグ。
火はしっかり通ったタイプ。
表面はカリッとした焼き加減が残り中はしっとりとした肉の旨味ですね。
3度目はエビフライのランチ(1,100円)。
3本のエビフライがそそり立ってます。
七條やヒロと同じ感じのビジュアル。
一本が20センチぐらいある立派な海老です。
ナイフとフォークはつかないので、箸でつまんでガブリといくと果たして海老はプリプリ。
甘味のある上品な海老。
女性の方は遠慮なくナイフとフォークをもらった方がいいと思います。
4度目はカツカレー(1,200円)です。
カツカレーだからといってもご飯の上に乗るトンカツはなかなか立派なサイズ。
厚みだって1センチ以上あるし、ジューシーで柔らかです。
カレーは欧風カレー。
上品な作り。
辛さはたいしたことありませんが、深みのある丁寧な作りを感じることができるカレーです。
トロトロに煮込まれた牛肉が入っていました。
このカレーがカレーポットに口切の量入っています。
だから、ご飯にもカツにもたっぷりかけてもカレールーが足りなくなるなんていうことがないのが嬉しいですね。
5度目にしてようやくもち豚のジンジャー(1,100円)。
ポークソテーのジンジャーソースですね。
このメニューは売り切れるのが早いんです。
12時半に行っても売り切れだったこともあり、これまで4回ともすべて売り切れだったのです。
食べてみると、そりゃ人気があるのも分かります。
豚肉は200グラムぐらいあるでしょうか、2センチぐらいの厚みがある立派な豚肉。
しかしナイフがサクッと入る柔らかさ。
食べてももちろん柔らかいのですが、弾力もまた適度。
脂身には甘味、肉には旨味。
自分的には、横浜の津久志亭、大森の入舟とともに、3大ポークソテーに認定したい気分。
それになんといってもジンジャーソース。
このソースをまとった豚肉をいつまでも口の中で噛んでいたい旨さ。
付け合せはキャベツの千切りではなく、もやしやピーマンやニラの野菜炒めなんですが、このソースならこの野菜炒めがピッタリ。
ご飯をもう一杯丼でもらって、このソースと野菜炒めをご飯の上にぶっかけて食べたい衝動に駆られます。
個々のランチは、いつも丁寧な作りを実感。
入ってすぐのレジ横のカウンターには、この店を紹介する雑誌がページを開いて置かれています。
値段は1,000円超えですけど、近所にあったら、給料日の後には毎月ランチに来たくなる店です。
ディナーは気取らずリーズナブル。
ブリフィックスのコースで5,880円。
でもこのコースがボリュームたっぷりで、かつランチ以上の上質感。
ブリフィクスコースでも、アミューズと前菜には温かいものと冷たいものが2種、魚料理と肉料理が一品ずつ、デザート、飲み物とお菓子が提供されます。
冷たい前菜の中には、この店オリジナルのウニとコンソメのジュレがあるのですが、これが美味い!
どう美味いかは一度食べていて実感していただきたい、この店のオリジナルな味です。
温かい前菜にいただいた「ズワイ蟹と小柱のパスティア」はモロッコ料理のブリックの中身を蟹と小柱にしたもの。
蟹のエキスがとんでもなく濃厚です。
天使の海老を使ったフライも温かい前菜にあるのですが、海老の甘味はランチ以上。
ランチに天使の海老を出したら「お店がつぶれちゃいます」とのことで、これはディナーならでは、それもメインじゃなくて前菜なんてところがこの店の実力です。
この日の魚料理は真鯛のソテーのバジルソース。
鯛はホクホクで、ソースの香りがとっても食欲をそそります。
肉料理でいただいた、牛のイチボ肉の赤ワイン煮込みは、まだこんな大きさの肉を出すかというくらい堂々たるサイズ。
肉の柔らかさはトロトロ、ソースは「高級なワインなんか使ってないんですけど、はちみつを加えてますからワインの風味に深みが出てるかもしれませんね」とのこと。
残ったソースは、パンにつけてきれいにお掃除させていただきました。
もう一品の子羊のソテーには下にクスクスが敷かれ、ちょっと和を感じるソース。
骨から外して食べやすいサイズで提供される子羊は、臭みもなくもちろん柔らかでジューシーです。
デザートには、冬場ならヌガーグラッセがあります。
これが意外にあっさり味で美味いのです。
イチゴのタルトには上に大粒の苺とラズベリーとブルーベリーがあふれるように乗ってました。
それにこのタルトには、チョコレートを振り掛けたバニラアイスまで大盤振る舞いサービス。
この他に、アミューズには4種、飲み物と一緒に小菓子が5種!
