2回
2012/12 訪問
いつかどこかで再開を願ってます
【再訪2012.12】
すでに半年も前に閉店してしまった店のことを書くのはどうかと思うのですが、この店の夜を書かれている方が少なかったので、こんな店だったということを残すためにちょっとご紹介だけ。
夜に伺ったのは閉店の一か月ほど前のこと。
その時は全然そんな雰囲気もない、普通の営業の様子でした。
お通しは鮑の肝です。
ねっとり旨味が凝縮した肝、スタートからハイレベルです。
まずはちょっとつまみを切ってもらいたいとお願いすると、目の前につまが置かれました。
今日のお勧めを伺うと「カンパチがいいですよ」とご主人。
脂がのっているのにさっぱりして、身にピンと張りと弾力があります。
続いては、「今日はタコですね」。
身に甘味があります。歯でサクッと切れる柔らかで適度な弾力の歯ごたえ。
モノもいいと思いますが、茹で加減もこの店の技でしょうね。
一緒に注文した玉子焼きは、ほんのりした甘味でさっぱりとした後味のだし巻。
もうちょっとつまみをと言うと、「鯵のたたきなんかいかがでしょう」。
鯵を細く切って刻んだ小口ネギと合わせて出していただきました。スダチをかけて食べます。
ちゃんとひと手間かけていただけるところがこの店の技。
この店オリジナルの「きょうはし」という冷の純米酒は、こうしたつまみの味をじゃましない、ちょっと甘味のある飲み口のいい酒です。
さて、それでは握りへと変更。
すると、「もう握ってよろしいですか」と確認したご主人は、つまを片付け、小さな手桶に入った温かい手拭を出してくれました。
寿司をつまんだ指先を拭くためのご配慮です。
こういう気遣いは心憎いばかり。
まず、「今日はこれで終わりです」という北寄貝を一貫。
柔らかで甘味と貝の旨味がしっかりします。
赤酢を使ったしゃりは小さ目、手に持っているときはきちんと整っているのに、口に入れるとほろほろと自然に潤びれていきます。
こういうきちんとした握り方は、回る寿司屋の機械では絶対できない技ですね。
こはだは締め加減の塩梅が優しさを感じます。でしゃばらずそれでも存在をちゃんと出しているほんのり甘味を感じる酢の加減。
鮪の赤身はしっとりとした旨さ、対してヅケになった赤身は旨味が凝縮されたねっとりした旨さ。
穴子は、ふわふわでトロリ。濃口のツメがいい味を出してます。同行の知人は穴子は好きじゃないと言ってたのですが、これならもっと食べたいと穴子嫌いを解消したようです。
海老は、「茹でただけで別に何の味もつけてませんよ」というのに、なんでこんなに甘いの?と聞きたくなる味。
巻物になったトロは、文句なしに蕩け、海苔はパリパリです。
かんぴょう巻は、しっかりした味付けで最後にしっかり満足感を残します。
「やっぱり江戸前の寿司っていうのは、こはだと穴子と後は煮ハマが勝負だと思います」と「私で四代目なんですよ」というご主人。
こはだと穴子はそんなご主人の気持ちがこもってました。
「今日は蛤がいいものがなかったので仕入れができなくて申し訳ありません」とのこと。確かにネタの種類が豊富ではないのですが、きちんといいものを売切れる分だけ仕入れて提供しようという姿勢が感じられます。
やっぱり夜も来てよかったなあと思いました。
一人10,000円しなかったし。
閉店する前にこの店の真価が分かってよかったです。
どこかで再開してくれないかなあ。
【再訪2011.11】
京橋でお仕事だったので、久しぶりに京すしさんでランチ。
今回は鉄火いなだ丼(1,120円)。
鉄火6切れ、いなだ6切れの計12切れが乗った丼です。
酢飯の上に刻んだガリと刻み海苔が散らされているのはどの丼も共通。
鮪の赤身は上品な脂加減ですねえ。
しっとりしてじわっと鮪の脂が沁み出す赤身。
いなだに甘味があるのは相変わらずです。
いなだは、腹身、背、胴の真ん中の部分からそれぞれ切り身を切ってバランスよくどんぶりの上に乗せる仕事の細やかさ。
職人の顔をしたご主人が、帰り際にごちそうさまと言うと、最後ににっこり微笑んで「ありがとうございました」と言ってくれるのが印象的です。
【最初のレビュー 2010.03】
丸の内方面で午後から仕事。
で、その前に腹ごしらえで八重洲へ。
みなさんの評価の高いこの店に初めておじゃましてみました。
あじ丼、さば丼、いなだ丼は980円、鉄火丼は1260円。
今回はいなだです。
モジャコ、ワカシ、イナダ、ワラサ、ブリと、関東では順番に呼ぶ出世魚。
関西ではハマチにあたるサイズの頃だったと思います。
つけばに立つご主人の仕事は早いです。
サッと注文の魚を引いて、酢飯の盛られた丼に乗せ、素早く提供してくれます。
店は満席ではありませんでしたが、それでもカウンターに10人、テーブルに4人座っていたのに、注文から丼が出てくるまで5分待ちませんでした。
