3回
2025/12 訪問
白眉の極みなる鯖
この日、食した秋の鯖。浅めの〆方にて拵えた〆鯖のうまいこと。近年、超低温冷凍ストッカーの店舗普及によって穴子や〆鯖を冷凍するとこが急増している。穴子は炙り直す店が大半だが〆鯖の味の低下は散見される。結果〆鯖は食す機会が激減していた。冷凍した〆鯖は色艶が冴えないのですぐわかる。
そうしたなかでこちらで食した鯖はまさに崇高。
鯖はいつもあるわけではないがこうした食材をこの上もないほどの料理として提供してくる店主の力量と志が凄い。添えた茗荷が超微細に包丁を入れてあり薬味として最高レベル。
また小生なぞ知るはずもない紫ずきんなるものが出た。これが精妙なる塩加減で普段から味付けの濃いものを食べているとその超繊細なるうまさには辿り着けない。まだまだ自身の浅学を知る思いの一夜であった。
2025/12/27 更新
2025/07 訪問
本物の日本料理に出会える崇高なる店
代々木八幡駅から程近く、代々木八幡宮からすぐそばにある日本料理店。
外装はベージュ基調で渋くひっそりとある。店内は仄暗く外観同様、実にシックな感覚に仕上げてありカウンターの渋い朱の仕上げが美しい。
器は唐津の青備前や京の赤楽、鳥獣戯画が施された片口等々多彩。ガラス酒器はすべて小振りでシックな上質なるオールドバカラ。実にセンスのいい品揃え。
店主の日本酒における知見のレベルは最上質なものでとてもよく吟味されている。これだけの日本酒を各々の料理に合わす店主の感度は滅法高い。昨今おまかせ高額寿司屋の薄っぺらなペアリングなぞとは次元が違う。
客層はミドルからシニアまで上品な方々が多い。
こちらは旧知の方から薦められて訪問させて頂いた。店主は金田中の出身。
おまかせのみで一斉スタートとなる。さて料理。
今はやりの豪華高級食材ばかりを乱発する店とは一線を画しており、最大の特徴は出汁にある。
店主の出汁へのこだわりは半端がない。
基本は季節の野菜中心。ここで食す野菜はマニアックなものが多く得意の出汁を纏わせ見事なる品として独創している。
店主の包丁技術の冴えは実に見事で到底到達出来ないレベルにある。
魚介や肉はもの凄く高品質な素材に店主独自の技法を施しすごくクラシックだが印象に残る料理へと昇華させて来る。
夏のとうもろこしのすり流しなぞ一口啜ると陶然たる旨さに痺れてしまう。
また丸鍋なぞ一度食したら深遠なる境地の果てに奥深い美味の愉悦がある。
そして上質なる炭にて焼く魚も圧巻。普通の焼魚の概念を一掃するほどなる深い味わい。これがこちらのスペシャリテであろう。季節の鮎なぞものすごい素材を塩のみで食して崇高なる境地へと導くのが凄い。まさに記憶に残る料理。
また解禁時期の限定された香箱蟹は身と内子、外子等を剥いて出すような凡庸なる料理でなく、思いも寄らない料理へと昇華させてしまう。
〆のご飯の白い米も圧巻。一緒に供される香の物や汁も文句なし。最後の果実も最上質。
今はやりの店にありがちな豪華で写真を都度取るような料理でなく流麗な川の流れのように滋味深い料理が最初から最後まで連綿と続く。
総じて店主の料理に対する姿勢は実に真剣で丁寧。基本は精進料理。
かつて二条城近辺に在住して京料理を数多く食して来たがまさかこれほどまでの心に染み入る日本料理に東京で出会えるとは夢にも思わなかった。
こちらは料理を数多く食べ尽くして来てまだその先を求めたいという真剣な方々を店主と店主の料理が待っている。
この店では動画はもちろん撮影なぞは控えて店主の拵える料理に真剣に向き合いたくなる静謐静寂なる雰囲気が漂う。
軽薄な動画投稿や映え狙いが全盛なるなか稀有なることだ。
店主は現在、不惑の年代の男盛りにてさらなる高みへと昇っていくに違いない。さらなる精進に大いに期待したい。
以前よりより真剣に料理に向き合い日々努力している姿勢がカウンター越しから読み取れる。
季節素材に衣替えしてある瀟洒な暖簾を背にしてのこの店を出るときの満足感が実に心地いい。
今後もっとも通いたい飲食店である。
2025/07/29 更新
礼讃の進化は留まるところを知らない。
今まで己が食していたものが何だったのかと禅問答してしまう料理の数々。
深遠なる奥義はまだまだ先なる道があることは確かだ。