食前酒2種にグラスワインを2人で3杯飲んで、16,600円の勘定は誰がどう見ても文句ないCPではないかと思います。
ランチのときは戦場のようなスタッフの方もディナーのときはゆったり。
料理の説明も丁寧にしてくれるし、こちらの感想を聞いてさらにいろいろお話もしてくれました。
ディナーの写真が一部しかないのが残念。
お店の方は撮影許可をくれたのですが、どうも他のお客さんからシャッターの音がうるさいとクレームがあったようなので自粛しました。
ディナーの写真を撮りたい人はシャッター音なしで写しましょうね。
5位
1回
2013/06訪問 2016/05/05
まだレビュー件数は少ないのに、そのいずれのレビュアーさんも高評価のこの店。
そのレビューを見たメンバーに、レビューを書かれたぴせさんにも加わっていただき5人で夜のコースをいただくことにしました。
席数は14席のみという小さな店。
ご主人と奥様のお二人で調理から接客までをこなしています。
店内には古い掛け時計があったり、花が活けてあったりと、狭いながらも落ち着いた清潔感のある雰囲気。
そんな店で今回は、6,300円のコースをいただくことにしました。
さて、その料理の内容は次のもの。
○先付 : 青大豆どうふと蛸のやわらか煮
しっかり大豆の味がする豆腐をいただきました。
蛸は、この日は三浦半島で獲れた蛸。
なんでこんなに柔らかいの?というくらい軟らかく煮こまれ、しかもしっかり味が入っています。
蛸は余熱が入ると固くなるのだとか。
だから一気に煮て、煮汁と別にしてすぐに冷やしたら、改めて味を染み込ませるのだそう。
最初から丁寧な仕事の一品です。
○椀 : 鯒、じゅんさい、椎茸、焼豆麩、三つ葉、アスペルジュソパージュ
アスペルジュソバージュというのは、細いアスパラガスみたいなフランスの山菜だそうです。
サクッとした歯ごたえがいいですね。
鯒は、まごちです。
初めて食べるという方も多かったんですが、ハゼを大きくしたような形の魚なんですよね。
白身の味がしっかりしている魚です。
この椀の出汁が優しい味してますね。
鰹節と鮪節と昆布でとった一番出汁とのこと。
素材の味をきちんと明らかにするように、出汁の味は控えめなんですが、素材をやさしく包んで、「美味しくなれよ」と励ましているような味がします。
○造り : あこう、鱧、カマス、メジ鮪、アオリイカ、おかひじき、若布
あこうはハタ科の魚だそうです。白身で上品な味。
カマスは軽く炙ってあってその分旨味を強く感じます。
そして、アオリイカの甘いこと。
みなさんが感心したのは、付け合せ的存在のおかひじきにもしっかりいい出汁の味が染み込んでいて、きちんと仕事がされているところ。
手抜きがないですねえ。
○焼 : マナガツオの木の芽味噌田楽と地鯵の醤油つけ焼き
「マナガツオって鰹とは違うんです」と奥さんの解説。
丸い体系の淡白な魚なんですよね。
味噌などをつけて焼くと美味いのですが、今回は魚の身の旨味を殺さない程度の塩気の木の芽味噌で焼いてあります。
地鯵も魚の旨味がしっかりしてますね。
そして、アスパラガスの辛し和えと白瓜が下に敷いてあります。
これまた口の中をさっぱりさせてくれる名脇役でした。
○揚 : 芝海老真丈、とうもろこし湯葉包み、空豆、時鮭真丈、赤ピーマン
空豆が甘いです。
とうもろこしもまだ時期が早いのに甘味はけっこうありましたね。
海老真丈が海老のいい風味を出してました。
正確な名前は失念したんですが、添えてある塩がまたいい味なのです。
〇炊き合わせ : 笹の子、石川芋、人参、冬瓜、いんげん
笹の子っていうのは細い筍ですね。
しゃくしゃくとした歯ごたえがいいです。
冬瓜はこれからの野菜ですね。
季節を感じる炊き合わせです。
この炊き合わせの出汁もまた優しい味。
椀の出汁は一番出汁で、炊き合わせの出汁は二番出汁なんだそうです。
〇食事 : 焼き茄子を添えた汁飯と漬物
焼き茄子の上に乗ったおこげのご飯に出汁をかけて食べます。
おこげが香ばしいです。
この出しも、これまでの出汁同様の優しい味。
しみじみ美味いです。
〇デザート : 「青梅」、「フルーツトマトのみつ煮」、「クレーム五香粉バナナダークチェリー」、
「紅茶寒天あんみつバナナダークチェリーよもぎ麩」から1種類を選択
なので、全部写真に撮りたい我々は、当然のごとく分担して全種類を注文。
しかし、何とドジなことに青梅の写真がデータに残ってませんでした。
シロップに漬けこんであったので、甘くて肉厚で美味しかったんですけどね^^;
飲み物は、アルコールを飲めない方に「申し訳ない」と言いながら、残る4人は最初から日本酒。
「奥」の純米吟醸原酒からスタート。
トロリとした旨味の濃い酒です。
「辻善兵衛」の純米吟醸酒は、辛口すっきり系なので、「奥」に比べるとライトな口当たり。
奥さんが、「今月の月替わり酒です」と言って勧めてくれたのは、「寿㐂心」雄町純米生原酒。
料理の味を邪魔しないバランスのいい酒ではないかと思います。