どんぶりのご飯が見えないくらい、たくさんの枚数が敷き詰められた、いなだ丼です。
14枚の切り身が乗っています。
醤油にちょっとつけて、まずはいなだを1枚。
あま~い^^
脂がとっても甘い、いなだです。
美味しいですねえ。
脂がのっているのに、ブリほど脂がきつくなくて食べやすいほどほどの脂です。
酢飯もいいですねえ。
やや甘みがあって、魚の味が膨らむような酢飯。
酢飯だけで食べても美味しいですが、魚と一緒に食べると相性がいいです。
いなだをめくると、酢飯の上には刻み海苔がかかっています。
その下にはガリ。
ガリは控えめの味ですが、アクセントとしてはいい役目をしています。
みそ汁はしじみ汁。
しじみの味が汁にしっかり出ている美味しいしじみ汁。
昼間から充実した食事でした。
夜も、資金があったら来てみたいですね。
別の日、夜に来れないのでランチに再び。
次は、あじといなだの丼です。
なんと、いなだの切り身が9枚、あじが11枚乗っています。
今回は大盛りだったので、100円増しの1080円。
切り身がこんなに乗ってこの値段は、素晴らしいの一言です。
いなだは脂がのって美味しいのは変わらず、鯵は軽く酢でしめて仕事がしてあります。
甘みは抑えたあっさりめの〆方。いい味だと思います。
こちらの丼は、酢飯を丼にドンと入れたら、その上に大きめに刻んだガリを全面に散らします。
その上に刻み海苔をまた全面に散らし、そこに切り身を乗せてわさびを真ん中に盛ったら出来上がり。
ご主人や職人さんの仕事ぶりを見ているのが、楽しくなるような作り方です。
酢飯はやや赤味を帯びていますから、赤酢を使っていらっしゃるのかもしれませんね。
夜もぜひ来たいと思いました。
こはだのにぎり
穴子のにぎり
赤身のづけのにぎり
赤身のにぎり
海老のにぎり
北寄貝のにぎり
かんぴょう巻
とろ鉄火巻
かんぱちの刺身
タコの刺身と玉子焼き
鯵のたたき
お通しの鮑の肝
オリジナルの日本酒「きょうはし」
鉄火いなだ丼
あじ・いなだ丼
いなだ丼
蜆汁
2016/05/05 更新
再開発のために一時閉店をしていた京すしさんが、京橋エドグランのオープンと共にその1階で店を再開しました。
L字型のカウンター8席と奥の個室席だけと、店の規模は以前に比べて少し小さくなりました。
店を仕切るのはかつてのご主人、ではなく、以前の店の時から板場に立たれていた息子さんが跡を継がれたそうです。
先代は多趣味な方でしたので、今頃悠々自適のご様子。
後継者難で閉店する個人店も多い中、しっかり息子さんが跡を継がれたので、先代はひと安心でしょう。
以前はランチタイムにも握り鮨があったのですが、今は丼だけの営業。
鉄火丼、イナダ丼というメニューの中に、以前からの人気メニュー、はーふ&ハーフ丼がありました。
いなだ、あじ、さばの組み合わせなら980円、鉄火との組み合わせなら1,120円というのは、以前と同じ価格なのがうれいいです。
ある日は、鉄火とあじのハーフ丼。
新しいご主人は、注文を受けて一つずつ作業を進めます。
「お椀お願い」の声が出ると、注文の品がいよいよ出てくるタイミング。
丼の酢飯の上に赤身の鮪と、ちょっと軽く酢で〆た鯵がご飯を覆うように並んでいます。
切り身の数は8枚ずつ。
ちょうどセンターでスクラムを組むように並んでいます。
では鯵チームの左プロップの位置からいただきましょう。
脂がのっているのが分かる鯵。
浅く酢で〆られているので、さっぱりと食べられます。
続いて鉄火チームの右プロップから。
しっとりした鮪の赤身、噛むとジワッと脂が出てきます。
魚の旨さは前と変わらないかな。
次の時には、かんぱちとあじのハーフ丼。
かんぱちが7切れにあじが9切れ乗っていました。
あじチームはスクラムハーフまで入って、かんぱちチームはシンビンで一人退場でしょうか(笑)
かんぱちにはほんのり脂がのり、あじは前回同様さっぱりしています。
それにこの時は玉子焼き(200円)も追加。
甘味のある玉子焼きは、夜なら酒の肴としても十分役割を発揮しそうです。
ハーフ丼はがっぷりとスクラムを組み合うような2種類の美味い魚が楽しめるところがやはり魅力。
酢飯には、以前と同じく、刻み海苔と刻んだガリが乗っています。
こういう一仕事がちゃんと受け継がれているところがいいですね。
難を言えば、ご主人お一人で調理しているので、提供までの時間がちょっとかかること。
以前の店は、若い衆がいましたからね。
今度は一人ですべてをこなすから、この時間は致し方なし。
まあ、丁寧な仕事の反映と解釈しておきましょう。
夜はお任せでやってくれるそうです。
以前の店は夜もかなりお得にいいものがでてきたので、新しいお店はどうなるのか、機会があれば夜に来てみたいものだと思っています。