「黒龍」の純米吟醸酒は燗にしてもよかったくらいボディーのしっかりした味。
〆の「北翔」純米酒は、さらにボディのしっかりしたガツンとくる酒。
5種類の酒を2合ずつシェアさせていただきました。
銘柄を変えるたびに杯を交換していただいて、奥さんにはたいへんお手間を取らせました。
素材の味を活かした、きちんとした丁寧な仕事の和食と美味しい日本酒で、充実した時間を過ごさせていただきましたが、接客担当の奥様がよく気がつく方で、また客に対する気遣いをきちんとされていて、たいへん心地よい思いをさせていただきました。
料理だけでなく、ご主人と奥様の人柄もこの店の好評価の一因だと感じます。
6位
2回
2019/11訪問 2023/06/19
今年はCOVID-19のおかげで、毎年恒例の宇都宮出張が中止になってしまいました。
ということはこの店に行くチャンスも今年はなくなってしまいました。
なので、昨年行った時のレビューです。
2010年に初めて伺って以来、何度か伺っていたのに、今年は行くことがかなわず残念です。
18時前に入るなら電話で予約を受け付けてくれるのですが、それ以降の時間になると予約ができないのです。
出張するといつも仕事が18時30分ぐらいまでかかるので、その前2年間はその時間に電話をしても満席で入れませんでした。
もうすっかり人気店なのです。
そのため、昨年は昼前に店に直接行って、18時30分過ぎになるけどいい?と聞くと、いつも笑顔の女将さんが顔を覚えていてくれて、快く「よろしゅうございますよ」と仰っていただいたのでした。
時間に間に合うように仕事を切り上げ暖簾をくぐると、「お久しぶりですね」とカウンターの向こうからご主人が声をかけてくれました。
3年ぶりですからね。それでも覚えていてくれるところがありがたい。
カウンター席の端に座らせていただき、まずはビール。
いつも通りのヱビスです。
お通しには、干しシイタケと大根のすり流しが出てきました。
刻んだベーコンが乗り、干しシイタケの旨味とともに、ちょっと洋風の味付け。
若旦那の作品だそうです。
東日本大震災の後に、東京の修行先から戻ってきた若旦那も今やお店の中心的存在。
食べログのこの店のトップページにも、「料理人」として紹介されてますね。
いつも通り、刺身盛り合わせをお任せでいただきます。
今回は、かんぱち、ひげたら、さより、さわらの4種。
皮目を炙ってあったり、隠し包丁が入ったりという一仕事がされているところは、いつもながらさすがです。
日本酒に切り替えて飲み始めたところに、「ちょっとだけですけど」といただいたのは、蕎麦の実、鴨、桜海老を合わせた小鉢。
蕎麦の風味、鴨の旨味、桜海老の甘さが混然一体となった味。
この日はうなぎの肝串もいただいてみました。
ほろ苦さとしっかりしたコク、弾力もあってミディアムレアぐらいの焼き上がりなので、トロリとした味わい。
もちろん酒がホイホイ進んでしまいます。
3年ぶりなのでもう一品欲しいなと思ったら、タラの白子と湯波のみぞれ煮を出してくれました。
この料理、初めてこの店に伺った時に出していただいたもの。
実は得意料理なのだそうです。
みぞれは大根ではなく、聖護院蕪を使うところがこの店の流儀。
湯波には厚みがあり、蕪には独特の風味と甘みがあるところが特長で、それぞれの素材の味を邪魔しない出汁がしっかりまとめています。
すっかり料理を堪能したところで、いよいよメインの鰻。
さすがにうな重の値段は上がりましたね。
それでもせっかくなので「松」をいただきます。
注文を受けてから鰻を裂いて作り始めるので、いつも帰りの新幹線の時間を目安に出してもらう時間を先に伝えておきます。
お重の蓋を取ると、ご飯をほぼ覆う感じで一尾分のかば焼きが乗っていました。
つやつやした照り具合。
箸を入れるとふわっとした感覚が伝わってきます。
もちろん食べてもふんわりした柔らかな食感。
口の中でほとびれていきまきました。
蒸しの工程を経ているので、脂も適度に落ちて食べやすく仕上がっています。
品のいいさっぱりした甘みのあるタレも変わらぬ味。
プリッとした肝の入った肝吸いや、味のしっかりした奈良漬けを挟みながらしっかり味合わせていただきました。
地元の方にとってはこの店は「日常」の店なのでしょう。
昔は、旦那衆の集まりなどでよく賑わったそうです。
「今はそういうのはなくなりましたねぇ」とご主人。
その頃の名残を今に残す店。
「私らは変わりようがないんですよ」と最初に訪問した時に仰っていたご主人の仕事ぶりは、その丁寧さがいささかも変わっていませんでした。
ご主人や若旦那の料理も、女将さんの気持ちのいい接客もまだまだ伝えていってほしいと思います。
【再訪 2014.06】
またまた今年もこの時期に恒例の宇都宮出張にやってきました。
宇都宮といえば、私にとってはこの店。
連絡を入れるといつも電話に出てくれる女将さんではなく、若旦那が出て席を確保してくれました。
はたして、この日は女将さんは、「喉が痛いと言って休んでいるんです」とのこと。
今頃はもう回復されたでしょうか、いつもお元気にでいていただきたいと思います。
ちゃきちゃきっとしたおもてなしの女将さんがいらっしゃらなかったのは残念でしたが、ご主人と弟さんのご兄弟による料理の方は、今回もとても充実していました。
ビールの後の白隠正宗純米吟醸と花垣純米吟醸に合わせた刺身はすずき。
さっぱりした白身、でも噛むとジワリとした旨味があります。
とこぶしの酒蒸しには煮切り酒のタレをつけていただきます、
この辺りが、この店の仕事の丁寧なところ。
貝の旨味をこの煮切り酒のタレがさらにふくらませてくれました。
鯛のすりながしは、鯛の風味と旨味がしっかり汁の中に溶け込んでいます。
白焼きは前回同様、脂分を落としてさっぱりふっくら。
〆のうな重も、固めに炊かれたご飯と相性のいいふっくら感のある鰻。
今回もしっかり堪能させていただきました。
毎度ごちそうさまでございます。
【再訪 2013.06】
宇都宮出張があれば必ずと言っていいくらい訪問する川蝉さん。
女将さんもご主人もお元気そうで、いつも通りの温かいおもてなしで迎えていただきました。
ふっくらした柔らかな鰻のうな重もいつも通り。
刺身の盛り合わせは、たいら貝、鯛、いさき、ひらまさ。
そして今回は初めて白焼きもいただきました。
いつも頼もうと思って忘れてたんです。
だいぶ脂を落としたふっくらとした仕上がり。
仙禽や山形正宗、賀茂金秀といった日本酒が進んでしまいます。
年に一度の宇都宮でのお楽しみ。
女将さんとご主人には、また来年も元気な姿でお会いしたいと思います。
【再訪 2012.03】
前回訪問したのは、震災の一週間前のこと。
久しぶりに訪問すると、女将さんもご主人もお元気そうで一安心しました。
地震の時はかなり揺れたそうですが、幸い店に大きな被害はなく、今は通常通り営業しているとのことでした。
女将さんやご主人の、温かみのあるもてなしぶりはいささかも変わりません。
ふっくらとした鰻の美味しさも前回同様。
盛り合わせにしてもらったお造りは、鯛・金目鯛・さより・鯵。
この時期に来るといつもさよりが入りますね。
今回いただいたお酒は、全国16の蔵が協力して製造し、売り上げの一部を被災地にカンパして愛も届けるという「KANPA+I」という名前の酒。
製造は天狗舞の車多酒造でした。
今年からは、東京の料亭で修業していた息子さんが戻ってきて店を手伝っていらっしゃるとか。
女将さんもなんとなく、安心した表情をしています。
「あと何年やれるかと思ってるんですよ」という女将さんですが、跡取りも戻ってきたことだし、まだまだお元気で心和む接客を続けていただきたいものだと思います。
【再訪 2011.03】
宇都宮に出張となると、もうこの店で一杯やってから帰るのが楽しみになってしまいました。
これまで、3回訪問させていただきましたが、女将さんやご主人のホスピタリティに溢れた客あしらい、季節のものを活かした丁寧な肴、そしてもちろん柔らかくふんわりと焼きあげられた鰻、ここにくるといつも心がくつろいだ気分になって帰ることができます。
刺身にしても季節感豊か。
6月に訪問した時はあいなめや金目鯛などを出していただきました。
今年の3月には、あら、アンコウの肝などが入っています。
3月の時は2人で行ったので種類も多めに出してくれました。
こちらの都合に合わせて、その時の旬のものを中心に見つくろってくれるので、いつもすっかりご主人にお任せです。
その他の肴も季節によって変わります。
6月はとこぶしの煮貝や青柳でした。
貝類は産卵前のこの時期が一番身が太ってますからね。
とこぶしの煮貝は海のない地方独特の保存食でもあります。
コリっとした歯ごたえがあり、貝の旨味は凝縮され、薄味の醤油で煮込まれていて言うことなし。
この時は思わず、地元の日本酒の惣誉という、さっぱりした飲み口の酒を頼んでしまいました。
もちろん青柳もぷりぷりで、日本酒との相性は抜群です。
今年の3月に訪問した時はせりの胡麻和えや蕗味噌が出てきました。
ホントに季節感のあるその時々のものが楽しめます。
こちらの鰻は背開きして蒸しあげてから焼く関東風の仕事。
注文を受けてから鰻をさばくので、出来上がりには30分以上かかります。
「関西から来たお客さんから、蒸さずに焼いてくれと注文されたこともあるんですが、それはできませんとお断りしたんですよ」、とご主人。
「私はこのやり方しか修行してきてないんで、他のやり方はできないんです」と語ります。
この店の流儀をきちんと守られた、丁寧なお仕事。
それがふっくらと柔らかくっ仕上がった鰻だけでなく、いつも楽しませていただく料理全体に表れていると思います。
それに、女将さんの接客はいつも心のコリがほぐれます。
いつもにこやかで、客の要望をよく聞いていただいて、いいものを勧めていただいて、料理や地元のこともいろいろ教えていただいて、一見も馴染みも関係ない、ホントに気持ちのいい接客にはいつも感謝です。
また宇都宮行った時は寄りますので、美味しい鰻と季節の肴でゆったりとした時間を過ごさせていただきたいと思っています。
そういえば、まだ初回に食べそびれた白焼きも食べてないし^^;
【最初のレビュー 2010.03】
「うなぎにもその店その店のやり方がありましてね」と語るのはご主人。
「35年やってます。周りはいろいろ変わるんですが、私たちは変わりようがないんです」とのこと。
いやいや、ずっと変わらずこちらのやり方を通してこられたというのは、とっても大事なことだと思いますよ。
こちらは、うなぎだけでなく、そのほかの酒の肴も豊富。
「栃木は海のない県ですから、少し珍しい魚も扱おうと思って出してるんですよ」と、おかみさん。
ではまず、適当にみつくろっていただきましょう。
まず、「すこしずつ3種ほどお持ちしました」という刺身の盛り合わせを出していただきました。
あら、ほうぼう、さよりの3種盛り合わせです。
この3種、さよりははまだ東京でもたまに出ますけど、あらやほうぼうは、そうは見ません。
「少し珍しい」ではなく、かなり珍しい魚が出ていると思います。
ほうぼうは、歯ごたえがこりこり、淡白であっさりしていますが、噛むと旨みが染み出てくるような刺身です。
あらは、ほんのり脂が乗って少し濃厚感があります。でも軽い脂でしつこさは全然ありません。
さよりは、この時期だけの春を告げる魚。透き通る白身で淡白、あっさりしています。
あらは、九州では鍋にすると取り合いになる高級魚。
今回刺身で出していただいたあらは、10キロの目方のものだそうです。
「あらとクエ似てますが違うんですよ。あらはスズキの仲間です。クエは養殖できますがあらは天然ものしかありません」とご主人。勉強になります。
次に出てきたのは、タラの白子と湯波のみぞれ煮。
湯葉ではありません、ここは栃木、だから湯波です。
しっかりとした厚みのある湯波。食べ応えがあります。
白子はちょうどよい炊き具合。旨みがしっかり閉じ込められています。
それにこのみぞれ煮のみぞれ、大根ではなく、聖護院かぶらなんです。
だからカブの甘みがいっぱい。出汁もよく効いてやさしい味になっています。
さらに春の息吹を感じる蕗味噌などで一杯やって、ちょうど4杯目の焼酎のグラスが空く頃、いよいよ真打のうな重が登場です。
普通は注文して30分ぐらいで出されるそうです。ちゃんと作っていただいている訳ですね。
頃合いを見計らうように、ちょうどグラスとつまみが空になった頃に出していただきました。
お重に一匹分、うなぎが横たわっています。
早速一口。
こちらのうなぎは、あっさり仕立てですね。
ふっくら柔らか、口の中でやさしく身がほとびれていきます。
脂っぽさが抑えられて、軽い焼きあがりです。
真ん中の身の厚いところはホクホク、尻尾の方はややカリッとして、食感の違いも楽しめます。
たれは、品のいい甘さをもったあっさり味。
ご飯と相性いいですね。
静岡は吉田のうなぎだそうです。今の時期は養殖ものしかでません。
夏場になると天然ものも出せるそうですが、値段は3倍違うそうです。
こちらの接客も、とても素晴らしいものでした。
飲んでいる途中で上着を脱ごうとすると、さっと後ろで手伝っていただいたり、一見の客なのに、とても丁寧に説明をしていただいたり、でもけっしておせっかいや押しつけがましさもなく、おかみさんもご主人も、とても気持ちのいい方でした。
「私たちはこのやり方なので、この味がよいと思う方に来ていただければいいと思ってます」というご主人。
これからも、長くここでお店を続けていただきたいて、また寄らせていただきたいと思います。
今度来るときは、今回食べるのを忘れた白焼きをいただかなくては。
7位
1回
2013/10訪問 2016/05/05
「マリアージュって日本酒のためにあるような言葉だと思うんですよ」
ご主人がそんなことを仰りながら、我々の前に刺身の盛り合わせの皿を置きました。
前々からマイレビュアーのM氏が、こちらに来る機会があれば是非一緒に行きましょうと言われていた店。
ちょうど仕事がこちらの方だったので、ちょっと足を伸ばしてみたのでした。
我々の前の皿には、鰤、のどぐろ、、秋刀魚、鯵、鰹、鯛の刺身が乗っています。
鰤はカマのすぐ隣のところ。
だから腹身のところなんか、大トロのような脂ののり。
まだ新鮮なのでその脂がしっとりさらりとした甘さを出しています。
近海ものという鯵は身がキトキト。
きゅっと締まって弾力があって、ついさっきまで元気でいたばかりですからどうぞお早くと鯵が言ってます。
のどくろはちょっとバーナーで炙ってくれました。
その分脂がトロリと溶けてきて、口の中で溶けていきそうなどうだ参ったか的な旨味。
中でも素晴らしいのが鰹。
表面を焼いてたたきにした鰹を、自家製のポン酢に浸してその上にガーリックオイルをかけたもの(だと思う)。
このポン酢が鰹のクセを消して、しかもしっかりした鰹の旨味を邪魔しない優れモノ。
ガーリックの風味が加わって一層食欲を引き立たせる一品に仕上がってます。
「自分が食べたい味で作ったポン酢なんですよ」とご主人。
このポン酢は、鯛を食べるときにも活躍します。
白身魚の味をふくらませてくれるんですよね、そのままでも飲めるくらい美味しいポン酢でした。
新鮮な魚をただ切って出すだけじゃなくて、ちょっとひと手間かけていたり、魚に合わせて調味料を変えたりと、美味いモノをさらに美味しく食べてもらおうというご主人の気持ちがこもってます。
刺身をとった後の鰤カマの塩焼きは、もうホクホク。
脂分がジワッと口の中に広がって、旨味の洪水状態。
塩加減いいですねえ。
どこの塩だか教えてくれたんけど忘れちゃいました、とにかく魚の味を引き立てる塩味。
骨についた身をしゃぶっていると、ご主人が「至福の時間ですねえ」とニッコリ。
お行儀悪くてどうもすいません^^;
もう一品作ってもらったのは、穴子の塩焼き。
さらりとした上品な脂分がたっぷりの穴子。
ホロリ・ホクホクの上品な身でありながら脂分の旨味たっぷりで、これだけ美味い穴子は前に食べたのはいったいいつのことかと記憶を探さねばならないくらい久しぶりに美味い穴子食べました。
こうした魚たちに合わせて、ご主人は本日の在庫の中から相性のいい日本酒を次々に選んでくれます。
って、我々が片っ端から飲んじゃうからねんですけど、矢継ぎ早の注文に応えて、魚と日本酒をマリアージュしていただきました。
スタートに選んでいただいたのは、よ右衛門特別純米「無濾過」。
ちょっと酸味のある、ピリッとした、まだお酒が生きてるよということを示してくれる一杯。
その次からは勧められるままに、会津娘特別純米酒無為信の燗、庭のうぐいす純米吟醸、川口納豆特別純米酒、東北泉特別純米、神亀山廃生純米酒、日和田山廃純米酒といった順番。
ある酒は魚の脂をすっきり流し、ある酒は旨味を膨らませ、まさに魚と日本酒のマリアージュ。
相性ピッタリの組み合わせにしっかりと酔わされた夜となりました。
8位
1回
2013/01訪問 2016/05/05
エスニック系にお詳しいマイレビュアーさんに、ビリヤニって食べたことないんですと以前にお話をしていたら、この店で食べさせてもらえるからいらっしゃい、とありがたくもオフ会に誘っていただきました。
当日はたいへんお世話になりました。
まずはお礼を申し上げます。
さて、押上駅からスカイツリーを背後に住宅街の中へ。
ごく普通の住宅のところに看板を発見。
でも入り口がちょっと分かりにくいですね。
すぐ後にお見えになった、この日ご一緒させていただいたレビュアーさんと「こっちですよね」と確認しあいながら通路を奥へ進み、なんとか店にたどり着きました。
木製のテーブルの上に、メニューとフォークとスプーンがセットされた席に集まったのは、総勢7人。
この人数が今回意味があることは後でわかってきます。
ともかくも初めての方々、お久しぶりの方々とご挨拶をしたら、早速カレーのコースをご注文。
前菜一種、カレーが一種、デザートが2種に飲み物で2,500円です。
それにチキンビリヤニのLサイズを追加です。
前菜は、5種の盛り合わせに自家製ソーセージとパルマ産生ハムのサラダ。
はい、ここで早くも今回の7人という人数が意味を成してきます。
これで今日用意されている前菜が全種類シェアできるというわけです。
前菜の盛り合わせには、カリフラワーのグラタン、ゴルゴンゾーラのムース、タマネギのキッシュ、海老とブロッコリーのアンチョビとニンニク炒めなどが乗っています。
この前菜には一人一個クルミのパンが付くのですが、そのパンにゴルゴンゾーラのムースをつけるとなかなか美味。
個人的にはもっと青かび感があってもよかったですけど、パンとの相性がいいムースでした。
自家製ソーセージは肉の粗挽き感が出て、かつジューシーで、これはビールのお供に絶好です。
カレーの前にビリヤニが登場。
初めて食べるので、ワクワク気分。
鉄鍋のふたを開けると、湯気とともに芳醇なスパイスの香りが立ち昇ってきます。
炒めるのかと思ったら、炊き上げるタイプなんですね。
カルダモン、フェンネル、クローブ、クミンなどのスパイスが、洗練されたダンスを軽やかに踊るような爽快感。
バスマティライスの間にスパイスが層になって入っているようで、チキンの旨味と軽やかなスパイス感の合間にガツンと切れ味鋭い一発がお見舞いされます。
店によっていろんなタイプのビリヤニがあるそうですが、この爽快感あるビリヤニは個人的ツボでした。
さて、今日のカレーは6種類。
エビ、ココナツ、マトン、チキン、牡蠣、ラッサム。
バスマティライスをよそってもらい、好みのカレーをかけていただきます。
エビカレーに溶け込んだ海老のエキスの旨味が味の奥行きを広げてます。
カキカレーの和風のような魚介の出汁は、ホッとする馴染み感とスパイス感をうまくまとめていました。
マトンがやはり一番辛口なんですが、フルーティな味が加わることでかなり食べやすくなっています。
ラッサムはトマトの酸味が効き、チキンは間違えない安定感を放ち、ココナツはマイルドに包み込んでくれる味わい。
人数があってこその味わい方でございます。
酒飲みチームの方はワインをボトルで追加しつつ、6種のカレーを楽しませていただきました。
デザートも7種を盛り合わせてみなさんでシェア。
カスタードプリンが濃厚であったこと、キャラメルのジェラートがジェラートらしからぬキャラメルの甘さが効いていたことが印象的。
どのデザートも丁寧な作りで、カレーだけでなくデザートまで力が入ってます。
デザートの組み合わせを工夫してチーズの盛り合わせもいただきましたが、こちらのゴルゴンゾーラはしっかり塩味が効いてました。
最後は紅茶で〆。
これで酒飲みチームでも4,000円ちょっとの会計とはCPも高いです。
スパイスを軽やかに使いこなしたというイメージの料理を堪能させていただきました。
スパイスは知識の少ない私ですが、今回はお詳しいみなさんたちとご一緒させていただいて、楽しく美味しくスパイスを学ばせていただきました。
改めまして、ご一緒させていただいたみなさまには感謝申し上げます。
9位
1回
2013/05訪問 2016/05/05
こんなに美味しい庶民の食べ物を作っていただいてありがとうございます。
マイレビュアーさんからピザの美味しい店に行きませんかと声をかけていただきました。
どうもありがとうございます。
4人掛けのテーブル3つにカウンター席が4席の店。
店の広さの割には席の配置がゆったりしています。
木を多く使って、照明も落ち着いた清潔感のある店内。
入ってすぐ右側に立派な薪窯がありますね。
各自、ワイン、ソフトドリンク、ビールと飲み物を注文した後に、まず出していただいたのはゼッペリーニとフォカッチャ。
ゼッペリーニがモチモチです。
今回のメンバーは4人。
マイレビュアーさんの采配で、6種類のピザをハーフ&ハーフでいただくことにしました。
まず焼いていただいたのは、「シラスとモッツァレラ」とマリナーラ。
ランチのピザは直径20センチだそうですが、夜のピザは直径30センチ。
なかなか迫力があります。
ハーフを4等分にカットして出していただきました。
シラスとモッツァレラは、チーズのコクとシラスのさっぱりした塩分がよく合います。
マリナーラは、名前からすると魚介系かなと思えば、オレガノとニンニクとトマトソースのシンプルなピザ。
オレガノとニンニクの香りがいいシンプルな味で、生地の旨味が味わえます。
ちょっとだけ辛いオイルをつけるとさらに美味いですね、
この2つを食べてまず思ったのは、生地の美味さ。
強力粉100%で作るそうで、モチモチッとして、表面はサクッとして、適度な塩分と甘味。
生地は薄いのですが、手で持っても生地がそんなにへたれない状態。
それにソースとチーズの相性が非常にいいのです。
続いて焼いていただいたのが、マルゲリータとナポレターナ。
マルゲリータはシンプルで基本の味。
生地の美味さが一番味わえるかもしれません。
生地の味、トマトソースの味、モッツァレラチーズの味がとてもバランスのいいピザです。
ナポレターナは、オレガノとニンニクの香りが美味しさを予感させてくれます。
食べると、マリナーラになかったアンチョビの塩気が効いて旨味がありました。
3つ目は、アランジャルシとクアトロフォルマッジ。
アランジャルシにはルッコラがたっぷり。
「ルッコラは苦手なことありませんか?」と聞いていただいたマスターに、「大好物です」と答えた我々に大盛りサービスしてくれたみたいです。
バッファローのモッツァレラのコクとルッコラの爽やかさがちょうどいいバランスを保って提供されてました。
クアトロフォルマッジはゴルゴンゾーラの塩分が効いて、また4種のチーズが重厚感を出した食べ応えのあるピザ。
ブルーチーズ好きにはストライクな一枚です。
もう一ついっちゃいましょうということで最後に注文したのは、ルナロッサ。
「半分マルゲリータ・半分包み焼きピザ」という説明なので、いったいどういうピザなのかとみなさん興味津々。
出てきたピザの姿を見て「巨大揚げ餃子!」という声。
「揚げ餃子」の平らな皮の部分はマルゲリータになっていて、「餃子」の具にあたる包み焼きの部分には、中に、モッツァレラチーズ、リコッタチーズ、生ハムが入ってます。
マルゲリータはすでに食べたもの同様、生地とソースとチーズのバランスがとてもいいもの。
包み焼きの部分でトロリと溶けているのはリコッタでしょうか。
生ハムの塩気がアクセントになって見た目よりさっぱり感のあるピザ。
これも美味いです。
飲み物も一人2種ずつ飲んでいるのに、4人で11,000円しなかったとは信じられないような庶民的価格。
1枚が1,200円から1,800円ですからね。
マイレビュアーさんによれば、「ピザは庶民的な食べ物なので価格をできるだけ抑える」というご主人の考えがあるからだとか。
ご主人は庶民の味方です。
この値段で、こんなに美味しいピザを提供していただいて、ご主人ホントにありがとうございます。
10位
1回
2016/08訪問 2016/08/18
【再訪 2016.08】
夏休みの間に市役所に行く用事があって、家族と共に諸手続き。
運転手役の息子が美味い蕎麦が食べたいと言うので、一家3人で再訪。
お盆期間中でも営業していたので助かりました。
12時少し前に入るとすでに先客が2組、10分後にはもう満席となってしまいました。
ご近所の方、近くでお仕事中の職人さんなどで賑わいます。
夏季限定のメニューは鱧天せいろ(1,680円)。
こりゃ注文しない訳に行きません。
運転手役は、子どもの頃から好物だった鴨せいろ(1,555円)。
大蔵大臣は、なめこおろし(1,120円)。
さらに、運転手役がタクシー代替わりに天ぷらも食べたいと言い出したので、穴子天ぷら盛り合わせ(1,855円)と大蔵大臣の許可を得てちゃっかり来福純米吟醸を追加。
もちろん運転手に飲ませるわけにはいかないので、ドリンクは独り占めです(笑)
夏場でもこの店の蕎麦は美味いですね。
コシもきちんとあって風味もしっかりしてます。
鱧の天ぷらはしっとり感とふわりとした食感を併せ持ってなかなか美味し。
対して穴子の天ぷらはほっこり感。
夏の天ぷら2種の食べ比べもまた楽しめました。
もちろんすっきりした甘味と旨味の来福との相性もピッタリでしたよ。
【再訪 2014.03】
店の前に新しく作られている道路が、東伏見稲荷から市役所横の保谷新道まで通行できるようになりました。
なので、うちから歩いていくのもたいへん便利。
その道路を歩いてある日ランチに再訪しました。
春らしいメニューで、白魚の天ぷら盛り合わせとせいろ蕎麦。
白魚、茄子、ふきのとう、れんこんの天ぷらの盛り合わせ。
白魚は軽くて上品な味で、ホロッと口の中で潤びれていきます。
ふきのとうの軽い苦味も春の味ですね。
せいろ蕎麦は二八。
喉ごしがいいです。
それにここの蕎麦は甘味があるんですよね。
そのまま食べるよりつゆにつけた方が甘味が立つのは前回同様です。
つゆが蕎麦の味をふくらませているんでしょうね。
相変わらずいい仕事をされてます。
【最初のレビュー 2010.04】
西東京市役所保谷庁舎のすぐ近く、新しい道路建設現場のすぐ脇にお店があります。
18席の小さな店内。2007年に南大泉からこの場所に移転してきました。
某有名そば店で修業をされてきたご主人と、奥さんのお二人でやっていらっしゃいます。
注文したのは、穴子天せいろと追加の十割もり、相方はなめこそばです。
すべての料理をご主人が一人で作るので、混んでいるときは注文してからそばが出されるまでちょっとだけ時間がかかります。この日は10分ぐらいでした。
その間は香りのいいそば茶と、いろいろとそばの解説が載っているメニューでも見ながらのんびりと待ちましょう。ここのそば茶は、香りがよくてかなり美味しいです。
まずは、薬味から出てきました。
わさびとねぎと大根おろしです。
ちょことそばつゆが出されて、まず二八のせいろがやってきました。
まずは一口何もつけずに手繰ってみます。
あま~い、です。
そばの風味がしっかりします。
口の中で鼻へ抜けていくようなふっくらとした風味。
あんまり甘くていい風味なので、3分の1ぐらいそばつゆなしで食べてしまいました。
そばつゆは濃い方ではないと感じましたが、出汁のしっかり利いたつゆ。
そばの甘さを立たせるつゆですね。
つゆにつけて食べると、一層のど越しの良さが引き立ちます。
その途中で穴子天ぷらが出てきました。
穴子が丸ごと一本と、オクラ、ふきのとう、わらびの天ぷらです。
こちらの店では季節感も重視しているようで、今回伺った時は子持ち白魚の天ぷらもありました。白魚は後から気がついたので、今度来たときに食べたいと思います。
ふきのとうは程よい苦味、わらびはかすかな甘みがあります。
穴子はふっくらホクホク。
こちらの天ぷらは、ちょっとごま油強めの香りを強調した天ぷらです。
揚げあがりは外がカリッと、中はふっくらという感じで、揚げのテクニックも上手だと思います。
そして、追加の十割もりです。
香りが二八より断然強いですね。
しっかりした噛みごたえ。
のど越しの点では二八に軍配が上がりますが、そば本来の味を楽しみたい方にはこちらがいいかもしれませんね。
二八がしなやかな甘い女性的なそばとすれば、十割は武骨な質実剛健な朴訥な男性的なそばですかね。
なめこそばもなめこがたくさん入っていて、そばもしっかりとした味であったとのことでした。
こちらは、お土産にそばを持ち帰ることもできます。
持ち帰りのそばをお客さんに手渡す時、奥さんが「今日のそばのゆで時間は55秒です」と説明されていました。
55秒! なんと細かい時間指定。それにおそらくその日の具合によってゆで時間が変わるのでしょう。
ご主人はかなりのこだわりを持って、そばを打っていらっしゃるようですね。
そば前もお酒もなかなか豊富。いい日本酒も揃っています。
この日は、後に買いものとか用事がなければ、絶対飲んでいただろうと思います。
今年もいろんなみなさんと「食」を通じて交流することができました。
ご一緒させていただきましたみなさま、どうもありがとうございました。
みなさんのご健康と平和をお祈りしたいと思います。